退職金・企業年金とは?退職前に確認する受取時期・税金・一時金と年金の違い

退職金・中退共・建退共

退職を考えると、「自分にも退職金が出るのか」「企業年金は退職したら受け取れるのか」「一時金と年金のどちらを選べばよいのか」が気になります。会社から届く書類に複数の制度名があると、お金の受取時期も分かりにくくなるでしょう。

退職金・企業年金を確認するときは、制度名、自分の受給条件、受け取れる時期を先に整理します。同じ退職に関係するお金でも、退職後に支払われる一時金と、将来の年齢まで受け取れない年金資産があります。一時金か年金かによって、税金や国民健康保険料の扱いも変わります。

この記事では、退職前に確認したい基本を整理します。勤続年数、パートの対象範囲、DBの選択書、国保、昔の企業年金について詳しく知りたい場合は、それぞれの説明から関連記事へ進めます。

退職金と企業年金は、まず制度名と支払元で見分ける

退職金は、勤務先の制度などに基づいて退職時に支給されるお金です。一度にまとめて受け取る「退職一時金」のほか、企業年金を使って退職後の給付を準備している会社もあります。

企業年金は、公的年金に上乗せする給付を用意する制度です。現在の主な制度には、確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(企業型DC)があります。「企業年金」という名前でも、条件によって一時金として受け取る場合があります。

会社の退職一時金・DB・企業型DCの違い
制度・給付 金額の決まり方 退職前に確かめること
会社の退職一時金 勤務先の退職金規程などにある計算方法で決まる 対象者、勤続条件、退職理由による違い、支払日
確定給付企業年金(DB) 加入期間などに基づく給付の算定方法が、あらかじめ決まっている 本人に選べる一時金・年金・移換等、受取開始時期、選択期限
企業型確定拠出年金(企業型DC) 拠出された掛金と、本人が選ぶ運用の結果などによって決まる 資産残高、受給可能年齢、退職後の移換先と手続き

勤務先で退職金制度と企業年金を併用している場合は、会社が説明する「退職金総額」に企業年金分が含まれているかを聞きます。制度名が2つあるからといって、提示額の倍をもらえるとは判断しません。会社独自の支給分と企業年金分を、支払元・給付名・金額に分けて書き出しましょう。

書類に中退共などの退職金共済の名前がある場合も、会社から直接支払われる分との関係を確認します。制度の説明資料だけでなく、自分の加入期間や給付の計算書を見ることが出発点です。

勤続年数と雇用形態だけで「必ずもらえる」と決めない

会社に退職金制度を必ず設ける一般的な法律上の義務はありません。一方、労働協約・就業規則・労働契約などで支給条件が明確に定まり、労働者が請求できる退職金は、条件に従って支払う必要があります。

退職前には、自分に適用される退職金規程・年金規約で、対象となる社員区分、必要な勤続・加入期間、自己都合退職時の扱いを確認します。会社に制度があることと、自分がその給付の対象であることは、別々に確かめましょう。

「勤続3年以上」は、全国共通の支給ルールではない

求人票などの「退職金制度あり・勤続3年以上」は、その制度に勤続年数の適用条件があるという案内です。すべての会社が3年で支給する制度ではなく、3年になった日に入金される意味でもありません。

入社日・本採用日・正社員登用日などのどこから数えるか、休職期間や雇用区分の変更をどう扱うかは、自分の規程で確認します。「3年目」と満3年も区別し、退職予定日を伝えて支給対象になるかを聞いてください。

勤続年数の数え方や、求人票から分からない支給条件の確認方法は、次の記事で整理しています。

パート・契約社員は、対象範囲と待遇差の理由を確認する

パート・契約社員だから必ず退職金がない、長く働いたから必ず出る、と一律には判断できません。まず自分の雇用区分に適用される制度を確認します。

正社員には退職金があり自分は対象外の場合は、退職金の目的と、仕事内容・責任・配置変更の範囲などに応じた待遇差の理由を確認できます。2026年10月1日適用の改正同一労働同一賃金ガイドラインでも退職手当の考え方が明確化されていますが、パート全員への一律支給が決まったわけではありません。

正社員だけに退職金がある場合や、長期勤続でも対象外と説明された場合の確認点は、次の記事をご覧ください。

受取時期は、退職日・受給開始年齢・手続き期限を分ける

会社の退職一時金は、支給規程と請求手続きを確認する

退職一時金が退職日当日や最終給与の日に支払われるとは限りません。勤務先の規程で支払時期を確認し、今回の退職予定日ならいつ振り込まれるかを人事・退職金担当に聞きます。

金額とあわせて、必要書類、提出先、本人の請求が必要か、書類に不備があった場合の連絡先も確認してください。退職後の生活費には、未確認の見込額ではなく、支給条件と入金予定を確かめた金額を使います。

