「SESの客先には迷惑をかけられない」「貸与PCやアカウントを残したまま辞めて大丈夫なのか」。限界でも、ITエンジニアは自社と客先の両方を考えて動けなくなりがちです。私も同じでした。
先に結果を言うと、私は退職代行へ連絡したあと、次の出勤日から職場へ行かず、会社との連絡を第三者に任せられました。最も大きかったのは、法律の抜け道を使えたことではなく、上司とのやり取りから離れ、眠る時間を取り戻せたことです。
ただし、タイトルの「1日で抜け出した」は、雇用契約が連絡当日に必ず終了するという意味ではありません。私の場合は翌日から出社しなかったという体験です。退職日、最終出勤日、有給休暇の扱いは、雇用契約や会社との調整によって変わります。
この記事では、月80〜100時間の残業が続いた当時の状態、退職代行へ連絡した日、翌日以降に起きたこと、ITエンジニアが事前に確認したい貸与物・アカウントを、体験と一般的な確認事項に分けて整理します。
結論|1日で変わったのは「会社との直接連絡」だった
退職代行を使う前の私は、退職手続きのすべてが一日で終わると思っていたわけではありません。ただ、「明日も同じ上司と話し、同じ現場へ行く」ことを止めたかったのです。
| 時点 | 私に起きていたこと |
|---|---|
| 利用前 | 月80〜100時間の残業が続き、終電に間に合うよう駅まで走る生活だった |
| 連絡した日 | LINEで状況を伝え、勤務先・雇用形態・連絡希望日など必要事項を確認した |
| 次の出勤日 | 私は出社せず、勤務先への連絡は退職代行を通す形になった |
| その後 | 会社の書類、貸与物、健康保険・年金、失業給付などは別に整理する必要があった |
退職代行は「退職後の生活まで全部終わらせるサービス」ではありません。会社へ意思を伝える場面を第三者に任せられたことで、私は手続きと体調回復を一つずつ考えられるようになりました。
退職後の書類や役所・ハローワークの順番が不安な場合は、離職票が届く前に全体像を確認しておくと動きやすくなります。

退職代行を使う前の私は、判断する余力がなくなっていた
月80〜100時間の残業と終電が日常だった
新卒で入ったSES系の開発会社では、朝から働き、終電の時刻に合わせて駅まで走る日が続きました。帰宅後はシャワーを浴びて寝るだけ。休日も疲れが抜けず、勉強や転職活動に使う余力は残っていませんでした。
「エンジニアなら若いうちは経験を積むべきだ」「案件の途中で抜けたら客先に迷惑がかかる」と考えるほど、辞める判断は先延ばしになります。しかし、残業が多いことと、将来につながる実務経験を積めることは同じではありません。
体に出た変化を見ても、まだ我慢しようとしていた
当時は気分の落ち込みが続き、医療機関にも通いました。さらに、足のにおいが急に強くなるなど、自分でも理由の分からない体の変化がありました。会議で隣に人が座ることまで気になり、靴下を重ねて出社していました。
退職後、数カ月かけてその状態は落ち着きました。ただし、仕事を辞めたことが医学的な原因だったと断定はできません。ここで伝えたいのは、原因を自分で決めつけることではなく、生活に支障が出る変化を「まだ働ける証拠」で打ち消さないことです。
SESでは「自社と客先の両方に迷惑」がブレーキになる
客先常駐では、雇用主である自社だけでなく、現場のメンバー、リーダー、案件スケジュールまで頭に浮かびます。私は退職を自分だけの問題として考えられず、「代わりが見つかるまで」「区切りのよい時期まで」と先延ばしにしていました。
けれど、人員配置や顧客との契約を管理するのは会社の役割です。引き継ぎに協力できる状態なら対応しても、心身が崩れている人が一人で案件継続の責任まで負う必要はありません。
連絡する前に整理したこと|完璧な引き継ぎは作れなかった
私は十分に準備できる状態ではありませんでした。それでも、退職代行へ伝える情報と、会社へ返す物を分けるだけで話が進みやすくなりました。
退職代行へ伝える情報
- 勤務先の正式名称、所属部署、上司や人事の連絡先
- 正社員・契約社員などの雇用形態と、契約期間の定めの有無
- 次の出勤予定、希望する連絡日、希望する退職時期
- 有給休暇の日数、給与・経費・残業代で確認したいこと
- 自社と客先から借りているPC、入館証、セキュリティキーなど
- 会社から自分へ連絡する場合の希望窓口と、郵送物の送付先
