給料日を過ぎても振り込まれず、会社は閉鎖。社長とも連絡がつかない。
「未払いの給料はもう戻らないのか」「破産が決まるまで待つしかないのか」「生活費が尽きる前に何をすればいいのか」と、手続きの入口で止まってしまう人もいるでしょう。
結論からいうと、会社の倒産によって給料が未払いのまま退職した人は、一定の条件を満たせば未払賃金立替払制度で対象額の80%を受け取れます。ただし、未払い額のすべてが対象になるわけではありません。対象は原則として定期賃金と退職手当で、賞与は除外されます。さらに退職日の年齢による上限があります。
最初にすることは、会社の所在地を管轄する労働基準監督署へ連絡し、法律上の倒産か、事実上の倒産の認定が必要な状態かを確認することです。破産管財人から案内が届いている場合も、退職日、給与の支払日、未払額、倒産手続の申立日・決定日を一つの時系列にします。
この記事では、2026年8月31日時点の公的情報をもとに、いくら戻るのか、どの給料が対象か、退職日と申請期限をどう判定するか、法律上・事実上の倒産で何を申請するかまで整理します。
- 立替払は対象となる未払賃金の80%
- 上限は退職日時点の年齢で判定し、30歳未満は88万円、30歳以上45歳未満は176万円、45歳以上は296万円
- 対象未払賃金の総額が2万円未満なら制度の対象外
- 対象賃金の支払期日は退職日の6か月前の日から立替払請求日の前日まで
- 請求期限は、法律上の倒産なら決定・命令の翌日から2年以内、事実上の倒産なら認定日の翌日から2年以内
- 結論|対象になる未払賃金の80%、上限88万〜296万円
- まず確認|自分が立替払の対象か早見表
- 立替払でいくら戻る?年齢・未払額別の計算例
- 対象になる給料|基本給・毎月の手当・残業代・退職金
- 対象期間は「働いた日」ではなく給料の支払期日で見る
- 退職日の条件|申立日等の6か月前から始まる2年間
- 申請期限|倒産の決定・認定日の翌日から2年以内
- 法律上の倒産と事実上の倒産は何が違う?
- 今すぐ確保する資料|給与明細・通帳・タイムカード
- 法律上の倒産|破産管財人等の証明を受けて請求する
- 事実上の倒産|認定・確認・立替払請求の3段階
- 立替払はいつ振り込まれる?請求受付後30日以内が努力目標
- 税金|給料分も原則「退職所得」として扱われる
- 残り20%と上限超過分はどうなる?
- 倒産後の失業保険|立替払とは別にハローワークで申請する
- 雇用保険を受けられない場合も職業訓練の給付を確認する
- 未払賃金立替払制度でよくある質問
- まとめ|未払額だけでなく退職日・支払期日・倒産日を並べる
- 主な公的資料
結論|対象になる未払賃金の80%、上限88万〜296万円
労働者健康安全機構(JOHAS)の制度概要によると、立替払額は対象となる未払賃金総額の80%です。ただし、退職日の年齢に応じて計算に使える未払賃金総額に限度があり、実際の立替払上限は88万円、176万円、296万円に分かれます。
| 退職日の年齢 | 計算対象にできる未払賃金の限度 | 立替払の上限 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
計算式は次のとおりです。
立替払額=「対象となる未払賃金総額」と「年齢別限度額」の少ない方×80%
たとえば退職日に35歳で、対象になる未払給料が60万円なら48万円です。未払賃金が300万円あっても、30歳以上45歳未満の計算上限は220万円なので、立替払は176万円が上限になります。
制度を使えるかは、未払額だけでは決まりません。会社側の要件、本人が労働者だったこと、退職日の範囲、賃金の支払期日、倒産手続の種類、請求期限を順番に確認します。
まず確認|自分が立替払の対象か早見表
| 今の状況 | 立替払の可能性 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 会社が破産し、給料未払いのまま退職した | 対象になり得る | 破産管財人の証明、退職日、請求期限 |
| 会社が閉鎖し、社長が行方不明 | 中小企業で事実上の倒産と認定されれば対象になり得る | 会社所在地を管轄する労働基準監督署へ認定申請を相談 |
| 民事再生中で会社は営業を続けている | 法律上の倒産に該当すれば対象になり得る | 再生債務者・管財人等からの案内 |
