結論からいうと、会社が残業時間を日ごとに15分・30分単位で切り捨て、実際に働いた分の賃金を払わない運用は原則として違法です。定時後に14分働いたのに「15分未満だから残業ゼロ」、29分働いたのに「30分未満だからゼロ」とすることはできません。パート・アルバイト、契約社員、月給制の正社員でも基本は同じです。
ただし、「15分単位」「30分単位」という言葉だけで違法とは決まりません。日々の実労働時間を正確に記録したうえで、1か月の法定時間外労働・法定休日労働・深夜労働をそれぞれ別に合計し、最後の1時間未満について「30分未満は切り捨て、30分以上は1時間へ切り上げる」という例外的な端数処理は、行政上認められています。毎日切り捨てた後の時間を月末に足す方法や、切り上げをせず切り捨てだけ行う方法は、この例外に当たりません。
この記事では、2026年8月27日時点の厚生労働省・労働局の情報に基づき、1分単位で考える理由、月合計の例外、法内残業と法定時間外の違い、未払い額の計算、証拠の残し方、会社への確認と相談先まで順番に解説します。
結論|毎日の15分・30分切り捨ては原則として違法
14分を0分、29分を0分にする処理は認められない
静岡労働局「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」は、1日ごとに一定時間未満の労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことを労働基準法違反と明記しています。勤怠システムが自動で丸めていても、会社が手作業で削っていても結論は変わりません。
問題は表示単位ではなく、使用者の指揮命令下で実際に働いた時間が賃金計算から消えているかです。毎日18時14分まで閉店作業をしているのに、退勤時刻を18時00分へ丸めて残業代を0円にする運用は認められません。
1分でも働けば必ず25%増しになるわけではない
働いた時間を切り捨てられないことと、すべての延長時間に25%の割増が付くことは別です。契約上の終業時刻を過ぎても、1日8時間・週40時間の法定労働時間内なら、原則として必要なのは通常賃金の1.0倍です。1日8時間または週40時間を超えた法定時間外労働には、原則1.25倍以上を支払います。
なお、常時10人未満の商業・サービス業など一部の特例事業場では週44時間となる場合があり、変形労働時間制やフレックスタイム制でも法定時間外の判定方法が異なります。
判定は「単位」ではなく実際の処理で決まる
| 会社の処理 | 基本的な判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 毎日18時14分を18時00分として扱う | 不可 | 実際に働いた14分が消える |
| 毎日18時01分を18時15分へ切り上げる | 可 | 労働者に不利にならない |
| 毎日15分単位で四捨五入する | 不可 | 切り捨てられる日が生じる |
| 月の法定時間外10時間29分を10時間、10時間30分を11時間にする | 例外的に可 | 月合計後に切り捨てと切り上げを一体で行う |
| 月の法定時間外10時間40分を10時間にする | 不可 | 30分以上は1時間へ切り上げる処理になっていない |
| 退勤打刻後の14分を私用で電車待ちしていた | 通常は賃金対象外 | 打刻間の全時間が自動的に労働時間になるわけではない |
残業時間を1分単位で計算する理由
法律に「1分単位」と直接書かれているわけではない
労基法の条文に「1分単位」とそのまま書かれているわけではありません。しかし、労働基準法第24条は賃金の全額払いを定め、第37条は法定時間外・法定休日・深夜労働に対する割増賃金の支払いを定めています。実際に働いた時間の一部を会社都合で消せば、その時間分の賃金が未払いになります。
このため、分単位で勤怠を記録できる通常の職場では、労働日ごとの実労働時間を1分単位で把握・集計するのが原則です。大阪労働局の時間外労働Q&Aも、毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上し、端数を常に切り捨てることは未払いになるため認められないと説明しています。
タイムカードは重要だが打刻時間がすべてではない
労働時間とは、客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれている時間です。タイムカード、ICカード、パソコンのログは重要な記録ですが、入館から退館までの全時間が自動的に労働時間になるわけではありません。早く着いて私用で過ごした時間や、仕事を終えて同僚と話していた時間は通常、労働時間に含まれません。
反対に、打刻前の清掃、制服への着替え、朝礼、打刻後のレジ締め、引き継ぎ、業務上必要なパソコンの終了作業などが義務付けられていれば、その時間も労働時間になる可能性があります。名目上は「自主的」とされていても、実質的に参加や作業を余儀なくされていたかで判断します。
会社には始業・終業時刻を適正に記録する責務がある
厚生労働省「労働時間の適正な把握方法」は、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、タイムカード、ICカード、パソコンの使用記録など客観的な記録を基礎に適正に記録することを原則としています。自己申告制を使う場合も、申告できる残業時間に上限を設けるなど、正確な申告を妨げる措置を講じてはいけません。
勤怠の切り捨てが常態化し、会社へ確認しても改善されないときは、請求の準備と並行して働き方を見直す選択肢もあります。退職を急がず、収入を保ちながら次の仕事に必要なスキルを準備する方法は次の記事で確認できます。

日ごとの切り捨てと月合計の端数処理は何が違う?
