最後の給料が思ったより少ない。給与明細を見たら健康保険料や厚生年金保険料がいつもの約2倍になっていた。退職後にも保険料を払う予定があると「二重払いでは」と心配になります。
月末退職では前月分と退職月分の社会保険料を最後の給与からまとめて控除する場合があります。2か月分引かれていることだけで誤りとはいえません。確認するのは引き落とされた回数ではなく、何月分の保険料をいくら払ったかです。
この記事では主に会社の健康保険と厚生年金を対象に、退職日・資格喪失日・明細の対象月を照合する手順を整理します。雇用保険料や住民税は別の項目として確認してください。
退職時に社会保険料が2か月分引かれるのはなぜ?
会社の給与から引かれる保険料は、その給与を受け取った月の分とは限りません。前月分を翌月支給の給与から控除する場合があります。
たとえば9月末に退職し、9月支給の給与で8月分を引く会社を考えます。退職月の9月分も必要になるため、最終給与で8月分と9月分をまとめて精算することがあります。
日本年金機構も月末退職の場合は給与計算の締切日によって、前月分と当月分が退職時の給与から控除される場合があると案内しています。
ただし月末退職なら必ず2か月分になるわけではありません。すでに控除済みの月があるか、退職後に支払われる給与で精算するかによって最後の明細は変わります。「退職者は全員2か月分です」という説明だけでなく対象月まで確認しましょう。
最初に退職日と資格喪失日を確認する
退職による健康保険・厚生年金の資格喪失日は原則として退職日の翌日です。通常は資格喪失日のある月の前月分まで、退職した会社での保険料が必要になります。
| 退職日 | 資格喪失日 | 前職で必要な月額保険料 |
|---|---|---|
| 9月15日 | 9月16日 | 原則8月分まで |
| 9月29日 | 9月30日 | 原則8月分まで |
| 9月30日(月末) | 10月1日 | 9月分まで |
※前の月から継続して加入していた一般的な例です。入社と資格喪失が同じ月になる「同月得喪」などは後述の確認が必要です。
最終出勤日や給与の締日とは分ける
9月15日が最終出勤日でも、その後に有給休暇を使って9月30日付で退職したなら資格喪失日は10月1日です。最後に出社した日を退職日として計算しないでください。
給与が20日締めでも、保険料の対象月を20日で区切るわけではありません。給与の計算期間と保険料の計算月は別です。退職後の10月に最終給与が振り込まれた場合も、それだけで10月分の保険料とは判断できません。
資格喪失証明書などの日付と会社の説明が合わない場合は、届出の日付を確認します。証明書自体が届いていないときはこちらを参考にしてください。
給与明細を3回分並べて「何月分か」を照合する
まず最終給与とその前2回分の明細を用意します。必要に応じてさらにさかのぼり、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料を項目ごとに確認してください。
見る順番は次のとおりです。
- 給与の支給日と明細の名称を控える
- 各保険料の控除額を写す
- 何月分を引いたか会社に確認して書き足す
- 同じ月・同じ保険料が重複していないか比べる
- 調整額や返金がある場合は対象月と差額を別に記録する
明細に「9月給与」と書かれていても「9月分の保険料」とは限りません。対象月が記載されていなければ金額から推測せず給与担当者に確認します。
月末退職で2か月分を精算する例
次は9月30日退職で、9月支給の給与を最終給与とする例です。健康保険料の本人負担額を毎月15,000円、厚生年金保険料を毎月27,450円と仮定します。金額は説明用で、実際の料率や等級を示すものではありません。
| 給与の支給月 | 控除する保険料の対象月 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 |
|---|---|---|---|
| 7月 | 6月分 | 15,000円 | 27,450円 |
| 8月 | 7月分 | 15,000円 | 27,450円 |
| 9月(最終給与) | 8月分+9月分 | 30,000円 | 54,900円 |
この例の最終給与では2項目の合計が84,900円になります。対象月が重ならず、未精算だった8月分と9月分を払っているので二重払いではありません。
一方で8月支給の給与ですでに8月分を控除済みなのに、最終給与にも8月分全額が含まれているなら確認が必要です。ただし等級の変更などによる差額調整なら同じ月の記載があっても重複徴収とは限りません。
金額が前月のちょうど2倍でなくても対象月を確認する
保険料は標準報酬月額や適用される料率などによって決まります。2か月の途中で適用額が変われば単純な「前月の控除額×2」にはなりません。
退職月の給与が日割りで少なくなっても、月額保険料が同じ割合で日割りになるわけではありません。金額が合わないときは各月の標準報酬月額・本人負担額・調整額を聞いてください。
退職してWeb明細に入れなくなった場合は、対象の支給月を指定してPDFや紙での交付を依頼します。
二重払いを疑う場面と通常の精算を分ける
| 明細や請求の状況 | 確認のポイント |
|---|---|
| 月末退職で前月分と退職月分を控除 | 過去の給与で同じ月を精算していなければ通常の処理として考えられる |
| 以前の明細と同じ月の保険料を再び控除 | 全額の重複か差額調整かを確認する |
