再就職手当を申請すると、残っている失業手当を全部は受け取れなくなる。そう聞くと、「もらわない方が得なのでは」と迷います。
比べたいのは、再就職手当と失業手当だけではありません。再就職後の給与、入社までの無収入期間、再就職先を早期退職した場合に残る日数、今後3年間の再受給条件まで分けないと、損得を逆に判断してしまいます。
結論からいうと、再就職手当は一律にもらわない方がよい制度ではありません。安定した仕事に早く就き、支給要件を満たすなら、給与と再就職手当を合わせた収入は、失業状態を続けて基本手当を受ける場合より大きくなることがあります。一方、再就職先を短期間で辞める可能性が高い場合や、前回の再就職手当から3年以内にもう一度就職する可能性がある場合は、残日数と今後の扱いをハローワークで確認してから申請する意味があります。
申請期限を過ぎてから考え直すのではなく、雇用保険受給資格者証、就職日、支給残日数、月給が分かる資料をそろえ、管轄のハローワークに「申請した場合と申請しない場合の残日数」を聞いてください。この記事では、受給を勧めたり止めたりせず、数字を置いて判断できるように整理します。

最初に確認:失業手当を満額もらうまで待つ制度ではない
「基本手当を90日分すべてもらってから就職する」と「すぐ再就職して再就職手当をもらう」を、給付額だけで比べると基本手当の方が大きく見えます。しかし、基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない失業の日について支給されるものです。就職した後も基本手当だけを受け続ける選択肢があるわけではありません。
早く就職できた場合は、失業手当の残りの一部を再就職手当として受け取り、同時期に再就職先から給与を得ます。したがって、同じ期間で比べるなら次の4つを並べます。
- 就職日の前日までに受け取る基本手当
- 支給要件を満たした場合の再就職手当
- 再就職後に受け取る給与
- 社会保険料・税金・通勤費など、再就職後に変わる支出
再就職手当を申請しないだけで、基本手当の残日数が現金として自動的に振り込まれることもありません。再就職した時点で失業状態ではなくなるためです。
公式確認:厚生労働省の「基本手当、再就職手当等Q&A」では、早期再就職後は給与と再就職手当を合わせることで、基本手当をすべて受け取ってから就職する場合より収入が多くなる可能性があると案内しています。最終的な支給可否はハローワークの審査で決まります。
再就職手当と給与は「同じ3か月」として単純比較しない
ここでは、制度の仕組みを理解するために単純化した例を使います。実際の基本手当日額、支給残日数、給付率、給与、控除、入金日は人によって違います。さらに、基本手当には待期や給付制限があり、90日分を受け終えるまでの暦期間も人によって異なります。以下は金額の内訳を見る例であり、同じ3か月の手取りを比べるものでも、受給額を保証するものでもありません。
| 共通の仮定 | 内容 |
|---|---|
| 基本手当日額 | 5,000円 |
| 所定給付日数 | 90日 |
| 早期就職時の支給残日数 | 90日 |
| 再就職手当の給付率 | 70%と仮定 |
| 金額を見る単位 | 早期就職側は就職後3か月の給与、失業継続側は90日分の基本手当総額。暦期間は同じではない |
ケース1:月給22万円の仕事へ早く再就職する
支給要件を満たすと仮定した再就職手当は、5,000円×90日×70%で31万5,000円です。3か月分の給与は額面66万円なので、合計は額面ベースで97万5,000円になります。
| 金額の内訳例 | 給付・給与の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 早期に再就職し、再就職手当を申請 | 再就職手当31万5,000円+就職後3か月の給与66万円 | 給与は課税・社会保険料控除前。手当の入金時期も別 |
| 失業状態が続き、受給要件を満たして90日分を受給 | 基本手当の総額45万円 | 7日間の待期、離職理由による給付制限、認定日があるため、3か月で全額を受け取るとは限らない |
