求人票の福利厚生欄に「退職金制度あり(勤続3年以上)」とあると、3年働けば必ず退職金をもらえるのか、自己都合で辞めても対象なのかが気になります。
「勤続3年以上」は、退職金制度が適用される勤続年数の条件を示す表記です。3年になった日にお金が振り込まれるという意味ではありません。退職時に、自分が対象者であり、規程上の勤続年数などの支給条件を満たしているかを確認します。
一方、条件を満たした退職金まで会社の気分で支払うか決められるわけではありません。この記事では、求人票の読み方から、勤続年数・金額・支払時期の確認方法まで整理します。
「退職金制度あり・勤続3年以上」の意味
ハローワークの求人入力案内では、労働協約や就業規則などで退職金制度を定めている場合に「あり」を選び、勤続年数に適用基準がある場合はその年数を入力することになっています。
そのため、「あり」と「勤続3年以上」は、制度の有無と、その制度を適用するための年数を分けて読めば分かりやすくなります。
| 求人票の記載 | 読み取れること | 記載だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 退職金制度あり | その求人に適用される退職金制度があるという案内 | 支給額、計算方法、退職理由による違い |
| 勤続3年以上 | 適用に勤続年数の条件がある | 算定の起点、対象期間、端数の扱い |
| 退職金共済に加入 | 外部の共済制度を利用する旨の案内 | 制度名、本人の加入時期、掛金、会社独自制度との関係 |
求人票は制度の概要です。応募する雇用形態や職種に適用される条件を、退職金規程や採用時の説明で確かめましょう。別職種の求人や会社全体の採用ページにある制度が、そのまま自分に適用されるとは限りません。
退職金制度を設ける義務と、定めた退職金を払う義務は別
会社に退職金制度を必ず設ける一般的な法律上の義務はありません。しかし、労働協約・就業規則・労働契約などで支給条件が明確に決まり、労働者が請求できる退職金は、労働基準法上の賃金に当たります。
「制度を設けるかは会社による」ことと、「支給条件を満たしても払わなくてよい」ことは違います。求人の表記から具体的な規程を確認し、自分が条件を満たすかを判断することが大切です。
「3年目」と「勤続3年以上」は違う|数え方を確認する
一般に「3年目」は、2年を終えて次の1年に入った段階を指します。勤続2年6か月の人は3年目でも、期間としてはまだ3年に達していません。
ただし、実際の退職金では、会社の規程にある算定方法を確認する必要があります。「入社から何となく3年くらい」では判断せず、起算日と退職予定日を示して聞きましょう。
| 確認項目 | 採用担当者・人事に聞くこと |
|---|---|
| 起算日 | 入社日、本採用日、正社員登用日など、どの日から数えるか |
| 試用期間 | 退職金の勤続年数に含まれるか。共済加入の開始時期とは別か |
| 雇用形態の変更 | 契約社員・パートから正社員になった場合、以前の期間を通算するか |
| 休職などの期間 | 対象外になる期間があるか。支給資格の判定と金額計算で扱いが違うか |
| 年・月・日の端数 | 満年数で判定するか、月数で計算するか、端数をどう扱うか |
| 退職予定日 | その日付で退職した場合、制度上は何年何か月になるか |
上の表は、除外や通算が必ず行われるという意味ではなく、確認すべき項目です。支給対象になるかを判定する年数と、金額を計算する年数が同じかも聞いておくと、取り違えを防げます。
試用期間があるだけで、一律に3年から差し引かない
試用期間も雇用されている期間ですが、退職金の算定方法や外部制度への加入時期は別途確認が必要です。「試用期間が3か月あるから必ず3年3か月必要」「必ず入社日から全部数える」と、求人の一文だけでは決められません。
たとえば中退共の規程例には、本採用となった月に共済契約を結ぶ例があります。これは共済への加入時期の例であり、すべての会社で試用期間を退職金の勤続年数から除くというルールではありません。
実際に退職日を検討している人は、最終出勤日と雇用契約上の退職日も区別し、会社に両方の日付を伝えて確認してください。数日の違いで条件への該当が変わりそうなときは、退職日を決める前に書面で回答をもらいましょう。
3年働いたらいくら?勤続年数だけでは金額は決まらない
「勤続3年以上」は支給額の表示ではありません。「3年なら基本給3か月分」「最低でも数十万円」など、全国共通の額が決まっているわけではありません。
退職金の計算には、基本給と勤続年数別の支給率を使う方法などがあります。厚生労働省のモデル就業規則にも計算例がありますが、その表がすべての会社に適用されるわけではありません。
