再就職手当の申請書を出した後、支給決定を待っている間に再就職先を辞めると、「申請は自動的に取り消されるのか」「振込前なら手当はもらえないのか」「失業保険をいつから再開できるのか」と不安になります。
結論からいうと、再就職手当の申請後に退職しても、退職した事実だけで申請が自動的に消えるわけではありません。厚生労働省の2026年8月版業務取扱要領は、再就職手当の支給対象者が手当を受給する前に離職し、新しい基本手当の受給資格を得ていない場合でも、本人が申請を希望するときは、まず再就職手当を支給し、その相当日数を引いた残日数で基本手当を再開する取扱いを示しています。
ただし、支給が確定したという意味ではありません。入社時点で8つの支給要件を満たしていたかを審査したうえで、支給または不支給が決まります。退職したら申請先のハローワークへすぐ連絡し、退職日の翌日以降は別途、再求職の申込みをしてください。
この記事では、2026年8月31日時点の公式情報をもとに、申請受理後・支給決定後・振込後の違い、失業給付の再開、残日数の計算、必要書類を順番に解説します。
結論|申請後の退職は「審査」と「失業給付の再開」を同時に進める
厚生労働省「雇用保険業務取扱要領(就職促進給付)」は、「再就職手当の支給を受ける前に離職した者の取扱い」を定めています。新しい受給資格が発生していない人が再就職手当の申請を希望する場合、先に手当を支給し、その後、最終的な残日数の範囲で基本手当を支給する流れです。
| 現在の段階 | 再就職手当 | すぐ行うこと |
|---|---|---|
| 申請書を提出後・審査中 | 自動取消ではない。入社時の条件を審査して支給・不支給を決定 | 退職を申請先へ連絡し、退職翌日以降に再求職を申し込む |
| 支給決定通知後・振込前 | 支給決定後の退職だけを理由に返還する必要はない | 決定内容を確認し、再求職を申し込む |
| 振込後 | 正しい申請なら退職だけで返還とはならない | 手当相当日数を引いた残日数を確認 |
| 不支給決定 | 再就職手当は支給されない | 不支給理由と、元の基本手当の残日数を確認 |
重要なのは、再就職手当の審査結果を待つことと、現在の失業を届け出ることは別の手続きだという点です。「振込されるまで何もしない」と、基本手当を再開できる日が後ろへずれるおそれがあります。

支給決定前・振込前・振込後は何が違う?
申請受理後・支給決定前|退職を伝えて審査を続けてもらう
申請書を提出しても、その場で支給が確定するわけではありません。厚生労働省の基本手当・再就職手当Q&Aは、申請書の受理後に審査を行い、支給の可否を判断すると案内しています。
審査中に辞めた場合は、申請先へ就職日・退職日・退職理由を伝えます。退職を隠したまま審査を待つのではなく、事実関係を更新してください。厚生労働省の業務取扱要領上、受給前に離職した支給対象者への取扱いが用意されているため、短期離職だけを理由に自分で申請を取り下げる必要はありません。
支給要件は、入社時点で1年を超えて勤務する見込みがあったか、雇用保険の加入条件を満たしていたか、前職との関係、待期、就職経路、支給残日数などから判定されます。最初から更新なしの短期契約だった、事業主証明が実態と違うなどの場合は不支給になる可能性があります。
支給決定通知後・振込前|退職だけで決定が消えるわけではない
厚生労働省の業務取扱要領では、再就職手当は支給決定をした日の翌日から起算して7日以内に支給するとされています。支給決定通知書が届いてから口座へ入るまで、数日のずれが生じることがあります。
佐賀労働局の2026年版受給資格者向け資料も、支給決定日からおおむね1週間程度で指定口座へ入金されると案内しています。申請書を出した日ではなく、審査後の支給決定日から入金までの目安です。
ハローワーク門真の公式案内も、再就職手当は支給決定後に退職しても返還する必要はないと案内しています。したがって、すでに正しい内容で支給決定を受けているなら、「振込前に辞めた」という事実だけで返還扱いになるわけではありません。
