退職代行の申込みボタンを前にして、手が止まっていませんか。
「お金を払ってまで辞めて、本当に後悔しないかな」
「こんな辞め方をしたら、次の転職に響くんじゃないか」
「退職代行を使うなんて、逃げだと思われないかな」
そう考えて、何度も画面を閉じてきた人も多いはずです。
先に結論から言います。
退職代行を使って後悔する人はいます。けれど、多くの場合、後悔の原因は「退職代行を使ったこと」そのものではありません。
後悔しやすいのは、次のようなケースです。
- 料金の安さだけで業者を選んだ
- 有給休暇や貸与品の確認をしないまま依頼した
- 怒りや限界の勢いだけで申し込んだ
- 借入金・研修費・損害賠償などのリスクを確認していなかった
- 退職後の生活や次の働き方を考えていなかった
つまり、退職代行で後悔しないために大事なのは、「使うかどうか」だけではありません。
どのタイプの退職代行を選ぶか、何を準備してから申し込むか、辞めたあとにどう立て直すか。
ここまで決めておけば、後悔する可能性はかなり下げられます。
なお、次の仕事が決まっていないまま辞めたい人は、退職後のお金・転職・職業訓練の選択肢も先に見ておくと安心です。

結論|退職代行で後悔する人は「辞め方」より「準備」で失敗している
退職代行は、会社に退職の意思を伝えるための手段です。
自分で退職を切り出せる人なら、無理に使う必要はありません。一方で、退職を伝えると怒鳴られる、引き止められる、退職届を受け取ってもらえない、心身が限界で出社できないという人には、現実的な選択肢になります。
期間の定めのない雇用では、民法627条により、原則として解約の申入れから2週間で雇用が終了します。ただし、雇用契約の内容や個別事情によって扱いが変わる場合があるため、不安がある場合は弁護士などの専門家に確認してください。
大切なのは、退職代行を「逃げ」かどうかで考えすぎないことです。
本当に考えるべきなのは、次の3つです。
- 自分の状況で退職代行が必要か
- 民間・労働組合・弁護士のどれを選ぶべきか
- 退職後のお金とキャリアをどう立て直すか
この3つを整理できれば、「退職代行を使ったこと」ではなく、「もっと早く動けばよかった」と思える可能性のほうが高くなります。
退職代行で後悔する人の共通点5つ
①安さだけで業者を選んだ
退職代行で後悔しやすいのが、料金だけを見て選ぶケースです。
「業界最安値」「1万円台」「追加費用なし」といった言葉は魅力的です。しかし、安さだけで選ぶと、あとで次のような問題が起きることがあります。
- 有給消化の交渉ができなかった
- 会社が拒否したあとに対応してもらえなかった
- 追加料金が発生した
- 運営元の実態がわかりにくかった
- 退職書類の催促まで対応してもらえなかった
特に注意したいのは、民間企業型の退職代行です。
民間企業型は、基本的には「退職の意思を会社に伝える」ことが中心です。退職日、有給休暇、未払い賃金などについて会社と交渉すると、弁護士法72条の非弁行為にあたるおそれがあります。東京弁護士会も、弁護士等でない者が本人を代理して法律的な問題を相手方と話すことは非弁行為だと説明しています。
会社と揉める可能性が少しでもあるなら、料金だけでなく「何ができる運営元なのか」を確認してください。
②有給・貸与品・私物の準備をしていなかった
退職代行は、申し込めばすぐ動いてくれます。
ただし、準備ゼロで依頼すると、退職後に困ることがあります。
最低限、次の5つは確認しておきましょう。
- 有給休暇の残り日数
- 会社から借りているもの
- ロッカーやデスクに残っている私物
- 退職届の提出方法
- 離職票・源泉徴収票など、退職後に必要な書類
有給休暇は、条件を満たす労働者に与えられる権利です。厚生労働省は、年次有給休暇は原則として労働者が請求する時季に与えるものだと説明しています。
たとえば、月給25万円で有給が15日残っている場合、単純計算では次のようになります。
- 月給25万円 ÷ 20営業日 = 1日あたり12,500円
- 12,500円 × 有給15日 = 187,500円
退職代行の費用が3万円前後だったとしても、有給を消化できれば、費用以上の金額を守れる可能性があります。
反対に、有給日数を確認しないまま辞めてしまうと、本来受け取れたはずの賃金を失うことがあります。
③感情的に申し込んでしまった
上司に怒鳴られた直後。理不尽な残業を命じられた夜。もう限界だと思った瞬間。
その勢いで退職代行に申し込む人もいます。
もちろん、パワハラやモラハラがある、体調に異変が出ている、出社しようとすると涙が出るという状態なら、早く離れることを優先して構いません。
ただし、次のような場合は、一晩だけ置いて考えても遅くありません。