| 会社は営業中で、単に給料が遅れている | 倒産要件を満たさなければ制度の対象外 | 通常の未払賃金として会社と労働基準監督署へ相談 |
| まだ在職中 | 立替払は退職した労働者が対象 | 雇用関係と退職日の扱いを労働基準監督署へ確認 |
| 未払いはボーナスだけ | 対象外 | 会社・破産管財人への債権届出等を確認 |
| 対象となる未払賃金総額が2万円未満 | 対象外 | 通常の未払賃金請求の扱いを確認 |
厚生労働省の未払賃金立替払制度Q&Aでは、会社について「労災保険の適用事業で1年以上事業を実施していること」、労働者について「倒産に関係する一定期間内に退職し、未払賃金額の証明・確認を受けること」などが要件とされています。
パート・アルバイト・外国人も労働者なら対象
正社員だけの制度ではありません。パート、アルバイト、外国人であっても、倒産した会社に雇われ、労働の対価として賃金を受けていた労働基準法上の労働者なら対象になり得ます。
一方、代表権を持つ会社役員や、事業主と同じ立場にある人は原則として対象になりません。役員でも、代表権や業務執行権がなく、他の役員の指揮監督下で働いて賃金を受けていたなど、実態として労働者なら対象になる場合があります。肩書だけで決めず、契約、勤務実態、賃金の支払い方を示す資料を準備します。
会社が労災保険へ未加入・保険料滞納でも直ちに対象外ではない
JOHASの未払賃金立替払Q&Aは、労災保険の適用事業であれば、会社が加入手続きをしていなかった、または保険料を納めていなかった場合でも、立替払を受けられると案内しています。
「会社が保険に入っていないと言っていたから無理」と自己判断せず、事業の実態と雇用関係を労働基準監督署へ伝えてください。
倒産後は、立替払だけで家賃、保険料、税金、次の給料日までをすべて賄えるとは限りません。退職後に出ていくお金と利用できる制度を先に一覧にしたい人は、次の記事で生活費の順番を確認できます。

立替払でいくら戻る?年齢・未払額別の計算例
立替払は「手取りの80%」ではありません。基本給、毎月の手当、時間外手当など対象となる定期賃金を、原則として所得税、住民税、社会保険料などの法定控除前で合計し、年齢別限度額を当ててから80%を掛けます。
例1|28歳、未払給料90万円
| 退職日の年齢 | 28歳 |
|---|---|
| 対象となる未払賃金 | 90万円 |
| 年齢別限度額 | 110万円 |
| 立替払額 | 90万円×80%=72万円 |
未払額90万円が限度額110万円を下回るため、全額90万円を計算の基礎にできます。ただし受け取れるのは80%の72万円で、90万円全額ではありません。
例2|35歳、未払給料60万円と退職金140万円
| 定期賃金 | 60万円 |
|---|---|
| 退職手当 | 140万円 |
| 対象となる未払賃金総額 | 200万円 |
| 年齢別限度額 | 220万円 |
| 立替払額 | 200万円×80%=160万円 |
就業規則や退職金規程に基づく未払退職手当は、定期賃金と合算できます。社外積立の退職金制度から別に支払われる額がある場合は、その額を確定して差し引いた残額で判断します。
例3|35歳、未払賃金300万円
35歳の限度額は220万円です。実際の未払賃金が300万円でも、計算に使えるのは220万円までです。
220万円×80%=176万円
300万円×80%の240万円ではありません。年齢別限度額を先に当てる点が重要です。
例4|50歳、未払賃金470万円
50歳の限度額は370万円なので、立替払は次の金額が上限です。
370万円×80%=296万円
未払賃金が上限を超える場合、超過部分と立替払の対象外となる20%が自動的に消えるわけではありません。ただし、立替払とは別に会社から回収できるかは、倒産手続と会社財産の状況に左右されます。破産管財人から債権届出の案内がある場合は、立替払を申請した事実も伝えて扱いを確認します。
対象になる給料|基本給・毎月の手当・残業代・退職金
立替払の対象は、期間内に支払期日が到来した「定期賃金」と「退職手当」です。JOHASの制度案内パンフレットは、定期賃金の例として基本給、家族手当、通勤手当、時間外手当などを挙げています。
| 項目 | 立替払 | 確認点 |
|---|---|---|
