高卒認定を取って就職や進学の選択肢を広げたいけれど、対策講座の費用が負担になる。そんなひとり親家庭の親や子を対象に、講座費用の一部が戻る給付金があります。
国の基本的な支援では、条件を満たして全科目に合格すると、対象費用の合計6割、通信制は最大15万円、通学・通信併用は最大30万円が支給されます。自治体独自の上乗せがある地域もあります。
受講を始めてから申し込めばよい制度ではありません。講座の申し込みや支払いをする前に、住んでいる自治体のひとり親支援窓口へ相談し、対象講座の指定を受ける手順を確認してください。
以下は2026年9月11日時点の制度です。国では「ひとり親家庭学び直し支援事業」の一つとして実施され、自治体では「高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」などの名称で案内されています。
対象はひとり親本人と子ども|高校中退でも利用できる?
高校を卒業していないひとり親本人や、その家庭の子が対象です。高校中退も含まれます。ただし、高卒認定の対策講座を受ければ誰でも給付されるわけではなく、自治体による確認があります。
- 制度を実施している自治体に住んでいること
- ひとり親家庭の親、または扶養されている子に該当すること
- 高卒認定の合格が、就職などに向けて必要と認められること
- 母子・父子自立支援プログラムの策定など、自立に向けた支援を受けること
- 過去の給付の受給歴など、自治体の要件を満たすこと
国の実施要綱では、親は20歳未満の子を扶養する母・父、子はその親に扶養される20歳未満の児童が基本です。高校を卒業した人や、高卒認定・旧大学入学資格検定にすでに合格している人など、大学入学資格がある人は対象外です。
「自立支援プログラム」は、相談員などと就職・学習の目標や必要な支援を整理するものです。最初から自分で書類を完成させておくのではなく、窓口で策定の流れを相談します。
出典:こども家庭庁の事業案内、2026年度実施要綱(PDF)。
児童扶養手当を受けていないと申請できない?
現在の国の要件は、自立支援プログラムなどの支援と、就職に向けた必要性を確認する形です。児童扶養手当を受けていないという理由だけで、対象外と決める必要はありません。古い講座指定には以前の所得要件が適用される場合があるため、これから受講する人は自治体の現行条件を確認してください。
名古屋市の案内でも、20歳未満の子を扶養するひとり親またはその子、自立支援プログラム等の利用、就労への必要性、過去の受給歴などが対象条件として示されています。
いくらもらえる?通信制と通学制の支給額
給付は、受講開始・受講修了・全科目合格の3段階です。次の表は、自治体の上乗せを含まない国の基本額です。上限を3回分そのまま足す計算ではありません。
| 給付の段階 | 通信制 | 通学・通学と通信の併用 |
|---|---|---|
| 受講開始時 | 対象費用の40% 上限10万円 |
対象費用の40% 上限20万円 |
| 受講修了時 | 対象費用の50%から開始時の支給額を引く 開始時との合計上限12万5,000円 |
対象費用の50%から開始時の支給額を引く 開始時との合計上限25万円 |
| 全科目合格時 | 対象費用の10% 3段階の合計上限15万円 |
対象費用の10% 3段階の合計上限30万円 |
受講修了時に、新たに受講費用の50%を上乗せしてもらえるわけではありません。開始時の給付と合わせて50%になるよう計算し、合格時の10%を加えて合計60%となるのが基本です。上限に達する場合は支給額が抑えられます。
合格時給付金は、受講修了時給付金を受けた人が、受講修了日から2年以内に全科目に合格した場合の支給です。また、国の要綱には開始時・修了時の少額不支給の基準(4,000円を超えない場合)もあります。
出典:こども家庭庁の2026年度実施要綱。実際の対象費用・支給額は、居住自治体が審査します。
計算例1:通信講座の対象費用が20万円の場合
20万円全額が対象費用で、全段階の要件を満たし、自治体の上乗せがない例です。
- 開始時:20万円×40%=8万円
- 修了時:20万円×50%−8万円=2万円
- 合格時:20万円×10%=2万円
給付は合計12万円、対象講座費用の最終的な自己負担は8万円です。合格時給付金の条件を満たせなければ、その2万円は受け取れません。
計算例2:通学講座の対象費用が40万円の場合
40万円全額が対象費用で、同じく全要件を満たす例です。
- 開始時:40万円×40%=16万円
- 修了時:40万円×50%−16万円=4万円
- 合格時:40万円×10%=4万円
給付は合計24万円、自己負担は16万円です。一方、同じ40万円でも通信制なら、各段階の上限により10万円・2万5,000円・2万5,000円となり、合計15万円、自己負担25万円になります。
この比較は、同じ対象費用を仮定した計算です。実際には講座価格、通学の交通費、仕事や育児との両立、受講する科目数も違うため、給付の上限だけで通学を選ぶ必要はありません。
自治体の上乗せがある場合
国の基本額より手厚い地域もあります。たとえば大阪市の案内は、開始時80%、修了時までの合計90%、合格時10%で、合計上限は通信25万円、通学等50万円です。
この率と上限は大阪市の条件です。別の自治体にそのまま当てはめたり、国の給付額をさらに足したりしないでください。窓口では「上乗せを含めて、私の講座はいくら支給されますか」と確認しましょう。
対象になる講座・費用と、先に用意するお金
