介護職への就職や復職を調べていると、「20万円の支援金」「40万円の準備金」という案内が見つかります。違いは、主にこれから介護分野に入る人向けか、経験のある人が介護職に戻るための支援かです。
介護分野就職支援金は上限20万円、再就職準備金は上限40万円。どちらも無条件でもらえる給付金ではなく、所定の介護業務に2年間従事するなどの条件を満たすと返済が免除される貸付制度です。
金額だけで選ぶことはできません。資格・過去の勤務経験・就職先を確認し、就職先の地域で制度を実施する社会福祉協議会や福祉人材センターへ相談しましょう。内定前の登録が必要な制度もあるため、仕事が決まる前に確認しておくと手続きの機会を逃しにくくなります。
2026年9月11日確認。国の制度概要と東京都・埼玉県・千葉県の現行案内をもとにしています。地域によって対象者、申請期限、勤務日数などの条件が異なります。
介護職の20万円・40万円の違いを比較
| 比較項目 | 介護分野就職支援金 | 再就職準備金 |
|---|---|---|
| 貸付上限 | 20万円 | 40万円 |
| 主な対象 | 他業種からの転職など、新たに介護職へ就職する人 | 一定の資格・研修修了歴と、介護職としての勤務経験があり、介護職へ復帰する人 |
| 資格・研修 | 初任者研修など所定の研修修了・資格が必要。受講中に申請できる地域もある | 介護福祉士、実務者研修、初任者研修など |
| 過去の介護経験 | 前職・過去の勤務状況により地域の対象条件を確認 | 原則として対象の介護業務で1年以上の経験が必要 |
| 使い道 | 介護職への就職準備に必要な費用 | 介護職への復帰の準備に必要な費用 |
| 利子 | 無利子 | 無利子 |
| 返済免除 | 対象地域・施設・職種で2年間従事するなどの条件を満たし、免除の申請・決定を受ける | |
厚生労働省は、20万円の制度について、介護未経験者、無資格で働いていた人や無職の人のうち、所定の研修を修了した人などを案内しています。一方、実施地域では前職や資格取得時期を細かく定めていることがあるため、「介護経験があるから必ず40万円」「無職なら必ず20万円」とは判断できません。
また、20万円と40万円を両方借りて60万円にする仕組みではありません。同種の資金を利用したことがある人を対象外とする条件があるため、過去の利用歴も申告して確認してください。
出典:厚生労働省「再就職準備金、就職支援金のご案内」、東京都の介護分野就職支援金、東京都の離職介護人材再就職準備金
自分はどちらの対象?資格・職歴・就職先から確認する
初めて介護職へ進む人は20万円の制度を確認
たとえば、販売職から転職し、初任者研修を修了して介護施設で働く人は、介護分野就職支援金を確認する入口になります。実際の対象になるかは、修了日、就職日、勤務する施設・職種などで審査されます。
埼玉県の2026年度募集では、就職日と研修修了日・資格取得日の年度を指定しています。東京では、就職と同時に対象研修を受講中でも申し込みできる場合があり、修了後の証明書提出が必要です。まだ修了証がない場合も、申請期限を過ぎるまで待たず、受講中に申し込めるかを窓口へ確認してください。
資格と1年以上の経験がある復職者は40万円の制度を確認
過去に介護職として働き、離職後に復帰する場合は再就職準備金が候補です。以前の勤務先での経験を証明する書類が必要になるため、勤務先名・在職期間・実際に働いた日数を整理しておきましょう。
たとえば、初任者研修を修了し、介護職として3年間勤務した後に離職していた人なら、再就職準備金の条件を確認できます。ただし、離職から再就職までに必要な空白期間や人材センターへの登録時期は地域によって違います。
埼玉県の現行案内では直近の介護職の離職日から1か月以上、東京都では1日以上の経過を条件にしています。同じ40万円の制度でも、他県の条件をそのまま当てはめないでください。
出典:埼玉県の就職支援金、埼玉県の再就職準備金、東京都の再就職準備金
「介護施設で働く」だけでは対象にならないことがある
確認するのは施設名だけでなく、担当する仕事です。対象は介護保険サービス事業所・施設等での介護業務が中心で、東京都の案内では相談業務や施設長業務は介護等の業務に含まれません。事務職としての採用などは、対象になると決めつけず担当業務を伝えて確認しましょう。
