「有給休暇を使って通院すると伝えたら、病院の領収書を出すように言われた」「1日休んだだけなのに診断書が必要で、発行費用も自分で払うらしい」。自分の有給を使うために、どこまで証明しなければならないのか戸惑うこともあるでしょう。
年次有給休暇を取るために、診断書や領収書が一律に必要とされているわけではありません。ただし、事前に年休を申請した場合と、欠勤した日を後から年休に変えたい場合では、確認する点が異なります。療養後に仕事へ戻れるかを確認する書類なら、年休の取得とは別の目的です。
まずは会社が「何のために」「どの情報を」必要としているのかを確かめましょう。この記事では、民間企業で働く人の年次有給休暇を中心に、提出を求められたときの判断順と、費用・提出範囲を確認する文例を紹介します。
最初に確認するのは、事前申請・欠勤後の振替・健康管理のどれか
同じ「有給なのに診断書を求められた」という話でも、休みを申し出た時点と書類の目的を分けると、会社へ聞くことが整理できます。
| 自分の状況 | 判断の出発点 | 会社に確認すること |
|---|---|---|
| 休む前に年休を申請した | 年休の使い道は原則として本人の自由 | 受診証明を年休取得の条件にしているのか。別の健康管理上の目的があるのか |
| 欠勤した日を後から年休に変えたい | 事後の振替が当然に認められるとは限らない | 振替を認める規程・運用、申請期限、必要書類、代わりに使える資料 |
| 療養が続き、勤務再開や業務の配慮を相談している | 働ける状態か、安全に勤務できるかの確認が必要な場合がある | 勤務上のどの判断に必要か。必要な記載内容と提出先 |
この3つは重なる場合もあります。年休として休む日でも、会社が別途、健康管理のために医師の意見を求めることは考えられます。その場合も、休暇の扱いと、健康状態の確認をそれぞれ説明してもらうことが大切です。
また、会社独自の「有給の病気休暇・特別休暇」を使う場合は、法律上の年次有給休暇とは利用条件が異なります。勤怠システムや申請書で、どの休暇を申し込んでいるかも確認してください。
事前に年休を申請した場合|受診の証明が取得条件なのかを確認する
年次有給休暇は、病気になった人だけが使う制度ではありません。厚生労働省の解説でも、利用目的は労働者の自由であり、その目的によって会社が取得を拒むことはできないとされています。労働基準法第39条には、通常の年休取得に診断書や領収書を添えるという一律の要件はありません。
例えば、前の週に「来週の水曜日は年休を取得します」と申請し、理由として通院を伝えた場面です。その後に「病院の領収書がなければ有給にはしない」と言われたら、受診したかどうかを年休の条件にしているのか、提出の目的を確認します。
「社内ルールだから」と言われたら、適用される条項を確認する
就業規則に診断書の提出について書かれていても、それが病気による連続欠勤、休職、復職のどの場面を対象にした規定なのかを見ます。年休の申請にそのまま当てはまるとは限りません。
会社には、今回適用する条項と、書類を出さない場合に勤怠をどう扱うのかを尋ねましょう。規程があることだけで、すべての提出要求や年休の不承認が適切だと決まるわけではありません。
一方、年休には申請手続きがあり、請求した日に休むと事業の正常な運営を妨げる場合には、会社が取得時季を変更できる仕組みもあります。理由が自由であることと、申請の時期・方法を確認しなくてよいことは別です。
すでに年休で処理されていたなら、変更の理由も聞く
勤怠システムでは年休になっていたのに、書類未提出を理由に後から欠勤へ変えられた場合は、変更前の表示、申請日時、会社からの連絡を残してください。「いつ、何を理由に処理を変更したのか」を人事・勤怠担当者に確認します。
給与から欠勤分が引かれているなら、勤怠の区分だけでなく、控除の対象日・金額・訂正の可否も合わせて聞くと、相談すべき点が具体的になります。
欠勤後に年休へ振り替える場合|振替のルールと証明の目的を確認する
休む前に年休を申し出ず、後日「先日の欠勤を有給にしてほしい」と頼む場合は、事前の申請と同じには扱えません。沖縄労働局は、欠勤した日を事後に年休へ振り替えることまで当然の権利になるわけではないと説明しています。宮崎労働局も、事後の請求について労使が合意すれば年休として扱えるとしています。
まず確認するのは、会社に事後振替の制度や運用があるかです。病気などの事情を確認するために資料を求められているなら、何を確認できれば振替の手続きを進められるのかを尋ねます。事後振替だから、どんな書類の要求でもそのまま受け入れるしかない、ということではありません。
- 欠勤後の年休への振替を認める条件と、申請期限
- 診断書が必要なのか、受診日が分かる領収書などで足りるのか
- 受診していない場合や、書類が期限までに間に合わない場合の扱い
- 振替が認められた場合、勤怠と給与へいつ反映されるのか
当日の朝に申し出た場合は、連絡時刻と内容を確認する