| 基本給 | 対象 | 給与明細、雇用契約書、賃金台帳 |
| 家族手当・役職手当・通勤手当 | 毎月定期的に支払われるものは対象になり得る | 就業規則と給与明細 |
| 時間外・休日・深夜手当 | 定期賃金として対象になり得る | タイムカード、シフト、給与計算 |
| 退職金 | 規程等に基づく退職手当は対象 | 退職金規程、社外積立からの支払額 |
| 賞与・ボーナス | 対象外 | 立替払とは別の債権として扱いを確認 |
| 解雇予告手当 | 対象外 | 通常の請求・倒産手続上の扱いを確認 |
| 遅延利息 | 対象外 | 立替払の計算には含めない |
| 旅費・用品代などの実費弁償 | 対象外 | 賃金ではないため別に整理 |
税金・社会保険料を引く前の総支給額が出発点
対象となる定期賃金は、所得税、住民税、社会保険料などの法定控除前の額です。そのため、銀行口座に入る予定だった手取り額を合計して80%を掛けると、計算が合わないことがあります。
ただし、会社への貸付金返済、社宅料、会社商品の購入代金など、事業主の債権に基づいて毎月の給料から差し引く予定だった金額は、未払賃金から控除されます。給与明細の「総支給」「控除」「差引支給」を分けて確認してください。
退職月の給料は日割りになる場合がある
賃金計算期間の途中で退職した月給者は、退職日までの労働に対応する部分を日割りで計算します。就業規則等に日割計算方法があればその方法、なければ原則として実労働日数と所定労働日数を使います。
日割り賃金=月給と月決め手当×実労働日数÷所定労働日数
最終月だけ金額が少ないから記載ミスとは限りません。退職日、締日、所定労働日数、欠勤、実際の出勤日を並べ、破産管財人や労働基準監督署の証明額と照合します。
対象期間は「働いた日」ではなく給料の支払期日で見る
対象になるのは、退職日の6か月前の日から、JOHASへ立替払を請求する日の前日までに支払期日が到来した定期賃金と退職手当です。
ここで見るのは、給与の対象月だけではなく支払期日です。たとえば「7月に働いた分を8月25日に支払う」という会社なら、基準になるのは原則として8月25日です。給与明細に書かれた対象期間、賃金締日、支払日を別々に記録します。
退職日の6か月前より古い支払期日の賃金は対象外
長期間の賃金未払いがあっても、すべてを立替払へ入れられるわけではありません。退職日の6か月前より前に支払期日が到来していた給料は、立替払の対象期間から外れます。
だからこそ、未払いが数か月続いているときに「倒産が正式に決まるまで待とう」と放置するのは危険です。立替払の対象期間とは別に、通常の賃金請求の時効や倒産手続の期限もあります。給与明細と通帳をそろえ、最寄りの労働基準監督署へ早めに相談します。
請求日より後に支払期日が来る給料は最初の請求に入らない
立替払請求日の前日までに支払期日が来ていることも条件です。まだ支払期日が来ていない将来分は、未払いが確定していないため、その請求の対象にはなりません。
どの支払日まで待って請求するかは、2年の請求期限や生活費との兼ね合いもあります。一度支給を受けた後に新たな未払賃金が判明した場合の扱いは個別確認が必要なので、請求前に支払期日一覧を破産管財人または労働基準監督署へ見せてください。
退職日の条件|申立日等の6か月前から始まる2年間
立替払の対象となる退職日は、法律上の倒産なら裁判所への破産手続開始等の申立日、事実上の倒産なら労働基準監督署長への認定申請日を基準にします。
基準となる申立日・認定申請日の6か月前の日から始まる2年間に退職していること
この表現は、「申立日の6か月前から、申立日の2年後まで」という2年6か月の範囲ではありません。6か月前の日を起点とする2年間なので、基準日より後の部分はおおむね1年6か月です。
例|2026年4月1日に破産申立てがあった場合
| 基準日 | 2026年4月1日(例) |
|---|---|
| 退職期間の始まり | 2025年10月1日(6か月前の日) |
| 退職期間の終わり | 2027年9月30日(始まりから2年間の最終日) |
日付計算は月末やうるう年で迷いやすいため、この記事の例だけで締切日を確定しないでください。破産申立日または認定申請日が分かったら、その日付を破産管財人か労働基準監督署へ伝え、本人の退職日が範囲に入るか確認します。
倒産前に自己都合退職していても期間内なら対象になり得る
