有給休暇は、本来働く予定の日に、賃金を受け取りながら休める制度です。正式には「年次有給休暇」といい、正社員だけでなく、条件を満たしたパート・アルバイト・派遣社員にもあります。
原則として、入社から6か月継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤すると付与されます。ただし、もらえる日数は勤続期間や所定労働日数・時間で変わり、休んだ日の給料も会社が定めた計算方法によります。
この記事では、いつ何日付くのか、出勤率の計算、給料、繰越、申請、派遣先変更・転職、退職時の消化まで順に確認します。具体的な計算や困りごとは、各説明の直後にある関連記事から詳しく確認できます。
確認日:2026年10月4日。民間企業で働く労働者の法定の年次有給休暇を中心に説明します。会社独自の特別休暇や、法律より有利な付与制度は別に確認してください。
有給休暇とは|会社の休日とは別に、賃金を受けて休む制度
有給を使うのは、勤務表や会社のカレンダーで出勤する予定になっている「所定労働日」です。もともと休みの土日・祝日・公休日に、有給を重ねて使うものではありません。シフト制なら、土日でも出勤予定の日は取得の対象になり、平日でも公休日なら有給は使いません。
求人票にある「年間休日120日」と「有給休暇10日」は別の数字です。また、夏季・年末年始に職場が休みでも、会社の休日なのか、有給の計画的付与で残日数を使うのかは会社によって異なります。
年休は病気のためだけの制度ではなく、休養、旅行、通院、家庭の用事など利用目的は原則として本人の自由です。取得する日と申請手続きは確認しますが、使い道が会社に好まれないという理由だけで取得を拒める制度ではありません。
有給はいつ付く・何日もらえる?勤続期間と働く日数で確認
最初は入社6か月後。その後は原則1年ごとに付く
法定の付与は、最初が入社から6か月後、その次が1年6か月後、以後は原則1年ごとです。それぞれの判定期間に全労働日の8割以上出勤することが必要です。
例えば4月1日入社で、会社による前倒し付与がなく、要件を満たす人なら、最初の付与日は10月1日、次は翌年10月1日になります。入社翌年の4月1日に一律で11日付くとは限りません。
会社が入社日に付与したり、法定の時期より前に全社員の基準日をそろえたりする制度もあります。自分の付与日を確認するときは、入社日からの計算だけでなく、就業規則と実際の付与履歴を見てください。
週5日勤務などの場合は、6か月で10日・6年6か月以上で20日
通常の付与日数は次のとおりです。週所定労働時間が30時間以上の人や、週所定労働日数が5日以上の人などに適用されます。パートという名称でも、週30時間以上働く契約なら、下の通常の表で確認します。
| 入社からの継続勤務期間 | その時点で新しく付く日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
表は「今回新しく付く日数」です。未使用の繰越分があれば、保有している残日数は20日を超えることもあります。反対に、付与後に使えば残日数は減ります。
短時間・少日数のパートは比例付与になる場合がある
週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下の人は、働く日数に応じた「比例付与」の対象になります。週ごとに日数が定まらない場合は、年間の所定労働日数で確認します。
| 週所定労働日数 | 週で定まらない場合の年間所定労働日数 | 初回の日数 |
|---|---|---|
| 4日 | 169~216日 | 7日 |
| 3日 | 121~168日 | 5日 |
| 2日 | 73~120日 | 3日 |
| 1日 | 48~72日 | 1日 |
例えば週4日・1日6時間なら週24時間なので、初回は7日が目安です。一方、週4日・1日7時間30分なら週30時間となり、通常の表の10日を確認します。どちらも継続勤務と出勤率の条件を満たす前提です。
年間所定労働日数で判断する勤務で217日以上なら、通常の付与日数になります。単に「最近は週3日くらい出勤した」という実績だけで決めず、雇用契約上の勤務条件や、日数が定まらないときの算定方法を確認しましょう。
比例付与も勤続期間に応じて日数が増えます。2回目以降の日数や、契約・シフトが変わったときの確認方法はこちらにまとめています。
出勤率8割は「休んだ日」の種類を分けて計算する
出勤率は、出勤日数÷全労働日×100で計算します。最初の付与は入社から6か月間、その後は原則として前の1年間を判定します。分母は半年や1年のカレンダー上の日数ではなく、その期間の全労働日です。
例えば、全労働日が120日で出勤日数が96日なら、96÷120=80%で条件を満たします。95日なら約79.17%です。四捨五入して80%に見せるのではなく、実際に8割以上かを確認します。
