2026年10月から求職者へのセクハラ対策が義務化|面接・OB訪問で何が変わる?

2026年10月からの求職者等セクハラ対策義務化について面接・OB訪問の変更点を示す図解 労働環境

2026年10月1日から、企業には、採用面接やOB・OG訪問、インターンシップなどで起きる「求職者等へのセクシュアルハラスメント」を防ぐための措置が義務付けられます。求職者から見た大きな変化は、企業が面談ルールと相談窓口をあらかじめ示し、相談後の事実確認、被害者への配慮、行為者への対応、プライバシー保護まで会社の仕組みとして行うことです。

対象は新卒の学生だけではありません。中途採用、パート・アルバイトへの応募者、会社説明会の参加者、OB・OG訪問者、インターン、教育実習生や看護実習生なども含まれます。会社の中だけでなく、飲食店、学校、オンライン面談、メールやSNSを介したやり取りも対象になり得ます。

ただし、私的な質問がすべて法律上のセクハラになるわけではなく、相談すれば採用や慰謝料が自動的に保証される制度でもありません。この記事では、最終指針と解釈Q&Aを基に、対象範囲、証拠の残し方、選考や内定への影響を解説します。内容は2026年8月26日時点です。

結論|2026年10月1日から面接・OB訪問で何が変わる?

企業の自主対応から法律上の措置義務へ変わる

改正男女雇用機会均等法は、令和7年法律第63号として2025年6月11日に公布され、施行日を定める政令により、求職者等セクハラの防止措置は2026年10月1日から施行されます。施行日はすでに確定しており、「2026年10月ごろの予定」という段階ではありません。改正の全体像は、厚生労働省の職場におけるハラスメント防止の案内で確認できます。

求職者にも面談ルールと相談先が示される

企業は、面談の時間・場所、実施体制、連絡に使うSNSなどのルールを決め、従業員だけでなく求職者等にも知らせる必要があります。また、求職者が利用できる相談窓口をあらかじめ定め、採用サイトやパンフレットなどで連絡先を周知しなければなりません。

相談後の調査と被害者への配慮も企業の仕事になる

企業は事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止まで行います。窓口の連絡先を置くだけでは足りません。

求職者から見える点 2026年9月30日まで 2026年10月1日以降
企業の位置づけ 旧指針で同様の方針や適切な対応が望ましい取組 改正均等法に基づく防止措置が義務
面談ルール 企業ごとの自主的な運用 時間・場所・体制・連絡手段等のルールを明確化し周知
相談窓口 求職者向け窓口がない企業もある 窓口を定め、求職者等へ知らせることが必要
相談対応 企業によって差が大きい 発生のおそれや該当性が微妙な相談も広く受ける
発生後 対応内容が企業任せになりやすい 事実確認、被害者配慮、行為者への措置、再発防止が必要
個人情報 求職者等セクハラ対策としての法定11項目ではない(個人情報保護法等は別途適用) 相談者・行為者等のプライバシー保護と周知が必要

10月以前の就活セクハラが許されていたわけではない

改正前も企業には望ましい取組が示されていた

変わるのは、防止措置が明確な法的義務になる点です。性的関係の強要や身体接触などが10月まで許されるわけではなく、改正前の指針でも禁止方針や相談対応が望ましいとされてきました。

民事・刑事上の責任は施行日前でも別に問題となる

性的な言動の内容によっては、民法上の不法行為、性別を理由とする採用差別、不同意わいせつ、脅迫、強要、ストーカー行為など、既存の法律が関係します。改正法の施行日前だから相談できない、警察へ行けないということはありません。

被害に遭ったら2026年10月まで待つ必要はない

厚生労働省は現在も労働局への相談を案内しています。使える制度が分からなくても、事実と時系列を整理して相談してください。

カスハラ義務化との違い|同じ10月施行でも向きが逆

カスハラは顧客等から労働者を守る制度

同じ2026年10月1日にカスタマーハラスメント対策も義務化されますが、検索意図も法的な枠組みも別です。カスハラは顧客や取引先などの著しい迷惑行為から、企業が雇用する労働者を守るための措置です。