- 上司1人だけが原因で、異動で解決する可能性がある
- 一時的な怒りで「辞めたい」と思っている
- 退職後の生活費がまったく見えていない
- 転職先を決めてから辞めたほうが安心できそう
翌朝になっても「やっぱり辞めたい」と思うなら、その気持ちは一時的な衝動ではなく、かなり固まった判断です。
④借入金・研修費・損害賠償リスクを確認していなかった
会社から借入金がある場合や、「短期間で辞めたら研修費を返す」といった誓約書にサインしている場合は、退職代行を使う前に注意が必要です。
労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁じています。厚生労働省の資料でも、労働者の退職の自由を実質的に制限する足止め策を禁止する趣旨だと説明されています。
ただし、「どんな請求でも必ず無効」とまでは言い切れません。
会社が請求してくる可能性はありますし、研修費の内容や契約書の書き方によって判断が分かれることもあります。
次に当てはまる人は、民間企業型ではなく、弁護士型の退職代行を検討してください。
- 会社から借入金がある
- 研修費用の返還誓約書にサインした
- 「辞めるなら損害賠償」と言われている
- 未払い残業代を請求したい
- パワハラやセクハラの慰謝料も相談したい
⑤会社からの直接連絡に対応してしまった
退職代行を使ったあと、会社から本人に電話やLINEが来ることがあります。
そのときに焦って出てしまうと、結局自分でやり取りすることになり、退職代行を使った意味が薄れてしまいます。
労働組合型や弁護士型であれば、会社に対して「本人への直接連絡は控えてください」と伝えてもらえることが多いです。
それでも会社が連絡してくる場合、原則として本人が直接応じる必要はありません。着信履歴やメッセージは証拠として残し、退職代行の担当者に共有しましょう。
退職代行を使うべき人・使わなくていい人
退職代行は便利ですが、すべての人に必要なサービスではありません。
| 退職代行を使うべき人 | 使わなくてもいい人 |
|---|---|
| 退職を伝えると怒鳴られる、脅される | 上司と普通に話し合える |
| 退職届を受け取ってもらえない | 退職届を出せば受理される |
| 有給消化を拒否されている | 有給消化について合意できている |
| 心身が限界で出社できない | 退職日まで勤務できる余裕がある |
| 損害賠償をほのめかされている | 円満退職できそう |
| 人手不足を理由に辞めさせてもらえない | 引き継ぎ期間を相談できる |
「退職代行を使うなんて甘えでは」と悩む人もいます。
しかし、退職の自由があるのに、会社側の圧力で辞められない状況なら、自分を守る手段を使うことは甘えではありません。
特に、眠れない、朝になると吐き気がする、涙が出る、休日も仕事のことが頭から離れないという状態なら、退職方法よりも心身の安全を優先してください。
民間・労働組合・弁護士型の違い
退職代行は、運営元によって対応できる範囲が違います。
| 項目 | 民間企業型 | 労働組合型 | 弁護士型 |
|---|---|---|---|
| 退職意思の伝達 | ○ | ○ | ○ |
| 有給消化の交渉 | × | ○ | ○ |
| 退職日の調整 | × | ○ | ○ |
| 未払い賃金・残業代の請求 | × | △ | ○ |
| 損害賠償請求への対応 | × | × | ○ |
| 裁判対応 | × | × | ○ |
| 向いている人 | 会社と揉めない人 | 有給や退職日を交渉したい人 | 法的トラブルがありそうな人 |
労働組合には、使用者と団体交渉する権利があります。厚生労働省も、労働者が使用者と団体交渉する権利は憲法で保障されていると説明しています。
また、労働組合法第7条では、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否することを不当労働行為として禁止しています。
そのため、会社と有給や退職日の話し合いが必要になりそうな人は、民間企業型ではなく、労働組合型以上を選ぶのが安全です。
一方で、損害賠償、未払い残業代、慰謝料、退職金などの法的トラブルがある場合は、弁護士型を選んだほうが安心です。
退職代行の費用は高い?有給消化まで含めて考える
退職代行の費用を見ると、「2万円〜5万円以上も払うのは高い」と感じるかもしれません。
ただし、有給休暇が残っている場合は、費用だけで判断しないほうがよいです。
たとえば、月給25万円で有給が15日残っている人なら、有給消化分は約18.7万円です。