会社が倒産する前に自分から辞めたから、必ず対象外になるわけではありません。JOHASは、基準となる2年間の範囲内に退職していれば、自己都合か会社都合かは問わないと案内しています。
ただし、退職後6か月以内に破産手続開始等の申立てや事実上の倒産の認定申請が行われなければ、退職日が対象範囲に入りません。会社が閉鎖し、法的手続も始まっていないなら、誰かが動くのを待たず労働基準監督署へ相談する必要があります。
申請期限|倒産の決定・認定日の翌日から2年以内
退職日の条件とは別に、立替払請求書をJOHASへ提出できる期限があります。
| 倒産の種類 | 請求期限の起算点 | 期限 |
|---|---|---|
| 法律上の倒産 | 裁判所の破産手続開始等の決定日・命令日の翌日 | 起算点から2年以内 |
| 事実上の倒産 | 労働基準監督署長が倒産を認定した日の翌日 | 起算点から2年以内 |
2年を過ぎると立替払を受けられません。「会社が閉まった日」「最後の給料日」「自分の退職日」から2年ではなく、法律上の決定日または事実上の倒産の認定日が基準です。
退職期間の基準日と請求期限の基準日は違う
| 判定するもの | 基準に使う日 |
|---|---|
| 本人の退職日が対象範囲か | 破産手続開始等の申立日、または事実上の倒産の認定申請日 |
| 立替払請求をいつまで出せるか | 破産手続開始等の決定日・命令日、または事実上の倒産の認定日 |
| どの未払給料が対象か | 退職日と、各賃金の支払期日、立替払請求日 |
申立てと決定、認定申請と認定を混同すると、退職日の対象期間や請求期限を誤ります。通知書に書かれた正式な日付をそのままメモし、口頭で聞いた「倒産した月」だけで計算しないでください。
事実上の倒産の認定申請は退職翌日から6か月以内
会社が法的倒産手続を取らず、事実上停止している場合は、退職労働者による認定申請が必要です。JOHASのQ&Aでは、この認定申請を退職日の翌日から起算して6か月以内に行う必要があると案内しています。
「請求期限は2年あるから、半年ほど様子を見てもよい」と考えるのは危険です。認定申請、未払賃金額の確認、JOHASへの立替払請求は別の段階です。会社が閉鎖して連絡が取れないなら、まず6か月の認定申請期限を意識して労働基準監督署へ連絡します。
法律上の倒産と事実上の倒産は何が違う?
会社から給料が払われず事業も止まっていても、それだけで立替払上の「倒産」が自動確定するわけではありません。法律上の倒産か、事実上の倒産として認定されるかで、証明者と手続きが変わります。
| 区分 | 主な状態 | 対象企業 | 最初の窓口 |
|---|---|---|---|
| 法律上の倒産 | 破産、特別清算、民事再生、会社更生の開始決定・命令 | 中小企業だけでなく大企業も対象になり得る | 破産管財人、清算人、再生債務者等、裁判所 |
| 事実上の倒産 | 事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金支払能力がないと認定 | 中小企業事業主のみ | 労働基準監督署 |
破産申立てだけでは「決定日」と同じではない
法律上の倒産では、破産手続開始等の「申立日」と、裁判所が出す「開始決定日・命令日」を分けます。申立日は退職期間を判定する基準、決定日・命令日は立替払請求期限を数える基準です。
会社や代理人から「破産を申し立てる予定」と聞いただけの段階では、実際にいつ申立てが行われたか分かりません。破産管財人・申立代理人から届く書面、裁判所事件番号、決定日が記載された通知を保管してください。
社長が行方不明でも事実上の倒産として相談できる
法的手続がなく社長とも連絡できない場合でも、中小企業について労働基準監督署長が「事業活動停止」「再開見込みなし」「賃金支払能力なし」の三つを認定すれば、事実上の倒産として制度を利用できる可能性があります。
ただし、債務超過や給料遅配だけで認定されるわけではありません。店舗や事務所の閉鎖、全従業員の退職、営業活動の停止、会社資産や連絡先の状況など、会社全体の実態が調査されます。
営業を続けていても民事再生等なら対象になり得る
「営業中だから倒産ではない」とも限りません。民事再生手続など、事業活動を継続しながら進める法律上の倒産も制度の対象です。反対に、営業中で単に給料が遅れているだけなら、立替払の倒産要件を満たさない場合があります。