期間の定めがない雇用と有期雇用では確認点が異なります。民法上の原則だけで自分の退職日を決めつけず、雇用契約書と就業規則を確認してください。条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。
限界でもやらないほうがよいこと
- 貸与PCを初期化する、業務ファイルやログを削除する
- ソースコード、顧客情報、認証情報を私物端末へコピーする
- 自社の指示を確認せず、客先へ個人的に退職連絡をする
- 返却方法が決まる前に、貸与物を追跡できない方法で発送する
- 未払い賃金や損害賠償などの争点を、勢いで相手と直接約束する
会社と争いがある場合は、退職代行だけで解決しようとせず、厚生労働省の総合労働相談コーナーや弁護士など、内容に合う相談先を確認してください。相談コーナーは、解雇、雇止め、賃金、いじめ・嫌がらせなど幅広い労働問題を扱っています。
退職代行へ連絡した日から翌日までに起きたこと
LINEでは、きれいな退職理由を書けなかった
私が最初に送ったのは、「もう辞めたい」という短い内容でした。長い経緯を整理して、会社への不満を論理的に説明できる状態ではなかったからです。
その後、勤務先、雇用形態、次の出勤予定、会社への連絡希望などを確認しました。サービスごとに手順は異なりますが、最初の相談時点では、感情を完璧な文章にするより、事実を箇条書きで出すほうが進めやすいと感じました。
翌日から出社せず、上司と直接話さなかった
勤務先への連絡後、私は次の出勤日から職場へ行きませんでした。上司へ自分で電話し、退職理由を説明する場面を避けられたことが、私にとって一番大きな変化でした。
ただし、本人へ電話やメールが来る可能性がゼロになるとは限りません。どの連絡を代行業者へ回し、どの書類や事実確認には本人が対応するかを、申込み前に確認しておく必要があります。
「翌日から出社しない」と「即日退職」は別だった
私の体験では、職場へ行かない状態は翌日から作れました。一方、退職日や有給休暇、欠勤の扱いは、雇用契約と会社側の処理を確認する話です。
「退職代行を使えば全員がその日のうちに雇用終了」「必ず有給をすべて使える」とは言えません。サービスへ相談するときは、最終出勤日、会社へ連絡する日、雇用契約上の退職日を分けて質問してください。
出社を止められても、最終給与や退職後の固定費は残ります。退職日が確定する前に、手元資金で何カ月生活できるかも確認しておくと、その後の判断を急がずに済みます。

ITエンジニアが退職代行を使うときの貸与物・アカウント対応
自社と客先の貸与物を別々に一覧化する
ITエンジニアは、自社PCとは別に、客先PC、入館証、社員証、スマートフォン、VPN機器、セキュリティトークンなどを持っていることがあります。誰から借りた物か分かるように一覧を作り、返却先と期限は書面で確認します。
発送する場合は、梱包前に品目を記録し、追跡できる方法を選ぶと返却済みであることを説明しやすくなります。送料負担や送付先を自己判断せず、勤務先の指示を確認してください。
アカウントやソースコードは触らず、指示を残す
退職の連絡前後に、業務データを削除したり、個人クラウドへ退避したりしてはいけません。自分しか知らない作業状況がある場合は、機密情報を私物へ持ち出さず、会社が指定する方法で最低限の引き継ぎメモを渡します。
MFA端末、パスワード管理、管理者権限などが自分に集中している場合も、勝手にアカウントを消さず、「どの権限を持っているか」「会社側で何を切り替える必要があるか」を伝えます。退職代行へは業務上の秘密そのものではなく、会社に確認してほしい項目を伝えるのが安全です。
体調とお金の確認は、手続きと同時に進める
眠れない、食べられない、動悸が続くなど生活に支障がある場合は、退職手続きだけで解決しようとせず、医療機関や相談窓口につながってください。厚生労働省のこころの耳では、働く人や家族向けに電話・SNS・メールの相談窓口が案内されています。
同時に、家賃、健康保険、年金、住民税、当面の生活費を月単位で整理します。失業給付は退職理由や被保険者期間などで扱いが変わるため、入金日を決めつけて退職後の予算を組まないほうが安全です。
退職後に分かったこと|楽になったが、次の仕事は自動で決まらない
まず必要だったのは、転職活動より睡眠だった