求職者等セクハラは企業側の従業員から応募者を守る制度

求職者等セクハラは、企業が雇用する労働者による性的な言動で求職活動が妨げられないよう、応募者や実習生を守る制度です。根拠法も、カスハラは労働施策総合推進法、求職者等セクハラは男女雇用機会均等法と異なります。

相談体制や事実確認を仕組みにする点は共通

両制度とも相談、事実確認、被害者配慮、再発防止を企業の仕組みにしますが、守られる人と根拠法を分けて確認します。

「求職者等」に含まれる人|新卒だけが対象ではない

新卒・中途・パートなど求人に応募する人

「求職者」は、その企業に雇用されようとする意思を示した人です。新卒に限らず、中途、契約社員、パート、アルバイトなどの応募者も含まれます。

説明会・インターン・OB・OG訪問の参加者

未応募でも、会社説明会、採用イベント、インターン、企業が雇用する労働者へのOB・OG訪問などの参加者は対象になり得ます。厚労省の解釈Q&Aにも範囲が示されています。

教育実習・看護実習などを受ける実習生

企業や施設に受け入れられて教育実習、看護実習などを行う人も含まれます。一方、授業の一環としての社会科見学や、企業を招いて行う純粋な教育目的の講演会など、採用や実習とは無関係な活動の参加者は、この「求職者等」には原則含まれません。

学生向けの相談先を探している場合は、新卒応援ハローワークとわかものハローワークの役割も確認できます。

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どこまでが求職活動?オンラインや懇親会も対象になり得る

会社の外や勤務時間外でも対象になる

OB・OG訪問の飲食店、説明会の貸会議室、学校のキャンパスも含まれます。「会社の外だから対象外」とは判断できません。

オンライン面談・メール・SNSも含まれる

Web会議での面接、採用担当者とのメール、企業指定のチャット、SNSや就活マッチングサービスを介したやり取りも対象になり得ます。厚労省の求職者等セクハラ防止指針は、SNS等を介したものとオンライン上で行われるものを明記しています。

懇親会や私的な誘いは採用との関連で判断する

面接終了後の懇親会や、労働契約がまだ成立していない内々定者などとの食事会でも、実質的に採用活動や実習の延長であれば対象になり得ます。判断では、従業員の職務との関連、求職活動との関連、両者の関係、参加者、参加が事実上強制だったかなどを総合的に見ます。以前から私的な知り合いだったという事情だけで直ちに対象外になるわけでも、私的な会話がすべて対象になるわけでもありません。採用内定により労働契約が成立している人は職場セクハラ規制の対象となり、扱いが異なります。

求職者等セクハラの定義|不快な言動すべてではない

従業員の性的な言動で求職活動が阻害されるもの

指針上は、企業が雇用する労働者による、求職者の意に反する性的な言動により、能力の発揮へ重大な悪影響が出るなど、求職活動に看過できない支障が生じるものです。

性的な発言と性的な行動の両方がある

性的な発言には、性的な事実関係を尋ねること、性的なうわさを意図的に流すこと、性的な冗談、からかい、個人的な性的体験談、食事やデートへの執拗な誘いなどがあります。性的な行動には、性的関係を求めること、必要なく身体へ触ること、性的な画像を配る、ポスターや画面を見せることなどが含まれます。

本人の受け止めを重視しつつ客観面も考慮する

本人の受け止めを重視しつつ客観面も含めて個別に判断します。ただし窓口は、発生のおそれや該当性が微妙な段階でも広く相談へ対応する必要があります。

身体接触などは1回でも該当し得る

性的な冗談などでは回数や継続性が考慮されることがありますが、意に反する身体接触で強い精神的苦痛を受けた場合は、1回でも求職活動を阻害したと判断され得ます。「一度だけだから相談できない」と自分で切り捨てる必要はありません。

