再就職手当の申請書をまだ出していないのに、再就職先を辞めた。「退職した時点でもう申請できないのか」「失業保険はいつから再開するのか」と迷う人もいるでしょう。
結論からいうと、再就職手当を申請する前に再就職先を辞めても、退職した事実だけで申請不可にはなりません。入社時点の契約が「1年を超えて雇用される見込み」などの支給要件を満たしていれば、退職後でも申請できます。
ただし、再就職手当を申請する場合、手当に相当する60%または70%の日数は基本手当を受給済みと扱われます。元の失業保険が全日数そのまま再開するわけではありません。また、基本手当は退職日に自動で戻らず、原則としてハローワークで再求職の申込みをした日から再開します。
この記事では、2026年8月31日時点の公的情報をもとに、未申請のまま退職した人が行う手続き、会社の証明、残日数の計算、離職票が届かない場合まで順番に解説します。
結論|申請前に辞めても再就職手当を申請できる場合がある
ハローワーク上野の雇用保険Q&Aは、再就職手当を申請する前に退職した場合でも申請可能と案内しています。ただし、再就職手当支給申請書の事業主証明は、退職後の状況ではなく入社時の契約内容に基づいて記入してもらう必要があります。
| 現在の状況 | 再就職手当 | 失業保険の再開 |
|---|---|---|
| 申請書を未提出で退職 | 入社時点で全要件を満たせば申請可能 | 新しい受給資格がなければ、元の受給期間・調整後の残日数内で再開 |
| 申請中に退職 | 退職を申請先へ連絡し、審査を継続 | 退職翌日以降、再求職を申し込む |
| すでに支給決定・振込済み | 正しい申請なら短期離職だけで直ちに返還とは限らない | 手当相当日数を引いた残日数で判断 |
| 再就職先で新しい受給資格を取得 | 個別確認 | 原則として新しい離職による受給資格で手続き |
この記事の対象は、申請書をまだ提出していないまま退職したケースです。すでに再就職手当を受け取った後に辞めた人は、返還と残日数の扱いが異なるため、次の記事で確認してください。

まず区別するのは「過去の再就職」と「現在の失業」
退職後に行う手続きは一つではありません。次の二つを分けると、何を相談すべきか分かります。
| 手続き | 対象 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 再就職手当の申請 | 過去に就職した事実 | 就職日の残日数、入社時の契約、8つの支給要件 |
| 基本手当の再開 | 再び失業した現在の状態 | 再求職申込日、元の受給期間、調整後の残日数、新しい受給資格の有無 |
「もう退職したから就職時の手当はゼロ」でも、「再就職手当と元の基本手当を満額で二重にもらえる」でもありません。厚生労働省の2026年8月版・雇用保険業務取扱要領は、再就職手当を受ける前に離職し、新しい基本手当の受給資格を得ていない人が申請を希望する場合、再就職手当を支給した後、手当に相当する日数を引いた残日数で基本手当を支給する取扱いを示しています。
窓口では最初に「再就職手当を未申請のまま退職した。再就職手当も申請したい」と伝えてください。基本手当の再開だけを先に処理すると考えず、同じハローワークで二つの手続きの順序を確認します。
退職後に行う5つの手順
1.退職日の翌日以降、すぐハローワークへ行く
基本手当は、退職翌日に自動で再開するわけではありません。厚生労働省の雇用保険Q&A・Q44によると、再就職先を離職した後の基本手当は、原則として改めて求職の申込みをした日から再開します。
たとえば8月20日に退職しても、再求職の申込みが9月10日なら、8月21日まで自動的にさかのぼって支給されるわけではありません。離職票が届くまで数週間待たず、退職日の翌日以降、仕事を探せる状態になったら速やかに受給手続きをしたハローワークへ相談してください。
2.再就職手当を申請したいと最初に伝える
窓口では、次のように状況を時系列で伝えます。
○月○日に再就職し、○月○日に退職しました。再就職手当支給申請書はまだ提出していません。入社時の契約は○年○月までで、更新条項は○○でした。再就職手当の申請と基本手当の再開を希望しています。
