情報の基準日:2026年8月31日時点の制度内容をもとに解説しています。
ひとり親で資格講座を受けようとすると、「ハローワークの教育訓練給付金をもらえるなら、自治体の制度は使えないのか」「60%と20%を足して80%になるのか」「どちらへ先に申請するのか」で迷います。
結論からいうと、雇用保険の教育訓練給付金と、ひとり親向けの自立支援教育訓練給付金は、満額をそのまま足す制度ではありません。ひとり親向け制度で計算した額から、ハローワークで受けられる教育訓練給付金を差し引き、残った額を自治体が支給します。
そのため、最初にすることは受講申込みではありません。受講開始前に自治体のひとり親支援窓口で講座指定を相談し、同時にハローワークで教育訓練給付の受給資格を確認します。修了後は、原則としてハローワークの支給額を確定させてから自治体へ差額を申請します。
この記事では、2制度の違い、60%・85%の上限、4つの差額計算、受講前から修了後までの申請順、必要書類と期限を整理します。

- 先に確認|ひとり親の教育訓練給付は3パターンに分かれる
- 教育訓練給付金と自立支援教育訓練給付金は何が違う?
- 対象者|所得だけで自己判断せず、3つの条件を見る
- 対象講座|教育訓練給付の指定講座が中心
- 自立支援教育訓練給付金はいくら?60%・85%と上限
- 併用時の差額計算|2制度の満額を足すわけではない
- 申請順|受講前は自治体とハローワークを並行して確認する
- 申請期限|「修了後30日」を見落とさない
- 必要書類|自治体用とハローワーク用を分けて保管する
- 対象経費が同じとは限らない|差額は通知書で確認する
- 状況別|この場合は何を先に確認する?
- 間違えやすい7つのポイント
- よくある質問
- まとめ|受講前の2窓口確認で差額と期限を決める
先に確認|ひとり親の教育訓練給付は3パターンに分かれる
自分がどこに当てはまるかは、ひとり親であることだけでは決まりません。雇用保険の加入歴と、受ける講座の指定区分で分かれます。
| 状況 | ハローワーク | 自治体 | 最初の行動 |
|---|---|---|---|
| 教育訓練給付を受けられない | 支給なし | 自立支援教育訓練給付金を基準額まで支給 | 自治体で講座指定を相談 |
| 一般・特定一般を受けられる | 20%または40%・50% | 60%の基準額との差額 | 自治体とハローワークの両方で確認 |
| 専門実践を受けられる | 50%・70%・80% | 60%または85%の基準額との差額 | 受講2週間前までの手続きも逆算 |
「雇用保険に入っていたから自治体は対象外」ではありません。一方、「2制度を足せば必ず受講料の80%や100%が戻る」でもありません。まず、ハローワーク分を含めた合計が、ひとり親向け制度の基準額までになると考えると整理しやすくなります。
教育訓練給付金と自立支援教育訓練給付金は何が違う?
教育訓練給付金は雇用保険の制度
教育訓練給付金は、一定の雇用保険加入期間がある在職者や離職者が、厚生労働大臣の指定講座を受講したときに、費用の一部をハローワークから受ける制度です。一般、特定一般、専門実践の3区分があり、加入期間、離職後の期間、過去の利用歴、受講開始日で本人の受給資格が決まります。
母子家庭や父子家庭であることは、この制度の必須条件ではありません。ひとり親でも、それ以外の人でも、雇用保険の条件を同じように確認します。
自立支援教育訓練給付金はひとり親向けの自治体制度
自立支援教育訓練給付金は、20歳未満の子を扶養する母子家庭の母または父子家庭の父が、就職に必要な教育訓練を受ける場合の受講費を支える制度です。申請先はハローワークではなく、居住地のひとり親支援窓口です。
こども家庭庁の現行案内では、自立に向けた計画の策定等を受けることと、就業経験・技能・資格・労働市場から見て、その訓練が適職に就くために必要と認められることが示されています。
教育訓練支援給付金とは別物
名前がよく似ていますが、教育訓練支援給付金は、一定の離職者が専門実践教育訓練へ昼間通学するときの生活費支援です。自立支援教育訓練給付金は、ひとり親の受講費を支える制度です。
通知書や自治体への相談では、「教育訓練給付金」「教育訓練支援給付金」「自立支援教育訓練給付金」を省略せず伝えてください。
対象者|所得だけで自己判断せず、3つの条件を見る
20歳未満の子を扶養する母または父
対象は、母子家庭の母または父子家庭の父で、現に20歳未満の子を扶養している人です。2026年度の案内では、受講中に子が20歳へ到達した場合も、同じ講座を修了するまでは対象者として扱うことが示されています。
子が19歳なら申請できないという意味ではありません。ただし、受講開始前にすでに20歳へ到達している場合や、扶養の実態が変わった場合は扱いが異なるため、自治体へ確認します。
自立に向けた計画の策定等を受ける
講座だけ決めて申請するのではなく、母子・父子自立支援プログラムなどの計画策定を受けます。希望職種、現在の仕事、資格、子育ての状況、修了後の就職見込みを相談し、その講座が自立に必要かを自治体が確認します。
その講座が就職に必要と認められる
人気資格だから自動的に認められるわけではありません。現在の経験、地域の求人、取得後に目指す仕事、講座の内容を踏まえ、適職に就くために有効かが判断されます。
全国向けの現行案内では、児童扶養手当の受給や特定の所得額だけを一律条件として掲げていません。ただし、自治体ごとの実施状況、過去の受給、生活保護や他制度との調整などを確認されることがあります。「年収が高いから無理」「児童扶養手当を受けていないから無理」と契約前に決めず、窓口で確認してください。
対象講座|教育訓練給付の指定講座が中心
対象になるのは、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の指定講座と、自治体が地域事情に応じて対象とする講座です。特定一般と専門実践に準じて自治体が認める講座は、専門資格の取得を目的とするものに限られます。
同じ学校でも、昼間・夜間・通信、入学月、課程年数が違えば指定番号や指定期間が変わります。学校名だけでなく、自分が申し込む正確な講座名と開始日を確認します。
厚生労働省の指定講座検索で候補を探し、講座名、指定番号、訓練区分、開始予定日、修了予定日、費用が分かる資料を自治体へ持参してください。