先に毎日の実労働時間を正確に集計する
月合計の端数処理を使う場合でも、最初に各日の労働時間を正確に記録します。たとえば、月曜日14分、火曜日22分、水曜日7分という実績なら、14分・22分・7分をそのまま積み上げます。各日を15分や30分単位で先に切り捨ててから月合計を出してはいけません。
日次切り捨て後の数字を足しても、「月末に処理した」ことにはなりません。元の実績が欠けているため、認められる端数処理の前提を満たさないからです。
法定時間外・法定休日・深夜をそれぞれ別に合計する
厚生労働省の割増賃金チェック方法によると、1か月の時間外労働などの合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間へ切り上げる処理が認められます。より正確には、時間外・休日・深夜の次の3区分を混ぜず、それぞれについて月の合計を出します。
- 法定時間外労働
- 法定休日労働
- 深夜労働
法定時間外と深夜が重なる時間は、それぞれの割増部分を計算するため両方の集計に関係します。一方、会社所定の休日でも法定休日でなければ、自動的に35%の法定休日割増になるわけではありません。就業規則と週の労働時間を確認してください。
30分未満切り捨てと30分以上切り上げはセット
認められているのは「30分未満を切り捨てる」部分だけではありません。30分以上なら1時間へ切り上げる処理と一体です。たとえば、月の法定時間外が8時間29分なら8時間、8時間30分なら9時間として扱えます。実績どおり8時間29分、8時間30分で支払う方法も問題ありません。
会社が8時間29分は8時間へ切り捨てる一方、8時間30分を8時間30分のままにするなど、労働者に不利な方向だけを採用することは、この例外の処理ではありません。
所定内労働・法内残業へ月末例外を広げない
この月末処理を、通常の所定内労働時間や法定時間内の所定外労働へ広げることはできません。短時間勤務者の総労働時間を月末にまとめて切り捨てたり、所定7時間の人が7時間30分働いた日の30分を「月合計の端数」として消したりする根拠にはなりません。
月末例外は、割増賃金計算の事務を簡便にするため、法定時間外・法定休日・深夜の各月合計に限って認められた処理です。給与計算期間が毎月16日から翌月15日なら、その賃金計算期間の実績で確認します。
具体例|毎日14分を20日切り捨てるといくら違う?
月給24万円・月平均160時間で計算する
計算を分かりやすくするため、割増賃金の算定基礎となる月給を24万円、1か月平均所定労働時間を160時間とします。1日8時間勤務を終えた後、毎日14分の法定時間外労働を20日行ったケースです。なお、固定残業代は採用していないものとします。
1時間当たりの通常賃金:240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円
法定時間外の1時間当たり賃金:1,500円 × 1.25 = 1,875円
実際の法定時間外:14分 × 20日 = 280分 = 4時間40分
実績どおり払うなら8,750円、日次切り捨てなら0円になる
1分単位の実績どおりに計算すると、残業代は次のとおりです。
1,875円 × 280分 ÷ 60分 = 8,750円
毎日「15分未満はゼロ」と切り捨てれば、会社の記録上は14分が20日とも0分となり、残業代も0円になります。しかし、実際には4時間40分働いているため、8,750円分が計算から消えています。これが日次切り捨ての問題です。
認められる月合計処理なら4時間40分を5時間にする
日々の14分を正確に20日分足し、月合計4時間40分を出した後で、認められる端数処理を採るなら、40分は30分以上なので5時間へ切り上げます。
1,875円 × 5時間 = 9,375円
| 計算方法 | 残業時間 | 支給額 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 毎日14分を切り捨て | 0時間 | 0円 | 不可 |
| 1分単位の実績どおり | 4時間40分 | 8,750円 | 可 |
| 実績を月合計後、端数処理 | 5時間 | 9,375円 | 例外的に可 |
