再就職手当が振り込まれた後に会社を辞めると、「全額を返さないといけないのでは」「残っていた失業保険も消えたのでは」と不安になります。
再就職手当を正しい内容で申請し、支給決定を受けたのであれば、その後に退職したという理由だけで自動的に返還になるわけではありません。次に確認するのは返還ではなく、元の基本手当を再開できるか、新しい受給資格ができているか、元の受給期間満了日を過ぎていないかの3点です。
ただし、再就職した事実や雇用条件について虚偽の申告をしていた場合は別です。また、まだ再就職手当を申請中で支給決定前に退職した場合も、支給後の退職と同じ扱いだと決めつけず、すぐに申請先へ連絡してください。
| 今の状況 | 最初に確認すること | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 正しく受給した後に退職 | 元の受給期間・残日数・新しい受給資格 | 退職だけを理由に自動返還とはならない |
| 短期間で退職し、新しい受給資格がない | 元の受給期間満了日前か | 再就職手当相当日数を除いた残日数を再開できる場合がある |
| 再就職先で新しい受給資格を得た | 被保険者期間と離職理由 | 原則として新しい受給資格で手続きする |
| 申請内容に事実と違う点がある | 申請先のハローワークへ申告 | 不正受給や過払いの確認が必要 |
公式確認:厚生労働省の「基本手当、再就職手当等Q&A」Q44は、再就職手当を受給した後でも、支給残日数があり、受給期間満了日前に再び失業した場合は基本手当を受給できると案内しています。以下は2026年7月17日時点の制度に基づく整理で、個別の支給可否と残日数は管轄のハローワークが判定します。
結論:返還・元の残日数・新しい受給資格を分ける
再就職手当を受け取った後の退職では、次の3つを一つに混ぜないことが重要です。
- 返還の判定:申請時に支給要件を満たし、事実どおり申告していたか
- 元の受給資格:前の会社を辞めたときの受給期間満了日と残日数
- 新しい受給資格:再就職先で雇用保険に何か月加入し、どの理由で離職したか
「3か月で辞めたから返還」「1年働かなかったから返還」と、在職月数だけで結論は出せません。一方で、元の基本手当を再開できる日数が残っていても、受給期間満了日を過ぎれば原則として受け取れません。返還の不安だけに気を取られてハローワークへの再求職申込みが遅れる方が、実務上は大きな問題になりやすいところです。
再就職手当をもらった後に辞めても、原則として返還ではない
再就職手当の支給要件には、「1年を超えて勤務することが確実であると認められる職業に就いたこと」があります。ここで見られるのは、就職時点の雇用契約や更新見込みなどです。「実際に必ず1年以上勤め、途中で辞めたら返す」という事後の在職保証ではありません。
そのため、就職時には長く働く予定だったものの、仕事内容が説明と違った、体調や家庭事情が変わった、職場環境が合わなかった、会社から解雇されたといった理由で後から退職しても、退職した事実だけで、正しく受給した再就職手当が取り消されるわけではありません。
厚生労働省のQ&Aも、受給後に再離職した人について「返還してから基本手当を受ける」とはせず、再就職手当分を反映した残日数があれば基本手当を再開できる仕組みを案内しています。ハローワークの「再就職手当のご案内」にも、支給後に離職して失業状態となった場合、再就職手当分を除く残日数分を受給できる場合があると明記されています。
「1年以上の雇用見込み」と「1年間在籍する義務」は違う
無期雇用、または契約期間が1年以下でも更新があり、1年を超えて働く見込みが客観的にあったなら、途中退職したことだけで申請時の事実が嘘になるわけではありません。
反対に、就職した時点から3か月だけの契約で更新予定がなかった、最初からすぐ辞めるつもりだった、実際と異なる雇用期間を申請書に書いたといった場合は、そもそもの支給要件に関わります。「短期離職したから」ではなく、「申請時の事実と支給要件に問題がなかったか」が分かれ目です。
返還の可能性があるのは、不正な申告などがあった場合