面接・OB訪問・インターンの場面別具体例

場面 求職者等セクハラになり得る例 迷ったときの対応
採用面接 性的経験を尋ねる、交際状況を執拗に聞く、採用を示唆して性的関係を求める 質問と前後の発言を記録し、企業窓口や労働局へ相談
OB・OG訪問 飲酒やデートへの執拗な誘い、腰や胸などへの接触、ホテルや自宅へ誘う 安全な場所へ移動し、メッセージと訪問日時を保存
インターン 性的な冗談を継続する、私的な食事へしつこく誘う、性的な画像を表示する 担当変更や行為者との分離を企業へ求める
説明会・採用イベント 少人数の場で身体へ触る、容姿を性的に評価する、性的なからかいをする 同席者、会場、担当者名を控え主催企業へ相談
オンライン面談 採用に不要な全身映像を要求する、身体や部屋へ性的な言及をする、個人SNSで性的なDMを送る 画面、アカウント、日時、URLを含め保存

面接で「恋人はいる?」と聞かれた場合

厚労省資料は「恋人がいるのか」を相談例に挙げています。一言で法的評価が必ず決まるわけではありませんが、性的な事実を尋ね、拒んでも繰り返す質問は対象になり得ます。

結婚・妊娠・出産予定の質問は別の問題にもなる

固定的な性別役割の発言は、それだけでは性的な言動に当たらない場合がありますが、採用上の性差別や公正な採用選考など別の問題になり得ます。

容姿や年齢への質問も文脈を分けて考える

容姿への性的な評価は対象になり得ますが、年齢や外見への質問すべてが性的な言動ではありません。性的な意味合い、必要性、繰り返し、求職活動への影響を分けて考えます。

企業へ正式に応募する際の一般的な流れや紹介状の扱いを確認したい人は、次の記事も参考にできます。

ハローワーク求人への応募方法|紹介状・オンライン自主応募の違い
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企業に義務付けられる11の措置

厚労省の2026年10月施行の詳細リーフレットと最終指針を整理すると、企業が講じるべき措置は次の11項目です。

番号 企業に必要な措置 求職者から見える変化
1 求職者等セクハラの内容と禁止方針を明確化し、従業員へ周知・啓発 面接官やリクルーターへ禁止事項が示される
2 行為者へ厳正に対処する方針と対処内容を規程化し周知 違反した従業員を処分対象にできる
3 面談等の時間・場所・体制・連絡手段等のルールを明確化し、従業員と求職者へ周知 公式な連絡方法や面談上の注意を確認できる
4 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等へ周知 応募者が利用できる連絡先が示される
5 窓口担当者が状況に応じ適切に対応できるようにする 微妙な事案や発生のおそれも相談できる
6 事実関係を迅速かつ正確に確認 相談者・行為者・必要な第三者から確認される
7 被害者への配慮を適正に実施 担当変更、行為者との分離、相談対応等を受け得る
8 行為者への措置を適正に実施 就業規則等に基づく指導・懲戒等が検討される
9 再発防止措置を実施 事実確認できなかった場合も方針再周知等を行う
10 相談者・行為者等のプライバシー保護と、その旨の周知 相談情報を必要以上に広げない体制が求められる
11 事実確認への協力や労働局への相談・解決援助の申出等を理由とする労働者への不利益取扱いを禁止し周知 社内の目撃者が事実を話しやすくなる

複数人面接や会社指定SNSは方法の例

面談時間・場所、複数人対応、SNS指定は具体例です。「面接官2人」「夜間は禁止」など同じ方式を全社へ一律に命じるものではありません。

人事以外の相談担当者は選択肢であって必須ではない

人事以外の担当者や外部窓口も選べますが、人事を窓口にしてはならない決まりではありません。実質的に対応でき、連絡先が示されることが重要です。

相談窓口の設置だけでなく運用が必要

窓口担当者と人事部門が連携する仕組み、対応マニュアル、担当者研修などが例示されています。相談メールを放置する、行為者本人だけへ転送する、相談者の了解なく情報を広げるといった運用では、適切な措置とはいえません。

求職者にとって「変わらないこと」と制度の限界

相談すれば自動的に採用される制度ではない

相談者の採用を保証する制度ではありません。不採用との因果関係や損害は証拠と事情から個別に判断されます。

慰謝料や行為者処分が自動的に決まるわけではない

行為者を処分する場合はありますが、申告だけで特定の懲戒や慰謝料が自動的に決まる制度ではありません。企業は双方や第三者から確認します。

会社の窓口に匿名受付まで義務付ける制度ではない

相談者情報のプライバシー保護とその周知は企業の義務です。一方、企業内窓口が必ず匿名相談を受け付けなければならないとまでは指針に書かれていません。匿名でまず制度を確認したい場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)を利用できます。

