「技能実習がなくなると、今働いている人はどうなるのか」「育成就労なら、希望する会社へ転職できるのか」。2027年の制度変更では、開始日だけでなく、働く期間・転籍・次の在留資格への進み方を分けて確認することが大切です。
育成就労制度は2027年4月1日に始まります。これに先立ち、2026年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受付が始まっています。ただし、申請受付の開始と、育成就労として働けるようになる時期は別です。
大きな変更点は、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育てることと、一定条件の下で本人の希望による転籍を認めることです。現在の技能実習生が、開始日に一斉に育成就労へ切り替わるわけではありません。
この記事では、2026年9月25日時点の出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の資料をもとに、働く本人や、職場で説明・支援する人が知っておきたい違いを整理します。
育成就労は2027年4月1日開始|2026年9月は計画の申請受付
技能実習制度を見直し、日本の人手不足分野で人材を育て、確保するために設けられるのが育成就労制度です。準備段階の手続きは、制度開始より前に進められています。
| 日付 | 始まること |
|---|---|
| 2026年4月15日 | 監理支援機関の許可に係る施行日前申請の受付 |
| 2026年9月1日 | 育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受付 |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度の運用開始 |
育成就労計画は、受入れ企業などの育成就労実施者が作成するものです。どの業務で、どのように技能や日本語を学ぶかなどを定め、認定を受けます。「外国人本人が9月から新しい在留資格で自由に働ける」という意味ではありません。
外国人技能実習機構の案内では、施行日前申請は開始予定日の7か月前から5か月前までに行い、審査結果は2027年4月1日以降に順次郵送するとされています。計画の認定に加え、在留資格に関する手続きも必要になるため、申請しただけで希望日に必ず就労開始できるとは限りません。
分野ごとの基準や必要書類にも違いがあります。受入れ予定の人は、勤務先・監理支援を行う機関に「計画の申請状況」「就労開始予定日」「在留手続きの予定」を分けて確認してください。
技能実習と育成就労の違いを比較
育成就労は、制度名だけを変えるものではありません。技能を学んだ後も日本で働くことを見据え、特定技能制度とのつながりや、本人の権利保護を重視する仕組みに変わります。
| 比較する点 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 技能の移転を通じた国際貢献 | 日本の人手不足分野での人材育成と人材確保 |
| 育成の進め方 | 1号・2号・3号の段階ごとに計画を認定 | 原則3年間の計画に基づき、特定技能1号水準を目指す |
| 本人の希望による転籍 | 原則として認められない。やむを得ない事情等による変更は可能 | 技能・日本語能力、就労期間、転籍先などの条件を満たせば可能 |
| 特定技能1号への移行 | 技能実習2号の良好修了者には、関連する業務等の条件の下で試験免除の仕組みがある | 必要な技能試験・日本語試験への合格が移行要件になる |
| 監理・支援を行う機関 | 団体監理型では監理団体 | 監理型では、新たな許可を受けた監理支援機関 |
技能実習でも、雇用関係の下で働く実習生には労働関係法令が適用されます。「育成就労になって初めて労働者になる」という理解は適切ではありません。
また、技能実習で行っていた仕事が、すべてそのまま育成就労の対象になるとは限りません。仕事内容を確認するときは、会社の業種だけでなく、制度上の「分野」「業務区分」まで確認します。
原則3年間の就労で何を目指す?