ここで注意したいのは、実際に職場へ行かなかった日を、全部欠勤として引くわけではないことです。
- 出勤したものとして扱う日:有給休暇の取得日、業務上のけが・病気の療養休業、法定の産前産後休業、育児・介護休業法に基づく育児休業・介護休業など。
- 全労働日から除く日:所定休日に加え、不可抗力による休業日や、会社側の経営・管理上の障害による休業日など。休日出勤した日は分母に加えません。
- 通常の私傷病欠勤:仕事以外のけが・病気で欠勤した日は、業務上の傷病による休業と同じには扱いません。
遅刻・早退した日も、出勤率の計算では出勤日です。休職の名称だけで判断せず、何のために休んだ期間かを分けて勤怠記録を照合してください。
ある期間の出勤率が8割未満になると、その期間に対応する新しい法定年休が付かないことがあります。ただし、すでに付いている有給が直ちに消えるわけではありません。在籍が続いている期間の勤続年数までゼロに戻るわけでもありません。
自分は何日まで欠勤できるのか、育休や休職をどう扱うのか、8割未満だった翌年はどうなるのかを詳しく確認したい場合はこちらです。
有給1日分の給料は、会社が定めた支払方法で確認する
有給を取った日は賃金が支払われますが、すべての人が「普段の1日分と必ず同額」「時給の8時間分」になるわけではありません。法律には次の3つの支払方法があり、就業規則などであらかじめ決めた方法を使います。
| 会社の支払方法 | 金額の考え方 | 確認するもの |
|---|---|---|
| 通常の賃金 | その日の所定労働時間を働いた場合に支払われる賃金 | 時給・月給、休む日の所定労働時間、手当の扱い |
| 平均賃金 | 原則として直前3か月の賃金などから法律に沿って算定。時給・日給制などには最低保障の計算もある | 賃金締切日、算定期間、対象賃金、日数、最低保障 |
| 標準報酬日額に相当する金額 | 健康保険の標準報酬月額を30で割った額を基に計算 | この方法を使う書面の労使協定と標準報酬月額 |
会社が取得のたびに一番安い方法へ変えてよいわけではなく、本人が毎回一番高い方法を選べるわけでもありません。まず「当社の年休中の賃金は、どの方式ですか」と確認します。
通常の賃金方式で、時給1,300円・その日の所定労働時間5時間・ほかの手当はない例なら、1,300円×5時間=6,500円です。1日休んだというだけで8時間分にはしません。
一方、平均賃金方式では、通常出勤した日の賃金より少なくなる場合があります。「有給は一律6割」という制度ではありません。時給制の最低保障の計算に出てくる60%と、会社都合の休業手当の説明を混同しないようにしましょう。
金額を比べるときは、税金・社会保険料を引く前の有給分の賃金と、月全体の手取りを分けます。平均賃金の計算例や、明細のどこを見るかはこちらで確認できます。
残日数・繰越・年5日の取得義務は別に見る
未使用分は繰り越せる。法定の有給の時効は2年
有給休暇の権利は、付与から2年間行使できます。年度が変わっただけで未使用分がすべてなくなるものではありません。会社独自に利用期限を延ばす制度があれば、その内容も確認します。
例えば、初回10日のうち4日を使い、次の付与日に6日が残っているとします。その日に新しく11日付けば、失効やほかの取得がない前提で残数は6+11=17日です。11日は新規付与、6日は繰越分なので、それぞれの期限を分けて管理します。
給与明細と勤怠画面の数字が違う場合は、まず集計時点をそろえます。締め日後の取得、申請済みの予定、古い分の失効が片方だけに反映されていることもあるため、数字が違うだけで計算ミスとは決められません。
半日・時間単位の取得は、会社の制度と換算を確認する
年休は1日単位が基本です。半日単位の取得は、会社に制度や労使の合意があるか確認します。時間単位の取得は労使協定がある場合に、年5日以内の範囲で利用できる制度です。通常の付与日数に、別途5日が追加されるわけではありません。
時間単位で使った場合は、「残り何日と何時間か」と「今年、時間単位で取れる枠がどれだけ残っているか」を分けます。換算する1日の時間数も制度上の定めを確認し、一律に8時間で自己計算しないようにしてください。
年5日の取得義務は、5日しか休めないという意味ではない
法定の年休が年10日以上付与される労働者について、会社には基準日から1年以内に5日を確実に取得させる義務があります。パートでも付与日数の条件を満たせば対象です。繰越を含む残数が10日以上というだけで対象になるわけではありません。
本人が申し出て取った分や、計画的付与で取った分も、この5日に含みます。半日年休は0.5日として数えますが、時間単位年休はこの取得義務の日数には算入しません。「有給の残数」と「年5日まであと何日か」は別の表示です。