就活パワハラやオワハラは同じ義務の対象とは限らない

高圧的な叱責、他社の選考辞退を迫るオワハラ、性的性質のない性別役割発言などは、今回の求職者等セクハラ措置義務と同じ定義には入らない場合があります。新指針では、求職活動中のパワハラ、妊娠・出産、育児・介護に関するハラスメントに類する行為へも適切に対応することが望ましいとされています。

事業主・役員・取引先による言動は扱いが異なる

措置義務の中心は企業が雇用する労働者の言動

改正法13条1項と指針の定義は、「当該事業主が雇用する労働者」による性的な言動を中心にしています。正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトなど、その企業が雇用するすべての労働者が含まれます。派遣労働者については派遣先にも一定の規定が適用されます。

事業主本人や役員への対応は指針上「望ましい取組」

個人事業主本人や、労働者に当たらない法人役員が行為者となる場合も想定されます。指針は、これらの者による性的な言動についても必要に応じ適切に対応するよう努めることが望ましいとしています。義務規定の文言上の違いはありますが、役員なら許されるという意味ではなく、民事・刑事上の責任も別に問題となります。

インターン先の顧客・取引先社員は「望ましい取組」の整理

インターン先の顧客・取引先社員による行為には、必要に応じ適切に対応することが望ましいとされています。自社従業員による行為と同じ義務ではありません。

採用活動をしていない会社も今すぐ全措置が必要?

求職者と接する機会がない間は全措置がなくても差し支えない

厚労省Q&Aでは、定期的な採用活動を行っておらず、求職者等と従業員が接する機会がない企業は、指針の措置をすべて講じていなくても差し支えないとされています。

募集・説明会・面接を始める時点で全措置が必要

人員不足などで採用活動を開始し、求職者への説明会や面接を実施することになれば、その時点で必要な措置をすべて履行しなければなりません。「小さい会社だから猶予される」「採用が年1回だから対象外」という整理ではありません。

求職者は採用サイトや案内メールで窓口を確認する

施行後に応募する際は、採用サイト、応募受付メール、説明会資料、面接案内などに、公式な面談ルールと相談窓口が示されているか確認しましょう。見つからない場合は、採用担当者へ「採用活動に関する相談窓口はどこですか」と事務的に問い合わせて構いません。

被害に遭った直後の対処手順

1.危険な場所から離れて安全を確保する

身体へ触られた、性的関係を迫られた、帰宅を妨げられた、脅されたなど、身の危険があるときは面談を続ける必要はありません。店員、施設管理者、友人、家族など周囲へ助けを求め、安全な場所へ移動してください。緊急の危険があれば110番です。

2.断れる状況なら短く意思を伝える

安全に伝えられる状況であれば、「その質問には答えません」「個人のSNSでは連絡しません」「これ以上は面談を続けられません」と短く伝えます。ただし、怖くて断れなかったことを被害者の落ち度にする制度ではありません。採用への影響を恐れて固まってしまうこともあり、明確に抗議できなかったから相談できないわけではありません。

3.信頼できる人と相談先へ早めに共有する

一人で相手へ再接触せず、家族、友人、学校のキャリアセンター、企業の別担当者、労働局などへ共有します。被害直後は記憶や心身の状態が不安定になることがあるため、信頼できる人に同席や記録整理を手伝ってもらう方法もあります。

証拠をどう残す?5W1Hとデジタル記録の保存方法

日時・場所・相手・発言をできるだけ早くメモする

厚労省委託サイトのハラスメントで悩んでいる方への案内は、「いつ、どこで、誰が、何を、何のために、どのように」という5W1Hをメモや録音などで記録することを勧めています。正確な逐語録でなくても、記憶が新しいうちに前後関係を残すことが役立ちます。