対象は、高卒認定の合格を目指す民間事業者等の対策講座で、自治体が適当と認めたものです。通信講座も含まれますが、広告に「高卒認定対策」と書いてあるだけで支給対象が確定するわけではありません。
対象費用は、入学金・受講料など、講座のために支払った経費をもとに確認されます。見積書では教材費、追加講座、検定料なども分けてもらい、どこまで給付対象に含むかを自治体へ確認してください。
独学で市販の参考書を買うことと、指定を受けた対策講座を受講することは別です。また、高校に在籍して試験科目の免除に必要な単位を取り、その講座が高等学校等就学支援金の対象になる場合は、本給付の対象外です。
「受講開始時給付金」は、学校へ払う前にもらえる前払い金という意味ではありません。支払済みの費用をもとに申請するため、給付後の自己負担だけでなく、学校の支払期限までに用意する金額と、自治体からの入金時期を確認しましょう。
最初の支払いが難しい場合は、講座を契約する前に窓口へ伝えてください。国の実施要綱でも、受講開始時の支払いが難しい人に母子父子寡婦福祉資金貸付金などを紹介することが示されています。貸付は給付とは別で、利用条件や返済条件の確認が必要です。
申請方法|受講前の相談から合格後まで
申請先はハローワークではなく、住んでいる自治体のひとり親支援窓口です。市に住んでいる人は市・区の担当課、町村に住んでいる人は町村または都道府県の担当窓口へ、実施状況と申請先を確認します。
- 講座を申し込む前に相談する。本人と子のどちらが受講するか、就職・進学の希望、講座の費用・日程を伝える。
- 自立支援プログラムなどの支援を受ける。対象条件、過去の受給、必要な受験科目を確認する。
- 対象講座の指定を申請する。自治体の指定を受け、支払い・受講開始へ進む。
- 受講開始後に開始時給付金を申請する。領収書などを提出する。
- 講座修了後に修了時給付金を申請する。修了証明書と費用の証明を用意する。
- 全科目合格後に合格時給付金を申請する。合格証書などを期限内に提出する。
大阪市では、おおむね受講開始1か月前までの相談を案内し、原則として指定前に受講を始めた場合だけでなく、受講料を払った場合も不支給としています。早割などで支払いを急ぐ前に、自治体で順番を確かめてください。
申請期限は「2年以内に合格」と「給付の申請日」を分ける
京都市の実施要綱では、次の申請期限を定めています。自分の自治体でも、起算日と提出方法を確認してください。
| 手続き | 期限の例 |
|---|---|
| 開始時給付金 | 受講開始日から30日以内 |
| 修了時給付金 | 受講修了日から30日以内 |
| 合格時給付金 | 合格証書に記載された日から40日以内 |
「修了から2年以内」は、合格時給付金の対象となるための合格期限です。合格したあと2年間、申請を待ってよいという意味ではありません。期限に間に合わない事情が生じた場合は、すぐ担当窓口へ連絡してください。
必要書類は、講座指定と支給申請で分けて準備する
書類は自治体によって異なりますが、次のものを準備する場面があります。公簿で確認できる書類を省略できることもあるため、取得前に窓口の一覧を受け取ると無駄がありません。
| 確認する内容 | 主な書類の例 |
|---|---|
| 家族・住所・支援の利用 | 戸籍、住民票、自立支援プログラムの写しなど |
| 受講する講座 | 講座名・期間・費用・内容が分かるパンフレットや見積書、指定申請書 |
| 受講開始・修了 | 対象講座指定通知書、領収書、開始・修了を証明する書類 |
| 全科目合格 | 文部科学省が発行する合格証書の写しなど |
書類の例は、京都市の実施要綱などに基づきます。本人用・子ども用の名義、領収書の宛名、原本が必要かも事前に聞いておきましょう。
申し込み前に確認したい疑問
一度で全科目に合格できなかったら?
合格時給付金は、一度の試験で全科目に合格することを条件にしているわけではありません。受講修了時給付金を受け、修了から2年以内に全科目合格へ到達することが基本条件です。一部科目の合格だけでは、合格時給付金は申請できません。
2年以内に全科目合格できなかった場合は、合格時給付金の対象にはなりません。講座修了と試験合格は別の条件なので、再受験の日程と給付の期限を分けて管理しましょう。
子どもが20歳以上でも使える?
国の基本対象は20歳未満ですが、自治体独自の対象拡大があります。大阪市は、ひとり親家庭等の25歳未満の子どもも案内しています。子が受講する場合や、受講中に年齢の区切りを迎える場合は、住所地の条件を確認してください。
2026年度の受講講座で確認することは?
文部科学省の案内では、2026年度から高卒認定の試験科目に「情報」が追加されています。過去の科目合格や高校で修得した単位による免除も含め、今の自分に必要な科目を確認して講座を選びましょう。給付金の手続きと、試験への出願は別です。
高卒認定に合格すると、高校卒業になる?
高卒認定は、高校を卒業した人と同等以上の学力を認定する試験です。高校そのものを卒業する制度ではありませんが、大学・短大・専門学校への進学や、就職・資格試験に活用できます。活用先の条件は、文部科学省の概要と希望する学校・採用先の要項で確認してください。
高卒認定のあとに看護師などの資格課程へ進み、学ぶ間の生活費も検討する場合は、高等職業訓練促進給付金という別制度があります。高卒認定の講座を受けるだけで自動的に利用できるものではなく、進学先の課程や対象条件を改めて確認します。

まずは希望する講座の費用と期間が分かる資料を用意し、自治体へ「この講座は対象か」「上乗せを含めていくら戻るか」「指定前に支払ってよいか」を相談してください。給付額と手続きが決まってから、受講を申し込みましょう。

