職場の人間関係で退職したら自己都合?会社都合になるケースと失業保険の違い

離職票の発行・訂正・離職理由

職場の人間関係が限界になり、退職を考えている人の中には、

「人間関係が原因で辞めても自己都合になる?」
「上司から嫌がらせを受けているのに、自分から退職届を出したら自己都合?」
「会社都合になれば失業保険は早くもらえる?」

と気になっている人もいるでしょう。

結論からいうと、単に「職場の人と合わない」「人間関係がつらい」という理由で自分から退職した場合は、原則として自己都合退職です。

ただし、上司や同僚から故意に仲間外れにされた、著しい冷遇や嫌がらせを繰り返し受けたなど、退職せざるを得ない事情があった場合は話が変わります。

雇用保険では、このようなケースが「特定受給資格者」に該当することがあります。厚生労働省も、上司や同僚からの故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせなどによって離職した人を特定受給資格者の対象として示しています。

重要なのは、会社が「自己都合」と書いたらそれで確定するわけではないことです。

離職理由を最終的に判定するのはハローワークです。

この記事では、人間関係を理由に退職した場合の自己都合・会社都合の考え方と、失業保険への影響、離職票が自己都合になっていた場合の対処法まで解説します。

職場の人間関係で退職すると原則は自己都合

まず押さえておきたいのは、

「人間関係が悪かった」というだけで会社都合退職になるわけではない

という点です。

たとえば、

退職した理由基本的な考え方
上司と性格が合わなかった自己都合になりやすい
同僚とうまくいかなかった自己都合になりやすい
職場になじめなかった自己都合になりやすい
人間関係に疲れて自分から辞めた自己都合になりやすい
上司から嫌がらせを繰り返し受けた特定受給資格者になる可能性あり
同僚から故意に仲間外れにされた特定受給資格者になる可能性あり
会社から退職するよう繰り返し勧められた特定受給資格者になる可能性あり

という違いがあります。

「会社に行くのがつらい」という気持ちの強さだけで判断されるわけではありません。

何が起きていたのか、その出来事が退職につながったのかが重要です。

嫌がらせや著しい冷遇で辞めた場合は会社都合扱いになることがある

一般に「会社都合退職」という言葉が使われますが、雇用保険では「特定受給資格者」という区分が重要になります。

ハローワークでは、特定受給資格者に該当するケースとして、

上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者

などを挙げています。

つまり、自分から退職を申し出た場合でも、

「退職届を出した=必ず自己都合」ではありません。

退職に至った原因まで確認されます。

たとえばこんなケース

たとえば上司から長期間にわたり暴言を受けていたとします。

何度も人前で侮辱され、会社にも相談したものの状況が改善せず、最終的に退職したのであれば、単純な「人間関係が嫌で辞めた」とは事情が異なります。

同様に、特定の社員だけ意図的に無視する、職場から排除する、嫌がらせを繰り返すといったケースも対象になる可能性があります。

厚生労働省のQ&Aでも、いじめや暴力・暴言などを繰り返し受けたことによって離職した場合について、特定受給資格者に該当する可能性が示されています。

上司に注意された程度では会社都合になるとは限らない

ここは注意が必要です。

仕事上のミスについて上司から注意された、仕事のやり方について厳しく指導されたというだけで、すぐに特定受給資格者になるわけではありません。

厚生労働省も、管理者が部下の仕事上の失敗について注意・叱責することは通常起こり得るため、それだけでは嫌がらせによる離職の基準には該当しないと説明しています。

そのため、

「上司が嫌いだった」

「怒られることが多かった」

という説明だけではなく、

いつ、誰から、どのような行為を、どの程度の期間受け、それによってなぜ退職に至ったのか

を整理することが重要です。

人間関係で退職した場合の失業保険はどう変わる?