この例では、再就職手当だけを見ると基本手当45万円より13万5,000円少なくなります。しかし、就職後の給与も生活費に使える収入です。ただし、給与は税や社会保険料が控除され、基本手当など雇用保険の給付は非課税です。受け取る暦期間も違うため、額面同士だけで「必ず52万5,000円得」とは言えません。
ケース2:月給18万円で、前職より賃金が下がる
同じ条件なら、再就職手当31万5,000円と3か月分の給与54万円で、額面合計は85万5,000円です。前職より給与が低いと、就職を急がない方がよいように感じますが、比べるべきなのは前職の給与ではなく、今選べる求人、無収入期間、生活費、仕事を続けられる可能性です。
再就職手当の支給を受け、同じ再就職先に6か月以上雇用され、再就職後6か月間の賃金日額が離職前より低いなどの要件を満たす場合は、就業促進定着手当の対象になる可能性もあります。2025年4月以降の上限は、再就職手当を受ける前の支給残日数に相当する日数×基本手当日額×20%です。実額は賃金の支払基礎日数などで計算されるため、自分で差額だけを掛けて確定しないでください。
公式確認:再就職手当の60%・70%の計算と、就業促進定着手当の現行上限は、ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」で確認できます。基本手当日額の上限は毎年8月1日に改定される場合があります。
ケース3:再就職先を早く辞める可能性がある
再就職手当を受けた後に短期離職しても、退職したという理由だけで直ちに返還になるわけではありません。元の受給期間満了日前で、手当相当日数を差し引いた支給残日数があれば、基本手当を再開できる場合があります。
返還になる例外、残日数の計算、新しい受給資格との分岐、退職後の手続きは次の記事で詳しく確認できます。

「もらわない方がいい」と言われる4つの理由を分ける
| よくある理由 | 実際に確認すること | 誤解しやすい点 |
|---|---|---|
| 失業手当の満額より少ない | 給付額だけでなく、就職した場合の給与とそれぞれの入金時期 | 就職後も基本手当を選んで受け続けられるわけではない |
| 再就職先をすぐ辞めそう | 元の受給期間満了日と、手当相当日数控除後の残日数 | 再就職手当を受けると残りが必ずゼロになるわけではない |
| 次の再就職手当が3年間もらえない | 前回の対象就職日と、次回の就職予定日 | 3年は支給日から数えるとは限らない |
| 手続きが面倒・入金が遅い | 申請期限、会社記入、審査状況の確認方法 | 申請しなければ別の給付へ自動振替されるわけではない |
今後3年以内の再受給制限は本当に影響するか
再就職手当の要件には、今回の就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当を受けていないことがあります。今回受け取れば、近い将来にもう一度離職と再就職をする際、この要件に当たる可能性があります。
ただし、「3年以内にまた辞めるかもしれない」という予想だけで、現在受けられる可能性のある給付を一律に見送るべきとは言えません。次回は基本手当の受給資格、支給残日数、安定した雇用など他の要件もすべて満たす必要があるからです。前回と今回の就職日を正確に伝え、ハローワークに判定してもらいます。
2回目の再就職手当で3年をどの日から数えるかは、こちらで時系列に分けています。

申請するか迷ったときに窓口へ持っていく数字
「どちらが得ですか」とだけ聞くより、次の数字をそろえると具体的に確認できます。
- 雇用保険受給資格者証または受給資格通知にある基本手当日額
- 所定給付日数と、就職日前日までの認定後の支給残日数
- 今回の就職日、雇用期間、週所定労働時間
- 新しい仕事の月給、通勤費、社会保険の加入予定
- 前回、再就職手当または常用就職支度手当の対象となった就職日
- 元の基本手当の受給期間満了日
窓口では、次のように聞くと論点がずれにくくなります。
○月○日入社予定で、基本手当日額は○円、支給残日数は○日です。再就職手当を申請した場合の見込額と、受給後にこの会社を早期退職した場合に元の受給期間内で残る日数を確認したいです。前回の再就職手当の対象就職日は○年○月○日です。