障害福祉サービスの事業所へ就職する場合は、別の「障害福祉分野就職支援金」が該当する可能性があります。施設の運営法人が同じでも、サービスの種類が違えば確認する制度も変わります。
これから初任者研修を取る方は、資格取得後にどんな仕事を担当するかも確かめておきましょう。

何に使える?満額が自動的に支給されるわけではない
貸付の対象は、就職・復職の準備に必要な費用です。使う予定を「利用計画書」に記入し、その費用が対象として認められるかを確認します。
| 費用の例 | 確認する内容 |
|---|---|
| 仕事用の靴・道具・かばん | 介護業務に必要な購入であること |
| 参考書・勉強会の参加費 | 介護の仕事に必要な情報収集・準備に当たること |
| 就職に伴う引っ越し | 敷金・礼金・転居費など、就職準備との関係 |
| 通勤用の自転車など | 購入品が対象か、通勤に使用することを何で証明するか |
| 子どもの預け先を探す活動費 | 認められる活動と費用の範囲。保育料全般が対象とは限らない |
たとえば千葉県の20万円の制度では、上限20万円と利用計画書の金額のうち、少ないほうが貸付額になります。計画上の対象費用が14万円なら、上限との差額6万円が自由に使えるお金として追加されるわけではありません。
就職準備費として認められる費用が23万円ある場合も、20万円の制度で借りられるのは上限20万円までです。差額3万円など、貸付で賄えない費用も見込んでおきます。これは上限の考え方を示す例で、個々の費用の承認を保証するものではありません。
埼玉県・千葉県の手引きでは生活費は対象外です。食費や日常の家賃、ほかの借入金の返済に自由に充てられる資金とは考えないでください。費用を支払う前に、対象になる購入時期、見積書・領収書の要否を確認し、証拠書類を保管しておきましょう。
出典:埼玉県・2026年度就職支援金の手引き(PDF)、千葉県の制度案内・2026年度手引き
返済免除の条件|2年経過しただけで自動的に免除されない
基本は、指定された地域の対象施設で介護職員等として2年間従事することです。それに加えて、勤務状況を証明する届出と、返還免除の申請が必要です。「働いていれば手続きは不要」ではありません。
在職期間と実際に働いた日数を確認する
埼玉県の両制度では、在職期間730日以上、業務従事期間360日以上を要件にしています。在職期間が730日に達していても、実際に対象業務へ従事した日数が300日なら、日数の条件は満たしていません。
パート勤務を考えている方も、雇用形態だけで対象外と決めつける必要はありませんが、勤務予定の日数が条件を満たすかを先に確認してください。休職期間や有給休暇をどちらの日数に含めるかも、地域の手引きに従って計算します。
出典:埼玉県の就職支援金・返還免除要件、埼玉県の再就職準備金・返還免除要件
返還猶予と返還免除は別の手続き
「返還猶予」は、対象業務に従事している間などの返済を待ってもらう手続きです。「返還免除」は、条件を満たしたことで返済義務を免除してもらう手続きです。借りた後の案内に沿って勤務状況を報告し、必要期間を満たしたら免除申請を行います。
千葉県では、就業中の返還猶予申請・業務従事届と、2年間従事した後の返還免除申請を案内しています。住所や勤務先が変わった場合の届出も必要です。就職先の担当者に勤務証明を依頼することもあるので、書類を受け取ったら提出時期を予定表へ入れておきましょう。
いつ申し込む?内定前の登録と申請期限に注意
申請の順番と締切は全国一律ではありません。特に40万円の再就職準備金は、福祉人材センターへの登録・届出をどの時点までに済ませる必要があるかを確認してください。
| 地域・制度の例 | 確認できた手続き・期限 |
|---|---|
| 東京都・20万円の就職支援金 | 就職した日から3か月以内に申し込み。当日消印有効 |
| 東京都・40万円の再就職準備金 | 離職後、内定が出るまでに届出・求職登録。再就職後3か月以内に申込書類と再就職届を提出 |
| 埼玉県・2026年度の両制度 | 申請期限は2027年3月31日必着。就職日・資格取得日などの対象期間は制度別に確認 |
東京都の再就職準備金では、必要な届出・求職登録をしないまま内定を受諾して再就職すると対象にならないと注意されています。すでに内定がある場合は、自分の登録歴と日付を窓口へ伝えて確認しましょう。
出典:東京都・20万円の受付案内、東京都・40万円の受付案内、埼玉県・20万円、埼玉県・40万円