| パターン | 有給消化 | 退職代行費用 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 自力退職・有給なし | 0円 | 0円 | 有給を使えない可能性 |
| 自力退職・有給あり | 187,500円 | 0円 | もっとも得。ただし交渉できる場合のみ |
| 民間企業型 | 交渉不可の可能性 | 要確認 | 会社が拒否すると弱い |
| 労働組合型 | 交渉可能 | 要確認 | 費用を有給分で相殺しやすい |
| 弁護士型 | 交渉可能 | 要確認 | 法的トラブルに強い |
料金相場はサービスごとに変わるため、公開前に各サービスの公式料金を確認してください。
大切なのは、「一番安いところ」ではなく、「自分の状況に必要な対応ができるところ」を選ぶことです。
退職代行を使う前の準備リスト
申し込む前に、次の項目を確認しておきましょう。
- 有給休暇の残り日数を確認した
- 会社の貸与品をリスト化した
- 私物をできるだけ持ち帰った
- 退職届の提出方法を確認した
- 会社から借入金がないか確認した
- 研修費用の返還誓約書がないか確認した
- 未払い残業代や退職金の有無を確認した
- 退職後の健康保険・年金手続きを調べた
- 離職票が必要だと伝える準備をした
- 退職後1〜3か月の生活費をざっくり計算した
すべて完璧でなくても構いません。
ただ、有給・貸与品・お金のトラブルだけは、事前に整理しておくと後悔しにくくなります。
退職代行の利用の流れ
STEP1:無料相談をする
LINEやメールで相談し、退職希望日、雇用形態、有給の残り、会社とのトラブルの有無を伝えます。
STEP2:料金と対応範囲を確認する
総額、追加料金、返金保証、会社が拒否した場合の対応、有給交渉の可否を確認します。
STEP3:正式に依頼する
支払い後、会社名、部署、上司の連絡先、退職理由、貸与品などを共有します。
STEP4:退職代行が会社へ連絡する
退職代行が会社へ退職の意思を伝えます。この時点から、本人が会社と直接やり取りしなくてよい状態を目指します。
STEP5:退職届・貸与品を郵送する
退職届、社員証、制服、パソコン、鍵などを郵送で返却します。追跡できる方法で送ると安心です。
STEP6:退職書類を受け取る
離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証などを受け取ります。
雇用保険の手続きでは、事業主は被保険者でなくなった日の翌日から一定期間内に資格喪失届などをハローワークへ提出する必要があります。離職票がなかなか届かない場合は、退職代行経由で確認するか、ハローワークへ相談しましょう。
退職後の生活と次のキャリアの立て直し方
退職代行は、会社を辞めるための手段です。
本当に大事なのは、辞めたあとに生活をどう整えるかです。
退職後すぐに必要な手続き
- 国民健康保険の手続き:退職後、他の健康保険に入らない場合は、14日以内に市区町村の窓口で手続きが必要です。
- 国民年金の手続き:会社を辞めて厚生年金から外れる場合、退職日の翌日から14日以内に国民年金への切り替え手続きが必要です。
- 失業給付の確認:基本手当を受けるには、ハローワークで求職申込みを行い、就職する意思と能力がある「失業の状態」と認められる必要があります。
なお、2025年4月1日以降に自己都合退職した場合、給付制限は原則1か月です。ただし、5年間に複数回の自己都合退職がある場合などは3か月になることがあります。また、一定の教育訓練を受ける場合は、給付制限が解除される制度もあります。
次が決まっていない人は職業訓練も選択肢
「辞めたい。でも次がない」
この不安が強いと、退職の決断はかなり重くなります。
そんな人は、転職活動だけでなく、職業訓練も選択肢に入れてください。
ハロートレーニングは、仕事を探している人が職業スキルや知識を身につけるための公的な職業訓練制度です。受講料は原則無料で、テキスト代などは自己負担です。
雇用保険を受給できる人は、基本手当を受けながら訓練を受講できる場合があります。雇用保険を受給できない人でも、要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金を受けられる可能性があります。
退職代行を使うかどうかで悩んでいる人の中には、「辞めたい」よりも「辞めたあとが怖い」という不安のほうが大きい人もいます。
その場合は、退職後の選択肢を先に知るだけでも気持ちが軽くなります。

「今の仕事を辞めたら終わり」ではありません。
学び直し、職業訓練、転職活動、失業給付、休養。使える制度を知っておけば、退職は終わりではなく立て直しのスタートになります。
退職代行に関するよくある質問
Q1. 退職代行を使ったら会社から訴えられますか?