自立支援教育訓練給付金はいくら?60%・85%と上限
| 講座 | 基準額 | 上限 |
|---|---|---|
| 一般・特定一般 | 入学料・受講料の60% | 20万円 |
| 専門実践 | 入学料・受講料の60% | 修業年数×40万円、通常最大160万円 |
| 専門実践を修了し、1年以内に資格取得して資格を要する職へ就職 | 入学料・受講料の85% | 修業年数×60万円、通常最大240万円 |
自治体から支給される額が1万2,000円を超えない場合は支給されません。差額が1万2,001円以上あるかまで計算します。
准看護師養成機関から看護師養成機関へ続けて進学する場合は、2026年度の実施要綱で専門実践の上限が5年分へ広がり、60%は最大200万円、85%は最大300万円となる取扱いがあります。すべての5年課程に使える上限ではありません。
国の基本額はこども家庭庁の2026年度実施要綱で確認できます。自治体の条例・要綱と申請時の案内も必ず合わせて確認します。
併用時の差額計算|2制度の満額を足すわけではない
計算の基本は次のとおりです。
自治体の支給額 = 自立支援教育訓練給付金の基準額 − 雇用保険で受けられる教育訓練給付金
基準額と雇用保険側の計算対象経費が完全に同じとは限りません。以下は、全額が双方の対象経費になり、各上限内に収まる単純例です。
例1|一般講座30万円、教育訓練給付を受けられない
自治体の基準額は30万円×60%=18万円です。ハローワーク分は0円なので、自治体から18万円が支給されます。
例2|一般講座30万円、ハローワークから20%を受ける
ハローワークは30万円×20%=6万円、自治体の基準額は18万円です。自治体は18万円−6万円=12万円を支給し、2制度の合計は18万円です。6万円と18万円を足して24万円にはなりません。
例3|特定一般講座30万円、資格取得・就職後に50%を受ける
ハローワークの合計は30万円×50%=15万円、自治体の基準額は18万円です。自治体の最終的な差額は3万円で、合計18万円になります。
例4|専門実践1年50万円、資格取得・就職後まで進む
ひとり親向け制度の85%は50万円×85%=42万5,000円です。ハローワークが70%なら35万円なので自治体の差額は7万5,000円、賃金5%上昇の要件も満たして80%なら40万円なので差額は2万5,000円です。どちらも合計は42万5,000円です。
一方、ハローワーク分が自治体の基準額以上になる場合、自治体からの差額は0円です。教育訓練給付を受けられる人ほど、必ず自治体分が大きくなる制度ではありません。