離職理由が自己都合なのか、特定受給資格者なのかによって失業保険には違いがあります。

2026年10月時点では、おおまかに次のようになります。

項目通常の自己都合退職特定受給資格者
受給資格に必要な雇用保険期間原則2年間に12か月以上原則1年間に6か月以上でも可
待期期間7日7日
給付制限原則1か月原則なし
所定給付日数原則90~150日年齢・加入期間により90~330日
離職理由の最終判断ハローワークハローワーク

自己都合退職であっても、待期7日間はあります。

さらに正当な理由のない自己都合退職では、2025年4月1日以降に退職した場合、原則として1か月の給付制限があります。

一方、特定受給資格者に該当すれば、この自己都合退職による給付制限はありません。

自己都合でも現在は給付制限が原則1か月

インターネットの記事を見ると、

「自己都合退職は2か月待たないと失業保険がもらえない」

という説明が残っていることがあります。

これは制度変更前の情報です。

2025年4月1日以降に退職した人については、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は原則1か月に短縮されています。

ただし、一定期間内に自己都合退職を繰り返している場合などは3か月になることがあります。

また、教育訓練等を受けた場合に給付制限が解除される制度も始まっています。

失業保険をもらうために必要な加入期間も違う

離職理由が重要なのは、失業保険を受給できるかどうかにも関係するためです。

通常の自己都合退職では原則として、

離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上

必要です。

一方、特定受給資格者などでは、

離職前1年間に被保険者期間が6か月以上

あれば受給資格を満たすことがあります。

たとえば入社から8か月で退職した場合を考えてみましょう。

通常の自己都合退職で、前職の雇用保険期間も合算できないのであれば、12か月に届かず基本手当を受給できない可能性があります。

ところが特定受給資格者として認められれば、6か月以上という要件を満たして受給できる可能性があります。

つまり、離職理由によっては、

「1か月早くもらえるか」という問題だけでなく「そもそも受給資格があるか」まで変わる

ということです。

失業保険をもらえる日数も変わることがある

通常の離職者の所定給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて原則次のようになっています。

雇用保険の加入期間通常の離職者
10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

一方、特定受給資格者は年齢と加入期間によって所定給付日数が決まり、条件によっては通常の離職者より長くなります。

たとえば45歳以上60歳未満で被保険者期間が20年以上なら、所定給付日数は330日です。

ただし、特定受給資格者になれば誰でも失業保険の日数が増えるわけではありません。

年齢や雇用保険の加入期間によっては通常の離職者と同じ90日になるケースもあります。

具体的な日数はハローワークの所定給付日数表で確認してください。

離職票が「自己都合」になっていたらどうする?

人間関係や嫌がらせが原因で退職したにもかかわらず、会社から届いた離職票を見ると「自己都合」になっていることがあります。

この場合でも、そのまま確定するわけではありません。

ハローワークは、離職理由について会社側と離職者側の主張を確認し、客観的な資料などを調査したうえで最終的な離職理由を判定します。

そのため離職票の内容に納得できない場合は、失業保険の手続きをするときに、

「会社が記載した離職理由に異議があります」

とハローワークで伝えましょう。

会社に「会社都合に変更してください」と言って断られたからといって、そこで終わりではありません。

最終判断をするのは会社ではなくハローワークです。

人間関係による退職を証明するために残しておきたいもの

離職理由について会社と本人の主張が食い違った場合、客観的な資料が重要になります。

厚生労働省も、離職理由を証明する書類があればハローワークの手続き時に持参するよう案内しています。

残しておきたい資料の例は次のとおりです。

資料確認できる内容
メール・社内チャット暴言、嫌がらせ、退職を迫る発言など
録音実際の発言内容
会社への相談記録会社が問題を把握していたこと
人事や上司との面談記録相談した日時や対応内容
日時を記録したメモ嫌がらせが継続していた経緯
配置転換の辞令特定の社員に対する配置変更など
雇用契約書・就業規則労働条件や会社のルール
医師の診断書体調悪化や就労継続が難しかった事情
退職前後の会社とのメール退職に至った経緯

特に会社のメールやチャットは、退職後にアカウントへアクセスできなくなることがあります。

退職を考えている段階で、自分の離職理由を説明するために必要な資料を整理しておくことは重要です。

ただし、会社の営業秘密や顧客情報など関係のない機密情報まで持ち出すのは避けましょう。

証拠がないと会社都合には絶対ならない?

証拠がなければ絶対に認められない、というわけではありません。

ハローワークでは本人の説明だけでなく、会社側にも事情を確認するなどして離職理由を調査します。

ただし、

本人「毎日暴言を受けていた」

会社「そのような事実はありません」

という状態になれば、事実確認が難しくなります。

メール、チャット、録音、相談履歴などが残っていれば、退職に至った経緯を説明しやすくなります。

そのため、退職する前から記録を残しておくことが大切です。

退職届に「一身上の都合」と書いたらもう変更できない?

