5分遅刻で15分・30分ぶん給料を引かれた|遅刻控除と減給の違い

減給・固定残業代・給与天引き

5分遅刻しただけなのに、給与明細を見ると15分ぶん引かれていた。

会社に確認すると、

「うちは15分単位だから」

「30分単位で勤怠を計算している」

と言われた。

このような場合、

「会社のルールなら仕方ないの?」

と疑問に思う人もいるでしょう。

結論からいうと、5分しか遅刻していないのに、単純な遅刻控除として15分・30分ぶんの給料を引くことは原則として認められません。

会社が給料から控除できるのは、基本的には実際に働いていなかった時間に対応する部分です。

5分遅刻したなら5分。

1分遅刻したなら1分。

「給与計算が15分単位だから」という理由だけで、実際の遅刻時間を15分や30分へ切り上げることはできません。

ただし話を少し複雑にするのが**「減給の制裁」**です。

会社が、

「5分遅刻したので5分ぶんの賃金を払わない」

のと、

「5分遅刻したことへのペナルティとして、さらに賃金を減らす」

のは法律上まったく別の話です。

まず違いを整理すると次のようになります。

ケース考え方
5分遅刻→5分ぶん控除通常の遅刻控除として考えられる
5分遅刻→15分ぶん控除余分な10分について問題になる
5分遅刻→30分ぶん控除余分な25分について問題になる
1分遅刻→15分ぶん控除余分な14分について問題になる
遅刻への懲戒として減給就業規則・減給上限など別の条件を確認
「15分単位だから」で一律切り上げそれだけで適法になるわけではない

この記事では、5分の遅刻で15分・30分ぶん給料を引かれた場合に、何を確認すればよいのか順番に解説します。

5分遅刻して30分ぶん給料を引くのは原則NG

この問題については、行政からかなり分かりやすい例が出ています。

愛知労働局が公開している「賃金計算の端数の取扱い」では、

5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするケース

をそのまま例にしています。

この場合、実際に働かなかったのは5分です。

ところが30分ぶんを控除すると、

30分-5分=25分

については実際には働いているのに給料が支払われないことになります。

この余分な25分のカットは、労働基準法24条の「賃金全額払いの原則」に反するとされています。都道府県労働局

熊本労働局のQ&Aにも、まさに次の質問があります。

「5分の遅刻で30分の賃金を引かれます。違法ではありませんか」

回答では、5分の賃金を控除すること自体は問題ないものの、5分の遅刻を理由に30分ぶんの賃金を控除すれば、原則として全額払いに反すると説明されています。都道府県労働局

つまり、

遅刻したから給料を引かれたこと自体

ではなく、

実際に遅刻した時間を超えて引かれていること

が問題になります。

5分遅刻なら5分ぶんの給料を引くことはある

ここは誤解しないようにしましょう。

遅刻した時間についてまで必ず給料を払わなければならないわけではありません。

たとえば9時始業なのに9時5分から仕事を始めた場合、9時から9時5分までは原則として働いていません。

その5分について賃金を支給しないという考え方が、いわゆる遅刻控除です。

そのため、

「5分遅刻したのに5分ぶん引かれた」

というだけで会社の処理がおかしいとはいえません。

問題になるのは、

5分しか働いていない時間が減っていないのに、15分や30分として計算されているケース

です。

1分遅刻したら15分ぶん引くのも同じ

同じ考え方は「1分遅刻したら15分控除」にも当てはまります。

たとえば9時始業で9時1分から実際に働いたとします。

会社が、

「勤怠は15分単位だから9時15分出勤として計算します」

としてしまうと、

実際の遅刻:1分
給与上の遅刻:15分

となります。

差は14分です。

9時1分から9時15分まで実際に働いているのであれば、その14分まで無給にすることが問題になります。

「1分遅刻したら15分遅刻扱い」も、単なる給与計算上の端数処理として自由にできるわけではありません。

「うちは15分単位だから」は理由にならない?

