休職したまま復職せず退職すると、「最後の数か月は給料0円だから、失業保険もほとんどもらえないのでは」と心配になります。
結論からいうと、完全無給の休職月が、そのまま0円の1か月として失業保険の計算へ入るとは限りません。賃金日額は原則として、賃金支払基礎日数が11日以上ある月、必要な月数を満たさない場合は80時間以上ある月を数え、そのうち最後の6か月に支払われた賃金総額を180で割って計算します。
そのため、1か月すべて休職し、賃金支払基礎日数も労働時間も0なら、通常はその月を6か月の一つに数えず、休職前の賃金月までさかのぼります。一方、休職に入った月に11日以上勤務した、または80時間以上働いた場合などは、賃金が少ない月でも計算対象になることがあります。
もう一つ重要なのは、退職時点で働ける状態かどうかです。体調が回復し、すぐ求職できるなら基本手当の手続きへ進めます。まだ働けないなら、基本手当をすぐ受けるのではなく、受給期間延長を先に検討します。
この記事では、2026年8月31日時点の公式情報をもとに、給料0円の月の扱い、月給30万円の計算例、離職票-2の確認欄、会社の記載が違うときの訂正方法まで解説します。
結論|給料0円の休職月は通常6か月から外れ、休職前へさかのぼる
雇用保険法第17条は、賃金日額を「被保険者期間として計算された最後の6か月間」の賃金総額を180で割って算定すると定めています。ここでいう被保険者期間は、同法第14条により、原則として賃金支払基礎日数11日以上の月です。12か月または6か月の受給要件を満たせない場合には、80時間以上の月も数えます。
| 休職月の状態 | 賃金日額の6か月に入る可能性 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 1か月すべて無給、基礎日数0日・0時間 | 通常は入らない | さらに前の要件を満たす月へさかのぼる |
| 月の途中まで働き、基礎日数11日以上 | 入る | その月に支払われた低い賃金も総額に含まれる |
| 基礎日数10日以下だが80時間以上 | 条件により入る | 11日基準だけで必要月数を満たせない場合に80時間基準を使う |
| 有給休暇を使った日がある | 入り得る | 有給休暇の日は賃金支払基礎日数に含む |
| 休業手当が支払われた日がある | 入り得る | 休業手当の対象日も基礎日数に含む |
| 健康保険の傷病手当金だけを受給 | 傷病手当金自体は賃金に入らない | 事業主が労働の対償として払う賃金とは別の保険給付 |
したがって、「退職前6か月のうち4か月が無給だったから、2か月分の給料を180で割る」とは限りません。離職票-2に休職前までさかのぼった6つの完全月が記載されているかを確認することが先です。

失業保険の「直前6か月」はカレンダー上の6か月とは限らない
賃金支払基礎日数11日以上の月を数える
ハローワークインターネットサービスの基本手当案内は、被保険者期間を、離職日から1か月ごとに区切り、賃金支払基礎日数が11日以上または賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月として説明しています。
たとえば8月31日に退職し、5月から8月まで完全無給で休職していた場合、単純に3月から8月の給料を見るのではありません。5~8月が被保険者期間として数えられなければ、4月以前へさかのぼり、要件を満たす最後の6か月を探します。
11日ある月が足りない場合に80時間基準を見る
東京ハローワークの被保険者Q&Aは、離職証明書の完全月で⑪欄が11日以上の月を6か月確保できない場合、80時間以上の月を1か月として算定すると案内しています。
80時間基準は、本人が好きな方を選ぶ制度ではありません。まず11日基準で確認し、それだけでは必要月数に届かない場合に使います。10日しか出勤していなくても、1日8時間で合計80時間なら対象になる可能性があります。
休職入りの月は低い賃金のまま入ることがある
注意したいのは、休職中の完全無給月より、休職へ入った最初の月です。たとえば月給30万円の人が月途中まで勤務し、欠勤控除後の給料が10万円になっていても、基礎日数11日以上なら、その10万円の月が最後の6か月の一つに入ります。
「休職月は全部除外される」わけではありません。各月の給料額だけでなく、⑪欄の日数と⑬欄の休職・欠勤の記載をセットで見る必要があります。
月給30万円で休職後に退職した場合はいくら?