育成就労では、働きながら技能と日本語を身につけ、特定技能1号で働くための水準に到達することを目指します。技能実習のような1号・2号・3号の区分はありません。
受入れ企業は、本人ごとに原則3年間の計画を作成します。働く本人は「3年間で何をできるようになるのか」「どの試験をいつ受けるのか」「日本語を学ぶ機会があるか」を確認しておくと、将来の進路を考えやすくなります。
同じ作業を3年続ければ、自動で特定技能になるわけではない
育成就労の目標には、技能と日本語能力の試験合格が含まれます。単に在籍期間が3年になれば、特定技能1号へ自動的に切り替わるわけではありません。
また、3年間という期間は、最初の会社で何があっても働き続けなければならないという意味でもありません。転籍できる場合と必要な手続きが設けられています。
日本語の準備は「入国前」と「働き始める前」を区別する
就労開始前には、原則としてA1相当以上の日本語試験への合格、または所定の日本語講習の受講などが求められます。試験に合格していなければ、必ず入国できないという仕組みではありません。
就労期間を通じて目指す日本語能力は、基本的にA2相当です。ただし、分野ごとにより高い水準が定められる場合があります。試験名や必要な講習は、自分の分野の基準で確認してください。
転籍はどう変わる?本人の希望による変更にも条件がある
育成就労でいう「転籍」は、育成就労を行う受入れ先を変更することです。新制度では、やむを得ない事情がある場合に加え、一定の条件の下で本人の希望による転籍が認められます。
本人意向による転籍で確認する主な条件
| 確認する項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 就労した期間 | 直近の受入れ先で、設定された転籍制限期間を経過していること |
| 技能・日本語能力 | 分野ごとに定められた試験等の要件を満たしていること |
| 転籍先の仕事 | 転籍前と同じ業務区分内であること |
| 転籍先の受入れ体制 | 優良な育成就労実施者であることや、人数・転籍者割合などの条件を満たすこと |
| 紹介・手続き | 民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと。転籍先で新たな計画の認定等が必要 |
このほか、転籍先が転籍元へ一定の育成費用等を負担する仕組みもあります。本人が「別の会社で働きたい」と申し出るだけで、すべての手続きが完了するわけではありません。
「1年働けば誰でも自由に転職できる」という説明には注意が必要です。転籍制限期間は、当分の間、分野ごとに1年から2年の範囲で定められます。分野の期間が1年を超える場合でも、受入れ企業が自主的に1年とすることは可能です。
応募・契約時には「この会社で設定する転籍制限期間は何年か」を確認しましょう。1年を超える期間を設定する場合は、分野ごとに定められた待遇向上の措置も確認します。
たとえば、今の仕事とは別の業務区分へ移りたい場合は、「転籍できる制度になったから」という理由だけでは認められません。同じ業務区分の受入れ先であっても、試験や期間、受入れ先の要件を順に確かめる必要があります。
ハラスメントなどがある場合は、本人意向の転籍と分けて相談する
暴力・パワーハラスメントなどの人権侵害や、受入れ企業の倒産など、やむを得ない事情による転籍は別の仕組みです。これは現在の技能実習にもあります。
こうした事情があるときに、「本人意向の転籍は1~2年後だから、それまで相談できない」と考える必要はありません。今の技能実習で困っている人は、新制度の開始を待たず、監理団体や外国人技能実習機構へ相談してください。同機構には母国語での相談窓口もあります。
相談するときは、在留カード、契約書、給与明細、勤務時間の記録、困った出来事の日付など、手元にある資料を整理すると状況を伝えやすくなります。危険がある場合は安全の確保を優先し、必要な支援につながってください。
特定技能1号への移行は、技能・日本語の試験合格が基本
育成就労から特定技能1号へ進む際には、必要な技能試験と日本語能力の試験への合格が要件になります。
- 技能:技能検定3級等、または特定技能1号評価試験など、分野で定める試験。
- 日本語:基本的にA2相当以上の試験。日本語能力試験N4等が例として示されていますが、分野によって必要水準が異なります。
試験に合格した後も、雇用先や在留資格変更などの条件・手続きを満たす必要があります。「試験合格」と「特定技能として働き始められること」は分けて確認しましょう。
技能実習2号の良好修了者にある試験免除とは違う
現在の技能実習2号から特定技能1号への移行には、良好修了や職種・作業と従事予定業務との関連性などに応じた試験免除の取扱いがあります。育成就労について、同じ免除が当然に使えると考えないことが大切です。
また、新制度の開始後も、当分の間は、条件を満たす技能実習2号の良好修了者が特定技能1号へ進むことは可能です。技能実習中の人は、いったん育成就労へ切り替える必要があると決めつけず、自分に合う移行経路を確認します。
3年以内に合格できなかったら?