会社によっては、

「タイムカードは15分単位」

「給与計算は30分単位」

というルールを設けていることがあります。

しかし、会社が独自に15分単位と決めれば、実際の労働時間を自由に切り捨てられるわけではありません。

ここで大切なのは、

タイムカードの表示単位ではなく、実際に何時から働いていたか

です。

たとえば、

9時00分 始業
9時05分 出勤
9時05分 仕事開始
9時15分 給与計算上の開始時刻

となっているなら、9時05分から9時15分の10分間は実際には働いています。

それなのに給料が支払われていなければ問題になります。

「給与ソフトが15分単位だから」

「昔からそういう計算だから」

という事情だけで、働いた時間を無給にはできません。

15分単位・30分単位が全部禁止されているわけではない

ここで、

「じゃあ給料の15分単位や30分単位の処理は全部違法なの?」

と思うかもしれません。

そういう意味ではありません。

厚生労働省では、一定の端数処理について例外的に認めています。

代表例が1か月分の時間外労働などを合計した後の端数処理です。

1か月の時間外・休日・深夜労働時間について1時間未満の端数が出た場合、

  • 30分未満を切り捨て
  • 30分以上を1時間へ切り上げ

という処理は認められています。チェック労働

ただし、これは、

毎日の遅刻を15分・30分単位に切り上げてよい

というルールではありません。

残業時間についても、毎日、

「14分残業したから0分」

「29分残業したから0分」

と切り捨てることはできません。

厚生労働省・労働局も、1日ごとに一定時間未満の労働時間を切り捨てて賃金を払わない扱いは労働基準法違反になると案内しています。都道府県労働局

つまり、

「30分という数字が法律上認められているらしい」

という話だけを切り取って、毎日の遅刻を30分単位にすることはできないということです。

「遅刻控除」と「減給」はまったく違う

この記事で最も重要なのがここです。

遅刻控除

遅刻控除は、

働かなかった時間について賃金を支払わない

という処理です。

5分働かなかったなら5分ぶんを控除するという考え方です。

罰金ではありません。

減給の制裁

これに対して減給の制裁は、

遅刻などのルール違反に対する懲戒処分として給料を減らす

ものです。

たとえば、

5分遅刻した
↓
5分ぶんの給料を控除
↓
さらに遅刻への懲戒処分として減給

という構造なら、後半部分は単なる遅刻控除ではありません。

「ペナルティとしての減給」です。

この2つを混同すると、

「5分しか遅刻していないのに30分引くのは絶対違法」

とも、

「就業規則に書いてあるから何分引いてもOK」

とも誤解してしまいます。

5分遅刻で30分引いても合法になる場合がある?

愛知労働局の資料には、この点まで書かれています。

5分遅刻した人を30分遅刻したものとして通常の賃金計算をすると、余分な25分のカットは問題になります。

ただし、その余分な部分が**就業規則に定められた「減給の制裁」**として行われ、労働基準法91条の制限内であれば別の扱いになります。都道府県労働局

つまり重要なのは、

会社が何という名目で何をしているのか

です。

単に、

「うちは遅刻を30分単位で計算します」

だけなら、実際の遅刻時間を超えた分が問題になります。

一方、

「遅刻は懲戒対象となり、一定の場合に減給処分を行う」

という制度なら、減給の制裁として別に検討する必要があります。

就業規則に書いてあれば何でもOKではない

ここも検索者が気になるところでしょう。

会社から、

「就業規則に書いてあるから合法です」

と言われることがあります。

しかし、就業規則に書けばどんな減給でも認められるわけではありません。

労働基準法91条では、減給の制裁に上限があります。

1回の減給額

1回の事案について、

平均賃金1日分の半額まで

です。

1回の給与期間における総額

複数の減給処分がある場合でも、

その給与期間の賃金総額の10分の1まで

という制限があります。厚生労働省

さらに、懲戒について定める場合は、その種類や程度を就業規則に定めることが労働基準法89条で求められています。厚生労働省

「就業規則+上限以内」なら必ず有効でもない

もう一段階あります。

「就業規則に書いてある」

「労基法91条の金額以内」

なら、どんな懲戒でも必ず有効というわけではありません。

労働契約法15条では、懲戒について、

  • 客観的に合理的な理由があるか
  • 社会通念上相当か

という点も問題になります。

これらを欠く懲戒は権利濫用として無効になると定められています。厚生労働省

そのため、

「たった1分遅刻したら必ず重い減給処分」

のようなルールについては、単に金額上限だけを見ればよいわけではありません。

遅刻の回数や程度、理由、これまでの注意・指導なども含めて懲戒の相当性が問題になる可能性があります。

時給1,200円なら実際いくら違う?

分かりやすく時給1,200円で計算してみましょう。

1分あたりの賃金は、

1,200円÷60分=20円

です。

5分遅刻

本来の遅刻時間分は、

20円×5分=100円

です。

15分ぶん控除された

20円×15分=300円

なので、

200円多く控除

されています。

30分ぶん控除された

20円×30分=600円

なので、

500円多く控除

されています。

表にするとこうです。

実際の遅刻給与上の扱い控除額実際の遅刻との差
5分5分100円0円
5分15分300円200円
5分30分600円500円
1分15分300円280円

※時給1,200円として計算。

月給制の場合は会社の賃金規程で時間単価の計算方法が定められていることがあるため、実際の金額は異なります。

ただし、

実際に働かなかった時間

と

給料から差し引かれた時間

を比較する考え方は同じです。

給与明細のどこを確認すればいい?