退職代行を使っただけで、すぐに訴えられる可能性は高くありません。
ただし、会社の貸与品を返さない、業務上の重大な損害を与えた、借入金や誓約書があるといった場合は、個別にトラブルになる可能性があります。
「損害賠償を請求する」と言われている人は、最初から弁護士型を検討してください。
Q2. 退職代行を使っても有給は消化できますか?
有給休暇は労働者の権利です。
ただし、有給消化を会社と交渉する必要がある場合、民間企業型では対応が難しいことがあります。会社が拒否しそうなら、労働組合型または弁護士型を選びましょう。
Q3. 即日退職は本当にできますか?
法律上、期間の定めのない雇用では、原則として退職の申入れから2週間で雇用が終了します。
ただし、会社が合意する場合や、有給休暇を使う場合は、実質的にその日から出社しなくてよい形を取れることがあります。
体調不良やハラスメントなど、やむを得ない事情がある場合は扱いが変わることもあるため、心配な場合は弁護士に相談してください。
Q4. 退職代行を使ったことは転職先にバレますか?
通常、履歴書や職務経歴書に退職方法を書く必要はありません。
前職の会社が転職先へ退職代行の利用を伝えることは、個人情報の扱いとして問題になる可能性があります。
面接で退職理由を聞かれた場合は、「一身上の都合」「体調やキャリアを見直すため」など、事実に反しない範囲で簡潔に答えれば十分です。
Q5. 退職代行を使った後、失業給付は受けられますか?
退職代行を使ったかどうか自体は、基本手当の受給可否を決める直接の条件ではありません。
重要なのは、雇用保険の加入期間、離職理由、求職の意思、働ける状態かどうかです。最終的な判断はハローワークが行います。
まとめ|退職代行で後悔しないために
退職代行で後悔する人の多くは、退職代行を使ったことではなく、準備不足や業者選びでつまずいています。
後悔しないために、最後に次の項目を確認してください。
- 安さだけで選ばない
- 交渉が必要なら労働組合型以上を選ぶ
- 法的トラブルがありそうなら弁護士型を選ぶ
- 有給休暇の残り日数を確認する
- 貸与品と私物を整理する
- 借入金や研修費の誓約書を確認する
- 退職後の健康保険・年金・失業給付を確認する
- 次が決まっていないなら職業訓練も調べる
退職代行は、人生を投げ出すためのものではありません。
限界の職場から離れて、生活と働き方を立て直すための手段です。
「辞めたあと、どうするか」まで考えられていれば、退職代行を使うことへの不安は小さくなります。
今の職場に残ることだけが、正解ではありません。
安全に辞めて、次の選択肢を取り戻すことも、立派な前向きな判断です。
つらいときの相談先
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
- 労働条件相談ほっとライン:0120-811-610
※本記事は一般的な情報提供であり、医療・法律上の個別判断を行うものではありません。体調不良が続く場合は医療機関へ、法的トラブルがある場合は弁護士・労働局・労基署などの窓口へ相談してください。