退職届に「一身上の都合」と書いたからといって、それだけで雇用保険上の離職理由が確定するわけではありません。

離職理由は、退職届だけでなく、

「実際に何が起きていたのか」

「なぜ退職することになったのか」

という事情も含めてハローワークが判断します。

ただし、「一身上の都合」と書かれた退職届も判断材料の一つにはなります。

嫌がらせなどが退職原因なのであれば、退職時のメールや会社への相談記録などから、退職に至った経緯を説明できるようにしておくとよいでしょう。

人間関係が原因で体調を崩して退職した場合は?

少し複雑なのが、

職場の人間関係によって体調を崩し、仕事を続けられなくなったケース

です。

嫌がらせや著しい冷遇などが確認され、それによって退職したと認められれば、特定受給資格者に該当する可能性があります。

一方、嫌がらせによる離職としては認められなくても、疾病や心身の障害などによって退職せざるを得なかった場合には「特定理由離職者」に該当する可能性があります。

ハローワークでは「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷」などによる離職を、正当な理由のある自己都合退職として特定理由離職者の対象にしています。

つまり、

「会社都合にならなかった=必ず普通の自己都合になる」わけでもありません。

実際の事情によって判断が分かれます。

「人間関係が原因」と会社に言わず辞めても大丈夫?

会社とこれ以上関わりたくないため、

「本当は嫌がらせが原因だけど、退職時には家庭の事情と言ってしまった」

というケースもあるでしょう。

この場合でもハローワークに本当の事情を説明することはできます。

ただし、退職時に会社へ説明した内容とハローワークでの説明が大きく違えば、

「なぜ退職時には別の理由を伝えたのか」

という確認を受ける可能性はあります。

そのため、

「嫌がらせを受けていたが、本人に知られるのが怖くて会社には詳しく説明できなかった」

「人事には相談していたが、退職届には一身上の都合とだけ書いた」

など、経緯を時系列で説明できるようにしておくとよいでしょう。

人間関係で退職するときの流れ

人間関係や嫌がらせを理由に退職し、失業保険の離職理由についても確認してもらいたい場合は、次のように進めます。

時期やること
退職前嫌がらせや会社への相談履歴などを整理する
離職証明書を確認するとき会社が記載した離職理由を確認する
離職票が届いたとき離職理由が実態と合っているか確認する
ハローワークで受給手続き離職理由に異議があることを伝える
事情確認退職までの経緯や資料を提出する
判定ハローワークが離職理由を判断する

特に重要なのが、会社から離職票が届いてからです。

「自己都合になっているから仕方がない」

とそのまま手続きを終わらせるのではなく、実際の退職理由と違うのであればハローワークへ伝えてください。

厚生労働省も、離職票の理由が実際と異なる場合は、受給手続きの際にハローワークの担当者へ伝え、証明できる書類があれば持参するよう案内しています。

会社が自己都合と言っていても最終判断はハローワーク

ここはこの記事で最も重要なポイントです。

会社が、

「あなたが自分から辞めたんだから自己都合です」

と言ったとしても、雇用保険上の離職理由まで会社だけで決められるわけではありません。

ハローワークは、

会社側の主張
退職者本人の主張
離職理由を確認できる資料

などから事実関係を確認し、最終的な離職理由を判定します。

したがって、嫌がらせや著しい冷遇などによって退職せざるを得なかったのであれば、

「自分から退職届を出したから自己都合だろう」

と最初から諦める必要はありません。

実際の経緯をハローワークで説明しましょう。

まとめ|「人間関係で退職=必ず自己都合」ではない

職場の人間関係が嫌で自分から辞めた場合は、原則として自己都合退職になります。

ただし、

上司や同僚から故意に排除された
著しい冷遇を受けた
嫌がらせやいじめを繰り返し受けた
会社が問題を把握していたのに必要な対応をしなかった

などの事情がある場合は、特定受給資格者として扱われる可能性があります。

特定受給資格者になれば、通常の自己都合退職とは失業保険の扱いが異なり、自己都合退職にかかる原則1か月の給付制限がなく、受給資格に必要な被保険者期間や所定給付日数が有利になる場合があります。

そして、会社から届いた離職票が「自己都合」だったとしても、それだけで確定するわけではありません。

雇用保険上の離職理由を最終的に判断するのはハローワークです。

離職票の内容と実際の退職理由が違うのであれば、受給手続きの際にその旨を伝え、退職までの経緯を確認できる資料があれば一緒に提出しましょう。

参考資料