看板が出ているか、電話がつながるかだけで決めず、裁判所手続の有無と労働基準監督署の判断を確認します。
今すぐ確保する資料|給与明細・通帳・タイムカード
会社が閉鎖すると、勤怠データや賃金台帳へ後からアクセスできなくなることがあります。JOHASは、未払期間の出勤状況、過去の賃金支払い、賃金計算方法が分かる資料を保存するよう案内しています。
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 就業規則、賃金規程、退職金規程
- 直近だけでなく過去の給与明細
- 給与振込口座の通帳・取引明細
- タイムカード、勤怠アプリの画面、シフト表
- 残業時間を記録した手帳やメール
- 会社からの休業・閉鎖・解雇・退職に関する通知
- 破産管財人、申立代理人、裁判所からの書類
- 会社名、本社住所、事業場住所、代表者名、連絡先
未払額は月別・支払期日別に表へする
「3か月分で約70万円」だけでは、対象期間と金額を確認しにくくなります。次の項目で1行ずつ作ります。
| 給与対象期間 | 支払期日 | 基本給・手当 | 残業代 | 既払額 | 未払額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 例:7月1日〜7月31日 | 例:8月25日 | 250,000円 | 30,000円 | 0円 | 280,000円 |
| 例:8月1日〜退職日 | 例:9月25日 | 日割計算 | 実績で計算 | 0円 | 確認中 |
書類が一部なくても、自分で金額を作り替えたり、証明書を訂正したりしてはいけません。証明額が違う場合は、法律上の倒産ならまず証明した破産管財人等へ訂正を求め、解決しなければ会社所在地を管轄する労働基準監督署へ相談します。
会社のパソコンやクラウドだけに残さない
業務上の秘密や個人情報を無断で持ち出すのではなく、自分の労働時間と賃金を示すために適法に取得できる資料を保管します。退職後にアカウントが止まる前に、自分宛てに交付された給与明細、労働条件通知書、勤怠記録の控えを確保してください。
倒産後は立替払と同時に、離職票、健康保険、年金、失業保険の手続きも始まります。何からハローワークへ伝えるか迷う場合は、退職後の初動を次の記事で整理できます。

法律上の倒産|破産管財人等の証明を受けて請求する
破産、特別清算、民事再生、会社更生など法律上の倒産では、倒産の種類に応じた証明者から、退職日や未払賃金総額などの証明を受けます。
| 倒産の区分 | 主な証明者 |
|---|---|
| 破産 | 破産管財人 |
| 特別清算 | 清算人 |
| 民事再生 | 再生債務者・管財人等 |
| 会社更生 | 管財人 |
手順1|証明書の案内と未払額を確認する
破産管財人等へ、未払賃金立替払請求に必要な証明を申請します。従業員が多い倒産では、管財人から手続き一式が送られてくることがありますが、届くまで何もしないのではなく、連絡先と発送予定を確認します。
証明書に書かれた退職日、年齢、賃金の支払期日、定期賃金、退職手当、既払額を、自分の給与明細と通帳で照合してください。
手順2|証明が得られない部分は労働基準監督署へ相談する
破産管財人等から必要事項の全部または一部について証明が得られない場合は、証明書や疎明資料を持って労働基準監督署長へ確認申請できる場合があります。
自分で証明書の金額を書き換えず、「どの給与月・手当・勤務時間が反映されていないか」を表で示します。残業代なら、タイムカードと賃金単価から算出した根拠も添えます。
手順3|請求書と退職所得申告書をJOHASへ出す
証明書が交付されたら、立替払請求書と「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」を記入します。紙で請求する場合、請求書と証明書が一体の様式は切り離さず提出します。様式と注意事項はJOHASの請求書・届出一覧で確認できます。
2026年8月31日時点では電子請求にも対応しています。破産管財人等の案内で進める人は、破産管財人等から案内された方向け電子請求の手引きを確認し、未払賃金立替払電子請求サイトから手続きします。紙と電子を重複提出しないよう、証明者に請求方法を先に伝えます。