就職日、退職日、雇用保険加入の有無、入社時の契約期間、契約更新条項、元の受給期間満了日をメモしておくと確認が早くなります。
3.入社時の契約に基づく事業主証明を依頼する
退職後でも、再就職手当支給申請書の「事業主の証明」が必要です。会社には現在の状態ではなく、採用時点の契約内容を記入してもらいます。
- 雇用開始日と退職日
- 入社時に定めた雇用期間
- 契約更新条項の有無
- 入社時点で1年を超えて雇用する見込みがあったか
- 雇用保険の被保険者番号
退職したからといって、会社に「今後も1年以上雇う」と事実と異なる証明を求めるのではありません。「採用時には1年を超えて働く見込みの契約だった」と確認できる内容を記載してもらいます。
4.再就職先の離職を確認できる書類を提出する
再就職先で雇用保険に加入していた場合は、雇用保険受給資格者証に加え、原則として新しい会社の離職票1・2または雇用保険被保険者資格喪失確認通知書を提出します。加入していなかった場合は、ハローワーク所定の離職状況証明書などで在職期間と退職日を確認します。
書類がまだ届いていなくても、再求職の申込みを遅らせないでください。厚生労働省Q&Aは、離職を確認する書類を後日提出できると案内しています。手元にある雇用契約書、労働条件通知書、退職証明書、給与明細を持参し、必要な所定書類を確認します。
再就職先の離職票が届かず、会社への連絡方法や仮手続きを確認したい場合は、次の記事に進めます。

5.再就職手当支給後の残日数で基本手当を再開する
新しい受給資格が発生していない場合は、最初の離職による受給期間と残日数を使います。再就職手当を申請するなら、手当に相当する日数を基本手当の支給済み日数とみなし、その後に残った日数が再開の上限です。
実際の処理順序と必要書類は受給状況で変わるため、再就職手当の申請と再求職の申込みを別々の日に自己判断で進めず、最初の来所時に両方を申し出てください。
退職後でも再就職手当の対象になる8つの条件
申請前の退職が一律の不支給理由ではなくても、就職した時点で再就職手当の一般要件を全て満たす必要があります。主な条件は次のとおりです。
- 就職日の前日までに失業認定を受けた基本手当の残日数が、所定給付日数の3分の1以上ある
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる
- 待期7日間が終わった後に就職した
- 給付制限がある人が待期満了後1か月以内に就職した場合、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者等の紹介による就職である
- 離職前の会社や、資本・人事・取引面で密接な関係がある会社への再就職ではない
- 就職日前3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していない
- 受給資格決定前から採用が内定していた会社への就職ではない
- 原則として雇用保険の被保険者になる条件で働いていた
とくに重要なのが2番です。実際に1年以上勤めたかではなく、入社時点で1年を超えて働く見込みが確実だったかを見ます。数日や1週間で辞めたという勤務日数だけで自動的に対象外になるわけではありませんが、最初から1か月契約で更新なしだったなど、入社時の契約が要件を満たさなければ支給されません。
再就職手当の申請期限は「原則1か月」と「時効2年」を分ける
再就職手当支給申請書は、原則として就職日の翌日から1か月以内に提出します。短期離職している場合は、会社証明や離職書類の準備に時間がかかるため、さらに急ぐ必要があります。
ただし、1か月を1日でも過ぎたら必ず権利がなくなる、という意味ではありません。奈良労働局の雇用保険給付の申請期限案内では、申請期間を過ぎても、就職日の翌日から2年の時効が完成する前なら申請可能と案内しています。
一方、基本手当には元の受給期間満了日があり、再求職申込日より前へ原則さかのぼりません。「再就職手当は2年以内だから待ってよい」と考えず、退職翌日以降すぐハローワークへ連絡してください。
再開できる失業保険の日数はいくつ?
