65歳以上でも、雇用保険の高年齢被保険者として条件を満たせば、介護休業給付金を受け取れます。「65歳になったから対象外」「パートだから使えない」と年齢や呼び名だけで判断する必要はありません。
基本は、介護休業を始める前2年間に、給付の計算に使える被保険者期間が12か月以上あること。そのうえで、家族の状態、雇用契約、休業中の給与や就労日数などを確認します。給付額は原則として休業前賃金の67%相当で、同じ家族について通算93日、3回までが限度です。
この記事では、65歳以降の再雇用・パートを想定し、対象条件、金額の目安、会社への申し出、給付金の申請まで説明します。制度・金額は2026年9月13日に確認した情報です。
65歳以上も対象|退職後の失業保険とは別の給付
ハローワークの現行案内では、介護休業給付の対象となる被保険者に「一般被保険者」と「高年齢被保険者」の両方が含まれます。65歳以上で働き続ける人も、この条件に沿って判断されます。
介護休業給付金は、仕事を辞めずに家族の介護のため休業し、その後の職場復帰を支える給付です。65歳以上で退職した人の高年齢求職者給付金や、主に60歳以上65歳未満を対象とする高年齢雇用継続給付とは異なります。
65歳になる前の加入期間が、年齢到達だけでゼロに戻るわけではありません。継続して加入している人は、休業開始前の加入記録を確認してください。
受給条件は加入期間・家族・休業中の働き方で確認する
休業開始前2年間に、対象となる月が12か月以上ある
12か月は、単なる在籍期間ではありません。休業開始前の期間を1か月ごとに区切り、原則として賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月を数えます。その月が12か月に足りないときは、賃金支払の基礎となった時間が80時間以上の完全月も確認します。
再雇用で勤務日数が減った人や、欠勤・休職があった人は、給与明細だけで自己判定せず、会社に出勤簿・賃金台帳で確認してもらいましょう。病気やけが等で30日以上続けて賃金を受けられなかった期間がある場合は、確認対象の2年間を延ばせることがあります。
過去に基本手当や高年齢求職者給付金の受給資格決定を受けた人は、その決定より前の期間を今回の12か月にそのまま使えません。「以前長く働いていた」だけでなく、前回の給付手続きと再就職後の加入歴を伝えてください。
家族に2週間以上、常時介護が必要な状態がある
対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。父母・子には養父母・養子も含まれます。
けが、病気、身体・精神上の障害によって、歩行・食事・排せつなどの日常生活に常時介護が必要な状態が2週間以上続くことが条件です。これは自分が必ず2週間以上休むという意味ではありません。家族の状態が条件に合えば、10日間など短い介護休業も給付対象になり得ます。
休業は、自分だけで介護を続けるために使い切るのではなく、介護サービスの手配や家族との分担、復帰後の体制を整える期間としても活用します。
休業中の就労日数・賃金にも条件がある
休業開始日から1か月ごとに区切った「支給単位期間」ごとに、就業日数が10日以下であることが必要です。最後の1か月未満の期間は、さらに全日休業した日が1日以上必要になります。
就労日数には、休業している会社以外で働いた日も含まれます。また、休業期間を対象とする賃金が基準額の80%以上支払われる期間は給付が出ません。給与による減額の計算は後で示します。
詳しい条件:介護休業給付の内容・申請手続(2026年8月版PDF)
再雇用・有期契約・パートで特に確認すること
有期契約は「更新されず終了することが明らかか」を見る
契約期間が決まっている人は、介護休業開始予定日から93日を経過する日から、さらに6か月を経過する日までに、更新後を含む契約が満了することが明らかでないことが必要です。
たとえば、毎年更新して働いている66歳の人は、契約書に1年の期間があるだけで対象外になるわけではありません。更新の有無や上限を確認します。一方、再雇用の終了が決まっている場合は、その日付が条件に関わります。契約書・更新通知を会社へ示し、休業と給付の両方を確認してください。