事実上の倒産|認定・確認・立替払請求の3段階
法的倒産手続がない中小企業では、労働基準監督署長による事実上の倒産の認定が入口です。会社が閉鎖していても、退職労働者からの申請なしに職権で自動認定されるわけではありません。
手順1|事実上の倒産の認定を申請する
事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金支払能力がない状態を示す資料とともに、所定の認定申請書を提出します。申請先の経由や本社所在地との関係があるため、最初に退職した事業場の所在地を管轄する労働基準監督署へ相談してください。
複数の退職労働者がいる場合、1人が認定を受ければその効果は他の退職労働者にも及びます。ただし、認定後の未払賃金額の確認は、立替払を受けようとする人ごとに必要です。
手順2|自分の未払賃金総額等の確認を申請する
認定通知書が交付されたら、自分の退職日と未払賃金総額等について労働基準監督署長の確認を受けます。会社の賃金台帳がない場合に備え、給与明細、通帳、勤務表、雇用契約書、残業記録を提出できるようにします。
手順3|確認通知書を使ってJOHASへ請求する
確認通知書が交付されたら、立替払請求書と退職所得申告書を記入し、紙または案内された電子請求でJOHASへ出します。労働基準監督署で手続きした人向けの電子請求は、JOHASの電子請求の手引きで入力内容と添付方法を確認できます。
認定申請の期限と、認定後の立替払請求期限は別です。認定に時間がかかる可能性もあるため、退職後すぐ相談し、提出した書類の控えと受付日を残します。
立替払はいつ振り込まれる?請求受付後30日以内が努力目標
JOHASは、請求書に記入漏れや誤りがなければ、請求書を受け付けてから30日以内に支払うよう努めていると案内しています。これは、会社が閉鎖した日や労働基準監督署へ相談した日から30日ではありません。
認定・証明を取る期間は別にかかる
法律上の倒産では破産管財人等の証明、事実上の倒産では認定と本人ごとの確認が先にあります。未払額の争い、勤怠資料不足、書類の補正があれば、JOHASが請求書を受け付けるまでにも時間がかかります。
したがって、生活費の見通しを「今から30日後に必ず入金」と置くのは危険です。手続きの現在地を、認定申請前、認定待ち、確認待ち、JOHAS受付済みのどこかで分けます。
1か月半を過ぎても支払通知書が届かない場合
JOHASのQ&Aでは、立替払請求書を送ってから1か月半以上たっても支払通知書が届かない場合は、問い合わせるよう案内しています。支給が決まると、立替払額と振込日が書かれた未払賃金立替払支給決定通知書が送られ、本人名義の普通預金口座へ振り込まれます。
口座番号の記載ミスや住所変更があると連絡が遅れるため、請求書の控えを作り、転居や振込先変更があればJOHASの記入案内で届出を確認します。
税金|給料分も原則「退職所得」として扱われる
立替払で受け取った金額は、元が毎月の給料分でも退職手当分でも、原則としてすべて退職所得として扱われます。通常の給与所得として年末調整する金額と同じ扱いではありません。
退職所得申告書を書けば控除を受けられる
請求書下欄の「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に必要事項を記入すると、勤続年数に応じた退職所得控除を受けられます。JOHASは、多くの場合は控除によって実質的に非課税になると案内しています。
申告書を提出しない場合は、立替払額の20.42%相当が所得税と復興特別所得税として源泉徴収されます。「未払給料なのに税金を引かれた」と後で気づかないよう、請求時に申告欄を空白にしないでください。
他の退職金を受け取っている人は源泉徴収票も確認
退職した年、または退職した年の前年以前4年間に、中小企業退職金共済や保険会社などから退職手当を受け取った場合は、請求書下部の簡易な申告だけでは足りません。税務署備付けの退職所得申告書と、他の退職手当に係る源泉徴収票の写しを一緒に提出する扱いが案内されています。
申告書を提出済みなら、原則として立替払について確定申告は不要です。ただし、申告書を出さず20.42%を源泉徴収された場合は確定申告で精算します。医療費控除など別の理由で確定申告をする場合も、退職所得の記載を確認してください。
残り20%と上限超過分はどうなる?