移行に必要な試験に不合格となった場合には、最長1年の範囲で一定の在留継続が認められる可能性があります。ただし、誰でも自動的に1年延長できるという扱いではありません。
再受験の日程、育成の継続、計画・在留手続きについて、期限が近づく前に受入れ企業や監理支援機関へ相談しましょう。制度は原則3年間で、延長は条件付きの対応です。
制度上の講習とは別に、自分で資格講座などを受けることを検討している人は、教育訓練給付金の条件も参考になります。給付を使えるかどうかと、在留資格で認められる仕事・活動の範囲は別に確認してください。

今の技能実習生はどうなる?一斉切替ではなく経過措置がある
2027年4月1日に技能実習の在留資格が一律に無効になるわけではありません。施行時に技能実習をしている人などは、経過措置に基づき、認定された計画で技能実習を続けられます。
| 状況 | 確認したい経過措置 |
|---|---|
| 施行時にすでに来日し、技能実習をしている | 原則として認定計画に基づき継続できる。次の段階への移行は別途条件を確認 |
| これから技能実習1号を始める | 2027年3月31日までに計画の認定申請を行い、原則2027年6月30日までに実習を開始することが必要 |
| 技能実習2号から3号へ進みたい | 2027年4月1日時点で技能実習2号で在留し、その活動を1年以上行っていることなどが必要 |
技能実習1号から2号へは、経過措置と通常の移行要件を満たし、計画の認定を受けて進むことができます。一方、3号への移行は施行日の時点での状況に左右されるため、入国日だけでなく、2号の活動を始めた日まで確認してください。
外国人技能実習機構は、新たな1号計画の認定申請について、審査や入国手続きにかかる時間を考慮し、2027年2月までに申請するよう案内しています。「3月31日まで申請できるから、直前でも間に合う」とは限りません。
過去に技能実習をした人が育成就労を希望する場合も、以前の実習期間が関係します。制度名が変わったから、誰でも新しく3年間を最初から使えるというわけではありません。
働く前・転籍前に確認したい5つのこと
本人や支援する人は、制度名の説明だけで終わらせず、次の点を具体的に確認すると行動につなげやすくなります。
- どの制度で働くのか:技能実習の経過措置か、育成就労か、特定技能か。在留資格と就労開始予定日を確認する。
- 何を学び、どの仕事をするのか:分野・業務区分、主に身につける技能、試験名、受験予定を確認する。
- 給与と生活費はいくらか:賃金、残業、休日、住居費などの控除、講習・試験の費用負担を確認する。
- 転籍の条件は何か:設定された期間、必要な試験、申出先、転籍先の条件を確認する。
- 困ったときに誰へ相談するか:勤務先の担当者、監理団体・監理支援機関、機構の窓口を確認する。
新制度は、原則3年間で特定技能1号につながる技能と日本語を身につける仕組みです。転籍の選択肢は広がりますが、無条件の転職や在留資格の自動変更が認められるわけではありません。自分の分野、これまでの実習期間、希望する仕事を整理してから、必要な手続きを確かめましょう。
参考資料
2026年9月25日時点の公表資料で確認しています。制度開始は2027年4月1日です。分野別の基準・様式・手続きの案内は更新されるため、実際の申請時にも最新版を確認してください。
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」:制度の違い、転籍、技能・日本語の要件、特定技能への移行、技能実習生の経過措置。
- 外国人技能実習機構「育成就労制度について」:施行日、制度目的、技能実習計画に関する案内。
- 外国人技能実習機構「育成就労計画認定施行日前申請」:2026年9月1日の受付開始、提出書類、申請リーフレット。
- 外国人技能実習機構「関係法令・育成就労運用要領等」:2026年8月5日改正版の第2章・第4章など。計画の認定と育成就労の仕組み。
- 外国人技能実習機構「技能実習計画についてのご案内」(PDF):新規の1号計画、2号・3号への移行、2027年2月までの申請の案内。
- 外国人技能実習機構「母国語相談(メール・電話)」:現在の技能実習生向けの相談窓口。


