認定職業訓練とは、企業や業界団体などが行う職業訓練のうち、教科、訓練時間、設備などが法令上の基準に適合するとして、都道府県知事の認定を受けた訓練です。
名称だけを見ると、ハローワークで申し込む公共職業訓練の一種に見えますが、実施主体や主な対象者、申込先、費用の考え方が異なります。企業の従業員を対象とする訓練が中心で、誰でも無料で申し込める制度ではありません。
また、この記事で扱うのは、職業能力開発促進法第24条に基づく認定職業訓練です。求職者支援制度で使われる「求職者支援制度に基づく認定職業訓練」とは、根拠となる制度と認定手続が異なります。
最初に押さえる8つのポイント
- 企業、事業主団体、職業訓練法人、非営利法人などが実施する
- 教科、訓練時間、設備、指導員等の基準を満たす訓練を都道府県知事が認定する
- 中心となる対象者は、実施企業または会員企業で働く従業員
- 求職者を受け入れる訓練校もあるが、受入条件は訓練校ごとに確認が必要
- 受講料は全国一律無料ではなく、教材・工具・試験料等が必要な場合もある
- 修了証書は交付されるが、修了だけで国家資格を取得できるとは限らない
- 長期課程の技能照査に合格すると「技能士補」と称することができる
- 技能検定等で受検資格や試験免除の優遇を受けられる場合がある
認定職業訓練とは事業主等の訓練を知事が認定する制度
職業能力開発促進法では、事業主等が行う職業訓練について、公共職業能力開発施設に適用される訓練基準に適合している場合、都道府県知事が認定できると定めています。
実施主体には、事業主、事業主団体、職業訓練法人、職業能力開発協会、一般社団・財団法人、法人である労働組合、その他の非営利法人などが含まれます。
個々の企業が自社の従業員に行う単独職業訓練と、複数の企業が団体や職業訓練法人を通して行う共同職業訓練があります。建築、板金、畳、電気、機械加工、情報処理、美容、調理など、地域産業で必要な技能に合わせた訓練が行われています。
制度の定義:厚生労働省「認定職業訓練」、職業能力開発促進法
どのような基準で認定される?
認定を行うのは、原則として事業所や訓練施設を管轄する都道府県知事です。事業主等が申請し、訓練を継続的かつ適切に実施できるかを含めて審査されます。
| 確認項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 教科・カリキュラム | 訓練科に必要な学科と実技が設定されているか |
| 訓練期間・時間 | 課程ごとに定められた期間と総訓練時間を満たすか |
| 施設・設備 | 教室、実習場、工具、教材、安全設備等が訓練内容に適しているか |
| 指導体制 | 必要な技能と指導能力を持つ指導員が配置されているか |
| 訓練生数 | 課程や訓練科に応じた人数基準に適合するか |
| 試験・修了判定 | 学科・実技の試験や技能照査を適切に行えるか |
| 運営能力 | 資力、指導能力、継続性等から訓練を的確に実施できるか |
認定後も、教科、時間、設備、指導員数等に変更があれば届出が必要です。基準に適合しなくなった場合は、認定が取り消されることがあります。
法律上は「職業訓練」が認定対象です。認定職業訓練校という名称だけで、その施設が実施するすべての講座が認定対象とは判断せず、希望コースの認定状況を確認してください。
認定手続:職業能力開発促進法施行規則
普通課程・短期課程・高度職業訓練の違い
大きくは普通職業訓練と高度職業訓練に分かれ、その中に長期・短期の課程があります。実際の期間や受講資格には例外があるため、訓練校の募集案内を優先してください。
| 訓練の種類 | 主な課程 | 主な対象・目的 | 期間の代表例 |
|---|---|---|---|
| 普通職業訓練 | 普通課程 | 中学校・高校卒業者等が基礎的技能と知識を体系的に学ぶ | 高卒者等は原則1年、中卒者等は原則2年 |
| 普通職業訓練 | 短期課程 | 在職者、離転職者、技能検定受検者等が特定の技能を学ぶ | 原則6か月以下。短時間講習もある |
| 高度職業訓練 | 専門課程 | 高校卒業者等が高度な技能と知識を体系的に学ぶ | 原則2年 |
| 高度職業訓練 | 専門短期・応用・応用短期課程等 | より高度・専門的・応用的な技能を習得する | 課程により異なる |
在職者と求職者では受講方法が違う
企業や会員企業で働いている人
認定職業訓練の中心となる対象者です。自社が単独で実施する場合のほか、勤務先が業界団体や共同職業訓練校の会員となり、従業員を通わせる場合があります。
受講したい訓練がある場合は、訓練校へ直接申し込む前に、勤務先の人事・教育担当者、経営者または所属する業界団体へ確認します。
求職中の人
求職者を受け入れる訓練校もありますが、すべての認定職業訓練が一般募集されているわけではありません。企業への就職と同時に入校する形、訓練校が求職者を直接募集する形などがあります。
希望する訓練校に、現在求職中でも応募できるか、入校前に会員企業への就職が必要か、ハローワークとの手続があるかを確認してください。
認定職業訓練と公共職業訓練の違い
| 比較項目 | 認定職業訓練 | 公共職業訓練 |
|---|---|---|
| 実施主体 | 企業、事業主団体、職業訓練法人、非営利法人等 | 国、都道府県、市町村、JEED等 |