DM・メールはアカウント名と日時を含めて保存する

メールやDMは発言だけを切り抜かず、アカウント名、日時、前後の流れを保存します。可能なら元データとバックアップも残します。

求人票・面接案内・訪問経路も残す

求人ページ、応募メール、説明会資料、面接URL、訪問依頼、名刺、会場、同席者も残します。相談後の選考変更、不採用、内定取消しの通知も保存します。

録音の利用やSNS公開は慎重に判断する

録音が役立つ場合はありますが、方法や公開の評価は状況で異なります。編集せず原本を保管し、SNS公開より相談機関や弁護士への提示を優先します。

どこへ相談する?会社・学校・労働局・警察の使い分け

企業の求職者向け相談窓口

行為者が面接官なら本人へ直接言わず、採用サイトや代表窓口から別担当へつないでもらいます。事実と、担当変更など求める配慮を伝えます。

大学・専門学校のキャリアセンターや教員

学生は、企業窓口と学校窓口のどちらへ相談しても構いません。厚労省Q&Aは、学校側から企業へ情報提供があった場合、企業が学校と連携して適切に対応することを望ましい取組としています。一人で企業へ連絡するのが不安なら、キャリアセンター担当者と一緒に労働局へ相談することもできます。

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)

厚労省の求職者向け相談案内では、相談は無料、匿名でも可能で、希望がない限り相談があったことを企業へ伝えないと案内しています。各地域の連絡先は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)一覧で確認できます。

警察・性暴力のワンストップ支援窓口

緊急時は110番、緊急ではない警察相談は#9110です。性犯罪の被害について警察へ相談したい場合は、全国の都道府県警察につながる#8103(ハートさん)があります。医療、心理、法的支援などを含む性暴力被害の相談は、最寄りのワンストップ支援センターにつながる#8891(はやくワンストップ)を利用できます。

ハローワークで相談できる内容や窓口の選び方を先に整理したい場合は、次の記事も参考になります。

ハローワークの職業相談でできること・できないこと|初めての聞き方
ハローワークで相談できる求人、応募書類、面接、職業訓練、失業保険を一覧化。相談できない内容、初回の伝え方、オンライン利用まで解説します。

相談すると選考や内定で不利になる?

求職者本人への報復禁止を13条2項から一律に断言できない

改正均等法13条2項が明文で禁止する不利益取扱いは、求職者からの相談対応や事実確認に協力して事実を述べた企業の労働者に対する解雇などです。求職者本人が相談したことを理由とする不採用を、同項が直接かつ包括的に禁止しているとは書かれていません。

そのため、「相談すれば法律上必ず選考へ影響しない」と保証する説明は避ける必要があります。一方、企業には求職者の相談を受け、プライバシーを守り、適切に調査・対応する義務があります。相談を理由に不自然な選考変更があれば、その経過を保存して労働局へ相談してください。

性的要求を拒否したため不採用にする行為は重大な問題

採用を見返りに性的関係を求める、拒否したため選考から外すと告げる、インターン評価を下げると脅す行為は、求職活動を直接阻害する深刻な事案です。求職者等セクハラの措置義務だけでなく、性差別、不法行為、犯罪の成否なども個別に検討されます。「13条2項の対象でないから企業が自由に報復できる」という意味ではありません。

内定により労働契約が成立した場合は扱いが変わる

厚労省の2026年4月24日付の均等法解釈通達は、採用内定によって労働契約が成立したと認められる場合、内定者は職場セクハラの措置と、相談等を理由とする不利益取扱い禁止の対象になり、内定取消しも不利益取扱いに含まれると説明しています。

ただし、内定通知の内容や、その後に契約締結手続が予定されているかなどによって法的評価は異なります。労働契約がまだ成立していない内々定者などは求職者等として扱われます。取消しを受けたら通知、内定承諾書、採用条件、相談との時系列を保存し、労働局や弁護士へ確認してください。

労働局の援助と「調停」は同じではない

求職者は労働局へ相談し、解決援助を求められる

施行後の均等法では、紛争解決に関する章の「労働者」に求職者等も含まれると解釈されています。都道府県労働局長は、求職者と事業主の間に個別の紛争が生じた場合、当事者からの申出に応じて助言、指導または勧告による解決援助を行えます。

募集・採用に関する求職者の紛争は均等法上の調停から除外

一方、紛争調整委員会による均等法上の調停は、募集・採用に関する紛争を除外しています。解釈通達は、求職者等セクハラに関する求職者本人の紛争も同様に除かれると整理しています。「労働局へ相談できる」と「機会均等調停を利用できる」は同じではありません。