雇用保険法では、偽りその他不正の行為によって失業等給付を受けた場合、給付の全部または一部の返還に加え、不正受給額の2倍以下の納付を命じることができると定めています。いわゆる「3倍返し」と説明されることがあるのは、この返還と追加納付を合わせた場合です。
- 実際には就職していないのに就職したと申告した
- 就職日、雇用期間、事業主との関係などを意図的に偽った
- 基本手当を受け続けるため、就職や就労を申告しなかった
- ハローワークから事実確認を求められたのに、虚偽の資料を出した
これは、正しく申請した人が試用期間中に退職したケースとは別の話です。申請内容に誤りがあったと気づいた場合は、放置せず、申請したハローワークへ事情をそのまま伝えてください。
根拠:雇用保険法第10条の4、ハローワークインターネットサービス「不正受給の典型例」
残っている失業保険は「再就職手当相当日数」を引いて考える
再就職手当を受けた後は、就職直前に残っていた基本手当の日数が、そのまま全部残るわけではありません。再就職手当として支払われた額に相当する日数は、基本手当を受けたものとみなされます。
現在の再就職手当は、就職前日の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら70%、3分の1以上なら60%が基本です。したがって、概念上の残日数は次のように見ます。
再離職後に残り得る日数 = 就職直前の支給残日数 − 再就職手当の支給により基本手当を受けたとみなされる日数
180日の人が再就職手当を受けた例
所定給付日数180日の人が、基本手当を30日分受けた後、150日を残して再就職したとします。150日は180日の3分の2以上なので、再就職手当の給付率は70%です。
| 計算の段階 | 日数 |
|---|---|
| 所定給付日数 | 180日 |
| 就職前に基本手当を受けた日数 | 30日 |
| 就職直前の支給残日数 | 150日 |
| 再就職手当で受給済みとみなされる日数 | 150日×70%=105日 |
| 再離職後に残り得る日数 | 150日−105日=45日 |
この例では、再就職手当を返して150日へ戻すのではなく、再就職手当105日分を受給済みとみなし、45日が残る考え方です。東京ハローワークの雇用保険受給資格者向け資料にも同じ180日・残45日の例が掲載されています。
ただし、45日を必ず全部受け取れるとは限りません。元の受給期間満了日までの暦日が少なければ、満了日を過ぎた分は原則として支給されないためです。また、就業促進定着手当も受けている場合は、その手当によって基本手当を支給したとみなされる日数も残日数から差し引かれます。
基本手当を再開できるかは「新しい受給資格」で分かれる
再就職先を辞めた後は、まず新しい基本手当の受給資格ができているかをハローワークが確認します。本人が「元の残りを使いたい」「新しい方を選びたい」と自由に選ぶ制度ではありません。
| 判定 | 扱い | 確認する書類・日付 |
|---|---|---|
| 新しい受給資格を得ている | 原則、新しい離職に基づく受給資格で基本手当を受ける。元の受給資格は消滅 | 再就職先の離職票、被保険者期間、離職理由 |
| 新しい受給資格を得ていない | 元の受給期間内かつ残日数の範囲で再開できる場合がある | 元の受給資格者証、元の受給期間満了日、再就職先の離職証明 |
新しい受給資格の目安
基本手当の受給資格は、原則として離職前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。倒産・解雇等の特定受給資格者や、雇い止めなど一定の特定理由離職者は、離職前1年間に6か月以上が目安となります。
ただし、月数は単純な在籍月数ではありません。離職日から1か月ごとに区切り、賃金支払基礎日数が11日以上ある月、または11日未満でも賃金支払いの基礎となった労働時間が80時間以上ある月を、原則として1か月と数えます。以前の基本手当や再就職手当等の算定に使われた期間をもう一度使うこともできません。「11か月と20日働いたから12か月扱い」と自己判断せず、離職票を提出して確認します。
公式確認:東京ハローワーク「求職者給付に関するQ&A」で、被保険者期間を数える11日・80時間の基準を確認できます。