この例の9,375円は、すべての会社が必ず月末に切り上げなければならないという意味ではありません。会社が実績どおり4時間40分で8,750円を払う方法も適正です。月末の端数処理を採用するなら、30分未満の切り捨てと30分以上の切り上げを一貫して行う、という意味です。
法内残業と法定時間外では支払倍率が違う
所定労働時間を超えても8時間以内なら法内残業
会社との契約で決めた所定労働時間を超えた時間は、一般に「残業」と呼ばれます。しかし、法定時間外かどうかは、原則として1日8時間・週40時間を超えたかで判定します。所定6時間のパートが20分延長して1日6時間20分働いた場合、週40時間も超えていなければ、その20分は法内残業(法定内残業)です。
法内残業でも通常賃金1.0倍は必要
時給1,200円の人が法内残業を20分した場合、法律上25%の時間外割増が付かなくても、通常賃金は必要です。
1,200円 × 20分 ÷ 60分 = 400円
「8時間を超えていないから1円も出ない」わけではありません。会社の就業規則や雇用契約で法内残業にも割増を付ける定めがあれば、労働者に有利なその定めが適用されます。
法定時間外は原則1.25倍、深夜・休日は別の割増がある
1日8時間・週40時間を超えた法定時間外労働には原則25%以上、午後10時から午前5時の深夜労働には25%以上、法定休日労働には35%以上の割増が必要です。月60時間を超える法定時間外には50%以上が適用されます。重なる時間は割増率を組み合わせて計算します。
厚生労働省の労働時間Q&Aは、36協定がない違法な時間外労働であっても、会社の割増賃金支払義務はなくならないと説明しています。「会社に残業させる資格がなかったから賃金も出ない」という扱いにはなりません。
残業申請が15分・30分単位しかできない場合
申請画面の仕様だけで実労働時間を消せない
残業申請のプルダウンが「0分・30分・60分」しかなく、29分まで申請できない仕組みは、正確な労働時間の申告を妨げます。会社が別の方法で実際の分数を記録・補正し、その分の賃金を払っているなら画面表示だけで違反とは断定できませんが、申請できない時間をそのまま無給にする運用は認められません。
事前承認制と残業代の支払いは分けて考える
会社が無用な残業を防ぐため、事前承認を求めること自体はあり得ます。ただし、上司が明示的に指示した仕事、業務量から残業せざるを得ず上司も把握していた仕事など、使用者の明示・黙示の指示で実際に働いた時間を「未申請だからゼロ」とはできません。
一方、仕事を終えた後に本人の判断だけで職場へ残っていた時間まで、自動的に賃金対象になるわけでもありません。実際に何をしていたか、会社が指示・把握していたか、業務上必要だったかを記録します。
申請できなかった分数をその日のうちに記録する
申請欄へ入力できないときは、上司や人事へ「本日の実作業は18時00分から18時24分までで、申請画面では30分未満を選べません」とメールや社内チャットで伝えます。自分の手帳にも、日付、作業内容、開始・終了時刻、指示者を残してください。
退職を考えるほど状況が悪化している場合も、申請記録や給与明細を確保する前に勢いで辞めると確認が難しくなります。退職前に職業訓練の相談を始める手順は次の記事で整理しています。

固定残業代があっても実労働時間の切り捨てはできない
固定残業代は時間を記録しなくてよい制度ではない
「月20時間分の固定残業代を払っているから、細かな残業は記録しない」という説明は適切ではありません。固定残業代は賃金の支払い方の一つであり、会社には実際の労働時間を把握する責務があります。法定時間外・法定休日・深夜の時間も分けて確認しなければ、固定額で足りているか判断できません。
計算額が固定額以内なら追加差額がない場合もある
日次切り捨てが見つかったからといって、固定残業代を受け取っている人に必ず追加支給が生じるとは限りません。固定残業代の区分が有効で、その月の正しい割増賃金額が固定額以内なら、会社は勤怠記録を是正する必要がありますが、追加の差額が0円となる場合があります。
たとえば固定残業代が月30,000円で、切り捨て分を戻した後の法定計算額が25,000円なら、その月は固定額の範囲内です。一方、正しい計算額が35,000円なら、少なくとも5,000円の不足を確認する必要があります。休日・深夜分が固定額の対象に含まれるかも契約書で確認してください。