「給料が少ない気がするけど、本当に遅刻が原因なのか分からない」

という人は給与明細を確認してみましょう。

会社によって表示方法は違いますが、まず見るのは次の部分です。

勤怠欄

給与明細に、

  • 遅刻回数
  • 早退回数
  • 遅刻早退時間
  • 欠勤日数
  • 欠勤時間

などが表示されている場合があります。

実際には5分しか遅刻していないのに、

遅刻早退時間「0.50時間」

などになっていないか確認します。

0.50時間なら30分です。

控除欄

次に、

  • 遅刻早退控除
  • 欠勤控除
  • 不就労控除

などの項目を確認します。

5分の遅刻に対して、何円引かれているか確認してください。

タイムカード・勤怠システム

給与明細だけでは判断できない場合は、

実際の打刻時刻

も確認します。

たとえば、

始業 9:00
打刻 9:05

なのに、

給与計算上の出勤 9:15

となっているなら、なぜ10分違うのか確認する必要があります。

給与明細だけでは「遅刻控除」か「減給」か分からないこともある

ここは意外と重要です。

給与明細に単に、

「遅刻控除 600円」

と書かれていたとしても、

会社がどのような計算をしたのか分からないことがあります。

たとえば時給1,200円で5分遅刻したのに600円引かれていたなら、

本来の5分:100円
追加分:500円

という状態です。

会社が、

「30分単位で遅刻控除している」

のか、

「5分は遅刻控除、残り25分は懲戒による減給」

としているのかで法律上の整理が変わります。

分からない場合は給与担当者に、

「5分の遅刻に対して何分として計算され、どの規定に基づいて控除されていますか」

と確認すると分かりやすいでしょう。

就業規則では何を確認する?

会社に就業規則があるなら、主に次の部分を確認します。

賃金・欠勤控除に関する規定

たとえば、

「遅刻、早退その他不就労時間について賃金を控除する」

といった記載です。

これは通常の遅刻控除に関係します。

懲戒に関する規定

次に、

  • 遅刻を繰り返した場合
  • 正当な理由なく遅刻した場合
  • 服務規律に違反した場合

などが懲戒事由として定められているか確認します。

減給の規定

懲戒の種類として、

  • 戒告
  • けん責
  • 減給
  • 出勤停止
  • 懲戒解雇

などが定められている場合があります。

「30分単位」という言葉だけを見るのではなく、

通常の給与計算なのか懲戒処分なのか

を見ることが重要です。

会社に聞くときは「違法ですよね?」から入らなくてもいい

給料がおかしいと思っても、最初から会社と対立する必要はありません。

給与計算上の単純な設定ミスという可能性もあります。

まずは、

「○月○日は5分遅刻しましたが、給与明細では30分ぶん控除されているように見えます。計算方法を教えていただけますか」

と確認すれば十分です。

さらに、

「実際の遅刻時間を超える部分は、通常の遅刻控除ですか。それとも就業規則に基づく減給処分ですか」

と聞けば、問題をかなり整理できます。

会社に確認するとき残しておきたいもの

後で「何分働いたか」が分からなくならないように、次の資料は残しておきましょう。

  • 給与明細
  • タイムカード
  • 勤怠システムの画面
  • シフト表
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 賃金規程
  • 就業規則
  • 会社から説明されたメールやチャット

特に重要なのは、

実際に何時から働いたのか分かる記録

と、

会社が何分として給与計算したのか分かる記録

です。

この2つを比較すると問題が見えやすくなります。

5分遅刻を何度もしていた場合はどうなる?

「5分を30分として控除するのはダメなら、何回遅刻しても5分しか引けないの?」

という疑問もあるでしょう。

これは別問題です。

会社は遅刻そのものについて注意や指導を行うことができます。

就業規則に懲戒規定があり、要件を満たしていれば懲戒処分が行われることもあります。

つまり、

遅刻控除の金額を勝手に水増しする

ことと、

繰り返す遅刻に対して適切な懲戒処分を行う

ことは同じではありません。

会社側が遅刻に何も対応できないという話ではないのです。

3か月間ずっと10%減給のような処分も自由にはできない

熊本労働局のQ&Aには、

遅刻したことを理由に3か月間10%の減給を言い渡された

という例も掲載されています。

このケースについて熊本労働局は、労基法91条の上限を説明したうえで、そのような制裁は認められないとしています。都道府県労働局

つまり、

「遅刻したんだから罰金はいくらでも会社が決められる」

わけではありません。

会社に聞いても直してもらえない場合は?