失業保険を一度受けた後の加入期間の数え方は、こちらの記事に分けています。

新しい受給資格がないなら、元の残日数を再開する
再就職先を数週間や数か月で退職し、新しい受給資格を得ていない場合は、元の受給資格へ戻る可能性があります。条件は、元の基本手当の受給期間内であること、再就職手当などを反映した支給残日数があること、働く意思と能力があり、再び求職活動をする失業状態にあることです。
厚生労働省Q&Aでは、再求職の申込みをした日から受給再開と案内しています。退職日にさかのぼって自動的に再開するわけではありません。書類の到着を何週間も待つ前に、退職日の翌日以降、できるだけ早く管轄のハローワークへ連絡してください。
元の受給期間満了日を過ぎると、残日数があっても受け取れない
基本手当の受給期間は、原則として最初の離職日の翌日から1年間です。再就職中もこの期間は進みます。再就職手当を受け取ったから1年間が最初から始まり直すわけでも、再就職先を辞めた日から1年間に延びるわけでもありません。
たとえば、元の受給期間満了日が8月31日で、再就職先を8月20日に退職した場合、残日数が45日あっても、通常は45日を受け終えるだけの期間が残っていません。再求職申込みが遅れるほど、認定対象になり得る日も減ります。
公式確認:厚生労働省Q&AのQ11は、受給期間を原則として離職日の翌日から1年間とし、期限後は所定給付日数を受け終わっていなくても支給できないと案内しています。
倒産・解雇等による再離職では、受給期間が延びる場合がある
再就職手当を受けた後、元の受給期間内に倒産・解雇等の一定の理由で再離職し、元の満了日では残日数を受け切れない場合、受給期間が延長される特例があります。自己都合退職なら自動的に使える特例ではありません。
離職理由の判定と延長日数には個別確認が必要です。会社から渡された離職票の理由が実態と違う場合は、退職勧奨の記録、解雇通知、雇用契約書、やり取りの記録などを持参してハローワークへ申し出てください。
公式確認:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、北海道ハローワーク「受給中に就職して受給期間内に再び離職したときは」
退職後の手続きは、離職票を待ち続けずこの順番で進める
1.退職日と離職理由が分かる書類を確保する
会社に、雇用保険の離職票を発行してもらいます。短期就労で新しい受給資格がない場合でも、退職した事実を確認する資料が必要です。雇用保険に加入していた場合は「離職票-1、2」または「雇用保険資格喪失確認通知書」、未加入の場合は「離職状況証明書」が案内されています。
2.退職日の翌日以降、ハローワークで再求職申込みをする
住居所を管轄するハローワークへ行き、「再就職手当を受給した会社を退職した。元の受給期間と残日数、新しい受給資格の有無を確認したい」と伝えます。元の雇用保険受給資格者証または受給資格通知も持参してください。
厚生労働省Q&Aでは、退職を証明する書類がまだない場合は後日提出も可能としています。離職票が届かないことを理由に、再求職申込みそのものを先延ばしにしないでください。
3.どちらの受給資格を使うか判定してもらう
窓口では、再就職先の被保険者期間、離職理由、元の満了日、再就職手当相当日数を確認します。新しい受給資格があれば新しい資格、なければ元の資格の残りという順で整理されます。
4.指定された失業認定日に求職活動を申告する
手続きをしただけで残日数分が一括振込されるわけではありません。再び働く意思と能力があり、求職活動をしていることについて失業認定を受けます。元の待期や給付制限がまだ終わっていない特殊なケースでは、その未経過期間が影響することがあります。新しい受給資格に基づく自己都合退職なら、新しい離職理由に応じた待期・給付制限の判定を受けます。
| 持参すると確認が速いもの | 見る場所 |
|---|---|
| 元の雇用保険受給資格者証・受給資格通知 | 所定給付日数、支給残日数、受給期間満了年月日 |
| 再就職手当支給決定通知書 | 支給額、支給決定の内容 |
| 再就職先の離職票-1・2 | 離職日、被保険者期間、離職理由 |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 契約期間、更新、週所定労働時間 |