| 月途中退職なのに退職月分も控除 | 対象月の読み違いがないか、同月得喪か、届出や控除の誤りかを確認する |
| 会社負担分も最後の給与から引くと説明された | 2か月分の本人負担と会社負担の転嫁を区別して説明を求める |
| 最終給与の控除と国保・任意継続の請求が同じ月に来た | 支払う月ではなく、それぞれの加入期間と保険料の対象月を比べる |
| 前職と転職先の両方の給与で保険料を控除 | 両社の資格取得・喪失日と対象月を確認する。同じ支給月でも対象月は異なる場合がある |
「2か月分」と「会社負担分も払う」は別の話
厚生年金保険料は会社と本人が折半し、協会けんぽの健康保険料も原則折半です。最終給与で本人負担を2か月分精算することと、会社負担分まで本人に請求することは同じではありません。
退職後に任意継続へ加入した場合は本人が全額を負担するため、在職中の健康保険料のおおむね2倍になることがあります。こちらは「1か月分の負担額が増える」話です。最終給与から2か月分引かれる仕組みと混同しないようにします。
同じ月に入社・退職した場合は別途確認する
同じ月に資格を取得して喪失した場合は、月途中退職でもその月の保険料が発生することがあります。入社日だけでなく社会保険の資格取得日も伝えて確認してください。
厚生年金は同月得喪の後、その月内にさらに厚生年金や国民年金の資格を取得した場合に先に喪失した分の保険料が不要となり、会社を通じた還付になる扱いがあります。健康保険には同じ還付ルールをそのまま当てはめられません。健康保険と年金を分けて照会しましょう。
退職後の国保・任意継続・国民年金とも対象月で比べる
9月30日退職なら前職の保険料は9月分まで、10月1日から任意継続に加入するなら任意継続の保険料は10月分からです。10月に最終給与の控除と任意継続の支払いが重なっても、対象月が違えば二重払いではありません。
9月15日退職で以前から加入していたケースなら前職の保険料は原則8月分までです。退職後に国民年金第1号へ切り替わり、9月末も第1号であれば9月分の国民年金保険料が必要になります。月途中で辞めれば退職月の保険料がすべて不要になるとは限りません。
国民健康保険の通知書では「第○期」や納期限の月を、そのまま加入対象月と読み替えないことも大切です。たとえば横浜市は1年度分を原則6月から翌年3月までの10回に分けて納める方式です。年度の保険料を分割しているため、1回の納付が1か月分とは限りません。
重複して見える場合は納付通知を放置せず、自治体や保険者へ加入日と対象期間を確認します。会社への照会中に納期限が来るときも、支払いの扱いを請求元へ相談してください。
会社への確認メールは「対象月・金額・控除済み分」を聞く
「二重に引かれています」と断定するより、明細の内訳を求めると照合しやすくなります。次の文例の支給日と金額を自分の明細に合わせて変更してください。
件名:最終給与の社会保険料控除についての確認
給与ご担当者様
○月○日付で退職した○○です。○月○日支給の給与明細について、健康保険料○円・厚生年金保険料○円の控除内容を確認したくご連絡しました。以下の点をご教示いただけますでしょうか。
1.それぞれ何月分の保険料か
2.各月の本人負担額と標準報酬月額
3.過去の給与で控除済みの月と今回の精算対象月
4.差額調整がある場合の対象月・理由・金額
5.届出上の資格喪失日退職後の保険料と照合したいため、可能であれば月別の内訳を書面またはメールでお知らせください。控除の誤りがある場合は訂正内容と返金予定日もご案内いただけますと幸いです。
氏名:○○
在籍時の社員番号:○○
訂正するとの回答があったら、返金額・返金方法・予定日を確認して明細と一緒に保管します。「翌月に調整」と言われても退職後に給与支給がない場合があるため、具体的な返金方法まで聞いておきましょう。
説明が合わないときは資料をそろえて相談する
会社の回答を受けても不明な場合は、給与明細・退職日が分かる書類・資格喪失に関する書類・会社の回答をそろえます。退職後の請求と重なるなら納付通知書も必要です。
- 厚生年金の資格日・保険料の扱い:年金事務所
- 健康保険の資格・保険料:加入していた協会けんぽ支部や健康保険組合。協会けんぽの事業所経由の届出・徴収については年金事務所への確認が必要な場合もあります
- 国民健康保険の対象期間・納付通知:市区町村の国保窓口
- 賃金からの控除や返金をめぐる労働問題:労働基準監督署や総合労働相談コーナー
制度上必要な保険料と、会社が給与から実際に引いた額は別々に確認します。保険料の対象月が正しくても同じ額を2回引いていれば給与精算の訂正が必要です。
最後の給料が少ないときは退職日→資格喪失日→保険料の対象月→過去の控除額の順に確認してください。この4点がそろえば、通常の2か月分の精算なのか会社へ訂正を求める状況なのかを整理できます。
参考資料
- 日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」
- 日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」
- 日本年金機構「保険料の計算方法について」
- 協会けんぽ「保険料について(任意継続制度)」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
- 横浜市「保険料について」
※2026年9月25日時点の公的資料をもとに作成しています。保険料の免除や同月中の資格変更などがある場合は個別の確認が必要です。