2026年8月1日以降の基本手当日額は、賃金日額と離職時の年齢から計算します。厚生労働省の2026年8月改定資料では、60歳未満で賃金日額が5,480円以上13,490円以下の場合、賃金が高くなるほど給付率が80%から50%へ下がる計算式を用います。
例1|完全無給の4か月を除き、休職前の月給30万円を6か月使う
休職前の6か月がすべて月給30万円で、休職後の4か月は基礎日数0日・0時間だった例です。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 計算対象の賃金 | 30万円×6か月=180万円 |
| 賃金日額 | 180万円÷180=10,000円 |
| 基本手当日額(60歳未満の概算) | 約6,307円 |
| 28日分の概算 | 約17万6,596円 |
| 90日分の概算 | 約56万7,630円 |
このケースでは、退職直前4か月の給料が0円でも、休職前の6か月が使われるため、賃金日額は10,000円です。実際の認定期間には就労日、不認定日、待期、給付制限などがあるため、28日ごとに必ず表の全額が振り込まれるという意味ではありません。
例2|休職入りの給料10万円が1か月含まれる
休職に入った月が基礎日数11日以上で、月給30万円の月が5か月、欠勤控除後10万円の月が1か月入る例です。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 計算対象の賃金 | 30万円×5か月+10万円=160万円 |
| 賃金日額 | 160万円÷180=約8,888円 |
| 基本手当日額(60歳未満の概算) | 約5,976円 |
| 28日分の概算 | 約16万7,328円 |
| 90日分の概算 | 約53万7,840円 |
例1より基本手当日額は約331円低くなります。つまり、影響が出やすいのは完全無給月そのものではなく、11日・80時間基準を満たした低賃金の途中月です。
例3|給与は0円でも有給休暇や休業手当がある
北海道ハローワークの離職証明書記載案内では、⑨欄・⑪欄の基礎日数に、有給休暇と休業手当の対象日を含めるとされています。
口座への手取りが0円でも、社会保険料の精算や控除によって0円になっただけなら、離職票上の賃金まで0円とは限りません。給与明細の差引支給額ではなく、控除前の支給項目と離職票⑫欄を比べてください。
傷病手当金は失業保険の賃金計算に入る?
健康保険の傷病手当金は事業主の賃金ではない
雇用保険法第4条は、賃金を、労働の対償として事業主が労働者へ支払うものと定義しています。健康保険から支給される傷病手当金は、事業主が労働の対償として払う給料ではないため、賃金日額の賃金総額には含めません。
会社が傷病手当金を代理受領し、社会保険料などを精算して残額を振り込んだ場合も、給付金が会社経由になっただけで雇用保険上の賃金へ変わるわけではありません。給与明細に似た書面で処理されていても、支給の名目を確認してください。
会社から有給の病気休暇手当が出た場合は確認が必要
会社独自の病気休暇、休職手当、賃金補償が、労働の対償として扱う賃金に該当するかは、支給規程と実態によります。離職票⑫欄へ含まれているか、会社の給与担当とハローワークへ確認してください。

休職期間が長いと受給資格の12か月が足りなくなる?
通常は離職前2年間に12か月以上必要
基本手当は原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇や一定のやむを得ない離職では、離職前1年間に6か月以上で受給資格を得られる場合があります。
在籍していた月数と被保険者期間は同じではありません。無給休職で基礎日数も時間数も基準未満の月は、会社に在籍して雇用保険の資格が続いていても、受給資格の「1か月」に数えないことがあります。
30日以上賃金を受けられなかった期間は最長4年までさかのぼれる
雇用保険法第13条は、病気・けがなどで引き続き30日以上賃金を受けられなかった場合、その日数を通常の2年へ加算し、最長4年間を算定対象期間にできると定めています。
厚生労働省の雇用保険Q&Aも、疾病、負傷、出産、育児などで30日以上賃金を受けられなかった期間がある場合、受給資格判定でさかのぼる期間を延長できると案内しています。
これは、基本手当を受けられる期限を延ばす「受給期間延長」とは別です。休職中の無給期間がある人は、次の二つを混同しないでください。
| 制度 | 延長するもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 受給資格の算定対象期間延長 | 離職前に被保険者期間を探す期間 | 休職で賃金を受けられず12か月が不足する |
| 基本手当の受給期間延長 | 離職後に基本手当を受け終える期限 | 退職後も病気などですぐ働けない |
復職せず退職した時点でまだ働けない場合
失業保険は「いつでも就職できる状態」が必要
ハローワークの基本手当案内では、働く意思と能力があり、いつでも就職できるのに仕事に就けない状態を「失業」としています。病気やけがで、すぐ就職できないときは基本手当を受けられません。
「会社への復職はできないが、別の軽い仕事ならすぐ働ける」という場合は、一律に働けないと決まるわけではありません。医師の意見、希望職種、勤務時間などを具体的に伝え、求職可能な状態かをハローワークに判断してもらいます。
30日以上働けない見込みなら受給期間延長を申請する
離職後、病気やけがなどで引き続き30日以上働けない場合、原則1年の受給期間へ働けない日数を加え、最長3年間延長できます。つまり離職翌日から最長4年の範囲です。
申請は、30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに住所地を管轄するハローワークへ行います。代理人または郵送でも可能と公式案内にあります。傷病手当金の継続給付を受けながら療養し、回復後に失業保険の手続きを始める場合は、先に期限を延ばしておくことが重要です。
離職票-2のどこを確認する?