再就職手当を受けると60%・70%相当の日数を差し引く
再就職手当の支給額は、就職日の前日における基本手当の残日数で決まります。
| 就職日前日の残日数 | 再就職手当の支給率 | 支給済みとみなす日数 |
|---|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 基本手当日額×残日数×70% | 残日数の70%相当 |
| 3分の1以上、3分の2未満 | 基本手当日額×残日数×60% | 残日数の60%相当 |
| 3分の1未満 | 対象外 | 再就職手当による調整なし |
再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限があります。2026年8月1日から2027年7月31日までは、60歳未満が6,745円、60歳以上65歳未満が5,454円です。
例1|90日のうち80日を残して就職し、申請前に退職した
| 所定給付日数 | 90日 |
|---|---|
| 就職日前日の残日数 | 80日 |
| 基本手当日額 | 6,000円(59歳以下、上限にかからない前提) |
| 支給率 | 70% |
再就職手当
6,000円×80日×70%=336,000円基本手当を受給済みとみなす日数
80日×70%=56日再開できる基本手当の上限
80日-56日=24日
この例では再就職手当33万6,000円を受けた後、元の受給期間が残っていれば、基本手当は最大24日分の再開です。80日分が丸ごと再開するわけではありません。
例2|90日のうち40日を残して就職した
基本手当日額5,000円、残日数40日なら、所定給付日数90日の3分の1以上・3分の2未満なので支給率は60%です。
再就職手当
5,000円×40日×60%=120,000円支給済みとみなす日数
40日×60%=24日再開できる基本手当の上限
40日-24日=16日
申請するか迷う場合は、金額だけでなく、元の受給期間満了日までに残日数を受け切れるか、次の就職の見込み、当面の生活費も含めて比較します。
元の受給期間は就職中も進む
基本手当を受けられる期間は、原則として最初に離職した日の翌日から1年間です。再就職している間も、このカレンダー上の期間は進みます。就職期間中は失業日ではないため基本手当の対象になりませんが、働いた日数がそのまま所定給付日数から引かれるわけでもありません。
しかし、再就職手当が支給されれば、前項の60%または70%相当の日数が支給済み扱いになります。さらに、元の受給期間満了日を過ぎると、残日数があっても原則として支給を受けられません。
「残日数が24日ある」だけでなく、「受給期間満了日まであと何日あるか」を雇用保険受給資格者証で確認してください。
再就職先で新しい受給資格を得た場合はどうなる?
短期離職で新しい基本手当の受給資格を得ていなければ、元の受給資格を使って再開します。一方、再就職先で新たな受給資格を得た場合は、原則として新しい離職に基づいて受給手続きを行い、以前の受給資格は使えなくなります。
新しい受給資格に必要な被保険者期間は、原則として離職前2年間に12か月以上です。倒産・解雇等の特定受給資格者や一定の特定理由離職者は、離職前1年間に6か月以上で判断される場合があります。単純な在籍月数だけでなく、賃金支払基礎日数11日以上または労働時間80時間以上の月を数えます。
| 再就職先の加入状況 | 基本手当の扱い |
|---|---|
| 新しい受給資格なし | 元の受給期間・調整後の残日数で再開 |
| 新しい受給資格あり | 新しい離職理由・賃金・被保険者期間で手続き |
| 加入していたか不明 | マイナポータル、資格喪失確認通知書、ハローワークで確認 |
待期7日と給付制限はもう一度やり直す?
新しい受給資格がなく、元の受給資格を再開する場合、短期離職したという理由だけで、待期7日と新しい給付制限を必ず最初からやり直すわけではありません。
ただし、最初の受給資格に対する待期や給付制限が就職時点でまだ終わっていなければ、その残りが経過するまで基本手当は支給されません。再就職手当の対象者は待期満了後に就職している必要がありますが、給付制限期間の途中で就職した人は残り期間を確認してください。
新しい受給資格が発生した場合は、新しい離職理由で待期と給付制限を判定します。「再就職先を自己都合で辞めたから、元の残日数にも必ず新たな1か月制限が付く」と一律には判断できません。
再離職後、すぐ再転職するか職業訓練へ進むか
短期離職の直後は、同じ条件の仕事へ急いで応募する前に、辞めた理由を分けて考えると次の選択を決めやすくなります。
- 仕事内容・勤務時間が求人票や契約と違った
- 必要な技能が足りず、業務についていけなかった
- 体調や家庭事情と勤務条件が合わなかった
- 職種自体が合わないと分かった
- 会社都合で契約が終わった
条件の見落としなら求人票と労働条件通知書の比較を増やし、技能不足が原因なら、残日数と訓練開始日を見ながら公的職業訓練を検討できます。再転職と職業訓練のどちらを選ぶかは、次の記事で比較できます。

再就職手当の申請前退職でよくある質問
Q1.申請書を出す前に1週間で辞めても申請できますか?