申請順|受講前は自治体とハローワークを並行して確認する
1.講座へ申し込む前に自治体へ相談する
居住地のひとり親支援窓口へ、資格名だけでなく、学校・講座名、開始日、修了日、受講形態、費用が分かる資料を持参します。自治体が制度を実施しているか、対象者に当てはまるか、講座指定申請をいつまでに出すかを確認します。
こども家庭庁は受講前の講座指定を案内しています。入学金を払った後や受講を始めた後では対象にできない自治体があるため、「修了後に領収書を出せばよい」と考えないでください。
2.ハローワークで受給資格の有無を確認する
雇用保険の加入歴が曖昧なら、教育訓練給付金支給要件照会票を提出し、支給要件回答書で確認します。自治体の手続きでも、この回答書を求められる場合があります。
特定一般・専門実践は、訓練前キャリアコンサルティングとジョブ・カードを準備し、原則として受講開始日の2週間前までに受給資格確認が必要です。自治体への相談を終えてから動くのではなく、両方の期限を同時に逆算します。

3.自治体から対象講座の指定を受けて受講する
正式な講座名と入学期が記載された指定通知を受け、受講を開始します。コース変更、休学、退学、受講形態の変更が生じたら、学校だけでなく自治体とハローワークの両方へ連絡します。
4.修了後、ハローワークの給付額を確定させる
教育訓練給付を受けられる人は、先にハローワークへ支給申請し、教育訓練給付金支給・不支給決定通知書を受け取ります。専門実践は6か月ごとの基本給付、資格取得・就職後の追加給付、賃金上昇後の追加給付で金額が段階的に変わります。
ハローワークの現行案内では、専門実践は50%、資格取得・就職で70%、さらに賃金が5%以上上昇した場合は80%とされています。自治体の差額計算にも影響するため、追加給付の結果を省略しません。
5.自治体へ差額を申請する
対象講座指定通知、修了証明、領収書、ハローワークの支給・不支給決定通知書などをそろえて自治体へ申請します。専門実践で資格取得・就職後の85%へ進む人は、追加支給用の申請が別に必要になる場合があります。

申請期限|「修了後30日」を見落とさない
自治体側の期限は短いことがあります。たとえば京都市の2026年度案内と横浜市の案内は、講座修了から30日以内の支給申請を案内しています。
一方、大阪市の現行要綱では、特定一般または専門実践の受給資格者について、雇用保険側の支給額が確定した日から30日以内としています。全国で同じ起算日だと決めつけられません。
受講前の相談時に、「通常の支給申請はいつから何日以内か」「ハローワークの決定通知が間に合わない場合はどうするか」「資格取得・就職後の追加支給はいつ申請するか」を書面で確認してください。
必要書類|自治体用とハローワーク用を分けて保管する
| 段階 | 主な書類 | 確認点 |
|---|---|---|
| 受講前・自治体 | 講座指定申請書、講座パンフレット、本人・子の確認資料、計画策定関係 | 講座名、入学期、費用を一致させる |
| 受講前・ハローワーク | 支給要件照会票、本人確認、ジョブ・カード、受給資格確認票など | 講座区分で必要手続きが違う |
| 修了後・ハローワーク | 支給申請書、修了証明、領収書、教育訓練経費の証明など | 原本、期限、追加給付書類を確認 |
| 修了後・自治体 | 対象講座指定通知、修了証明、領収書、支給・不支給決定通知書、振込口座 | 自治体指定様式と30日前後の期限を優先 |
必要書類は自治体で異なります。別の市の一覧をそのまま使わず、居住自治体から受け取った案内を先頭に置きます。学校の領収書、修了証明、講座指定通知は、ハローワーク分と自治体分が終わるまでまとめて保管してください。