DBは、自分に選べる方法と返送期限を先に見る

DBの退職時の書類には、「脱退一時金」「移換」「繰下げ」などが並ぶ場合があります。脱退一時金は本人がまとめて受け取る方法、移換は他の年金制度へ資産を移す方法、繰下げは元の制度の規約に従って将来の受取まで待つ方法です。

すべての人が3つを選べるわけではありません。加入期間・年齢・規約から、自分が選べる方法と受取時期を確認します。DBの繰下げを、公的年金の繰下げ受給と同じ増額率で計算しないようにしてください。

DBから企業年金連合会の通算企業年金へ移換する申出は、原則として加入資格を喪失した日から1年以内です。ただし、自分の受給開始年齢との関係などで期限が早まる場合があります。選択書の返送期限も別に確認し、書類到着日から1年あるとは考えないことが大切です。

選択書を受け取った人は、次の記事で、用語・本人の選択肢・移換先・期限の読む順番を確認できます。

企業型DCは、退職しただけでは自由に現金化できない

企業型DCの老齢給付金は原則60歳からの受給で、通算加入者等期間などによって開始時期が遅くなる場合があります。例外的な給付を除き、若い年齢で会社を辞めたことだけで、資産を退職後の生活費として引き出せるわけではありません。

受給前に退職する人は、転職先の企業型DCやiDeCoなど、条件に合う移換先を確認します。資格喪失後6か月以内に必要な移換等の手続きを行わない場合、資産が自動移換されることがあり、運用停止や手数料などの問題が生じます。

会社や運営管理機関には、資格喪失日、自分の最終手続き期限、提出書類、受付・移換完了を確認する方法を聞いてください。DBの「1年」とDCの「6か月」を取り違えず、それぞれの案内で管理します。

一時金と年金は、総額だけでなく使える時期と条件を比べる

一時金はまとまった額を受け取り、年金は定期的に受け取る方法です。併用を選べる制度もありますが、選択できる割合や変更の条件は規約・給付案内で確認します。

「一時金の額」と「年金の年額」を、そのまま大きさだけで比べないでください。年金が何歳から何年間支払われるか、終身か有期か、死亡したときに残る給付があるかまで、同じ表へ整理します。

一時金と年金の受取り方を比べる確認表
比較する点 一時金で確認すること 年金で確認すること
受け取れる時期 今回の支払予定日、請求に必要な期間 受給開始年齢と初回支払日、支払月
金額の前提 税引前の総額と、税引後の受取見込額 年額・月額と、金額が変わる条件
将来の支払条件 受取後の生活費を自分でどう配分するか 終身か有期か、保証期間と死亡時の給付
税金・保険料 退職所得控除、ほかの一時金との関係 ほかの年金と合算する所得、加入する医療保険等への影響
費用・変更 請求後に取り消せるか、選択を変えられる期限 管理費・手数料、途中で一時金へ変更できる条件

例えば、退職から年金の受取開始まで数年空く人は、その間の生活費を預貯金や別の収入で賄えるかを確認します。年金を選んだ資産が、必要なときに自由に引き出せるとは限りません。

逆に、一時金を受け取った場合は、直近の支出に使う分と、将来の生活費として残す分を分けて考えます。一時金が必ず有利、年金なら必ず安心という結論を先に置かず、制度の条件と自分の入金・支出予定を合わせて比較しましょう。

税金と国保は、一時金・年金・ほかの所得を分けて確認する

一時金は退職所得、年金は公的年金等の雑所得が基本

会社の退職金や、退職に伴うDBの一時金、DCの老齢給付の一時金は、基本的に退職所得として扱います。DBで本人が負担した掛金がある場合などは、その扱いも支払者へ確認します。

DB・DCなどを年金形式で受け取る分は、公的年金等に係る雑所得です。老齢基礎年金・老齢厚生年金など、対象となるほかの年金と合計し、公的年金等控除を使って所得を計算します。支払元ごとに同じ控除を何度も使えるわけではありません。生命保険の個人年金保険などは、別の扱いになります。

退職所得控除の基本と、複数の一時金の確認

退職所得控除の基本的な計算は、次のとおりです。税務上の勤続年数は1年未満の端数を切り上げますが、これは会社の支給資格を判定する「勤続3年以上」などの数え方とは別です。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数。計算結果が80万円に満たない場合は80万円。
  • 勤続20年超:800万円+70万円×20年を超える勤続年数。

例えば、ほかの給付との調整がない通常の計算で、勤続20年なら控除額は800万円、25年なら1,150万円です。これは受取額の例ではなく、税金の計算に使う控除額です。一般的な退職所得は、収入から控除額を差し引いた残額の2分の1を基に計算しますが、短期勤続の退職手当や役員の退職手当などには例外があります。