固定額を超えた分は追加支給が必要
厚生労働省の固定残業代Q&Aでは、通常賃金部分と割増賃金部分を判別できること、実際の労働時間から計算した額が固定残業代を上回るときは不足額を支払うことが示されています。固定残業時間を超えた分を日ごとに切り捨てたり、翌月の少ない残業と相殺したりすることはできません。
タイムカードと給与明細を確認する4ステップ
ステップ1|契約上の労働時間と給与締日を確認する
雇用契約書、労働条件通知書、就業規則で、始業・終業、休憩、所定休日、変形労働時間制の有無、給与締日を確認します。給与明細の「残業時間」がいつからいつまでの実績を示すか分からなければ、勤怠との比較がずれます。
ステップ2|実際に業務をした時刻を日ごとに並べる
タイムカードだけでなく、パソコンのログ、入退館記録、業務メール、チャット、日報、シフト表、作成ファイルの時刻などを使い、実際の始業・終業と休憩を日ごとに整理します。打刻との差がある日は、私用時間か業務時間かを説明できるよう作業内容も書きます。
ステップ3|所定内・法内・法定時間外などへ分ける
単に「残業合計○時間」とせず、少なくとも通常の所定内労働、法内残業、法定時間外、法定休日、深夜へ分けます。月末の端数処理を確認する場合も、法定時間外・法定休日・深夜の各合計を別に出します。
| 日付 | 実際の業務終了 | 会社記録 | 消えた時間 | 区分 |
|---|---|---|---|---|
| 8月3日 | 18:14 | 18:00 | 14分 | 法定時間外 |
| 8月4日 | 17:50 | 17:30 | 20分 | 法内残業 |
| 8月7日 | 22:12 | 22:00 | 12分 | 法定時間外・深夜 |
ステップ4|明細の時間数と支給額を照合する
給与明細の所定外時間、時間外時間、休日時間、深夜時間と、自分の集計を比べます。時間数が同じでも、月給から出す1時間単価、割増率、算定基礎へ含む手当が違えば金額が不足します。会社へは「なぜ少ないのか」だけでなく、対象日、実績、会社記録、差の分数、計算式を示して確認すると伝わりやすくなります。
遅刻1分を15分として控除された場合
通常の不就労控除は働かなかった時間に対応させる
1分遅刻した人について、通常の不就労控除(欠勤控除)として15分分の賃金を引けば、実際に働いた残り14分まで控除することになります。残業の切り捨てと同様、賃金全額払いの原則に反する扱いです。5分の早退を30分として控除するような処理も同じ問題があります。
遅刻への減給制裁は欠勤控除とは別の論点
遅刻に対する懲戒として減給する制度が就業規則に定められている場合は、単なる欠勤控除とは別に判断します。労働基準法第91条では、1回の減給額は平均賃金1日分の半額以下、1賃金支払期における減給総額はその期の賃金総額の10分の1以下とされています。これに加え、就業規則上の根拠、懲戒事由、手続、相当性も必要であり、会社が「15分単位だから」という理由だけで自由に過剰控除できるわけではありません。
残業は切り捨て、遅刻は切り上げという運用に注意する
残業14分は0分にする一方、遅刻1分は15分として引く運用は、どちらの方向でも労働者に不利です。「勤怠は15分単位」という説明だけで正当化できません。給与明細の残業時間だけでなく、遅刻・早退控除の分数と金額も実績と比べてください。
未払い分を確認するために残す証拠
勤怠記録と給与関係書類を保存する
タイムカードや勤怠システムの画面は、閲覧できるうちに自分の記録を保存します。給与明細、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、シフト表もそろえます。会社のシステムから出力できるなら、画面写真だけでなくCSVやPDFも保管します。
実際の作業を裏付ける記録を組み合わせる
パソコンのログイン・ログアウト、入退館履歴、業務メール、社内チャット、日報、業務ファイルの更新時刻、電話履歴、上司の指示などを組み合わせます。毎日の手書きメモも、継続的かつ具体的に残せば説明資料になります。
ただし、証拠確保のためでも、顧客の個人情報や営業秘密を無断で持ち出してよいわけではありません。自分の勤怠・給与・指示を示すために必要な範囲で保存し、判断に迷うデータは持ち出す前に相談してください。
