退職の引き止めで給料アップを提示されたら|断り方より先に確認すること

退職時の給料アップ提示と今後のキャリアを比較するイラスト 退職代行

最終更新: 2026年7月

退職を伝えたあとに「給料を上げるから残ってほしい」と言われても、素直に喜べない人は多いと思います。

「じゃあ、今までの給料は何だったの?」
「辞めると言わなければ、評価するつもりはなかったの?」
「本当に必要としているなら、もっと前に向き合ってほしかった」

そう感じるのは自然です。給料アップを提示された瞬間、迷いだけでなく、今まで飲み込んできた違和感まで一気に戻ってくるからです。

しかも、ここで断ると自分が悪者みたいに見える。残れば丸く収まる気もする。でも、残ったあとに同じ上司、同じ仕事量、同じ会社への不信感が続くなら、数か月後にまた苦しくなるかもしれません。

結論から言うと、退職の引き止めで給料アップを提示されたときは、金額だけで決めない方が安全です。先に見るべきなのは、辞めたい理由が給料アップで消えるのか、そして残った後の条件が書面で確認できるのかです。

先に整理すること

  • 辞めたい理由は給与だけだったか
  • 提示された条件は書面でもらえるか
  • 人間関係、残業、体調、将来性の不安は残らないか
  • 退職する場合の生活費、失業保険、手続きを確認しているか
  • 次の仕事が未定なら、職業訓練という選択肢も見ているか

退職後に何から確認するか不安な人は、先に全体の流れを見ておくと判断がぶれにくくなります。

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退職の引き止めで給料アップを提示されたら、まず「残る理由」を分ける

給料アップを提示されたときに最初にやることは、残るか辞めるかをその場で決めることではありません。まず、残ってもいい理由と、残ると危ない理由を分けます。

残ってもいい可能性があるのは、もともとの不満が給与だけで、仕事内容、人間関係、労働時間、会社への信頼に大きな問題がない場合です。たとえば「仕事内容は嫌いではないが、給与水準だけが低かった」という状況なら、条件変更で悩みが軽くなることがあります。

一方で、上司との関係がつらい、毎日残業で体がもたない、評価制度を信用できない、会社に相談しても何も変わらなかった。このような理由で退職を決めたなら、給料が少し上がっても同じ場所に戻るだけになりやすいです。

迷ったときは、次の一文にしてみてください。

給料が上がったとしても、私はこの会社で半年後も働き続けたいと思えるか。

この答えがはっきりしないなら、その場で承諾しない方がいいです。「一度持ち帰って考えます」と伝えて、感情が落ち着いた状態で判断してください。

「給料を上げるから残って」は評価なのか、引き止めなのか

退職直前の給料アップは、評価のように見えます。ただし、それが長期的な評価制度の中で出てきた話なのか、退職を止めるための一時的な条件なのかは分けて考える必要があります。

確認したいのは、次の3つです。

  • いつから、いくら上がるのか
  • 基本給なのか、手当なのか、一時金なのか
  • 業務量、役割、責任、残業時間も変わるのか

金額だけ聞くと得に見えても、責任や残業が増えるなら、実質的には負担が増えることもあります。口頭だけで「上げる」と言われた場合も注意が必要です。

残る可能性を少しでも考えるなら、条件を書面やメールで確認しましょう。給与額、開始時期、手当の種類、仕事内容、勤務時間、評価の扱いが曖昧なまま残ると、あとから「そんな約束はしていない」と言われたときに困ります。

給料アップを受けてもいいケース

すべての引き止めを断る必要はありません。次の条件がそろうなら、残る選択肢もあります。

  • 退職理由が主に給与だった
  • 上司や職場環境への不信感が強くない
  • 条件変更が書面で確認できる
  • 業務量や責任が不自然に増えない
  • 半年後に残っている自分を想像しても苦しくない

ただし、給料アップは「今の会社に残る理由」にはなっても、「辞めたい理由が消えた証拠」ではありません。お金以外の不満が残るなら、焦って返事をしないでください。

給料アップを断った方がいいケース

反対に、次のどれかに当てはまるなら、給料アップを受けるより退職の意思を守った方が後悔しにくいです。

  • 体調不良やメンタル不調が出ている
  • 上司や会社への不信感が強い
  • 残業、休日出勤、拘束時間が変わらない
  • 「恩知らず」「無責任」など責める言葉で引き止められる
  • 給料アップの条件を書面でもらえない
  • すでに退職後の予定や次の行動が動いている