職場へ行かなくなった直後、私はすぐ前向きになれたわけではありません。張り詰めていた感覚がほどけ、疲れが一気に出ました。最初は睡眠と生活リズムを戻し、会社から届く書類を確認するだけで精いっぱいでした。
数カ月たつと、出社中に気になっていた体の変化も落ち着きました。「すぐ転職しなければ」と焦るより、求人を読んで判断できる状態まで回復することが先でした。
ITを続けるか、離れるかは退職後に考え直せた
つらい原因がITの仕事そのものなのか、長時間労働、SESの契約構造、上司、案件との相性なのかは分けて考える必要があります。
- 開発自体は好きなら、働き方や会社を変えてITを続ける
- 経験を活かし、社内SE、運用、ITサポートなど隣接職種を探す
- 基礎から学び直したいなら、独学、民間講座、職業訓練を比較する
- ITから離れたいなら、希望地域の求人を見て必要な技能を逆算する
公的職業訓練は、ハローワークで受講の必要性が認められた求職者を対象に、再就職に必要な技能を学ぶ制度です。制度の全体像は厚生労働省のハロートレーニング案内で確認できます。
IT分野を学び直す場合も、「受講すればエンジニアになれる」ではなく、地域の求人、実務経験の扱い、カリキュラム、就職支援まで確認して選んでください。

振り返って分かる、退職代行を使ってよかった点と注意点
使ってよかったのは、退職を決めても動けない状態を抜けられたこと
- 上司へ自分で退職を切り出す場面を避けられた
- 自社と客先への罪悪感から、いったん距離を取れた
- 翌日も出社する前提を止め、体調と手続きを考える時間ができた
- 会社との連絡経路が整理され、感情的なやり取りを減らせた
使っても残ったのは、書類・お金・キャリアの判断
- 退職日、給与、有給休暇などは個別に確認が必要だった
- 貸与物の返却と、会社から受け取る書類は自分でも管理した
- 健康保険、年金、住民税、失業給付は別の手続きだった
- 次にITを続けるか、別職種へ移るかは自分で決める必要があった
自分で人事へ退職意思を伝えられ、会社と落ち着いて連絡できるなら、退職代行は必須ではありません。一方、伝えようとすると体が動かない、強い引き止めが怖い、何度も話が進まないという状態なら、第三者を挟む選択肢を検討する意味があります。
ITエンジニアの退職代行でよくある質問
本当に1日でSESを辞められますか?
私の場合は、退職代行へ連絡した次の出勤日から職場へ行きませんでした。ただし、雇用契約上の退職日が一日で確定したという意味ではありません。契約期間、有給休暇、会社の処理によって変わるため、「最終出勤日」と「退職日」を分けて確認してください。
客先へ自分で連絡したほうがよいですか?
自己判断で客先へ直接連絡する前に、雇用主である自社と退職代行へ連絡経路を確認してください。客先との契約管理は通常会社側の役割です。引き継ぎが必要な場合も、会社が指定する方法で行います。
貸与PCは初期化して返したほうがよいですか?
勝手に初期化やデータ削除をせず、自社・客先の指示に従ってください。返却先、期限、付属品、発送方法を確認し、送付記録を残します。
未払い残業代や有給休暇も任せられますか?
対応できる範囲は運営主体や契約内容、争いの有無によって異なります。「退職の意思を伝えること」と「会社と交渉すること」「法的請求を行うこと」を分け、申込み前に対応範囲を確認してください。未払い賃金や損害賠償が絡む場合は、行政の労働相談や弁護士への相談も候補です。
退職後、すぐ転職活動を始めるべきですか?
生活費と体調によります。求人を眺めるだけなら早めでも構いませんが、眠れない、文章が頭に入らない状態なら、先に受診や休養、生活費の確認が必要です。職業訓練も含め、回復後に複数の選択肢を比べてください。
まとめ|退職代行は、壊れる前に会社との距離を作る手段だった
私が退職代行を使って得たのは、「すべてが一日で解決した」という結果ではありません。次の出勤日から職場へ行かず、上司との直接連絡から離れ、体調と退職後の生活を考える時間を作れたことです。
ITエンジニアは、客先、自社、案件、貸与PC、アカウントなどを考え、限界でも辞めにくくなります。まずは雇用契約、貸与物、連絡経路、生活費を一枚のメモにまとめてください。自分で話せるなら人事へ伝え、話せない状態なら退職代行、労働相談、医療機関など第三者を使います。
退職後に学び直すか迷う場合は、求人、生活費、訓練期間の3点から、自分に職業訓練が必要かを判断してください。