当日の連絡を、すべて「欠勤した後の振替」とひとまとめにするのは適切ではありません。ただし、始業前に連絡したというだけで、その日の年休取得が必ず認められるともいえません。会社の申請手続きや、当日の業務の状況などを確認する必要があります。
整理しておきたいのは、①連絡した日時、②相手、③伝えた内容、④会社の返答です。「体調不良で休みます」とだけ伝えたのか、「本日は年休を取得したい」と申し出たのかも分けて記録します。
年休を申し出ていたのに欠勤扱いになっているなら、送信したメールやチャットを示し、その申出がどう処理されたのかを確認してください。
出勤前の体調不良で、そもそも会社へ何と連絡すればよいか困っている場合は、欠勤の第一報や次の報告を伝える文例も参考になります。
領収書・診療明細書・診断書は、証明できる内容が違う
「病院の書類を出して」と言われても、何を提出すればよいのかは分かりません。会社が知りたいのが受診した日なのか、療養が必要な期間なのか、働ける状態なのかで、適した書類は変わります。
| 書類 | 確認の手がかりになること | 注意すること |
|---|---|---|
| 領収書 | 記載された医療機関、日付、支払額など | 日付の意味は書式による。受診の確認に使えても、休業の必要性や復職できるかまでは通常分からない |
| 診療明細書 | 行われた検査・処置、使用した薬剤などの内訳 | 領収書より詳しい医療情報を含む。受診日の確認だけに必要かを確かめる |
| 診断書・医師の意見書 | 病状、療養期間、勤務上の配慮など、医師が記載した事項 | 必要項目は提出目的による。書式・記載事項・費用を確認してから依頼する |
領収書は診断書の代わりに必ず使えるわけではありません。会社が勤務再開の可否を確認したいのに、支払いの記録だけを出しても、その判断に必要な情報が足りないためです。
受診していない・領収書をなくした場合
受診せず自宅で休んだなら、その事実を伝えます。年休は病院へ行くことを前提とする制度ではありませんが、欠勤後の振替や健康管理の確認では、別の説明・手続きが必要になる場合があります。
領収書をなくした場合は、手元の資料で何が確認できるかを会社へ相談しましょう。医療機関に改めて証明を依頼すると、書類の種類によって料金や日数がかかることがあります。会社が認める代替方法を先に確認すると、不要な発行を避けやすくなります。
受診していない日の受診証明や、医師が確認できない内容の記載を求めることはできません。会社には、用意できる書類と用意できない理由を分けて伝えてください。
診断書の費用は会社負担?発行を頼む前に確認する
「会社に求められたから必ず会社負担」「自分の有給だから必ず自己負担」と一律には決められません。何の手続きのために、誰の求めで発行するのか、費用についてどの規程・取り決めがあるのかを確認します。
厚生労働省に掲載された研究報告書には、診断書の費用を原則として本人負担としつつ、会社が指定する医師の診断書を命じた場合は会社負担とする就業規則の例が紹介されています。これは各社の規程例であり、すべての会社に同じ負担方法を義務付ける規則ではありません。
自分の会社では、通常の休職・復職の書類と、会社から追加で求められた書類を同じ扱いにしているのかも聞いてください。規程や説明に納得できない場合は、その内容を持って労働相談窓口へ相談できます。
| 確認先 | 発行前に聞くこと |
|---|---|
| 会社 | 診断書が必須か、指定用紙・必要項目、費用の負担者、会社負担なら上限や精算方法 |
| 医療機関 | その内容で作成できるか、文書料、受け取れる時期、診察が必要か |
| 会社への再確認 | 受け取れる日が提出期限に間に合うか、追加の診察料等も負担対象になるか |
診断書の文書料と、診察・治療の費用は分けて確認しましょう。医療機関の窓口でいったん自分が支払うことと、最終的に会社が精算するかどうかも別の話です。すでに支払った場合は領収書を保管し、精算の可否を尋ねてください。
健康管理・復職の書類なら、必要な範囲と提出先を確認する
病気による休業から復帰するときは、仕事を再開できる状態かを示すために、主治医の診断書などが必要になる場合があります。この確認を「有給を使うための証明」と取り違えないようにしましょう。
会社が何を判断するのかが分かれば、医師へ伝える内容も具体的になります。例えば、通常勤務が可能か、残業や出張を控える必要があるか、配慮が必要な期間はどのくらいか、といった事項です。必要に応じて仕事内容や勤務時間も医師へ伝えます。
健康情報は、会社が必要な範囲で収集・利用し、適切に管理すべき情報です。提出する前に、次の点を確認してください。
- 受診の事実、療養期間、就業の可否など、何を確認するために使うのか
- 病名や治療の詳細まで必要なのか、勤務上の配慮を中心にした記載でよいのか
- 提出先は人事・産業医などの誰で、上司や他の担当者には何が共有されるのか