「打刻後に何をしたか」を説明できるようにする
タイムカードの退勤が18時14分でも、会社から「18時に仕事は終わっていた」と反論されることがあります。その日の14分でレジ締めをした、引き継ぎメールを送った、パソコン処理をしたなど、作業内容と指示者を記録すると、単なる在社時間との違いを説明しやすくなります。
日別の差額表を作る
日付、実労働時間、給与上の時間、消えた分数、法内・法定時間外・休日・深夜の区分を表にします。いきなり3年分を完璧に計算しようとせず、まず直近1か月を照合すると会社の処理方法を把握できます。そのうえで同じ運用が続いた期間へ広げます。
勤怠の不透明さが転職理由になる場合は、次の職場で同じ問題を避けるため、固定残業代、残業申請、給与計算単位を求人・面接で確認する必要があります。

会社へ未払い賃金を確認・請求する流れ
最初は計算根拠を記録に残る方法で聞く
人事や給与担当へ、感情的な表現を避けて事実を確認します。「8月3日は18時14分まで業務をしましたが、勤怠と給与では18時00分になっています。日ごとの端数処理と、月合計後の処理方法を教えてください」のように、具体的な日付と分数を示します。
口頭で回答を受けた場合は、「本日の説明は、毎日15分未満を切り捨てているという理解でよいでしょうか」と確認メールを送ります。単なるシステム設定ミスであれば、訂正時期と不足分の支払日も確認します。
正しい時間と不足額を期間別に示す
会社が訂正しない場合は、対象期間、日別の実績、正しい月合計、1時間単価、割増率、既払額、不足額を整理して書面で支払いを求めます。固定残業代を受け取っている場合は、切り捨て分を戻した後の法定計算額と固定額を比較し、追加差額がある月とない月を分けます。
未払い賃金の時効は各支払期日から当分の間3年
厚生労働省の賃金請求権Q&Aによると、賃金請求権の消滅時効は5年へ延長されましたが、当分の間は3年です。期間は退職日から一括して数えるのではなく、原則として各賃金支払期日から進みます。
どの連絡で時効の完成猶予・更新が生じるかは個別事情で異なるため、メールを1通送れば必ず止まると考えないでください。古い支払期日から順に期限が来るので、長期間の未払いが疑われる場合は早めに専門窓口へ相談します。
退職後でも請求はできる
退職したことで、未払いだった賃金が消えるわけではありません。ただし、退職後は勤怠システムや社内メールへアクセスできなくなることが多いため、適法に閲覧・保存できる自分の資料を在職中に確保します。退職届への署名と、未払い賃金を放棄する合意は別問題なので、不明な文書へその場で署名しないことも大切です。
解決しないときの相談先
匿名で一般的な説明を聞くなら労働条件相談ほっとライン
厚生労働省委託の労働条件相談ほっとラインでは、賃金不払残業などについて無料・匿名で相談できます。2026年度の日本語窓口は0120-811-610で、平日夜間、土日・祝日にも開設されています。ただし、相談員が会社へ直接指導する窓口ではありません。
賃金不払いの法違反を申告するなら労働基準監督署
事業場を管轄する労働基準監督署は、賃金不払いなど労働基準法違反の相談・申告先です。雇用契約書、給与明細、勤怠記録、日別集計、会社とのやり取りを持参すると説明しやすくなります。労基署の行政指導と、個人の未払い額を民事手続で回収することは同じではなく、すべてのケースで回収を代行してくれるわけではありません。
幅広い労働トラブルは総合労働相談コーナーでも相談できる
厚生労働省の総合労働相談コーナーは、賃金だけでなく、解雇、配置転換、嫌がらせなど幅広い相談を受け付けています。法違反の疑いがあれば権限を持つ部署へ取り次ぐ案内もあります。金額が大きい、会社が事実関係を争う、時効が迫る場合は、労働組合、弁護士、法テラス、労働審判なども検討します。
よくある質問
Q1.就業規則に「残業は15分単位」と書いてあれば有効ですか?
実際に働いた時間を日ごとに切り捨て、賃金を払わない内容なら、就業規則へ書いてあるだけで有効にはなりません。労働基準法を下回る定めで未払いを正当化することはできません。15分単位でも常に労働者側へ切り上げる方法なら別です。
Q2.15分単位で毎回切り上げる会社も違法ですか?