制度名が分からなくても窓口で確認できる

どの援助制度が使えるか、現在の内定が労働契約に当たるか、性差別の問題も含むかは事案ごとに異なります。求職者が制度を選び切ってから申し出る必要はありません。雇用環境・均等部(室)へ経緯を伝え、利用できる仕組みを確認しましょう。

企業が義務を守らない場合の行政対応と法的責任

助言・指導・勧告、勧告不履行時の公表がある

厚生労働大臣は、均等法の施行に必要があると認めるとき、事業主へ報告を求め、助言、指導または勧告を行えます。求職者等セクハラの措置義務に違反し、勧告にも従わない場合は、その旨を公表できる仕組みです。施行後の条文はe-Govの男女雇用機会均等法で確認できます。

セクハラ行為1件ごとに新しい罰金が自動で科される制度ではない

今回の改正の中心は、事業主に防止と相談対応の仕組みを整えさせることです。性的な発言があっただけで、改正法による定額の罰金や慰謝料が直ちに発生するわけではありません。厚生労働大臣等から求められた報告をしない、または虚偽の報告をした者には20万円以下の過料が科されますが、これは性的な言動や措置義務違反へ直接科される罰金ではなく、刑事罰の「罰金」とも異なります。

措置義務違反と民事・刑事責任は分けて考える

企業が窓口やルールを整えていないという行政法上の問題と、行為者や企業が損害賠償責任を負うか、行為が犯罪に当たるかは別の判断です。企業が形式上の規程を整えていても、個別の行為について民事・刑事責任が生じる場合はあります。逆に、措置義務違反が確認されたからといって、求職者へ慰謝料が自動支給されるわけではありません。

安全に就職活動するため事前に確認したいこと

連絡は企業の公式アカウントにそろえる

採用担当者から個人LINEや私的なSNSへ移るよう求められたら、会社指定の連絡手段で続けたいと伝えます。企業がルールとして個人SNSを認めている場合もあるため、個人アカウントだから直ちに違法と断定せず、採用担当部署へ公式な方法か確認してください。

1対1の飲酒や密室での面談を断ってよい

厚労省の学生向け案内は、採用担当者との食事や飲酒、密室での1対1面談、個人携帯メール等でのやり取りを避け、不適切な要求へ応じる必要はないとしています。昼間の人目がある場所、オンライン、複数人での面談など代替方法を提案しましょう。

訪問先と終了予定を信頼できる人へ共有する

OB・OG訪問や採用イベントでは、企業名、相手、場所、開始・終了予定を家族や友人へ共有します。帰宅手段を確保し、飲酒を断り、危険を感じたら選考より退出を優先してください。これらは被害者に責任を負わせるためではなく、企業の対策と併せて自分の安全を守る補助策です。

相談窓口と面談ルールの有無も企業選びの材料になる

求職者向けの方針、相談先、プライバシー保護、公式な連絡方法を具体的に示す企業は、法改正を採用実務へ落とし込んでいる可能性があります。逆に、施行後も窓口を答えられない、社員が自由に個人連絡先へ誘導する、相談先が行為者本人しかいない場合は、労働局へ確認する材料になります。

就職先を選ぶためにスキルや職種から見直したい場合は、ハローワークで職業訓練の相談もできます。

ハローワークで職業訓練を相談するには?聞くこと・伝え方・タイミング
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求職者等セクハラ義務化に関するよくある質問

Q1.施行日は2026年10月1日で確定していますか?

はい。改正法、最終指針とも2026年10月1日に施行・適用されます。「10月ごろ」「施行予定」ではなく、日付は確定済みです。

Q2.2026年9月までに受けた就活セクハラも相談できますか?

相談できます。新しい措置義務の施行前でも、旧指針の望ましい取組、性差別、不法行為、犯罪などが関係する場合があります。被害後の時間がたつほど記録が失われるため、10月まで待たず相談してください。

Q3.転職者やパート・アルバイトの応募者も対象ですか?

