月給に固定残業代や各種手当が含まれている場合、総支給額をそのまま所定労働時間で割っても、最低賃金の正しい判定にはなりません。時間外労働などの対価として明確に区分された固定残業代は最低賃金の計算から除外します。時間外・休日・深夜の割増賃金、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、賞与なども除き、最低賃金の対象になる通常の賃金だけを時間額へ換算します。
一方、基本給だけが最低賃金を下回っていても、直ちに違反とは限りません。毎月支払われる職務手当や資格手当、住宅手当などを算入した結果が最低賃金以上なら、最低賃金は満たします。見るべきなのは手取り額でも基本給だけでもなく、最低賃金へ算入できる賃金の合計です。
この記事では、2026年8月27日時点の厚生労働省・労働局の情報に基づき、月給者の計算を給与明細の内訳から順番に解説します。最低賃金を満たすかどうかと、固定残業代が法定の割増賃金に足りているかどうかは別の判定なので、最後まで分けて確認してください。
結論|固定残業代を除いた通常賃金で最低賃金を確認する
総支給額が高くても最低賃金を下回ることがある
「月給25万円」と表示されていても、そのうち固定残業代が4万円、通勤・家族手当が2万円なら、最低賃金との比較に使えるのは残りの19万円と、算入できる別の手当です。総支給額だけを見ると余裕があるようでも、除外項目を引くと最低賃金を下回ることがあります。
固定残業代は最低賃金の不足を埋められない
厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」では、所定労働時間を超える労働、所定労働日以外の労働、深夜労働の割増部分を最低賃金の計算から除外しています。固定残業代として明確に区分された部分も、通常の所定内労働に対する賃金ではないため、最低賃金の不足を埋める金額には使いません。
基本給だけでなく算入できる月額手当も足す
最低賃金の比較対象は基本給だけではありません。職務、役職、資格、地域、住宅など、毎月の通常労働に対して固定的に支払われる手当は、除外項目に当たらなければ原則として算入します。ただし、手当名だけで決めず、何に対する支払いかを労働条件通知書や賃金規程で確認します。
| 確認対象 | 最低賃金の判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 基本給 | 原則算入 | 通常の所定内労働に対する基本的な賃金 |
| 職務・資格・住宅手当 | 原則算入 | 除外項目でなければ月額賃金に加える |
| 固定残業代 | 除外 | 時間外等に対する賃金 |
| 通勤・家族・精皆勤手当 | 除外 | 最低賃金法令上の除外項目 |
| 税・社会保険料 | 控除前で確認 | 手取り額では比較しない |
求人票を見るときも、「月給○万円」という上段だけでなく、基本給、固定残業代、手当の内訳を確認する必要があります。職業訓練後の初任給を比較する際の見方は、次の記事で整理しています。

最初に自分へ適用される最低賃金を確認する
原則は実際に働く事業場の都道府県で決まる
比較するのは全国加重平均ではなく、実際に働く場所へ適用される最低賃金です。地域別最低賃金は、住民票の住所や会社本社の所在地ではなく、原則として働く事業場がある都道府県の額を使います。派遣労働者には派遣先の最低賃金が適用されます。地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が該当する場合は、高い方と比較します。
金額だけでなく発効日まで見る
最低賃金は改定額の発表日から直ちに変わるのではなく、都道府県ごとの発効日から適用されます。発効日は全国一律ではありません。厚生労働省の地域別最低賃金全国一覧で、時間額と発効年月日をセットで確認してください。
対象日を指定できる公式チェックを使う
厚生労働省の最低賃金比較チェックでは、就労場所、職種、確認したい期間、賃金形態を選べます。新しい改定額が報道されていても、まだ発効していなければ現在適用中の額で判定します。給与締切期間が発効日をまたぐ場合は、発効日前後の労働を分けて会社や労働局へ確認すると安全です。
最低賃金に含める手当・含めない手当
職務・役職・資格手当は原則として含める
通常の職務、役割、資格などに対して毎月支給される手当は、最低賃金から除外する項目に当たらなければ算入します。「基本給が低い」という一点だけで判断せず、通常労働の対価となる月額手当を足してください。
住宅手当は最低賃金では原則として含める