確認したいのは、次の3点です。
- 計算の土台:退職時の基本給、別に定めた基準額、掛金の額など、何を基にするか。
- 支給率など:勤続年数や退職理由に応じて、どの数字を掛けるか。
- 本人の見込み額:今回の雇用区分で3年・5年勤続した場合、どう計算されるか。
「基本給×支給率」の架空例で見る
仮に「退職時の基本給×支給率」で計算し、基本給22万円、勤続3年での支給率が1.0なら、試算は22万円です。支給率が0.5なら11万円になります。
どちらも説明のために置いた架空の条件で、相場や実際の規程ではありません。また、「勤続3年だから22万円×3」とは計算しません。年数をどのように計算へ反映するかは、その制度によります。
月給に手当や固定残業代が含まれている場合、月給全額が退職金の計算基礎になるとは限りません。「何を基準額にするか」を確認してから試算してください。
自己都合退職でも対象か、支給率が変わるか
自己都合退職であることだけで、必ず退職金がなくなるわけではありません。会社独自の制度では、自己都合・会社都合・定年などで条件や計算方法が異なる場合があるため、自分が想定する退職理由の欄を確認します。
「定年まで働いた人の退職金例」と「勤続3年で自己都合退職した場合の金額」を同じものとして比較しないことが大切です。募集時に金額例を示されたら、勤続年数・退職理由・役職などの前提も聞きましょう。
退職金制度・退職金共済・企業型DCは分けて読む
求人票の退職金欄と、企業年金・福利厚生欄には関連する制度が並ぶことがあります。名称の数だけ受取額が増えるとは限りません。
| 制度・記載 | 確認するポイント |
|---|---|
| 会社独自の退職一時金 | 適用される退職金規程、勤続条件、計算方法、会社からの支払時期 |
| 退職金共済 | 中退共などの制度名、本人の加入日・掛金納付期間、請求先 |
| 企業型DC(確定拠出年金) | 加入対象、会社の掛金、受給できる時期、離転職時の資産移換 |
「退職金制度あり」と「退職金共済加入」が両方あっても、会社と共済から別々に二重でもらえるとは限りません。共済を使って会社の退職金制度を実施する場合や、会社が差額を支給する設計もあります。両者が内数・外数のどちらなのかを確認します。
中退共は、会社の在籍年数と掛金納付月数を区別する
中退共の退職金額は、掛金月額と納付月数などに基づいて決まります。入社日と加入日が違えば、会社での勤続年数と中退共の納付月数も一致しないことがあります。
中退共では、原則として掛金納付月数が11か月以下だと退職金は支給されず、12〜23か月では掛金総額を下回る額になります。ただし、通算や他制度からの引継ぎなどによる例外があります。これは中退共のルールであり、求人の「勤続3年以上」と同じ基準ではありません。
また、中退共からの退職金は、事業主都合か自己都合かだけでは金額が変わりません。会社独自の支給率と混同しないようにしてください。
企業型DCは、退職直後に自由に受け取れる現金とは限らない
企業型DCの老齢給付金は原則60歳以降の受給で、加入期間などによって開始年齢が変わります。例外的な給付を除き、若い年齢で退職しただけでは自由に現金化できません。
企業型DCを退職金制度の一部としている会社では、「退職時に支払われる一時金」と「年金資産として移す部分」を分けて聞きます。退職後の移換手続きは、こちらの記事で整理しています。

面接・内定時に聞くこと|退職金規程の確認例
応募時は制度の概要を確認し、選考が進んだら、自分の採用区分に適用される条件を確認するとスムーズです。「退職金はありますか」だけで終わらせず、求人の記載を示して聞きましょう。
求人票の「退職金制度あり・勤続3年以上」について確認させてください。今回の採用区分では、勤続年数は入社日から数え、試用期間も含むという理解でよいでしょうか。
あわせて、自己都合退職の場合の支給条件・計算方法と、退職金共済を利用する制度か、会社から支給する制度かを教えていただけますでしょうか。該当する規程や制度の説明資料を確認できますと幸いです。
内定時には、説明を聞いた日と内容をメモし、通知書・契約書や適用規程と照合します。退職金制度に定めがある場合、その適用範囲、決定・計算・支払方法、支払時期などは採用時に明示する事項です。
応募先の規程全文を必ず受け取れるとは限りませんが、自分に適用される部分や制度概要について説明を求めることはできます。不明な点は、入社を決める前に具体的に確認してください。
すでに勤めていて、退職日を考えている場合