対象です。学生限定の制度ではなく、その企業に雇用されようと意思を示す求職者を広く含みます。応募前でも、会社説明会や採用に資するインターンなどの参加者は対象になり得ます。

Q4.会社非公認のOB・OG訪問も対象になりますか?

一律には決まりません。企業の従業員への訪問で、採用との関連、従業員の職務、参加経緯、両者の関係などから実質的に求職活動と判断されれば対象になり得ます。会社非公認という名称だけで除外されるわけではありません。

Q5.LINE・SNSのDM・オンライン面接も対象ですか?

対象になり得ます。指針はSNS等を介したものとオンライン上の活動を明記しています。アカウント名、日時、前後のやり取りが分かる形で保存してください。

Q6.面接で「恋人はいる?」と一度聞かれたらセクハラですか?

質問の性的性質、前後関係、繰り返し、求職活動への影響から個別に判断されます。一度なら必ず対象外ということもありません。該当性が微妙な相談にも企業は広く対応する必要があります。

Q7.結婚・妊娠・出産予定を聞かれた場合も同じ制度の対象ですか?

質問が性的な言動に当たるかは内容によります。求職者等セクハラに該当しなくても、募集・採用の性差別、公正な採用選考、妊娠・出産に関する別問題になり得るため、質問と選考への影響を記録して相談してください。

Q8.男性や同性から受けた性的な言動も対象ですか?

対象です。男女とも被害者・行為者になり得て、同性間も含まれます。被害者の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず対象です。

Q9.オワハラや高圧的な面接も今回の義務化に含まれますか?

性的な言動でなければ、今回の求職者等セクハラ措置義務と同じ定義には入りません。ただし、就活パワハラに類する行為等へも方針を示し、必要に応じ適切に対応することが望ましいとされています。

Q10.企業・学校・労働局のどこへ相談すべきですか?

企業に調査や担当変更を求めるなら企業窓口、学生で直接言いづらいなら学校、匿名で制度を確認したい、会社が動かない場合は労働局が使いやすい窓口です。危険時は警察等を利用します。

Q11.相談を理由に不採用や内定取消しにされることはありませんか?

企業には相談対応とプライバシー保護が義務付けられますが、改正法13条2項の明文の不利益取扱い禁止は、相談対応に協力した労働者を対象とします。求職者本人の選考への影響が法律上常にないとは断言できません。労働契約が成立した内定者は扱いが異なるため、通知と時系列を保存して労働局等へ相談してください。

Q12.対策をしない会社には罰金や自動的な損害賠償がありますか?

措置義務違反に対しては、行政の助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の公表があります。均等法35条に基づいて求められた報告をしない、または虚偽報告をした者には20万円以下の過料がありますが、セクハラ1件につき改正法の罰金や慰謝料が自動発生する制度ではありません。損害賠償や刑事責任は、個別の行為と証拠に基づき別に判断されます。

まとめ|面接前に公式ルールと相談先を確認しよう

2026年10月1日から、企業には、求職者等セクハラを防ぐ方針、面談ルール、相談窓口、事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシー保護などが義務付けられます。対象は新卒だけでなく、中途・パート応募者、説明会、OB・OG訪問、インターン、実習、オンライン上の採用活動まで広がります。

一方、すべての私的質問が直ちにセクハラになるわけではなく、相談による採用や慰謝料が自動的に保証される制度でもありません。求職者本人への選考上の報復と、調査に協力した従業員への不利益取扱い禁止、労働契約が成立した内定者の扱いは分けて理解する必要があります。

不快・危険な言動を受けたら、法的な名称を自分で確定するより、安全を確保し、5W1Hとメッセージを保存して、企業窓口、学校、都道府県労働局へ早めに相談してください。身体への接触や強要などがあれば、110番、#8103、#8891もためらわず利用しましょう。

草尾雄太

中卒・引きこもり8年を経て、ブラック企業勤務、職業訓練、ハローワーク、失業保険、退職代行を実際に経験。
現在はフリーランスエンジニアとして働きながら、「辞めたいのに辞められない」「制度が分からず動けない」と悩む人に向けて、厚労省などの公的データと自身の実体験をもとに、退職・職業訓練・失業保険に関する情報を発信しています。
詳しいプロフィールはこちら / 退職代行を使った体験談

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