5日は取得日数の上限ではありません。また、労使協定による計画的付与は、本人が自由に使える5日を残し、5日を超える部分を対象にする制度です。会社カレンダーの指定休暇が何の制度かを確認しましょう。
残日数が合わないときの計算順、繰越分の期限、時間単位の照合はこちらで詳しく説明しています。
申請方法と診断書|事前の年休請求と欠勤後の振替を分ける
年休は、本人が希望する日に取得するのが原則です。ただし、その日に与えると事業の正常な運営を妨げる場合、会社には取得日を変更する「時季変更権」があります。単に忙しいという言葉だけで決まるものではなく、業務や人員配置などを個別・具体的に判断します。
法律上、すべての会社に共通する「必ず○日前まで」という申請期限があるわけではありません。実際の申請先・方法・期限は就業規則などで確認し、予定が決まっている休みは早めに日付を伝えると調整しやすくなります。
申請メールや勤怠画面は、申請日、取得希望日、会社の返答が分かる形で残します。「有給で休むと伝えた日」が欠勤扱いになっていたら、担当者へ処理の理由を確認してください。
通常の年休取得に、診断書や病院の領収書が法律上一律に必要なわけではありません。提出を求められたら、次のどの手続きのためかを確認します。
- 休む前に申請した年休について、受診の証明を取得条件にしているのか。
- 欠勤した日を後から年休へ振り替えるため、会社の制度上の確認をしているのか。
- 会社独自の病気休暇・休職・復職や、健康管理の判断に使う書類なのか。
欠勤後の年休への振替は、事前の請求と異なり、当然に認められる権利ではありません。会社の規程・運用や合意を確認します。当日の始業前に年休を申し出たケースまで一律に事後振替と扱わず、連絡の時刻と内容を整理してください。
診断書を求められたときの確認文例や、提出範囲・発行費用・代替資料の考え方はこちらです。
派遣先変更・転職後の有給は、雇用主と継続勤務で確認する
同じ派遣会社で雇用が続くなら、派遣先変更だけではリセットしない
派遣社員の有給を付与・管理するのは、雇用契約を結んでいる派遣元です。同じ派遣元との雇用が続いていれば、実際に働く派遣先が変わっただけで、残日数や継続勤務期間をゼロに戻すものではありません。
ただし、引き継いだ分の有効期限が延びるわけではありません。また、次の仕事まで空白がある場合は、派遣先で働いていないだけなのか、派遣元との雇用契約も終わっているのかを確認します。「登録が残っているから雇用も継続」「1日空いたから必ずリセット」とは判断できません。
派遣先の変更と派遣会社の変更の違い、契約間の空白がある場合の確認方法はこちらです。
通常の別会社への転職では、前職の有給を持ち越さない
前の会社を退職して別の会社へ入社する通常の転職では、前職の残日数や勤続年数が、そのまま新しい会社へ引き継がれるわけではありません。同じ会社で雇用が継続したまま雇用形態を変更する場合や、合併・出向などは別に確認します。
転職先には、入社日に付くか、初回と次回はいつ何日付くか、付与前に休む制度があるかを尋ねてください。前倒し付与や会社独自の有給の特別休暇がある可能性もあり、「どの会社でも最初の半年は休めない」と決めつける必要はありません。
転職で日数が減ることが気になる場合は、付与日数の合計だけでなく、通院や家庭行事など必要な日までに使える休みがあるかを比べます。入社から2年間の比較表はこちらです。
退職時の有給消化は、退職日までの所定労働日に当てる
退職日と最終出勤日を分け、勤務表から逆算する
退職前でも、残っている有給を取得できます。実際に職場へ行く最後の日が「最終出勤日」、雇用関係が終わる日が「退職日」です。最終出勤日の後に有給を消化する期間も、退職日までは在籍しています。

有給20日を使うなら、退職日までの所定労働日を20日数えます。月~金の週5日勤務で、その間にほかの休日がない例なら4週間分です。土日などの会社の休日は有給の日数に含めないため、「退職日の20日前から休む」で足りるとは限りません。
会社には一定の場合に時季変更権がありますが、退職後の日へ変更することはできません。退職前にほかの取得日を確保できない場合には、変更する余地がありません。引き継ぎと取得予定を一緒に示し、申請と回答を記録しておきましょう。
例えば、次のように退職日・取得日・引き継ぎ予定を分けて伝えます。残日数と勤務表を確認したうえで日付を入れてください。
○月○日付で退職する予定です。現在の有給残日数は○日と確認しています。○月○日を最終出勤日とし、その後の○月○日~○月○日の間の所定労働日に年休を取得したいと考えています。最終出勤日までの引き継ぎ予定も併せてお送りしますので、勤怠登録の手続きをご案内ください。