住宅手当は、残業代の算定基礎から除外できる場合がありますが、最低賃金の除外項目には挙げられていません。富山労働局の比較資料でも、最低賃金の計算では基本給、職務手当、住宅手当を算入する例が示されています。残業代の基礎と最低賃金の対象賃金は、同じ手当構成になるとは限りません。
通勤・家族・精皆勤手当は除外する
通勤手当、家族手当、精皆勤手当は、毎月支払われていても最低賃金の判定から除外します。結婚手当など臨時に支払われる賃金、賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金も算入できません。
午後10時から午前5時までの労働では、最低賃金から除くのは深夜割増部分です。予定された夜勤について、深夜労働の通常の賃金部分まで全部除外するわけではありません。
手当の名称ではなく支給目的で判断する
「営業手当」「調整手当」「業務手当」の中に固定残業代が含まれる場合は、残業の対価となる部分を分けて除外します。反対に、通勤手当という名称でも距離や実費に関係なく全員へ一律支給されるなど、実質が異なれば扱いが変わる可能性があります。名称だけで足したり引いたりできない項目は、賃金規程と会社の説明を確認します。
| 原則算入する賃金 | 除外する賃金 | 個別に中身を確認する手当 |
|---|---|---|
| 基本給 | 固定・実績の時間外割増賃金 | 営業手当 |
| 職務手当 | 休日割増賃金 | 業務手当 |
| 役職手当 | 深夜割増部分 | 調整手当 |
| 資格手当 | 通勤手当 | 一律支給の「通勤手当」 |
| 住宅手当 | 家族手当・精皆勤手当 | 実費弁償的な手当 |
| 地域手当など | 賞与・臨時手当 | 固定残業代を含む諸手当 |
月給者が最低賃金を計算する4ステップ
ステップ1|給与明細と労働条件をそろえる
給与明細だけではなく、労働条件通知書、雇用契約書、就業規則・賃金規程、会社カレンダーを用意します。最低賃金の確認には、月給の内訳、固定残業代の金額、年間所定労働日数、1日の所定労働時間が必要です。
ステップ2|算入できる月給額を出す
総支給額から、固定残業代、通勤・家族・精皆勤手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、賞与などを除きます。基本給へ職務手当や住宅手当など算入できる手当を加えた金額が、月給制部分の比較対象です。
ステップ3|1か月平均所定労働時間を出す
月ごとに所定労働時間が異なる場合は、次の式で1か月平均を求めます。
年間総所定労働時間 ÷ 12か月
または、1日の所定労働時間が一定なら
年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
日ごとに所定労働時間が異なる場合は、会社カレンダー上の年間総所定労働時間を合計して12で割ります。実際に働いた時間や残業時間を分母に加えません。有給休暇を取得したことでも分母は変えず、会社カレンダー上の所定労働時間を使います。
ただし、ここで示す基本式は欠勤控除や日割りがない通常の満額月を前提としています。欠勤、月途中の入退社、休業などで賃金が日割り・時間割りされた月は、減額後の支給額をそのまま1か月平均所定労働時間で割らず、働かなかった時間に対応する控除を分けて確認してください。「月給者は一律160時間」「週40時間なら必ず173.8時間」とも決めつけず、不明なら労働局・労働基準監督署へ確認します。
ステップ4|時間額に換算して比較する
厚生労働省の最低賃金チェック方法が示す月給者の基本式は、次のとおりです。
最低賃金の対象となる月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 適用される最低賃金
年間の数値を使うなら、「対象月給額×12÷年間総所定労働時間」でも同じ結果になります。換算途中で端数を丸めず、最後まで小数を残して比較してください。最低限必要な月給を円単位で逆算するときは、不足が出ないよう端数を切り上げます。
具体例|総支給25万円でも最低賃金を下回るケース
給与明細から除外項目を引く
次の会社で、適用最低賃金を仮に1,200円、年間所定労働日数を260日、1日8時間とします。
| 項目 | 月額 | 最低賃金へ算入 |
|---|---|---|
| 基本給 | 195,000円 | 算入 |
| 職務手当 | 10,000円 | 算入 |
| 固定残業代 | 35,000円 | 除外 |
| 通勤手当 | 5,000円 | 除外 |
| 家族手当 | 5,000円 | 除外 |
| 総支給額 | 250,000円 | 比較対象は205,000円 |