対象経費が同じとは限らない|差額は通知書で確認する
自立支援教育訓練給付金の全国向け説明は、入学料と受講料を基にします。雇用保険の教育訓練給付金にも対象経費の定義があり、必須教材、割引、事業主からの補助、返還予定金などで計算額が変わります。
「学校へ合計50万円払ったから、そのまま50万円×差額率」とは限りません。学校が発行する教育訓練経費の証明、ハローワークの決定通知、自治体が認める経費を順に照合します。

状況別|この場合は何を先に確認する?
雇用保険に入ったことがない
ハローワーク分がない可能性は高いものの、それだけで自治体の支給が確定するわけではありません。自治体でひとり親の要件、計画策定、講座の必要性、講座指定を確認します。
過去に働いていたが加入期間が分からない
前職の雇用保険期間を含めてハローワークへ照会します。離職から受講開始までの期間や過去の給付利用歴で結論が変わるため、口頭の記憶ではなく回答書で確認します。
子が受講中に20歳になる
受講開始時に要件を満たし、同じ講座を続ける場合は修了まで対象となり得ます。子が20歳になる月、講座修了日、扶養状況を受講前相談で伝えます。
すでに講座へ申し込んだ
対象外と自己判断せず、すぐ自治体へ相談してください。ただし、受講前の講座指定が原則なので、開始後の申請や既払い分が認められるとは限りません。
専門実践を受けている
6か月ごとのハローワーク申請と自治体の差額申請を分けて管理します。資格取得、就職、賃金上昇の時点でハローワーク分が増えると、自治体の差額も再計算されます。
間違えやすい7つのポイント
- 60%と20%を足して80%と考える:自治体は雇用保険分を引いた差額です。
- ハローワークだけへ相談する:自立支援教育訓練給付金の窓口は自治体です。
- 自治体だけへ相談する:雇用保険の受給資格と支給額はハローワークで確認します。
- 学校名だけで対象と考える:指定は講座、入学期、受講形態ごとに確認します。
- 修了後に初めて自治体へ行く:受講前の講座指定が原則です。
- 30日の期限は全国同じ起算日と考える:自治体と雇用保険の区分で起算日が異なることがあります。
- 教育訓練支援給付金と同じ制度だと思う:生活費支援と受講費の差額支援は別です。
よくある質問
雇用保険の教育訓練給付金を受けられると対象外ですか?
対象外とは限りません。自立支援教育訓練給付金の基準額から、雇用保険で受けられる額を引いた差額が1万2,001円以上あれば、自治体分が支給される可能性があります。
一般教育訓練給付金と同時に申請できますか?
受講前の相談は並行して進めます。修了後の支給は、ハローワークの支給・不支給決定通知書を自治体が求める場合が多いため、具体的な提出順を自治体へ確認してください。
特定一般の50%をもらったら自治体分は返しますか?
追加給付で雇用保険側の金額が増えると、自治体の最終差額も変わります。自治体の追加申請・変更届・返還の案内に従い、決定通知書を必ず提出します。
専門実践なら必ず85%になりますか?
いいえ。講座修了後1年以内に資格を取得し、その資格を必要とする職へ就くことなどが必要です。修了しただけでは60%の基準です。
児童扶養手当を受けていなくても相談できますか?
できます。全国向けの現行案内は、児童扶養手当の受給そのものを一律条件として掲げていません。居住自治体が確認する要件と書類を確認してください。
通信講座も対象ですか?
教育訓練給付の指定講座または自治体が認める講座なら候補になります。通信というだけで決めず、正確な講座名、指定番号、開始日、受講方法を伝えます。
自立支援教育訓練給付金は毎月もらえますか?
原則として受講費の支援であり、毎月の生活費を支給する制度ではありません。長期課程の生活費支援は、高等職業訓練促進給付金など別制度の要件を確認します。

まとめ|受講前の2窓口確認で差額と期限を決める
ひとり親が雇用保険の教育訓練給付金を受けられる場合でも、自立支援教育訓練給付金を利用できる可能性があります。ただし、2制度の満額を足すのではなく、ひとり親向け制度の基準額からハローワーク分を引いた差額を自治体が支給します。
講座へ申し込む前に、自治体で対象者・講座指定・申請期限を確認し、ハローワークで受給資格と講座区分を確認してください。修了後はハローワークの決定通知を受け取り、自治体の短い申請期限を逃さない順で進めます。