相談・申し込みで準備するもの
必要書類は窓口の指定様式を使います。確認した地域の案内では、次のような書類が挙げられています。
- 貸付申込書と、費用の使い道を記載する利用計画書
- 資格証・研修修了証の写し
- 勤務先が作成する就職・内定・勤務証明書
- 再就職準備金では、過去の実務経験証明書や登録・届出の確認資料
- 住民票などの本人確認書類、連帯保証人に関する書類
連帯保証人が必要となる制度です。東京では個人保証・法人保証で申込書類が分かれています。誰でも保証人にできるとは限らないので、保証人の要件も早めに確認してください。
住民票の記載事項や発行からの日数、費用の証明方法などは地域で異なります。ほかの県のチェックリストをそのまま使わず、申請先の最新様式を取り寄せましょう。
入職前にお金が振り込まれるとは限らない
「準備金」という名前でも、就職前の支払いに必ず間に合うわけではありません。東京都の再就職準備金は、就職先で勤務を始めた後に貸付決定・交付を行うとしています。埼玉県の就職支援金も、研修修了・資格取得後の業務従事を確認してから送金する案内です。
引っ越し費用などをいつ支払うか決める前に、申請から決定・契約・振込までの見込みを確認してください。対象費用であっても、一時的に自分で用意するお金が必要になる場合があります。
出典:東京都・再就職準備金の申込みのしおり(PDF)、埼玉県の送金条件
2年以内に辞めたら?転職・休職・返済の扱い
介護の仕事をやめるなど、免除条件を満たさなくなれば返済が必要になることがあります。ただし、今の職場を辞めることと、対象の介護業務を続けられなくなることは分けて確認してください。
| 状況 | 先に確認すること |
|---|---|
| 同じ地域の別の介護施設へ転職する | 転職先の業務が対象か、前後の勤務をどう証明するか、離職期間の扱い |
| ほかの都道府県で働く | 貸付元の地域要件を満たせるか。人事異動などの例外があるか |
| 病気や出産・育児で休職する | 返還猶予の対象になるか、診断書など何を提出するか、必要勤務期間への影響 |
| 介護以外の職種へ転職する | 返還が必要になる時期、返還額、分割払いなどの手続き |
千葉県の手引きには、別の介護保険サービス事業所へ転職した場合の変更届と、前後両方の勤務先の業務従事届が案内されています。病気・育児・求職活動などによる猶予も、申請して認められることが前提です。自分の判断で届出を止めないようにしましょう。
返済する場合も、全国一律に「すぐ全額を一括払い」と決まっているわけではありません。東京都の再就職準備金のしおりでは、月賦などの方法が示され、40万円を16か月で返す場合の例は月2万5,000円です。実際の返還期間・方法は、貸付元の決定に従います。
働き続けることが難しくなったときは、返済への不安だけで無理に勤務を続ける判断をせず、退職日・次の仕事・休職理由などを貸付元へ伝え、使える猶予と必要手続きを確認してください。
出典:千葉県の2026年度手引き・返還の案内、東京都・再就職準備金の返還例(PDF)
研修費の給付金や、施設独自の入職祝い金とは別
初任者研修・実務者研修の受講料を支援する制度や、勤務先が独自に支給する入職祝い金は、今回の就職支援金・再就職準備金とは別のものです。名前や金額が似ていても、対象費用と返済条件を分けて確認しましょう。
複数の支援を使いたい場合は、制度の正式名称、使い道、金額を申請先へ伝えてください。同じ費用への重複支援や、同種の貸付との併用を制限している場合があります。「別の窓口なら両方使える」とは限りません。
実務者研修の学費そのものを抑えたい方は、指定講座で利用できる教育訓練給付金の対象も確認できます。

申請前は「資格・職歴・就職先・日付」をそろえて相談する
最初に確認するのは、20万円と40万円のどちらを希望するかではなく、自分の資格・勤務歴でどの制度の対象になるかです。資格名、介護職として働いた期間、離職日、就職予定日、就職先の所在地と業務内容をメモして相談してください。
窓口は、厚生労働省の案内にある「各都道府県の問合せ・申込先」から探せます。住所地と就職先の都道府県が異なる場合は、その両方を伝えて申請先を確認しましょう。
貸付を受けた後は、勤務状況の報告と免除申請までが必要です。申請期限、振込時期、2年間の勤務条件を確認してから、就職準備に必要な金額を計画してください。