対象月給205,000円を時間額へ換算する
年間総所定労働時間は「260日×8時間=2,080時間」です。
205,000円 × 12か月 ÷ 2,080時間 = 約1,182.69円
仮定した最低賃金1,200円を約17.31円下回ります。総支給25万円をそのまま割ると約1,442.30円になるため、除外項目を確認しない計算では違反を見落とします。
最低限必要な対象月給を逆算する
同じ所定労働時間なら、「1,200円×2,080時間÷12か月=208,000円」が最低賃金へ算入できる月給部分の下限です。この例は月3,000円不足します。ただし、通常賃金が上がれば固定残業代の適正額も上がる可能性があるため、「基本給を3,000円だけ足せばすべて解決」とは限りません。
求人条件の総額を大きく見せる固定残業代や、不自然に高い除外手当を見抜くには、複数の条件を並べて確認する必要があります。

最低賃金を満たしても固定残業代が不足することがある
2つの判定は別々に行う
最低賃金の判定と固定残業代の不足判定は別です。第一の判定は、通常賃金が最低賃金以上かです。第二の判定は、固定残業代が実際の時間外・休日・深夜労働に対する法定額以上かです。最低賃金を満たしていても固定残業代が不足することがあり、固定残業代が高額でも通常賃金の最低賃金割れは埋められません。
さらに、最低賃金から除外する手当と、割増賃金の基礎から除外できる手当は一致しません。たとえば精皆勤手当や住宅手当は、二つの計算で扱いが異なることがあります。そのため、同じ賃金の範囲をそのまま使い回してはいけません。雇用契約書と賃金規程を基に、それぞれの制度の分子を作り直します。
固定残業20時間分の不足例
説明を単純化し、その月に法定時間外労働を20時間行ったものとします。割増賃金の算定基礎となる月給が208,000円、月平均所定労働時間が160時間、固定残業代が30,000円の場合、基礎時給は1,300円です。
1,300円 × 1.25 × 20時間 = 32,500円
適用最低賃金を1,200円とすれば通常賃金は最低賃金を満たしますが、この月は固定残業代のほかに2,500円の追加支給が必要です。実際の法定時間外労働が20時間未満なら必要額も実績に応じて変わりますが、約定された固定残業代30,000円自体は支払われます。実務では法定内残業、法定時間外、休日、深夜、月60時間超などで割増率が異なるため、契約の対象時間と勤怠を分けて計算します。
固定時間を超えた分は追加支給が必要
厚生労働省の固定残業代Q&Aでは、通常賃金部分と固定残業代部分を判別できること、固定残業代が法定計算額を下回るときは差額を支払うことが示されています。固定残業時間を超えた残業、別途計算が必要な休日・深夜労働を「固定残業代を払っているから追加なし」と一括処理することはできません。
固定残業代を支払えば36協定や労働時間の上限規制が不要になるわけでもありません。固定額は賃金の支払い方法であり、会社が時間外労働を命じられる条件や時間数の上限とは別問題です。
内訳や所定労働時間が分からないときの確認方法
固定残業代の金額が分かれた書類を探す
求人票、労働条件通知書、雇用契約書、給与明細、就業規則・賃金規程を確認します。求人時には、固定残業代の計算方法、固定残業代を除く基本給、固定時間を超えた分を追加支給する旨の明示が求められます。雇用後も通常賃金と割増賃金を判別できる必要があります。
「基本給に残業代を含む」だけなら会社へ内訳を聞く
固定残業代の金額も対象時間も分からなければ、総額のうち最低賃金に使える部分を自分で確定できません。厚生労働省の労働者向けQ&Aを参考に、「通常賃金はいくらか」「固定残業代はいくら・何時間分か」「超過分はどう支給するか」を書面で確認してください。記載不足だけで個別契約の効力を一律に断定せず、説明内容や勤務実態も含めて相談します。
変形労働時間制は会社カレンダーを使う
1か月単位・1年単位の変形労働時間制、シフト制などは、月によって所定労働時間が変わります。「正社員だから160時間」「週40時間だから173.8時間」と固定せず、対象年度の会社カレンダーと就業規則から年間総所定労働時間を確認します。
日給・月給・歩合給が混在する場合は別々に換算する
基本給が日給で職務手当が月給、さらに歩合給がある場合は、賃金形態ごとに時間額へ換算して合計します。歩合給は、その賃金計算期間に歩合給を得るため働いた総労働時間で割るため、月給部分と同じ分母にはなりません。複雑な場合は公式チェックや労働局賃金課室へ確認してください。
求人票・労働条件通知書ではここを見る
「月給」の内訳を3つに分ける
