制度の確認日:2026年9月7日
政府のリスキリング支援は、在職中の転職希望者、今の会社に残りたい人、すでに離職した人で、確認する制度が違います。「働いていないと支援を受けられない」「転職しないと学費補助は使えない」と、ひとまとめにはできません。
経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、在職中で雇用主を変える転職を目指す人向けです。一方、厚生労働省の教育訓練給付金には、今の会社に勤めたまま使う道も、退職後に使う道もあります。雇用保険を受給できない人には、求職者支援制度という別の選択肢があります。
まず自分がどの入口に当てはまるかを確認し、その後に対象講座・費用・申込みの時期を比べましょう。
政府のリスキリング支援は誰向け?状況別の早見表
個人が利用を考えるときは、「現在働いているか」だけでなく、転職したいのか、雇用保険の加入歴があるのかまで分けると選びやすくなります。
| 現在の状況 | まず確認する制度 | 入口で確かめること |
|---|---|---|
| 在職中で、別の会社へ転職したい | 経産省のキャリアアップ支援事業、教育訓練給付金 | 在職確認の時点、転職意向、講座ごとの対象制度 |
| 今の会社に残って学びたい | 教育訓練給付金など | 雇用保険の加入期間と指定講座。経産省事業は当初から転職意向がない人向けではない |
| 退職済みで、雇用保険の加入歴がある | 教育訓練給付金、ハローワークで案内される職業訓練 | 離職から受講開始までの期間、給付の受給状況 |
| 雇用保険を受給できない・受給が終わった | 求職者支援制度など | 求職申込み、訓練の必要性。生活費の給付は別の条件で審査 |
この表は相談先を選ぶための目安です。対象講座や加入期間などの要件があるため、どの行も、それだけで支援が確定するわけではありません。
根拠:経産省事業の受講者向け案内、ハローワークの教育訓練給付金案内、厚生労働省の求職者支援制度案内。
制度の候補が見えたら、仕事と受講を両立できるかも確認しましょう。在職者向けの訓練や夜間・土日の選択肢は、次の記事で整理しています。

経産省の支援は「登録時」と「初回相談時」の在職が条件
経産省の事業を使うには、事業への登録時と、初回のキャリア相談の面談時の両方で在職していることが必要です。あわせて、雇用主を変える転職を目指していることが求められます。
たとえば、在職中に登録しても、初回の面談までに退職して、その時点でどことも雇用契約がなければ、在職要件を満たしません。「退職前に登録ボタンを押せば間に合う」という判断は避け、面談日も含めて事業者へ確認してください。
休職中と、すでに退職した人は扱いが違う
休職中でも雇用契約が続いており、必要な時点の在職要件と転職意向を満たす人は対象になり得ます。一方、すでに離職して雇用契約がない人は、この事業の対象外です。出勤しているかどうかだけで判定しないことが大切です。
転職を目指して利用し、結果的に残る場合は?
最初から今の会社に残るつもりの人と、転職を目指して支援を受けたものの、結果的に転職しなかった人も区別します。公式FAQでは、転職に至らなかったことだけを理由に、修了した講座の負担軽減分を返還する必要はないとされています。ただし、転職等を条件とする追加分は対象から外れます。
在職の確認時点は事業の公式案内、休職・離職・転職に至らなかった場合は公式FAQ(2026年4月8日更新、No.9・11〜13・106)で確認できます。
「最大70%」は、修了時の50%と転職後の20%に分かれる
経産省事業の学費支援は、申込みだけで70%が確定する仕組みではありません。税別の受講費用をもとに、次の2段階で計算します。
| 段階 | 主な条件 | 事業者への補助額 |
|---|---|---|
| 講座の修了 | 対象となる講座を修了する | 税別受講費用の50%、上限40万円 |
| 転職後の追加分 | 事業で定める転職を実現し、転職先で1年間継続して就業したことを確認できる | 税別受講費用の20%、上限16万円 |
国が受講者へ直接この金額を振り込むのではなく、補助を受ける事業者を通じて、受講者の負担が軽減されます。公式案内では、受講者には事業者への補助額以上の負担軽減が行われるとされています。
追加分の対象となる転職は、原則としてこの事業で実施される職業紹介による転職です。転職支援を行う職業紹介事業者が自社で雇用する場合も含まれます。自分で求人を探して転職すれば、どの経路でも追加20%の対象になるとは限りません。
補助率・上限・対象となる転職の定義:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の公式案内。
税込44万円の講座なら、補助の基準は税別40万円
次は、消費税10%、補助額と同額の負担軽減、独自割引・その他費用なしと仮定した計算です。追加分の条件もすべて満たした場合を示しています。
| 税別受講費用 (税込額) |
修了分 | 追加分 | 負担軽減の合計 | 軽減後の負担 |
|---|---|---|---|---|
| 40万円 (44万円) |
20万円 | 8万円 | 28万円 | 16万円 |
| 80万円 (88万円) |
40万円 | 16万円 | 56万円 | 32万円 |
| 100万円 (110万円) |