会社へ確認して、

「うちは全員15分単位だから」

「就業規則だから」

としか説明されず、実際に働いた時間の賃金が支払われていない可能性があるなら、外部へ相談する方法もあります。

労働基準監督署

賃金不払いなど労働基準法に関する問題は、事業場を管轄する労働基準監督署へ相談できます。厚生労働省も賃金不払いの相談先として労働基準監督署を案内しています。都道府県労働局

労働条件相談ほっとライン

夜間や土日祝日なら「労働条件相談ほっとライン」もあります。

匿名・無料で相談でき、2026年度は平日17時~22時、土日祝9時~21時に利用できます。チェック労働

会社名を出していきなり何かを申し立てるのではなく、

「5分遅刻して30分ぶん引かれています。この計算でよいのでしょうか」

と一般的な相談から始めることもできます。

よくある質問

5分遅刻して15分ぶん給料を引くのは違法ですか?

通常の遅刻控除として処理しているのであれば、実際に働かなかった5分を超える10分について問題になります。

ただし余分な部分が就業規則に基づく減給の制裁として適切に行われている場合は別途判断が必要です。

1分遅刻したら15分ぶん引かれました

実際の遅刻が1分なのに、単なる賃金計算として15分ぶん控除すれば、残り14分について問題になります。

「15分単位だから」という理由だけで自由に切り上げられるわけではありません。

5分遅刻して30分引かれるのは違法ですか?

行政の公式資料でも具体例が示されています。

単純な遅刻控除として30分ぶんを引けば、実際の遅刻5分を超える25分について労基法24条の全額払い原則に反するとされています。

ただし就業規則に定める減給の制裁として適切に行われる場合は別です。

就業規則に「遅刻は30分単位」と書いてあれば合法ですか?

書いてあるだけで何でも認められるわけではありません。

単なる不就労時間の計算なのか、懲戒としての減給なのかを確認する必要があります。

減給の制裁であれば労基法91条の上限や労働契約法15条の相当性なども問題になります。

タイムカードが15分単位なら仕方ないですか?

タイムカードや給与システムの仕様だけで、実際に働いた時間の賃金を切り捨ててよいことにはなりません。

実際に何時から仕事をしていたのかを確認することが重要です。

遅刻した自分が悪いので何も言えませんか?

遅刻したことと、働いた時間について賃金を受け取ることは分けて考えます。

遅刻について会社から注意や適切な懲戒を受けることはあり得ますが、それを理由に会社が自由な金額を賃金から引けるわけではありません。

まとめ|「5分→30分」は遅刻控除か減給かを確認する

5分遅刻したとき、働いていない5分ぶんについて給料が支払われないことはあります。

しかし、

「5分遅刻したので30分ぶん給料を引きます」

という単純な計算は別です。

実際には働いている25分まで無給になるため、行政も賃金全額払いの原則に反すると明確に示しています。

ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 5分遅刻なら5分ぶんの遅刻控除はあり得る
  • 5分を15分として単純に控除すると余分な10分が問題になる
  • 5分を30分として単純に控除すると余分な25分が問題になる
  • 1分遅刻を15分へ切り上げる場合も考え方は同じ
  • 「給与計算が15分単位」というだけでは働いた時間を切り捨てられない
  • 遅刻控除と懲戒による減給は別物
  • 減給には就業規則や労基法91条の上限がある
  • 就業規則に書いてあっても何でも有効になるわけではない
  • 給与明細だけでなくタイムカードと就業規則も確認する

給与明細を見て、

「5分しか遅刻していないのに、なぜ30分も引かれているんだろう」

と思ったら、まず会社に計算方法を確認してみてください。

確認したいのは、

「実際の遅刻時間を何分として計算しているのか」

そして、

「余分に引かれている部分は通常の遅刻控除なのか、懲戒としての減給なのか」

の2点です。

この違いが分かれば、会社の処理に問題があるのかかなり判断しやすくなります。

参考資料

  • 愛知労働局「賃金計算の端数の取扱い(昭和63年3月14日 基発第150号より)」 都道府県労働局
  • 熊本労働局「外国人労働者向け相談ダイヤル よくある質問(Q44・Q45)」 都道府県労働局
  • 厚生労働省「労働基準法」第24条・第89条・第91条 厚生労働省
  • 厚生労働省「時間外・休日労働と割増賃金」 チェック労働
  • 厚生労働省「労働契約法」第15条 厚生労働省
  • 厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」