- 保管方法・保管期間など、健康情報の取扱いがどう決められているのか
病名を必ず省略できるわけではなく、業務や判断の目的によって必要な情報は変わります。ただし、部署のグループチャットへ診断書の写真を送るような方法に不安があれば、人事担当者への個別提出などを相談できます。
領収書や明細書の一部を隠したい場合も、まず必要項目と受け付けられる形式を確認しましょう。原本を自分で書き換えず、写しの不要部分を伏せてよいか、別の資料でよいかを担当者に尋ねます。
会社への確認文例|目的・記載範囲・費用を具体的に聞く
以下は確認に使う文例です。日付、申請状況、会社から実際に求められた書類に合わせて書き換えてください。すでに分かっている項目は省き、不明な点を聞く形にするとやり取りを短くできます。
事前に申請した年休で、領収書を求められた場合
〇月〇日の年次有給休暇について、病院の領収書の提出を求められています。今回の提出は、年休の取得手続きとして必要なのでしょうか。それとも健康管理上の別の確認でしょうか。提出の目的と適用される規程、確認が必要な項目をご案内ください。また、書類を提出しない場合の勤怠の扱いについても確認したいです。
欠勤後の年休への振替と、代替書類を相談する場合
〇月〇日の欠勤を年次有給休暇へ振り替えたいと考えています。事後振替の条件と申請期限、必要書類を教えていただけますでしょうか。現時点で手元にあるのは受診時の領収書です。受診日の確認であれば、こちらの写しで対応できるかも確認したいです。
受診していない場合は、後半を「当日は受診せず自宅で休養したため、医療機関の書類はありません。この場合の振替手続きについて教えてください」に変えます。事実に合わせて伝えることが大切です。
診断書の費用と提出範囲を、発行前に確認する場合
診断書の発行を医療機関へ依頼する前に、提出目的、指定用紙の有無、必要な記載項目、提出期限を確認させてください。今回の文書料は会社負担となるでしょうか。本人負担の場合は、適用される規程をご案内ください。会社負担の場合は、立替精算の方法と必要な領収書についても教えてください。健康情報を含むため、提出先と社内で共有する範囲も確認したいです。
口頭で回答をもらった場合も、「本日の説明では、受診日が分かる領収書の写しを人事へ提出する、という理解でよろしいでしょうか」とメールなどで残しておくと、後から提出内容が食い違うのを防ぎやすくなります。
説明がない・欠勤扱いにされたときは、記録をそろえて相談する
「とにかく出して」と言われるだけで目的が分からない、書類がないことだけを理由に年休を欠勤へ変更された、詳しい医療情報を広く共有するよう求められた場合は、まず人事や社内相談窓口へ確認します。
解決しない場合は、総合労働相談コーナーなどの外部窓口へ相談できます。年休の取得を認めない扱いや賃金の問題は、労働基準監督署も相談先になります。相談時には、次の資料をそろえると経緯を説明しやすくなります。
- 年休の申請日時・対象日・申請時の文面
- 書類の提出を求められた日時・相手・理由
- 年休、欠勤、休職、診断書費用などに関する社内規程
- 勤怠の表示、給与明細、診断書代を払った場合の領収書
提出期限があるなら、回答がないまま放置せず、目的や費用を確認中であることと、準備できる見込みを伝えておきましょう。
最初の一歩は、自分がいつ年休を申し出たかを確認し、会社へ「何の判断に必要な書類ですか」と聞くことです。その回答をもとに、必要な情報・提出先・費用を確かめてから、書類の準備を進めてください。
参考資料
- 厚生労働省「労働基準法」:第39条の年次有給休暇と時季変更に関する規定。
- 厚生労働省「年次有給休暇はもらえるのですか?」:年休の利用目的、取得日の指定、時季変更権と当日申請に関する裁判例の解説。
- 沖縄労働局「欠勤の年休への振替要求を拒否できるか」:欠勤後の年休への振替と、事後承認の制度を明確にすることについて。
- 宮崎労働局「相談 年次有給休暇」:事後の請求について労使が合意して年休扱いにする場合の説明。
- 厚生労働省「うつ状態で休職し、会社が復帰を認めない場合のQ&A」:復職時に就労可能な状態を示すことと、診断書の役割。
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」:健康情報の利用目的、取扱者・情報の範囲、管理方法について。
- 厚生労働省掲載「事業場において治療と仕事の両立を支援するための配慮とその決定プロセスに関する研究」:本文44〜45ページの就業規則例に、診断書費用の本人負担・会社負担の定めを掲載。一般的な法的義務を定めた資料ではありません。
- 国立病院機構 福岡東医療センター「文書等の発行・保険外負担費用」:提出先への記載事項の確認と、診断書・証明書の文書料についての医療機関の案内。
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」:職場のトラブルを相談できる窓口と連絡先。