40万円 | 16万円 | 56万円 | 54万円 |
税別40万円なら、20万円+8万円=28万円が軽減され、税込44万円から差し引いた負担は16万円です。税込額の70%が戻る計算ではありません。また、税別100万円の例では上限があるため、軽減の合計は70万円にはなりません。
これは最終的な負担の比較であり、最初の支払額を示すものではありません。前払い・返金などの時期は事業者に確認が必要です。追加分を受けられない場合は、税別40万円の例では、修了分20万円だけを差し引いた24万円の負担になります。
追加補助には、転職を完了する期限もある
2026年9月時点の公式FAQでは、2025年4月以降も新規受付を行う対象事業者などについて、追加補助のための転職完了期限を2027年4月30日としています。受講期間が長い講座を選ぶ場合は、修了・転職・継続就業の予定が制度の期限に収まるか、申込み前に確認してください。
計算基準・負担軽減時期・転職期限:公式FAQのNo.87・89・91。各講座の受付状況は、公式の事業者検索から提供者の案内へ進んで確認できます。
学費の負担が下がっても、受講中の家賃や食費が支給されるとは限りません。学費の給付と、訓練中の生活を支える給付の違いは、次の記事で比較できます。

今の会社に残る人・失業中の人は、厚労省の制度を確認する
雇用保険の加入歴があれば、教育訓練給付金が候補
教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した講座の費用を支援する制度です。雇用保険の加入期間などを満たせば、同じ会社で働き続けながら受講する場合も、離職後に受講する場合も対象になり得ます。経産省事業と違い、利用の入口で雇用主を変える転職を目指すことは必須ではありません。
支給要件期間は原則3年以上ですが、初めて使う場合は、一般・特定一般で1年以上、専門実践で2年以上という扱いがあります。前職の期間を通算できるか、以前に給付を受けたことがあるかでも判定が変わるため、加入年数の自己判断だけで申込みを進めないでください。
離職者は原則として、雇用保険の資格を失った日(離職日の翌日)から、講座の受講開始日までが1年以内である必要があります。「1年以内に問い合わせた・申し込んだ」だけでは足りません。妊娠・出産・育児・疾病などにより受講できない場合には、一定の手続きで対象期間を延長できる制度もあります。
対象者・加入期間はハローワークの教育訓練給付金案内、離職後の受講期限と延長は厚生労働省の一般教育訓練給付金Q&Aを参照してください。
雇用保険を受給できない人にも、訓練の選択肢がある
雇用保険の適用がなかった人や、失業給付の受給が終わった人は、求職者支援制度を確認しましょう。ハローワークへ求職を申し込み、働く意思と能力があり、訓練の必要性などが認められることが条件です。
訓練の受講料は無料ですが、テキスト代などは自己負担です。月10万円の職業訓練受講手当には、本人・世帯の収入、資産、出席などの条件が別にあります。生活費の給付に該当しなくても、訓練のみ受講できる場合があります。
対象者・訓練・生活費給付の条件:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」。
政策として見るなら、補助率だけでなく「誰が使えるか」
経産省事業が在職中の転職希望者を対象にするのは、学び直しと労働移動を一体で進める設計だからです。相談・講座・転職支援をつなげる目的は、公式の事業概要にも示されています。
この仕組みは、転職したいけれど学ぶ分野や準備の進め方が分からない人の助けになり得ます。一方、会社に残って仕事の幅を広げたい人や、すでに離職してから学び直しを考えた人は、別制度の条件を調べる必要があります。
政策を評価するうえでは、最大補助率の大きさに加え、対象から外れる人の次の相談先が分かるか、最初の学費を用意できるか、受講や転職の期限が生活に合うかも見るべきだと考えます。制度が複数あっても、自分の状況に合う窓口へたどり着けなければ利用につながらないためです。
個人の判断でも同じです。補助を受けるために転職の予定を無理に合わせる前に、目指す仕事と学び方を決め、その条件に合う支援を比べる順番が役立ちます。
申込み前に確認したい4つのこと
- 在職状況と、使う制度の正式名称。経産省事業なら登録日・初回面談日の雇用契約と転職意向、教育訓練給付なら雇用保険の加入歴と受講開始日を伝えます。
- 対象になる講座・コース。スクール名だけで判断せず、自分が申し込むコースが、どの制度の対象として案内されているかを確認します。
- 税込総額、最初の支払額、軽減・給付の時期。追加条件を満たす場合と満たさない場合の両方で、自己負担を見積もってもらいます。教材・試験・分割手数料など、表示額以外の費用も確認しましょう。
- 修了条件と転職条件、各期限。経産省事業では、対象になる転職経路、転職完了期限、1年間の継続就業を証明する方法まで確認します。
なお、経産省事業の支援と教育訓練給付金を、同じ受講について足し合わせることはできません。公式FAQでは、国が支出する同じ趣旨の制度との併用はできないとされています。両方の対象として案内される講座でも、どちらの制度を使う契約なのかを確認してください。根拠:公式FAQのNo.147。
在職・離職の状況と雇用保険歴が整理できたら、学費と生活費を含め、使える支援を次の記事で確認できます。