介護休業が取れることと、給付金が出ることは別
休業制度には、労使協定によって対象から除外できる人がいます。継続雇用1年未満、申し出の日から93日以内に雇用終了が明らか、週の所定労働日数が2日以下の人などです。日々雇用される人も法定の介護休業の対象外です。
これは雇用保険の「前2年に12か月」という給付条件とは別の確認です。パートの人は、週の勤務日数、雇用保険の加入、契約更新、会社の労使協定を分けて確認すると整理できます。
会社の就業規則に介護休業の記載がなくても、法律の要件を満たす人は申し出によって取得できます。「うちには制度がない」と言われた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
公式案内:厚生労働省「介護休業」/労働者向けのよくあるお問い合わせ
マルチジョブホルダー制度の加入者は2社での休業を確認
2社の勤務を合わせて雇用保険に入る「マルチ高年齢被保険者」も対象になり得ます。ただし、適用を受ける2つの事業所で、対象となる介護休業を同時に取得する必要があります。片方だけ休業し、もう片方では休業を取らない場合に、通常の1社勤務の説明をそのまま当てはめないでください。
加入方法がこの制度の人は、両社の休業予定を用意し、手続き先を含めハローワークへ確認しましょう。根拠:マルチジョブホルダー制度Q&A・被保険者向けQ25
いくらもらえる?給与別の目安と減額の例
原則の計算式は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%です。賃金日額は原則として、休業開始前6か月の賃金総額を180で割って求めます。税・社会保険料を引く前の額が基礎で、賞与は除きます。
支給日数は通常30日ですが、休業終了日を含む最後の期間は、その期間の実際の日数です。いつもカレンダーの1日から月末で区切るわけではありません。
30日分・休業中の給与なしの場合
| 休業前の平均月額 | 給付額の目安 |
|---|---|
| 15万円 | 100,500円 |
| 18万円 | 120,600円 |
| 24万円 | 160,800円 |
| 30万円 | 201,000円 |
6か月間の給与が一定で、算定対象期間がそろい、30日分が支給される仮定例です。実際は賃金証明書に基づく日額、端数処理、休業中の賃金などで変わります。再雇用で給与が下がっている人は、定年前の高い月給をそのまま使わないでください。
2026年8月1日から2027年7月31日までの公表額では、30日分に対応する賃金月額の上限は546,600円、給付上限は366,222円です。最後の期間が短い場合まで、この上限額が受け取れるという意味ではありません。
休業中に給与が出ると、13%・80%が境目になる
基準となる「賃金日額×支給日数」に対し、休業期間を対象とする給与が13%以下なら原則67%の給付です。13%を超え80%未満なら、給与と給付の合計が基準の80%となるよう減額され、80%以上なら不支給です。
基準額が18万円、30日分の期間について計算すると、次のようになります。
| 休業中の給与 | 給付額 | 給与+給付 |
|---|---|---|
| 0円 | 120,600円 | 120,600円 |
| 18,000円 | 120,600円 | 138,600円 |
| 54,000円 | 90,000円 | 144,000円 |
| 144,000円 | 0円 | 144,000円 |
給与54,000円の例は、18万円×80%−54,000円=90,000円です。なお、休業中に振り込まれたお金でも、休業前に働いた分の給与は区別します。銀行への入金額だけで判断せず、何月のどの期間に対する給与かを会社に確認してください。
通算93日・3回まで|毎年リセットされる制度ではない
同じ家族について、通算93日を限度に3回までです。3回それぞれ93日もらえるわけではなく、年が変わったり家族の要介護状態が変わったりしても、同じ家族の枠が新しく戻る制度ではありません。
必要な時期に分けて休むこともできます。たとえば最初に介護サービスを整えるため休業し、職場復帰後、家族の状況が変わった時に残りの回数・日数を使う考え方です。これまで同じ家族について使った休業と給付の日数を、会社と確認しましょう。