ただし、通知が届いた日と支給決定日は同じとは限りません。封筒を受け取った日や口座の入金日だけで判断せず、支給決定通知書の記載とハローワークの処理状況を確認してください。
振込後|手当相当日数を引いて失業給付を再開する
再就職手当が支給されると、手当額を基本手当日額で割った日数分について、基本手当を受給したものとみなされます。再就職直前に残っていた日数が、そのまま全部復活するわけではありません。
ハローワーク神戸の公式案内では、再就職手当等を受けた場合、その支給日数分を差し引いた範囲で基本手当を再開すると説明しています。
申請後に辞めても再就職手当の対象になり得る理由
判定の中心は入社時点の雇用条件
ハローワーク上野の現行Q&Aは、再就職手当を申請する前に離職した場合でも申請可能で、支給要件は入社時点の契約を基準にすると案内しています。申請後の退職でも、まず確認されるのは採用時の労働条件通知書、雇用契約書、更新見込み、雇用保険加入などです。
「1年を超えて勤務することが確実」とは、絶対に1年間辞めてはいけないという意味ではありません。入社時には無期雇用だった、または契約更新により1年を超えて働く見込みが客観的にあったものの、後から仕事内容・体調・家庭事情・職場環境などが変わって退職することはあります。
申請時から短期離職が決まっていた場合は別
入社時から3か月で終了する更新なしの契約だったのに「1年を超える見込み」と申告した、雇用保険へ加入しない条件なのに加入予定と記載した、実際とは違う就職日を記載した場合などは、支給要件や申請の正確性に関わります。
ハローワークインターネットサービスの不正受給案内は、就職・就労の事実を申告しない、虚偽の申告をするなどの例を示しています。短期離職そのものと、偽りの申請は分けて考えてください。
退職したら支給決定を待たずに再求職を申し込む
基本手当は退職日に自動再開しない
基本手当の再開は、退職日にさかのぼって自動的に始まるわけではありません。厚生労働省Q&AのQ44は、再求職の申込みをした日から受給再開になると案内しています。
たとえば9月1日に退職し、9月20日まで審査結果を待ってから再求職を申し込むと、原則として9月2日から19日までが自動的に基本手当の対象になるわけではありません。退職日の翌日以降、働く意思と能力があり仕事を探せる状態なら、できるだけ早く受給手続きをしたハローワークへ行ってください。
審査状況は本人確認書類を持って窓口で確認する
厚生労働省Q&Aは、申請後の実際の審査状況について、申請したハローワークへ来所し、本人確認書類を提示して確認するよう案内しています。個人情報保護のため、電話では答えられないとされています。
再求職の申込みへ行くときに、「再就職手当は申請済みで審査中」「○月○日に再就職先を退職した」と最初に伝え、同じ窓口で処理の順番を確認すると行き違いを防ぎやすくなります。

失業給付は何日残る?180日の計算例
所定給付日数180日の人が、基本手当を60日受けた後、120日を残して再就職した例で比べます。120日は180日の3分の2以上なので、再就職手当の支給率は70%です。
| 項目 | 日数・金額 |
|---|---|
| 所定給付日数 | 180日 |
| 再就職前に受けた基本手当 | 60日分 |
| 就職直前の支給残日数 | 120日 |
| 再就職手当相当日数 | 120日×70%=84日 |
| 再離職後に残り得る日数 | 180日-60日-84日=36日 |
北海道ハローワークの再離職案内も、再就職手当を受給した場合は手当に相当する日数を基本手当の支給残日数から差し引くと説明しています。
不支給なら84日を支給済みとは扱わない
審査の結果、再就職手当が不支給になり、手当が支払われていないなら、再就職手当84日分を受給済みとみなす処理は行われません。この例では、再就職前の残り120日を基礎に、元の受給期間内で何日受けられるかを確認します。
ただし、受給期間は原則として最初の離職日の翌日から1年間で、再就職中も進みます。残日数が120日あっても、受給期間満了日まで40日しかなければ、120日すべてを受けられるとは限りません。
支給決定済みなら入金前でも相当日数を見込む