求人の月給は、①通常賃金、②固定残業代、③通勤・家族など最低賃金へ算入できない手当に分けます。「月給25万~35万円」とだけ書かれている場合は、自分に適用される下限25万円の内訳で確認します。歩合や条件付き手当を最初から満額と見込まないことも大切です。
固定残業時間と年間休日をセットで確認する
固定残業代が同じ3万円でも、10時間分と30時間分では条件が違います。また、通常賃金が同額なら、年間所定労働時間が長い求人ほど時間額は低くなります。固定残業時間、1日の所定労働時間、年間休日、変形労働時間制の有無を一緒に見ます。
月給額だけで転職条件を決めない
最低賃金をわずかに上回るかだけでなく、実際の残業、休日、仕事内容、教育体制、昇給、通勤時間も比較します。固定残業代があること自体を直ちに違法と決めつけず、内訳の透明性と超過分の支払いを確認してください。
初任給、働きやすさ、仕事内容のどれを優先するか迷う場合は、応募前に判断軸を決めておくと総支給額だけに引っ張られにくくなります。

最低賃金を下回っていたときの対処法
計算に使った資料と対象期間を保存する
給与明細、労働条件通知書、雇用契約書、求人票、就業規則、賃金規程、会社カレンダー、タイムカードを保存します。最低賃金額と発効日は対象期間ごとに変わるため、「いつからいつまで、どの金額を使ったか」を表にすると説明しやすくなります。
会社へ計算根拠をメールで確認する
最初から違法と断定せず、「最低賃金へ算入した賃金項目」「1か月平均所定労働時間」「固定残業代の対象時間」「超過分の計算」を質問します。口頭回答を受けたら、認識確認のメールを送り記録を残してください。
最低賃金との差額は支払いの対象になる
厚生労働省「最低賃金とは」によると、最低賃金未満の賃金を労使で合意しても、その部分は無効となり、最低賃金額と同じ定めをしたものとみなされます。使用者は最低賃金との差額を支払う必要があります。「本人が同意した」「試用期間の契約書に書いた」という理由だけで不足分がなくなるわけではありません。
試用期間でも会社の判断だけでは最低賃金を下げられない
試用期間だから自動的に最低賃金を下げられるわけではありません。試用期間中の人などについて最低賃金を減額するには、会社が都道府県労働局長の個別の許可を受ける必要があります。単に就業規則や契約書へ「試用中は低い賃金」と書いたことや、会社が申請を検討していることだけでは足りません。制度の概要は労働局の最低賃金減額特例許可制度で確認できます。
差額請求には期間があるため早めに動く
賃金請求権の消滅時効は法律上5年へ延長されていますが、2026年8月27日時点では当分の間、支払期日から原則3年です。給与の支払期日ごとに期間が進むため、古い明細から放置しないでください。時効の考え方は厚生労働省の賃金請求権Q&Aで確認できます。
罰金と自分が受け取る差額は別
地域別最低賃金を支払わない使用者には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科されることがあります。ただし、罰金は労働者へ支払われる差額ではありません。行政や刑事手続の罰則と、自分が会社へ未払い賃金の差額を求めることは分けて考えます。特定最低賃金だけを下回る場合の罰則は扱いが異なるため、詳しくは大阪労働局の罰則案内を確認してください。
最低賃金不足と残業代不足を分けて整理する
通常賃金の最低賃金不足、固定残業代そのものの不足、固定時間を超えた残業代の未払いは、それぞれ計算式が異なります。請求や相談では一つの総額にまとめず、「通常賃金の不足」「固定残業代の不足」「超過残業代」に分けると争点が明確になります。
相談先と伝える内容
最低賃金は労働局・労働基準監督署へ相談する
適用額、算入できる手当、月平均所定労働時間の計算、差額の未払いは、都道府県労働局の賃金課室または最寄りの労働基準監督署へ相談できます。給与明細と労働条件資料に、自分の計算式を添えて持参すると状況を伝えやすくなります。
夜間・休日は匿名の電話相談も使える
労働条件相談「ほっとライン」は、労働基準関係法令について無料・匿名で相談できる厚生労働省委託事業です。ただし、相談員が会社を直接指導する窓口ではありません。制度の整理や適切な相談先の確認に使い、行政対応が必要なら監督署等へ相談します。
転職する場合も未払いの資料を捨てない
会社へ確認した結果、転職を選ぶ場合も、退職しただけで過去の事実が消えるわけではありません。資料と計算記録を保存したまま相談してください。次の求人では、固定残業代の内訳と実際の求人件数を早い段階で比較します。

よくある質問
Q1.基本給が最低賃金を下回れば必ず違法ですか?