| 離職理由を示す記録 | 解雇・退職勧奨・雇い止めなどの実態 |
| 本人確認書類・通帳等 | 窓口から指定されたもの |
離職票が届かない場合の会社確認と相談手順は、こちらに分けています。

退職理由ごとに、特に注意する点
試用期間中に自分から辞めた
正しく再就職手当を受けた後なら、試用期間中の自己都合退職だけで自動返還とはなりません。新しい受給資格がなければ、元の満了日と残日数を確認します。自己都合のため倒産・解雇等を対象とする受給期間延長特例は通常期待できません。満了日が近い人ほど、翌日以降すぐの再求職申込みが重要です。
会社から解雇された・会社が倒産した
新しい受給資格を得ているなら、被保険者期間6か月以上で対象となる可能性を含め、新しい離職票で判定されます。新しい受給資格がなく元の資格へ戻る場合も、受給期間延長特例の対象になり得ます。口頭で「明日から来なくていい」と言われた場合は、退職届を急いで書かず、解雇理由証明書や会社とのやり取りを保存してください。
契約満了・雇い止めになった
契約満了がすべて会社都合になるわけではありません。更新の約束、過去の更新回数、本人が更新を希望していたかなどで離職理由が判定されます。離職票の離職理由欄を確認し、実態と異なる場合は異議があることをハローワークへ伝えます。
病気やけがで、今すぐ働けない
基本手当は「すぐ働ける状態」で求職している人の給付です。病気やけがで当面働けない場合は、再求職申込みをすれば直ちに基本手当を受けられるとは限りません。30日以上働けない見込みなら、一般の受給期間延長など別の手続きが関係するため、診断書等を準備して給付窓口へ相談してください。
再就職手当を申請中に退職した場合は、支給後と分けて連絡する
ここまでの説明は、再就職手当の支給決定を受け、正しく受給した後に退職したケースが中心です。申請書を出したものの、まだ支給決定や振込前に退職した場合は、審査中の事実関係が変わっています。
退職したことを申請先へすぐ伝え、申請がどう扱われるか、再求職申込みをいつ行うかを確認してください。自分の判断で「どうせ不支給だろう」と連絡を止めたり、反対に「申請時は在籍していたから必ず支給される」と決めつけたりしないことが安全です。
よくある疑問を3つだけ確認
再就職手当をもらって1か月で辞めたら全額返還ですか?
1か月で退職したという理由だけで全額返還にはなりません。就職時点で支給要件を満たし、申請内容が事実どおりだったかが重要です。また、自分の希望で手当を返し、就職直前の支給残日数へ戻す仕組みでもありません。新しい受給資格は通常まだできていないため、元の受給期間内か、再就職手当相当日数を除いた残日数があるかを確認してください。
再就職先を自己都合で辞めると、また給付制限がありますか?
新しい受給資格ができている場合は、新しい離職理由に基づいて待期や給付制限が判定されます。新しい受給資格がなく元の資格を再開する場合は、元の待期・給付制限の経過状況が確認されます。どちらの受給資格になるかを先に判定してもらう必要があります。
再就職手当を受ける前に戻れるなら、申請しない方がよかったですか?
退職後の結果だけを見て判断はできません。申請しなくても、再就職中に元の受給期間は進みます。また、就職後は失業状態ではないため、申請しなかった残日数が自動的に振り込まれるわけでもありません。これから申請する段階で損得を比較したい場合は、別記事で給与・残日数・3年要件を整理しています。

まとめ:返還を心配する前に、満了日と再求職申込みを確認する
再就職手当を正しく受給した後に会社を辞めても、退職したことだけで自動的に返還になるわけではありません。不正な申告があった場合とは切り分けて考えます。
退職後は、元の雇用保険受給資格者証で受給期間満了日を確認し、再就職先の離職票を準備します。新しい受給資格があれば新しい資格、なければ元の資格の残日数を使えるか、ハローワークで判定を受けてください。
最優先は、退職日の翌日以降できるだけ早く再求職申込みをすることです。離職票がまだ届いていなくても先に相談できます。「返還通知が来るまで待つ」「書類が全部そろうまで何もしない」ではなく、満了日が来る前に給付窓口へ状況を伝えましょう。