愛知ハローワークの離職証明書記載例と北海道ハローワークの案内をもとに、休職後退職で見る欄を整理します。
| 欄 | 記載内容 | 休職後退職で見る点 |
|---|---|---|
| ⑨ | 被保険者期間算定対象期間の賃金支払基礎日数 | 受給資格の月数を数える基礎。休職月が0日か |
| ⑩ | 賃金支払対象期間 | 会社の締め日単位で6つの完全月があるか |
| ⑪ | ⑩の期間の賃金支払基礎日数 | 賃金日額の6か月を選ぶ基礎。11日以上か |
| ⑫ | 賃金額 | 総支給額と合うか。途中月が低額になっていないか |
| ⑬ | 備考 | 私病欠勤、休職、賃金なし、80時間などの記載 |
6か月より前まで記載されているか
完全無給月が続いた場合、離職票は休職前へさかのぼって記載する必要があります。東京ハローワークQ&Aは、11日未満の月があるなら、その月数分さらにさかのぼり、1枚に書ききれなければ続紙を使うと案内しています。
給与明細の手取りではなく総支給項目と比べる
社会保険料、住民税、会社への立替金などが控除され、差引支給額が0円でも、基本給や手当が支給されていれば離職票上の賃金は0円ではありません。各月の給与明細、賃金台帳、出勤簿・勤怠記録と⑪・⑫欄を照合します。
傷病手当金を給料として書いていないか
健康保険の傷病手当金は、雇用保険法上の事業主が支払う賃金とは別です。⑫欄へ給料として加算されているように見える場合は、会社へ支給項目の根拠を確認し、ハローワークへ資料を持参してください。

離職票の給料0円・日数が違うときの訂正手順
1.給与明細と勤怠記録を月別に並べる
休職開始前後の給与明細、出勤簿、タイムカード、有給休暇の記録、休職辞令、就業規則、傷病手当金支給決定通知を用意します。月ごとに勤務日、有給日、休業手当日、労働時間、総支給賃金を一覧にします。
2.会社へ⑨~⑬欄の根拠を確認する
「給料0円なのに⑪欄が30日」「11日働いたのに0日」「休職前までさかのぼっていない」など、具体的な欄と月を示して確認します。感覚的に「失業保険が安い」と伝えるより、訂正箇所が明確になります。
3.直らない場合はハローワークへ資料を出す
離職票の内容に異議がある場合は、受給資格決定の窓口で申し出ます。島根労働局の離職証明書記載例でも、⑬欄に賃金支払いがない期間・日数・理由を記載する様式が確認できます。
ハローワークは会社へ確認し、賃金台帳や出勤簿などを基に判断します。離職票が違うからといって申請自体を何週間も遅らせず、手続き時に異議と証拠を同時に出してください。
休職後退職から失業保険を申請する流れ
働ける場合|離職票を持って求職申込み
- 会社から離職票-1・2を受け取る
- 給与明細と照らし、休職前6か月まで記載されているか確認する
- 住所地を管轄するハローワークで求職申込みと受給資格決定を受ける
- 離職理由、賃金日額、基本手当日額、所定給付日数を確認する
- 待期・給付制限後、認定日に求職活動を申告する
まだ働けない場合|受給期間延長を先に相談
- 医師へ就労可能な状態か確認する
- 30日以上働けない見込みならハローワークへ受給期間延長を相談する
- 傷病手当金の継続給付要件と申請時期を健康保険へ確認する
- 回復後、求職できる状態になってから基本手当の手続きを行う
働けないのに「失業保険を先にもらう」ことはできません。反対に、働ける状態なのに傷病手当金を受け続けることも制度の前提と合いません。切替日は医師、健康保険、ハローワークへ同じ事実を伝えて整理します。
休職後の再就職は転職と職業訓練のどちらがよい?