基本給だけでは決まりません。職務手当、資格手当、住宅手当など最低賃金へ算入できる月額手当を足し、1か月平均所定労働時間で割った額を比較します。固定残業代や通勤・家族・精皆勤手当は足せません。
Q2.残業をしなかった月も固定残業代を除きますか?
固定残業代として明確に区分された部分は、実際の残業が少ない月でも時間外等の対価なので、最低賃金を確認する通常賃金には算入しません。実際の残業が少ないことを理由に、会社が固定額を勝手に減らせるという意味でもありません。
Q3.住宅手当は最低賃金に含まれますか?
毎月支払われる住宅手当は、最低賃金の除外項目ではないため原則として算入します。残業代の算定基礎では除外できる場合があるため、二つの計算を混同しないでください。
Q4.役職手当や資格手当は含まれますか?
通常の役割や資格に対して毎月支給されるなら、原則として算入します。ただし、役職手当の一部を固定残業代として扱う規定がある場合は、その部分を分けて確認します。
Q5.通勤手当・家族手当・皆勤手当は含められますか?
通勤手当、家族手当、精皆勤手当は最低賃金の計算から除外します。ただし名称と実質が明らかに異なる特殊な支給は個別判断になるため、賃金規程を確認してください。
Q6.手取り額を勤務時間で割ればよいですか?
手取り額では計算しません。税金や社会保険料を控除する前の賃金内訳から、最低賃金の対象外となる固定残業代や各種手当を除いて比較します。
Q7.実際に働いた残業時間も分母へ入れますか?
月給制部分は1か月平均所定労働時間で割るため、実際の残業時間を分母へ加えません。残業時間は、固定残業代や追加の割増賃金が足りているかという別の計算に使います。
Q8.月平均所定労働時間が分からない場合は?
就業規則、労働条件通知書、会社カレンダーで年間総所定労働時間を確認し、12で割ります。資料がない場合は人事・給与担当へ計算根拠を書面で質問し、曖昧なら労働局や監督署へ相談してください。
Q9.固定残業代の時間数が書かれていなければ無効ですか?
記載の不足だけで個別契約の効力を一律に断定はできませんが、通常賃金と固定残業代を判別できることが重要です。金額、対象時間、超過分の支給方法を会社へ確認し、契約書、説明、勤務実態をそろえて相談します。
Q10.固定残業時間を超えたら追加の残業代をもらえますか?
固定残業代が対象とする時間を超え、法定の計算額が固定額を上回る場合は差額の支払いが必要です。休日労働や深夜労働が固定額の対象に含まれるかも、規定と実績を分けて確認します。
Q11.最低賃金を下回ることへ同意したら請求できませんか?
最低賃金未満の合意は、その不足部分が法律上無効とされます。契約書へ署名したことだけで差額支払いが不要になるわけではありません。対象期間と証拠を整理して早めに相談してください。
Q12.最低賃金改定後はいつの給与から変わりますか?
給与の支給日だけではなく、都道府県ごとの発効日以後に行った労働へ新しい最低賃金が適用されます。締切期間が発効日をまたぐ場合は、会社の計算明細を確認し、不明なら労働局賃金課室へ問い合わせてください。
Q13.固定残業代がある求人は避けるべきですか?
固定残業代制度自体が直ちに違法なのではありません。通常賃金と固定残業代が明確か、時間数が過大でないか、超過分を追加支給するか、実際の残業と年間休日がどうかを確認して判断します。
まとめ|総支給額を3つに分けて2回チェックする
固定残業代・手当込みの月給は、①最低賃金へ算入できる通常賃金、②固定残業代、③通勤・家族・精皆勤手当などの除外項目に分けます。通常賃金を1か月平均所定労働時間で割り、勤務地・業種・発効日に応じた最低賃金と比較してください。
その後、固定残業代が対象時間分の法定割増賃金に足りるか、固定時間を超えた差額が支払われているかを別に確認します。内訳や年間所定労働時間が分からなければ、総支給額だけで結論を出さず、会社へ計算根拠を求めます。下回る可能性がある場合は、給与明細、契約書、会社カレンダー、勤怠を保存し、労働局や労働基準監督署へ相談してください。