同じ年に会社とDBなどから退職所得となる一時金を受け取る場合、支払元ごとに控除を満額使えるとは限りません。年を分けても、受取順・受取年・勤続や加入期間の重複によって調整があります。2026年1月1日以後に受けたDC老齢一時金については、その後に退職金を受け取る場合の調整対象期間が拡大しています。

退職金、企業年金、iDeCo等の一時金を受け取った年と金額、対応する期間をまとめ、過去の「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を支払者へ提示してください。受取年をずらせば必ず税金が減るとは考えず、自分の条件で計算してもらうことが必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」は支払者へ提出する

この申告書を提出しない場合、支給額に対して20.42%の所得税等が源泉徴収され、本人の確定申告で精算します。20.42%が全員の最終的な税率という意味ではありません。勤務先・基金などから受け取った様式について、提出先と支払前の提出期限を確認しましょう。

申告書を提出して適切に源泉徴収された場合は、原則として退職金についての確定申告は不要です。ただし、医療費控除などのために確定申告をするときは、退職所得も記載します。受取後の源泉徴収票は、給与分と退職所得分を区別して保管してください。

退職所得の一時金と、年金形式では国保への影響が違う

国民健康保険料の所得割の算定では、退職所得は対象に含めません。一方、企業年金を年金形式で受け取り、公的年金等の雑所得が生じる場合は、算定対象になります。年金収入の全額を、そのまま保険料に足すという意味ではありません。

また、一時金が対象外でも、前年の給与やほかの所得、世帯の条件などによって国保はかかります。退職金の税金が0円だから国保も0円とは判断せず、受取方法ごとの所得資料を用意し、住所地の自治体で試算を確認しましょう。

退職金を受け取った翌年の国保、前年給与が残る年度、年金を合算する計算例は、次の記事で確認できます。

昔の会社の企業年金は、記録の管理先を調べる

今の退職準備を機に、過去の勤務先の企業年金が気になった人は、会社ごとに旧社名・勤務期間・当時の氏名・残っている通知書をまとめます。書類が見つからなくても、元勤務先の人事・退職者窓口に、当時の制度名と本人の退職時の処理を確認できます。

基金名が分かれば基金や承継先へ、企業年金連合会からの「移換完了通知書」「年金の引き継ぎのお知らせ」があれば連合会へ確認します。連合会の記録照会は、連合会が預かっている記録を調べるもので、すべての会社の企業年金を一括検索するものではありません。

退職時に会社から入金があった記憶だけで、企業年金もすべて受け取り済みとは決めないようにします。どの制度の、どの期間の給付かを確認し、記録が見つかったら、将来の受取開始時期や請求手続きまで聞いてください。

旧社名しか分からない、会社が合併した、連合会で記録が見つからないなどの場合の調べ方は、次の記事にまとめています。

退職前に、制度ごとの確認メモを完成させる

「退職金はいくらですか」だけでは、対象条件や入金日、企業年金の手続きが残ることがあります。制度ごとに1行ずつ整理し、分からない欄を担当窓口へ聞きましょう。

退職金・企業年金の確認メモ
メモする欄 確認して残す内容
制度名・窓口 会社の退職一時金、DB、DCなどの正式名称、支払元と担当窓口
自分の受給条件 対象の雇用区分、勤続・加入期間、退職理由、適用する規程
金額・選べる方法 税引前の額、計算の前提、一時金・年金・移換・繰下げの対象範囲
使える時期 一時金の入金予定、年金の開始年齢と初回支払、受給前の引出し制限
税金・保険料 所得区分、他の給付との調整、申告書、国保等の試算に使う資料
期限・提出物 資格喪失日、選択書・移換の期限、提出先、必要な添付書類
手続き後の確認 受付・入金・移換完了の確認方法、源泉徴収票、退職後の住所変更先

会社へ確認する文面の例です。自分の退職予定日と、分かっている制度名を入れて使えます。

退職に向けて、私に適用される退職金・企業年金について確認したいです。退職予定日は○年○月○日です。制度ごとの支給対象、算定に使う期間、見込額と支払時期を教えてください。企業年金については、私が選べる受取方法、資格喪失日、選択・移換の期限、必要書類と提出先も確認したいです。該当する規程と個別の計算書・手続案内を確認できますでしょうか。

回答を受けたら、口頭の説明だけでなく、規程・計算書・手続案内と照合します。提出書類の控えを残し、返送して終わりにせず、受付や入金・移換完了まで確認してください。

退職金・企業年金は、制度の名前を知るだけでなく、自分がいつ、どの形で受け取れるかを確認することが大切です。まず受給条件と期限を整理し、そのうえで税金・保険料と退職後の生活費を合わせて、受取り方を検討しましょう。

参考資料

公式資料の確認日:2026年10月4日。本人の支給条件・金額・期限は、勤務先や基金等の適用規程・個別案内で確認してください。