支給決定通知書が出ており、入金だけがまだの場合は、再就職手当が支給される前提で残日数を確認します。「通帳にまだ入っていないから120日残っている」と考えず、支給決定日と再就職手当相当日数を窓口で確認してください。
新しい受給資格ができた場合は元の残りを使わない
再就職先で十分な被保険者期間を得てから離職した場合は、原則として新しい離職に基づく受給資格で手続きします。元の受給資格と新しい受給資格を自由に選べる制度ではありません。
| 再就職先での状態 | 基本手当の扱い |
|---|---|
| 新しい受給資格なし | 元の受給期間内・調整後の残日数内で再開できる可能性 |
| 原則12か月以上加入し、新しい受給資格あり | 新しい離職票で新しい受給資格を申請 |
| 倒産・解雇等で6か月以上加入し、新しい資格あり | 新しい離職理由と被保険者期間で申請 |
ハローワーク神戸は、再就職先で12か月以上、倒産・解雇等なら6か月以上働いて新しい受給資格を得た場合は、その資格で手続きし、以前の受給資格は使えないと案内しています。
申請後に退職した人の必要書類
退職翌日以降の相談では、次の書類を手元にある範囲で持参します。
- 雇用保険受給資格者証または受給資格通知
- 本人確認書類
- 再就職手当支給申請書の控えや提出日が分かるもの
- 支給決定通知書または不支給通知書(届いている場合)
- 再就職先の離職票-1・2
- 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書
- 雇用契約書、労働条件通知書、退職証明書
- 通帳または入金状況を確認できるもの
再就職先で雇用保険に加入していなかった場合は、ハローワーク所定の離職状況証明書を使います。厚生労働省Q&Aでは、離職したことを証明する書類がまだない場合、後日提出も可能と案内しています。離職票が届くまで再求職の申込み自体を何週間も遅らせないでください。
申請先へ伝える内容|そのまま使える相談文
窓口では、申請・退職・再求職の3つの日付を分けて伝えます。
○月○日に再就職し、○月○日に再就職手当支給申請書を提出しました。支給決定通知はまだ届いていません。○月○日に再就職先を退職したため、退職の届出、再就職手当の審査状況、元の基本手当の再開について確認したいです。
支給決定通知が届いている場合は、「決定日は○月○日、入金はまだ」と付け加えます。入社時の契約期間、更新条項、雇用保険加入日、退職理由も説明できるようにしておくと、再就職手当の審査と新しい受給資格の確認が進みやすくなります。
再就職手当の結果を待つ間に次の仕事をどう考える?
短期離職後は、急いで同じ条件の求人へ応募するより、仕事内容・勤務時間・通勤・雇用形態・教育体制のどこにミスマッチがあったかを一度整理することが大切です。
すぐ次の会社へ応募するか、失業給付を受けながら職業訓練で技能を補うかは、受給期間満了日、残日数、希望職種、生活費で判断が変わります。再求職の申込み時に、基本手当の再開だけでなく、受講できる訓練と給付延長の可能性も同時に相談できます。

申請後の退職でやってはいけないこと
退職を申請先へ伝えずに振込だけ待つ
申請後に雇用状況が変わったなら、申請先へ伝えてください。正しく支給されるケースでも、退職と再求職の処理が遅れると基本手当の再開が遅れます。
会社に入社時と違う証明を頼む
退職後だからといって、1年を超える雇用見込みを作るために契約内容を書き換えてもらってはいけません。審査の基準になるのは、実際の入社時契約と採用時の客観的な見込みです。
支給決定前だから申請を自己判断で取り下げる
厚生労働省の取扱要領には、再就職手当を受給する前に離職した支給対象者の処理があります。自分で対象外と決めず、退職の事実を報告したうえで支給可否を判定してもらってください。
離職票が届くまで再求職を申し込まない
離職を証明する書類は後日提出できる場合があります。再求職申込日より前へ基本手当が自動的にさかのぼるわけではないため、書類待ちで来所を遅らせないことが重要です。
再就職手当の申請後退職でよくある質問
Q1.申請した翌日に辞めたら必ず不支給ですか?