体調が回復しても、前職と同じ仕事・勤務時間へ戻ることに不安があるなら、すぐ応募する前に、続けにくかった条件を整理します。夜勤、長時間の立ち仕事、対人負担、通勤時間、専門技能の不足など、休職につながった要因によって次の選択肢は変わります。
基本手当の受給資格があり、ハローワークから必要と認められて公共職業訓練の受講指示を受けると、訓練期間中に所定給付日数が終わっても訓練終了まで基本手当が続き、受講手当・通所手当が支給される場合があります。受講指示には残日数などの条件があるため、求職申込みの早い段階で相談してください。

休職後に復職せず退職した人のよくある質問
Q1.退職前6か月が全部無給なら失業保険は0円ですか?
通常は0円ではありません。基礎日数11日以上、必要な場合は80時間以上の最後の6か月へさかのぼって賃金日額を計算します。離職票が休職前まで記載されているか確認してください。
Q2.無給休職中も雇用保険料を払っていれば1か月に数えますか?
保険料を払ったかだけでは決まりません。被保険者期間は、賃金支払基礎日数11日以上、必要な場合は80時間以上ある月を数えます。
Q3.休職入りの月に10日働いた場合は除外ですか?
11日基準では数えませんが、10日でも80時間以上働き、11日基準だけでは必要月数を満たさない場合は、1か月として数える可能性があります。⑬欄の時間数を確認してください。
Q4.有給休暇を11日使った月は対象になりますか?
有給休暇の対象日は賃金支払基礎日数に含まれます。その月の勤務日と有給日を合計し、⑪欄と⑫欄を確認してください。
Q5.傷病手当金が月20万円なら、その金額で失業保険を計算しますか?
しません。健康保険の傷病手当金は、事業主が労働の対償として払う賃金ではないため、賃金日額の総額に含めません。
Q6.給与明細の振込額が0円なら離職票も0円ですか?
限りません。社会保険料や住民税などの控除後に0円でも、控除前に基本給・手当があれば離職票の賃金へ入ることがあります。総支給額を比べてください。
Q7.休職期間が1年あると受給資格を失いますか?
直ちに失いません。病気などで30日以上賃金を受けられなかった場合、受給資格を判定する算定対象期間を最長4年まで広げられるため、休職前の被保険者期間を使える可能性があります。
Q8.休職満了による退職は会社都合ですか?
休職満了だけで一律に会社都合または自己都合とは決まりません。就業規則、退職までの経緯、本人の就労可能性、会社の判断などをハローワークが確認して離職理由を決めます。
Q9.会社には復職できないが別の仕事なら働けます。申請できますか?
申請できる可能性があります。基本手当で必要なのは、希望する仕事へ就く意思と能力です。医師の意見と働ける仕事内容・時間を具体的に窓口へ伝えてください。
Q10.退職後も療養が必要なら、いつ失業保険を申請しますか?
30日以上働けない見込みなら、基本手当の受給開始ではなく受給期間延長を早めに申請します。回復し、求職可能になってから受給手続きを進めます。
Q11.離職票が休職前までさかのぼっていません。どうしますか?
給与明細、勤怠、有給記録、休職辞令を持って会社へ訂正を求めます。直らない、または申請期限が迫る場合は、管轄ハローワークへ異議を申し出てください。
Q12.職業訓練へ通えば失業保険は延長されますか?
ハローワークの受講指示を受けた公共職業訓練等では、所定給付日数終了後も訓練終了まで基本手当が続く場合があります。誰でも自動延長ではなく、受講指示と残日数などの条件を満たす必要があります。
まとめ|給料0円だけで判断せず、離職票の11日・80時間・6か月を見る
休職後に復職せず退職しても、完全無給の月を0円として直前6か月へ機械的に入れるわけではありません。原則11日以上、必要な場合は80時間以上ある最後の6か月を使い、賃金総額を180で割って賃金日額を出します。
完全無給月は通常、計算対象から外れて休職前へさかのぼります。一方、休職入りの途中月が基準を満たすと、欠勤控除後の低い賃金が入り、基本手当日額が下がることがあります。
離職票-2を受け取ったら、⑪欄の基礎日数、⑫欄の賃金、⑬欄の休職・時間数を確認してください。退職時点で働けるなら求職申込みへ進み、まだ働けないなら受給期間延長を先に相談するのが安全です。
※本記事は2026年8月31日時点の公的情報を確認して作成しています。実際の賃金日額、基本手当日額、受給資格、離職理由、就労可能性は、提出資料を基に管轄のハローワークが判定します。