1週間で辞めた事実だけで一律に申請不可とはなりません。入社時点で1年を超えて雇用される見込みがあり、残日数、待期、紹介経路など全要件を満たしていたかを審査します。最初から1週間だけの契約だった場合は、1年超の見込みを満たしません。
Q2.退職済みでも会社に事業主証明を書いてもらえますか?
会社には退職後の見込みではなく、入社時の契約内容に基づいて証明してもらいます。雇用契約書や労働条件通知書の写しを添え、就職日、雇用期間、更新条項、入社時の1年超雇用見込みを事実どおり記入してもらってください。
Q3.会社が申請書を書いてくれない場合は?
事実と異なる記載を求めたり、自分で会社欄を書いたりせず、申請期限を待たずにハローワークへ相談してください。雇用契約書、労働条件通知書、採用証明書、給与明細、雇用保険の資格取得記録などを持参します。会社証明なしで必ず支給されるとは断定できませんが、確認方法と追加資料を案内してもらえます。
Q4.就職日の翌日から1か月を過ぎたら申請できませんか?
原則の申請期間は1か月ですが、直ちに失権するとは限りません。就職日の翌日から2年の時効完成前なら申請できると案内されています。ただし、基本手当の受給期間と再求職申込日は別に進むため、遅れた時点ですぐ申請先へ連絡してください。
Q5.失業保険は退職日から自動で再開しますか?
自動ではありません。原則として退職日の翌日以降にハローワークで再求職の申込みをした日から再開します。書類が届くまで待って空白を作らないことが重要です。
Q6.雇用保険に入っていた場合と入っていない場合で書類は違いますか?
違います。加入していた場合は離職票1・2または資格喪失確認通知書、加入していなかった場合は所定の離職状況証明書などを使用します。いずれも雇用保険受給資格者証を持参し、書類未着なら先に窓口へ相談してください。
Q7.再就職手当の申請と失業保険の再開はどちらが先ですか?
来所は遅らせず、最初に両方を希望すると伝えます。新しい受給資格がなく、再就職手当を申請する場合、制度上は再就職手当を支給し、その相当日数を差し引いた後の残日数で基本手当を支給する取扱いです。具体的な書類の提出順は担当ハローワークの指示に従ってください。
Q8.再就職手当が振り込まれる時点で無職でも大丈夫ですか?
退職済みという理由だけで一律に申請不可ではありません。ただし、支給要件を入社時点で満たしたか、会社証明と契約書から個別に審査されます。「退職後でも申請できる」と「必ず支給される」は別です。
Q9.新しい会社を6か月未満で辞めたら就業促進定着手当も申請できますか?
就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受け、同じ再就職先に6か月以上雇用され、再就職後6か月の賃金が離職前より低い場合などが対象です。6か月未満で辞めた場合は対象になりません。
Q10.退職後にアルバイトをしたら基本手当はどうなりますか?
働いた日は全て失業認定申告書へ記載します。原則として1日4時間以上働いた日は基本手当がその日に支給されず、残日数へ後送りします。4時間未満は収入により減額・不支給となる場合があります。週20時間以上の継続的な仕事は就職扱いになることがあるため、始める前に申告方法を確認してください。
再離職を機に職業訓練を検討する場合は、すぐコースだけを選ばず、失業保険の残日数、申込締切、選考日、訓練開始日、初回入金までの生活費を一緒に確認します。

まとめ|退職翌日以降すぐ「手当申請と再求職」を同時に伝える
再就職手当を申請する前に再就職先を辞めても、退職だけを理由に申請できなくなるわけではありません。入社時点で1年を超える雇用見込みなど全要件を満たしていれば、退職後でも申請できます。
ただし、再就職手当を受けると、就職日前日の残日数の60%または70%相当が基本手当の支給済み日数として差し引かれます。再開できるのは、元の受給期間内にある調整後の残日数です。基本手当は退職日に自動で戻らず、原則として再求職申込日から始まります。
確認する順番は、退職翌日以降すぐハローワークへ行く、再就職手当も申請したいと伝える、入社時契約に基づく会社証明を依頼する、離職書類を提出する、調整後の残日数と受給期間満了日を確認するです。離職票や会社証明がそろうまで来所を遅らせず、手元の契約書と受給資格者証を持って相談してください。