特に危ないのは、給料アップと同時に罪悪感を刺激されるケースです。「今辞められたら困る」「君には期待している」「ここで辞めたら迷惑だ」と言われると、相手の都合まで背負い込みやすくなります。

でも、退職は会社への裏切りではありません。働き方を選び直す行動です。

給料アップを断るときのテンプレ

断るときは、長く説明しすぎない方が安全です。理由を細かく話すほど、会社側に反論や再交渉の材料を渡してしまうからです。

基本テンプレ

ご提案いただきありがとうございます。大変ありがたいお話ですが、退職の意思は変わりません。給与だけが理由ではなく、今後の働き方を考えたうえで決めました。

転職先が決まっている場合

ご配慮いただきありがとうございます。ただ、すでに次の予定が進んでいるため、退職の意思は変わりません。退職日までの引き継ぎは責任を持って進めます。

まだ次が決まっていない場合

ご提案ありがとうございます。迷う気持ちはありますが、自分の働き方を見直すために退職する判断をしました。退職の意思は変わりません。

しつこく食い下がられる場合

条件については理解しました。ただ、退職の意思は変わりません。今後のやり取りは、退職日と引き継ぎに関する内容に絞って進めさせてください。

ポイントは、相手を否定しないことと、結論を変えないことです。「考えます」と言うと再交渉が続く可能性があるため、辞めると決めているなら「退職の意思は変わりません」と短く伝えます。

しつこい引き止めで辞めさせてもらえないとき

給料アップの話を断っても、会社が退職を認めないことがあります。「人がいないから無理」「後任が見つかるまで待て」「今辞めるなら損害賠償だ」と言われると怖くなります。

まずは、退職の意思を記録に残る形で伝えてください。メール、書面、内容証明など、あとから確認できる形にしておくと、話し合いがこじれたときに状況を整理しやすくなります。

厚生労働省・茨城労働局の案内では、期間の定めのない労働契約について、民法627条に基づき退職申し入れ後2週間を経過した時点で有効になる旨が説明されています。詳しくは、茨城労働局「退職の申出があった際には」e-Gov法令検索「民法」で確認できます。

ただし、契約期間の有無、就業規則、雇用形態、個別事情によって見方が変わることがあります。判断に迷う場合は、会社と一対一で抱え込まず、労働相談窓口へ相談してください。

厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、職場トラブルに関する相談や情報提供を行っています。

まだ次が決まっていないなら、断り方より生活設計を先に見る

給料アップの引き止めでいちばん揺れるのは、次の仕事が決まっていないときです。

「今より給料が上がるなら残った方が安全かも」「辞めたあと収入が止まったらどうしよう」と考えるのは自然です。だからこそ、残るか辞めるかを気合いで決めるのではなく、退職後のお金を数字で確認してください。

最低限、次の3つを紙に書き出します。

  • 退職後1〜3か月の生活費
  • 貯金、未払い給与、有給消化、退職金の有無
  • 失業保険、職業訓練、求職者支援制度を使える可能性

生活費の不安が強い人は、先にこちらで整理しておくと、引き止めに流されるかどうかではなく、現実的に動けるかで判断できます。

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雇用保険の基本手当は、離職前の賃金や年齢などで金額が変わります。ハローワークインターネットサービスでは、基本手当日額の考え方や公共職業訓練を受ける場合の技能習得手当について案内されています。

制度の詳細は、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」で確認してください。

退職後に職業訓練を使う選択肢もある

給料アップを断るとき、「次の仕事が決まっていない」という不安があるなら、職業訓練も選択肢に入ります。

職業訓練は、ただ資格を取るためだけの制度ではありません。退職後にいったん働き方を整理し、求人票を見る前にスキルや職種を選び直すためのルートにもなります。

特に、今の会社に残る理由が「お金が不安だから」だけになっているなら、給料アップを受ける前に、退職後に使える制度を一度確認した方がいいです。

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雇用保険を受給できない人や、収入が一定額以下の在職者などについては、厚生労働省が求職者支援制度を案内しています。月10万円の生活支援の給付金を受けながら無料の職業訓練を受講できる場合があり、給付金の要件を満たさない場合でも無料訓練を受講できるケースがあります。