立替払を受けても、会社の賃金支払義務そのものがなくなるわけではありません。JOHASは、支払った部分について労働者の賃金請求権を代位取得し、事業主へ求償します。
JOHASへ移るのは立替払された部分
80%の立替払を受けた部分について、同じ金額を会社から二重に受け取ることはできません。破産配当などで回収が生じるときは、立替払分についてJOHASが倒産手続へ参加します。
一方、対象外の20%、年齢別上限を超えた部分、賞与など制度対象外の債権は、立替払を受けただけで支払済みにはなりません。ただし会社財産が足りなければ、現実に全額回収できるとは限りません。
破産管財人の債権届出を放置しない
破産管財人等から債権届出書が届いた場合は、提出期限と記載方法を確認します。立替払を申請中または受給済みなら、その状況を伝え、残額をどのように届け出るか指示を受けてください。
「立替払を受けるから債権届出は不要」「債権届出をしたから立替払は不要」と自己判断せず、二つの手続きで同じ債権が重複しないよう証明者へ確認します。
倒産後の失業保険|立替払とは別にハローワークで申請する
未払賃金立替払と雇用保険の基本手当は別制度です。立替払の認定・証明を待ってからでなければ失業保険を申請できない、という順番ではありません。離職票が届き、すぐ働ける状態で求職するなら、住所地を管轄するハローワークで受給手続きを進めます。
倒産に伴う離職は特定受給資格者になり得る
ハローワークインターネットサービスは、破産・民事再生・会社更生等の倒産に伴って離職した人や、事業所の廃止に伴って離職した人を、特定受給資格者の範囲として示しています。
倒産手続そのものとは別に、賃金(退職手当を除く)の3分の1を超える額が支払期日までに支払われず、その不払いを理由に離職した人も特定受給資格者に該当する場合があります。ただし、立替払制度で自己都合退職が対象になり得ることと、雇用保険で会社都合相当と判定されることは同じではありません。
ただし、最終的な離職理由はハローワークが本人と会社双方の主張、離職票、証拠資料を確認して決めます。離職票が自己都合になっている、退職日が違う、会社から離職票が来ない場合は、倒産通知、閉鎖の連絡、解雇通知、破産管財人の書面などを持って異議を伝えます。
立替払の受取額がそのまま失業保険になるわけではない
基本手当は、雇用保険の加入期間、離職理由、年齢、離職前の賃金などで決まります。立替払として実際に振り込まれた80%だけを月給とみなして失業保険を計算する制度ではありません。
倒産で会社から賃金台帳が出ない場合は、給与明細、通帳、労働条件通知書などを持参し、離職票の賃金額をどう確認するかハローワークへ相談します。
離職票待ちと職業訓練の相談を同時に進める
倒産直後は、失業保険の入金前に職業訓練の募集締切が来ることがあります。正式な受講指示や給付の判断はハローワークが行いますが、募集コース、説明会、選考日、訓練開始日を確認する相談まで、立替払の振込を待つ必要はありません。
失業保険を受けながら職業訓練へ進む場合の給付期間、受講手当、通所手当をまとめて確認したい人は、次の記事へ進めます。

雇用保険を受けられない場合も職業訓練の給付を確認する
勤務期間が短い、雇用保険に入っていなかった、以前の基本手当を受け終わっているなど、基本手当を受けられない人もいます。その場合も、求職者支援制度の職業訓練受講給付金を利用できる可能性があります。
月10万円の職業訓練受講手当などには、本人収入、世帯収入、世帯金融資産、出席など複数の要件があります。倒産で給料が未払いでも、自動的に給付対象になるわけではありません。ハローワークで、雇用保険の受給資格と求職者支援制度の両方を確認します。
失業保険がない人向けの訓練、収入・資産要件、申請の順番は次の記事で整理できます。

未払賃金立替払制度でよくある質問
Q1.未払いの給料は100%戻りますか?
未払賃金立替払制度で受け取れるのは、対象となる未払賃金総額の80%です。さらに退職日の年齢により計算対象の上限があり、30歳未満は最大88万円、30歳以上45歳未満は最大176万円、45歳以上は最大296万円です。賞与や解雇予告手当などは計算に入りません。
Q2.まだ退職していなくても立替払を申請できますか?
制度の対象は、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者です。在職中のまま立替払を請求する制度ではありません。会社が閉鎖して雇用関係や退職日が不明なら、自分で退職日を決めず、労働基準監督署と破産管財人等へ確認してください。
Q3.ボーナス、残業代、通勤手当は対象ですか?
賞与・ボーナスは対象外です。一方、毎月定期的に支払われる時間外手当や通勤手当は、定期賃金として対象になり得ます。給与明細、賃金規程、勤怠記録を提出し、対象期間内に支払期日が来ているか確認します。
Q4.倒産前に自己都合で辞めていても対象ですか?