| 制度上の位置づけ | 事業主等の訓練を都道府県知事が認定 | 国・自治体等が公共職業能力開発施設や委託先で実施 |
| 中心となる対象者 | 実施企業または会員企業の従業員 | 求職者、学卒者、在職者などコースにより異なる |
| 求職者の申込先 | 訓練校へ受入可否を確認。就職や会員企業への所属が必要な場合もある | 離職者訓練は原則としてハローワークで相談・申込み |
| 受講料 | 訓練校・勤務先・団体ごとに異なる | 離職者訓練は原則無料。教材等は自己負担 |
| 修了後 | 修了証書、技能照査、資格試験上の優遇がある場合 | 修了証書、長期課程の技能照査等 |
認定職業訓練は公共職業訓練と同じ訓練基準を基礎としていますが、運営主体や募集方法まで同じになるわけではありません。
また、求職者支援訓練は厚生労働省の案内で「求職者支援制度に基づく認定職業訓練」と表記されますが、本記事で扱う職業能力開発促進法第24条の認定職業訓練とは分けて確認する必要があります。


費用は無料とは限らない
認定職業訓練だから受講料が無料になる、という全国共通の決まりはありません。
- 入校料・受講料
- 勤務先または業界団体が負担する範囲
- 教材、工具、作業服、安全用品
- 資格試験・技能検定の受検料
- 団体の会費や登録費
- 交通費、宿泊費
中小企業事業主や事業主団体等が一定の要件を満たす場合、認定職業訓練の運営費や施設・設備費の一部について補助を受けられる制度があります。ただし、これは原則として訓練を実施する側への補助であり、受講者本人に一律で現金が支給される制度ではありません。
実施主体への支援:厚生労働省「認定職業訓練」
修了証書・技能照査・資格上の優遇
修了すると修了証書が交付される
所定の訓練を修了した人には、訓練の種類、課程、訓練科、総訓練時間等を記載した修了証書が交付されます。ただし、修了証書を国家資格や技能検定の合格証と同じものとして扱うことはできません。
長期課程では技能照査が行われる
普通課程の普通職業訓練や専門課程の高度職業訓練など、長期間の訓練課程では技能照査が行われます。技能照査に合格した人は「技能士補」と称することができます。
技能士補は、技能検定に合格した技能士とは別です。「技能士補になれば2級技能士を自動取得できる」という意味ではありません。
技能検定等で優遇を受けられる場合がある
- 技能検定の受検資格を得る
- 技能検定に必要な実務経験年数が短縮される
- 技能照査合格により技能検定の学科試験等が免除される
- 職業訓練指導員試験・免許で実務経験短縮や科目免除を受ける
- 他法令に基づく資格・免許で優遇される
これらはすべての認定職業訓練に共通するものではありません。訓練校へ「この訓練科を修了すると、どの資格の、どの試験が、どの条件で免除されるか」と具体的に確認してください。
修了証書・技能照査:職業能力開発促進法
認定職業訓練校の探し方と申込手順
- 都道府県の認定職業訓練一覧を確認する
- 希望する訓練科が認定対象か確認する
- 従業員限定、会員企業限定、求職者可などの対象条件を確認する
- 在職者は勤務先、求職者は訓練校へ相談する
- 受講料、教材、工具、資格試験、勤務扱いを確認する
- 修了証書、技能照査、資格試験免除の対象を確認する
- 会社推薦、願書、面接、雇用契約等の必要書類をそろえる
訓練校が見つからない場合は、「認定職業訓練+都道府県名」で自治体公式ページを探すか、都道府県の職業能力開発担当課へ相談してください。

よくある質問
認定職業訓練は誰でも受けられますか?
企業や会員企業の従業員を対象とする訓練が中心です。求職者を受け入れる訓練校もありますが、一般募集の有無や入校条件は訓練校ごとに異なります。
ハローワークで申し込めますか?
職業能力開発促進法第24条の認定職業訓練は、勤務先または認定職業訓練校への相談が基本です。すべてハローワーク経由で申し込む制度ではありません。
受講料は無料ですか?
全国一律無料ではありません。受講料、教材、工具、資格試験、会費等の負担は訓練校・勤務先・団体ごとに異なります。
修了すると資格を取得できますか?
修了証書は交付されますが、国家資格が自動的に付与されるとは限りません。技能照査合格による技能士補の称号や、技能検定等の受検資格・試験免除を受けられる場合があります。
求職者支援訓練の認定職業訓練と同じですか?
同じではありません。求職者支援訓練は求職者支援制度に基づく求職者向け訓練です。本記事で扱うのは、事業主等の職業訓練を都道府県知事が認定する制度です。
まとめ:認定校の名前だけでなく受講条件まで確認する
認定職業訓練は、企業や事業主団体等が行う訓練について、教科、時間、設備、指導体制等が一定の基準に適合していることを都道府県知事が認定する制度です。
公共職業訓練と同じ訓練基準を基礎としますが、実施主体、主な対象者、申込先、費用は異なります。企業や会員企業の従業員が中心で、求職者が利用できるかは各訓練校への確認が必要です。
修了証書や技能照査、資格試験上の優遇がある点は特徴ですが、修了だけで国家資格を自動取得できるわけではありません。希望コースが認定対象か、誰が申し込めるか、総費用、修了後の優遇内容を確認してから受講を決めましょう。