もちろん、誰でも必ず使える制度ではありません。だからこそ、辞める前後の早い段階でハローワークに相談し、自分の条件で何が使えるかを確認することが大切です。

退職代行は「給料アップを断るための主役」ではない

退職の引き止めがしつこいと、退職代行を使うべきか迷う人もいます。

ただ、このテーマで最初に考えるべきなのは、退職代行サービスを選ぶことではありません。先に、退職の意思を記録に残す、生活費を確認する、労働相談窓口を使う、退職後の手続きを把握する。ここまで整理しても、直接やり取りすることが危険または困難な場合に、最後の連絡手段として検討する位置づけです。

たとえば、何度話しても退職を認めてもらえない、強い言葉で責められて体調が悪化している、会社からの連絡を受けるだけで動けなくなる。このような状態なら、ひとりで抱え込まず外部の窓口や代替手段を使ってください。

退職の引き止めを断った後にやること

給料アップを断って退職へ進むなら、感情の話から実務の話に切り替えます。

  1. 退職日を記録に残る形で確認する
  2. 貸与品、私物、引き継ぎ範囲を整理する
  3. 有給、最終給与、離職票、源泉徴収票を確認する
  4. 健康保険、年金、住民税、失業保険の流れを確認する
  5. 次の仕事が未定なら、ハローワーク相談と職業訓練の情報を見ておく

退職後の手続きは、辞めてから慌てるほどしんどくなります。給料アップを断るか迷っている段階で、先に退職後の動きを見ておくと、会社の言葉に振り回されにくくなります。

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よくある質問

給料アップを提示されたら残った方が得ですか?

金額だけなら得に見えることがあります。ただ、辞めたい理由が人間関係、残業、体調、会社への不信感なら、給料アップだけで解決しにくいです。条件を書面で確認し、半年後も働けるかで判断してください。

給料アップを断るのは失礼ですか?

失礼ではありません。提案への感謝を伝えたうえで、「退職の意思は変わりません」と短く伝えれば十分です。細かい不満を並べると、話が長引きやすくなります。

転職先が決まっていないのに断っても大丈夫ですか?

大丈夫かどうかは、生活費と次の行動計画によります。退職後1〜3か月の支出、失業保険、職業訓練、求職者支援制度の可能性を確認してから判断してください。不安だけで残ると、同じ悩みに戻ることがあります。

退職を認めてもらえない場合はどうすればいいですか?

まずは退職の意思を記録に残る形で伝えます。強い引き止め、脅し、ハラスメントのような言動がある場合は、総合労働相談コーナーなど外部窓口に相談してください。

退職代行を使うべきですか?

最初から主役にする必要はありません。退職の意思表示、記録、相談先、退職後の生活設計を確認したうえで、直接やり取りが危険または困難な場合の手段として考えるのが安全です。

まとめ:給料アップより「辞めたい理由が消えるか」を見る

退職の引き止めで給料アップを提示されると、誰でも迷います。ですが、そこで見るべきなのは金額だけではありません。

  • 辞めたい理由は給与だけだったか
  • 条件は書面で確認できるか
  • 人間関係、残業、体調、将来性の不安は残らないか
  • 退職後の生活費と手続きを確認しているか
  • 次が未定なら職業訓練やハローワーク相談を見ているか

給料アップは、残る理由の一つにはなります。でも、辞めたい理由が消えないなら、判断を先延ばしにするだけになるかもしれません。

まずは、退職後の流れと生活費を見える形にする。次に、職業訓練やハローワーク相談も含めて、会社の外にある選択肢を見る。そのうえで残るか辞めるかを選ぶ方が、後悔は少なくなります。

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草尾雄太

中卒・引きこもり8年を経て、ブラック企業勤務、職業訓練、ハローワーク、失業保険、退職代行を実際に経験。
現在はフリーランスエンジニアとして働きながら、「辞めたいのに辞められない」「制度が分からず動けない」と悩む人に向けて、厚労省などの公的データと自身の実体験をもとに、退職・職業訓練・失業保険に関する情報を発信しています。
詳しいプロフィールはこちら / 退職代行を使った体験談

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