退職理由が自己都合であることだけでは対象外になりません。破産手続開始等の申立日または事実上の倒産の認定申請日の6か月前の日から始まる2年間に退職し、他の要件も満たせば対象になり得ます。ただし、退職後6か月以内に申立て・認定申請がされない場合は、退職日の範囲から外れます。
Q5.未払給料が半年を超えている場合は全部対象ですか?
全部とは限りません。退職日の6か月前の日から立替払請求日の前日までに支払期日が到来した定期賃金と退職手当が対象です。退職日の6か月前より前に支払期日が来た給料は、立替払の対象期間から外れます。
Q6.会社が労災保険に入っていなかったら申請できませんか?
労災保険の適用事業として1年以上事業活動をしていた会社なら、加入手続をしていない、または保険料を納めていないことだけで労働者が対象外になるわけではありません。事業の種類や雇用実態を労働基準監督署へ伝えて確認します。
Q7.破産管財人が未払残業代を証明してくれない場合は?
まず破産管財人へ、タイムカード、給与明細、雇用契約書、残業時間の記録と計算根拠を示し、証明内容の確認を求めます。必要事項の全部または一部について証明を得られないときは、交付済みの証明書と資料を持って会社所在地を管轄する労働基準監督署へ相談してください。
Q8.2年の申請期限は退職日から数えますか?
退職日からではありません。法律上の倒産は裁判所の破産手続開始等の決定日・命令日の翌日、事実上の倒産は労働基準監督署長の認定日の翌日から2年以内です。退職日の対象期間は申立日・認定申請日で判定するため、二つの基準日を分けてください。
Q9.請求してから何日で振り込まれますか?
JOHASは、記入漏れや誤りがなければ請求書受付後30日以内に支払うよう努めています。証明・認定・確認にかかる期間は別で、追加資料や補正があれば30日を超える場合があります。請求書送付から1か月半以上たっても支払通知書が届かない場合は、JOHASへ問い合わせます。
Q10.立替払を受けたら確定申告が必要ですか?
請求時に退職所得申告書をJOHASへ提出していれば、原則として源泉徴収で課税関係が終了し、立替払だけを理由に確定申告する必要はありません。申告書を提出せず20.42%を源泉徴収された場合は確定申告で精算します。別の退職手当を受けた人や、医療費控除等で申告する人は、源泉徴収票と退職所得の記載を税務署へ確認してください。
まとめ|未払額だけでなく退職日・支払期日・倒産日を並べる
会社が倒産し、給料未払いのまま退職した場合は、条件を満たせば未払賃金立替払制度で対象額の80%を受け取れます。立替払の上限は退職日の年齢により88万円、176万円、296万円です。
ただし、対象は期間内に支払期日が到来した定期賃金と退職手当で、賞与、解雇予告手当、遅延利息などは入りません。本人の退職期間は申立日・認定申請日、請求期限は決定日・認定日、対象賃金は退職日・支払期日・請求日で判定します。
確認する順番は、給与明細と勤怠を確保する、会社所在地を管轄する労働基準監督署または破産管財人へ連絡する、退職日と倒産手続の日付を確認する、未払額を支払期日別に整理する、証明・認定・確認を経てJOHASへ請求するです。
立替払と失業保険は別に進められます。離職票、健康保険、年金、職業訓練の期限を立替払の入金まで待たず、生活費と再就職の手続きを並行してください。
未払賃金立替払と失業保険は別制度です。立替払請求書は不備がなければ受付から30日以内の支払いが努力目標ですが、退職所得申告書がなければ20.42%が源泉徴収されます。認定・証明を待つ間も、ハローワークの手続きは別に進めてください。
主な公的資料
- 労働者健康安全機構「未払賃金の立替払制度の概要」
- 労働者健康安全機構「未払賃金立替払に関するQ&A」
- 労働者健康安全機構「未払賃金立替払請求書・証明書及び各種届出一覧」
- 労働者健康安全機構「立替払請求書・退職所得申告書の記入のしかた」
- 労働者健康安全機構「未払賃金の立替払制度のご案内」
- 労働者健康安全機構「労働基準監督署で手続きされた方向け電子請求の手引き」
- 労働者健康安全機構「破産管財人等の案内で手続きされた方向け電子請求の手引き」
- 厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と要件」
- 厚生労働省「賃金の支払の確保等に関する法律」
- 厚生労働省「賃金の支払の確保等に関する法律施行令」
- 厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」
- 厚生労働省「雇用保険Q&A(労働者向け)」