退職金の支給条件を確認したいです。入社日は○年○月○日、本採用日は○年○月○日で、退職予定日は○年○月○日です。
この日付で退職する場合、退職金規程上の勤続年数、支給対象となるか、自己都合退職の場合の計算方法・見込み額・支払予定日を教えてください。
人事の回答と規程の内容が食い違う場合は、どの条項を基に判断しているかを聞きます。特に「3年になると思う」という自己判断だけで、退職後の生活費に組み込まないようにしましょう。
いつ支払われる?対象なのに支給されないとき
「勤続3年以上」は、入金の時期を示す表記ではありません。退職日の当日、最終給与と同じ日、退職後の指定日など、実際の支給時期は規程や制度で確認します。
退職金は、あらかじめ支給期日が特定されていれば、その期日に支払う扱いが認められています。「退職したから必ず7日以内に振り込まれる」とは限りません。
退職前に、支給額だけでなく、必要書類・請求先・支払予定日を確認してください。外部の共済制度では、会社の退職手続きと、本人が行う請求手続きが別になることもあります。
支給予定日を過ぎても入金されない、規程では対象に見えるのに断られた場合は、次の順で整理します。
- 求人票、労働条件通知書、退職金規程、会社の説明メールなどを保存する。
- 対象外・減額とする条項、勤続年数の計算、支払予定日を会社へ確認する。
- 共済を使っている場合は、制度の窓口へ加入・請求状況を確認する。
- 会社の説明で解決しないときは、労働基準監督署や総合労働相談コーナーへ資料を持って相談する。
不支給・減額の条項がある場合でも、その適用が妥当かは具体的な事情によります。「会社がそう言ったから」と結論づけず、根拠を確認してください。
退職金制度ありの求人は、給与と支給条件も並べて比較する
退職金制度の有無は、長く働く会社を選ぶときの確認項目です。ただし、「制度あり」という表示だけで、待遇全体がよいとは判断できません。
- 今回の採用区分に適用されるか。
- 何年から支給対象になるか。どこから勤続年数を数えるか。
- 3年・5年など、自分が考える在籍期間でどのように計算されるか。
- 自己都合退職の場合も対象か。共済・企業年金との関係はどうか。
- 月給・賞与・労働時間・休日を含めて、働き続けられる条件か。
一覧から希望職種・勤務地・雇用形態で絞り、個別求人の勤続条件を読んでください。検索条件に該当することと、自分が退職するときの支給額が決まることは別です。
比較では、見込みが不明な退職金を大きな金額として足さず、毎月・毎年の給与と退職時の条件を分けてメモします。予定年収の内訳をそろえる方法は、次の記事で確認できます。

よくある質問
勤続2年11か月でも、3年に切り上げてもらえますか?
一律にはいえません。支給資格を判定する年数と金額計算の端数処理を確認する必要があります。金額計算で端数を丸める規程があっても、支給条件の「3年以上」まで同じ処理になるとは限りません。
「勤続年数不問」なら、短期間で辞めても必ずもらえますか?
勤続年数の適用基準を設けていないという表記ですが、支給額やほかの条件までは分かりません。対象となる雇用区分、計算方法、共済加入の有無などを確認してください。
退職金制度がない会社は法律違反ですか?
制度がないことだけで違法にはなりません。一方、支給条件が定められ、その条件を満たす退職金を支払わない問題は別です。制度の有無と、支給義務のある金額の未払いを分けて考えます。
参考資料
情報確認日:2026年9月25日。計算・質問文は説明用の例です。実際の支給資格、勤続年数、支給額は勤務先の適用規程と利用する制度を確認してください。
- ハローワークインターネットサービス「求人情報の入力方法について」:退職金制度の有無と適用勤続年数の記載方法。
- 茨城労働局「退職金はいくら支払う?」:制度の設置と、規程などで支給条件を定めた退職金の支払義務。
- 厚生労働省「モデル就業規則(令和7年12月)」(PDF):第8章の支給要件、計算方法、支払時期の規程例。
- 中退共「退職金規程を作成したいのですが、ひな型はありますか?」:共済加入時期、会社の制度との関係、勤続年数計算の例。
- 中退共「退職金」:掛金納付月数と給付額、短期間の場合の扱い。
- 中退共「退職理由により退職金額は変わりますか?」:自己都合・事業主都合と給付額の関係。
- 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」:企業型DCの受給時期と離転職時の資産移換。
- 厚生労働省「労働条件の明示」:退職手当の定めがある場合の明示事項。
- 沖縄労働局「労働相談事例 退職・解雇Q2」:あらかじめ定めた退職金支給期日と労働基準法第23条の関係。