必ずではありません。入社時点で支給要件を満たしていたかを審査します。退職を申請先へ報告し、自己判断で申請を取り下げず、結果を確認してください。
Q2.支給決定前に辞めたことは会社から伝わりますか?
雇用保険の資格喪失などで確認される可能性があります。伝わるかどうかで判断せず、自分から申請先へ正確に申告してください。
Q3.振込前に辞めたら返還手続きが必要ですか?
正しい内容で支給決定を受けた後なら、退職だけを理由に返還する必要はないと公式案内があります。決定前か決定後かは支給決定通知書で確認します。
Q4.支給決定通知書が届く前に入金されることはありますか?
郵送と振込の時期が前後して見える場合があります。通帳だけで判断せず、申請したハローワークで支給決定日と処理状況を確認してください。
Q5.申請後の審査状況は電話で聞けますか?
厚生労働省Q&Aでは、本人確認書類を持って申請先へ来所して確認するよう案内しています。個人情報保護のため、電話では回答できないとされています。
Q6.退職した日から失業保険は再開しますか?
自動再開ではありません。原則として、退職翌日以降にハローワークで再求職の申込みをした日から再開します。
Q7.離職票がまだなくても再求職を申し込めますか?
離職を証明する書類は後日提出できる場合があります。受給資格者証と手元の退職証明・契約書等を持ち、先に窓口へ相談してください。
Q8.再就職手当と残りの失業保険を両方満額でもらえますか?
もらえません。再就職手当が支給されると、その手当に相当する60%または70%の日数を基本手当の支給残日数から差し引きます。
Q9.再就職手当が不支給なら残日数は減りますか?
手当が支給されなければ、再就職手当相当日数を受給済みとみなす控除は行われません。ただし、元の受給期間満了日までに受けられる日数には限界があります。
Q10.再就職先で1年働いて辞めた場合も元の残りを使いますか?
再就職先で新しい基本手当の受給資格を得た場合は、原則として新しい資格で手続きし、元の受給資格は使いません。単純な在籍期間ではなく被保険者期間で判定します。
Q11.申請後に解雇された場合は扱いが変わりますか?
再就職手当の審査とは別に、新しい受給資格、離職理由、元の受給期間を確認します。再就職手当受給後の倒産・解雇等では、一定の受給期間延長特例が使える場合もあります。
Q12.短期離職後でも職業訓練を相談できますか?
相談できます。再求職の申込み時に、元の基本手当の残日数、受給期間満了日、希望職種を伝え、応募できる訓練と給付の扱いを確認してください。

まとめ|申請後に辞めたら、決定を待たず退職報告と再求職を行う
再就職手当の申請後に再就職先を辞めても、申請が自動的に消えるわけではありません。入社時点で支給要件を満たしていたかを審査し、支給または不支給が決まります。
支給決定前なら退職を申請先へ報告して審査結果を確認します。支給決定後なら、振込前に退職しても、正しい決定を退職だけで返還する必要はありません。手当が支給された場合は、手当相当日数を引いた残日数で基本手当を再開します。
最も避けたいのは、振込を待って再求職の申込みが遅れることです。退職日の翌日以降、受給資格者証と手元の離職資料を持ってハローワークへ行き、「再就職手当は申請済み」「再就職先を退職した」「基本手当を再開したい」の3点を同時に伝えてください。
※本記事は2026年8月31日時点の公的情報を確認して作成しています。個別の支給決定、残日数、新しい受給資格は管轄のハローワークが判定します。