公式の案内では、申請書は就職日の翌日から1か月以内に提出するよう示されています。一方、厚生労働省は、再就職手当について、申請期限を過ぎても、1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる職業に就いた日の翌日から2年の時効が完成する前なら申請できると案内しています。1か月を過ぎたからと自己判断で諦めず、給付窓口へ相談してください。ただし、確認や支給が遅くなるため、期限内の提出が基本です。
申請期限と時効:厚生労働省「雇用保険の給付金は、2年の時効の範囲内であれば、支給申請が可能です」
公式確認:「再就職手当のご案内」には、8つの要件、支給残日数、60%・70%の計算、申請時期、再離職時の残日数の扱いが掲載されています。
職業訓練中に就職が決まった場合は学校にも連絡する
職業訓練中に内定が出た人は、再就職手当だけで退校日や給付の停止日を決めないでください。入社日、訓練の最終出席日、雇用条件をそろえ、訓練校とハローワークの両方へ連絡します。
受講手当、通所手当、基本手当、訓練延長給付の扱いと、再就職手当の支給残日数は同じ確認ではありません。訓練中の内定後に行う手続きはこちらに分けています。

再就職手当を申請しないときも就職の申告は必要
再就職手当を申請しないことと、就職した事実を申告しないことは別です。基本手当の受給中や給付制限中に就職が決まったら、指定された方法でハローワークへ申告します。就職日が次回認定日より前なら、原則として就職日の前日に来所する案内があります。前日が閉庁日の場合などは管轄窓口へ確認してください。
就職後も失業状態であるように申告して基本手当を受けると、不正受給になります。「再就職手当は要らないから何も連絡しない」ではありません。
よくある質問
再就職手当をもらうと失業手当は全部なくなりますか?
必ず全部がなくなるわけではありません。再就職手当に相当する日数は基本手当を受けたものとして差し引かれます。受給期間満了前に再び失業し、残日数がある場合は再開できる可能性があります。新しい受給資格を得た場合は、その新しい資格で判断されます。
再就職手当を申請しなければ、残日数は将来いつでも使えますか?
いつでも使えるわけではありません。基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年です。延長が認められる特別な場合を除き、期間を過ぎると残日数があっても支給されません。
再就職先の給料が低ければ、申請しない方がいいですか?
給料が低いことだけでは決まりません。無収入期間、仕事を続けられるか、社会保険、通勤費、就業促進定着手当の可能性まで確認します。仕事選びは給付額だけで決めず、雇用条件と生活費を合わせて判断してください。
再就職手当には税金がかかりますか?
厚生労働省は、雇用保険の給付は非課税で、給付について確定申告は不要と案内しています。ただし、再就職後の給与は通常の給与所得として扱われます。健康保険の扶養認定などは税と同じ基準とは限らないため、加入先へ確認してください。
申請するかハローワークが決めてくれますか?
最終的な支給可否はハローワークが審査しますが、生活や仕事の価値まで代わりに決めるわけではありません。見込額、残日数、期限を窓口で確認し、給与や継続可能性は自分の条件で比べます。
まとめ:手当の差額ではなく、給与・残日数・3年要件を並べる
再就職手当は、失業手当を満額受け取れなくする罰ではなく、基本手当の支給日数を残して安定した仕事に早く就いた人へ支給される給付です。申請するかどうかは、再就職手当と基本手当の額だけでは決まりません。
基本手当日額、支給残日数、再就職後の給与、元の受給期間満了日、前回の対象就職日を一枚に書き、申請した場合としない場合をハローワークで確認してください。再就職先が不安なら、仕事内容や雇用条件そのものも見直します。給付を多くするために就職を遅らせるのでも、周囲に勧められて急いで申請するのでもなく、手取りと入金時期、仕事を続けられる見込みで判断します。