退職後に前の会社の有給を使うことはできません。残日数があっても、退職までに取得できる所定労働日が足りなければ、すべてを消化できるとは限りません。退職日を決める段階で日程を確認することが大切です。
何日前に伝えるか、20日分をどう数えるか、会社から難しいと言われた場合の対応はこちらで確認できます。
使い切れなかった分に、一律の買い取り義務はない
退職時に残った有給について、会社に一律の買い取り義務はありません。買い取りの規定や合意がある場合は、その条件を確認します。「残った日数×いつもの日給」が必ず退職時に支払われると考えて、取得予定を組まないようにしてください。
退職時に未使用分に応じた金銭給付をすること自体が、必ずしも違法というわけではありません。ただし、金銭で精算することを理由に、在職中の有給取得を妨げることはできません。
有給消化中に次の付与日が来るなら、追加分も確認する
有給を消化している期間も在籍しており、年休の取得日は出勤率の計算で出勤したものとして扱います。退職前に次の付与日を迎え、その時点で継続勤務・出勤率などの要件を満たせば、新しい年休が付与されます。
ただし、新しく付くことと、退職までに全部使えることは別です。付与前の日へさかのぼって使ったり、退職日の翌日以降に置いたりはできません。付与日と退職日が近い場合は、その間の所定労働日と申請方法を確認します。
付与日が退職日前・退職後の場合の違い、同日になる場合の確認点はこちらです。
自分の有給を確認するために、日付・日数・賃金をそろえる
制度の説明と自分の記録を比べるには、就業規則・賃金規程、労働条件通知書や雇用契約書、勤務表、給与明細、年休の付与・取得履歴を用意します。次の項目を埋めると、何を会社へ聞く必要があるか整理できます。
| 確認項目 | 具体的に確認する内容 |
|---|---|
| 勤続と勤務条件 | 有給の勤続起算日、週所定労働時間・日数、通常付与と比例付与のどちらか |
| 付与 | 今回と次回の付与日、新規付与日数、前倒し・上乗せ制度 |
| 出勤率 | 判定期間、全労働日と出勤日数、休業・欠勤の区分 |
| 残日数 | 何日時点の残数か、付与分ごとの日数・期限、取得予定の反映 |
| 賃金 | 年休中の支払方法と規程、1日分の算定内訳 |
| 取得手続き | 申請先・方法・期限、半日・時間単位、計画的付与の日程 |
| 退職・勤務先変更 | 雇用の継続、退職日までの所定労働日、次の付与と取得予定 |
最初の問い合わせでは、制度の名称だけでなく、どの日付・数字を確認したいのか伝えます。
私の年次有給休暇について、○月○日時点の残日数と、付与分ごとの有効期限、次回の付与日・日数を教えてください。また、年休を取得した日の賃金計算方式と、申請方法が記載されている規程の箇所をご案内いただけますでしょうか。
説明と記録が合わないときや、法定の付与・取得そのものを認めてもらえないときは、会社所在地を管轄する労働基準監督署などへ相談できます。入社日・勤務条件・付与履歴・申請日時・会社の回答をそろえると、具体的な状況を伝えやすくなります。
参考資料
- 厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか」:制度の概要、6か月の継続勤務と出勤率8割の要件。
- 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」:通常付与・比例付与の日数表、利用目的の考え方。
- 厚生労働省「年次有給休暇をとる条件は?パート労働者でももらえますか?」:出勤扱いの区分、年休取得日の賃金の3方式と労使協定。
- 厚生労働省「年次有給休暇を取得した日の賃金について」:平均賃金の算定と時給・日給制などの最低保障、通常の賃金との違い。
- 厚生労働省「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて」:全労働日から除外する休業日などの取扱い。
- 厚生労働省「年次有給休暇権の時効」:年休を使う権利の消滅時効が2年であること。
- 厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト・労働者の方へ」:年休の取得と年5日の取得義務の基本。
- 厚生労働省「年次有給休暇」:半日・時間単位、計画的付与、時季変更、退職による年休権の消滅。
- 厚生労働省「派遣労働者・在籍出向者の年次有給休暇」:派遣元の付与責任と、派遣先変更時の継続勤務の通算。
- 沖縄労働局「欠勤の年休への振替要求を拒否できるか」:欠勤後の事後振替と、事前の年休請求との違い。
- 長野労働局「労働条件ハンドブック 2026年2月版」(PDF):本文137ページ、退職時の未使用年休の買い取り義務と金銭給付の考え方。