1分働いたら15分、16分働いたら30分と、常に実績以上へ切り上げる処理は労働者に不利にならないため問題ありません。最も近い15分へ四捨五入し、切り捨てられる日が生じる処理とは分けて考えます。
Q3.月の残業合計が10時間29分なら29分を切り捨てられますか?
毎日の実労働時間を正確に積み上げた法定時間外の月合計であり、同じルールで30分以上を1時間へ切り上げるなら、行政上は10時間として処理できます。日ごとに切り捨てた結果が10時間29分という場合は認められる例外になりません。
Q4.月の残業合計が10時間30分ならどうなりますか?
月合計の端数処理を採る会社なら11時間へ切り上げます。10時間へ切り捨てることはできません。端数処理をせず、実績どおり10時間30分で支払う方法も適正です。
Q5.パート・アルバイトの給与も1分単位ですか?
雇用形態にかかわらず、実際に働いた時間分の賃金を払う原則は同じです。所定6時間から20分延長しても1日8時間・週40時間以内なら、原則25%割増ではなく通常賃金1.0倍ですが、20分を0分にはできません。
Q6.タイムカードの退勤時刻まで全部残業になりますか?
自動的にはなりません。使用者の指揮命令下で業務をした時間が労働時間です。退勤前に私用で過ごしていた時間は通常含まれませんが、閉店作業、清掃、引き継ぎなどを指示・黙認されて行っていた時間は対象になり得ます。
Q7.上司の許可を取らなかった残業はすべて無給ですか?
事前承認がないという理由だけで必ず無給になるわけではありません。業務上必要で、上司が把握・黙認していたなど黙示の指示があれば労働時間となる可能性があります。一方、会社が残業を明確に禁止し業務も終わっていたのに本人の都合で残っていた時間は別です。
Q8.固定残業代を受け取っていれば切り捨て分を請求できませんか?
まず切り捨てを戻して実労働時間と法定額を計算します。その額が有効な固定残業代の範囲内なら、記録是正は必要でも追加差額がない月があります。法定額が固定額を超えれば不足分を確認します。
Q9.フレックスタイム制や変形労働時間制でも同じですか?
実労働時間を日ごとに正確に把握する点は同じですが、法定時間外の判定方法は通常勤務と異なります。フレックスの清算期間、変形労働時間制の特定日・週、就業規則を確認し、単純に1日8時間だけで計算しないでください。
Q10.1分遅刻したら15分分を引かれても仕方ありませんか?
通常の欠勤控除として引けるのは、原則として働かなかった1分に対応する額です。15分分を引けば残り14分の賃金まで控除します。就業規則に基づく懲戒の減給は別論点で、労働基準法第91条の上限などを満たす必要があります。
Q11.退職後でも切り捨てられた残業代を請求できますか?
退職後でも請求できます。2026年8月現在、賃金請求権の時効は各支払期日から当分の間3年です。退職すると勤怠へアクセスしにくくなるため、在職中に自分の資料を適法な範囲で保存し、期限が近い分から早めに相談してください。
Q12.会社が直してくれないときはどこへ相談しますか?
一般的な確認は労働条件相談ほっとライン、賃金不払いの法違反は事業場を管轄する労働基準監督署、幅広いトラブルは総合労働相談コーナーが候補です。会社が時間や金額を争う場合、労働組合、弁護士、労働審判なども検討します。
まとめ|日々の実時間を残し、月末の例外と混同しない
確認する順番は実時間・区分・単価・既払額
毎日の15分・30分未満を切り捨てる運用は、実際に働いた分の賃金を消すため原則として違法です。まず日ごとの実労働時間を1分単位で記録し、法内残業、法定時間外、法定休日、深夜へ分け、正しい単価と既払額を照合してください。
月合計の例外は、日々の実時間を正確に足した後、法定時間外・法定休日・深夜を各別に集計し、30分未満切り捨てと30分以上切り上げを一体で行う場合だけです。所定内や法内残業へ広げたり、日次切り捨て後の数字へ適用したりはできません。
職場を変えるなら給与計算の透明性も条件に加える
会社へ確認しても勤怠や給与の処理が改善されず、転職を考える場合は、次の求人で給与額だけを見るのではなく、固定残業代の内訳、勤怠の記録単位、残業申請、超過分の支払い、年間休日も確認しましょう。職業訓練後の最初の仕事で優先したい条件は、次の記事で整理しています。