通院の付き添いなどに使う「介護休暇」は、ここで説明する介護休業と別の制度です。介護のために休んだ日が、自動的にすべて介護休業給付の対象になるわけではありません。会社にどの制度で扱うか確認してください。
申請方法|会社への申し出から給付申請まで
通常の介護休業給付は、原則として会社を経由し、勤務先の所在地を管轄するハローワークへ申請します。本人が手続きすることを希望する場合は、本人申請も可能です。
- 休業予定を会社に伝える。希望する日から休むため、原則として開始予定日の2週間前までに、開始日・終了日と対象家族の状況を書面等で申し出る。
- 対象条件と給与の扱いを確認する。雇用保険の月数、契約更新、休業中の給与、社会保険料の支払方法、過去の取得日数を確認する。
- 休業後の申請に使う資料をそろえる。会社が賃金証明書、出勤簿、賃金台帳などを準備し、本人は家族の確認書類や口座情報などを用意する。
- 1回の介護休業終了後に給付を申請する。支給対象期間分をまとめて申請し、支給決定通知書と入金を確認する。
主な書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 介護休業給付金支給申請書
- 会社へ提出した介護休業申出書
- 家族の氏名・続柄・生年月日等を確認できる書類
- 休業・就労の実績が分かる出勤簿やタイムカード、給与が分かる賃金台帳
現行申請書では本人・対象家族のマイナンバーも確認します。同一世帯で所定の番号を届け出る場合、続柄の確認書類を省略できる取扱いがあります。本人申請では会社から交付される賃金証明書・介護休業取扱通知書なども必要なので、会社との準備を省略できるわけではありません。
申請期限と入金時期
申請期限は、介護休業終了日の翌日から数えて2か月を経過する日の属する月の末日です。休業が3か月以上にわたるときは、休業開始から3か月を経過する日を基準にします。
たとえば、2026年10月20日に介護休業を終了した場合、通常の申請期限は12月31日です。年末の窓口休業もあるため、期限ぎりぎりにせず会社の提出予定を確認しましょう。
給付は休業中に毎月の給与と同じ日に入る制度ではありません。厚生労働省の目安は、支給決定から約1週間での振り込みです。「休業開始から1週間」「申請したら必ず1週間」ではないため、休業中から入金までの生活費を別に見込んでおきます。
申請・入金の確認:厚生労働省「介護休業給付Q&A」
年金・社会保険料・退職予定の注意点
年金を受けていることだけで、給付対象外にはならない
年金の受給そのものは、介護休業給付の対象外となる条件ではありません。確認するのは雇用保険の加入や介護休業の要件です。給付の基礎にするのは休業前の賃金なので、給与と年金を足した金額の67%ではありません。
給付は非課税でも、社会保険料の支払いは確認する
介護休業給付金自体は非課税です。一方、介護休業による社会保険料の免除はありません。加入している健康保険・厚生年金等の本人負担分があり、給与から引けなくなる場合は、会社へ別に払う方法などを確認します。
給付額の全額を生活費に使えるとは限りません。保険料や住民税など、休業中も必要な支払いを会社の担当者に確認してください。参考:厚生労働省「仕事と介護の両立」関連資料
最初から退職する予定なら、介護休業給付の対象外
介護休業給付は復職を前提とするため、休業開始時点ですでに退職を予定している場合は対象外です。また、休業中に事情が変わって離職した場合、途中で離職した支給単位期間は支給を受けられません。退職日まで単純に日割りで出るとは考えず、会社とハローワークへ連絡してください。
退職後の高年齢求職者給付金には、働く意思と能力があり、仕事を探していることなど別の条件があります。介護に専念してすぐ働けない状態では、その給付も自動的には受けられません。退職を検討する場合は、制度の違いを次の記事で確認できます。

まず会社へ「介護休業の取得」と「雇用保険の介護休業給付の確認」を一緒に申し出ましょう。年齢だけで諦めず、加入期間、契約更新、休業中の給与、申請予定を具体的に確認することが出発点です。

