職業訓練を受けたいけれど、月10万円だけでは家賃と生活費を払えそうにない。そんな場合は、職業訓練受講給付金と、家賃を支援する住居確保給付金を併用できる可能性があります。
ただし、両方を受け取るには、それぞれの収入・資産などの条件を満たして申請する必要があります。特に注意したいのは、訓練の月10万円が対象でも、貯金額や家族の収入によって家賃支援は対象外になることです。
この記事では、退職して賃貸住宅に住み、雇用保険の基本手当を受けられない人を中心に、併用の条件、3つの試算例、ハローワークと自治体で進める手続きを説明します。
制度・自治体の金額は2026年9月6日に確認しています。ここで扱う住居確保給付金は「家賃補助」です。転居費用の補助や、講座の受講料を補助する「教育訓練給付金」とは異なります。
職業訓練の月10万円と住居確保給付金は併用できる
厚生労働省の住居確保給付金に関する質疑応答では、職業訓練受講給付金との併給が認められています。どちらか一方を受けていることだけを理由に、もう一方を諦める必要はありません。
出典:厚生労働省「住居確保給付金に関する質疑応答集」(問100)
| 比較する点 | 職業訓練受講給付金 | 住居確保給付金の家賃補助 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 訓練を受けながら求職活動をする間の生活を支える | 離職・収入減少などで住まいを失うおそれがある人の家賃を支える |
| 支給額 | 職業訓練受講手当は原則月10万円。通所手当などは別の要件で判断 | 実際の家賃を基に、世帯収入と自治体の上限額で決まる |
| 相談・申請先 | 住所を管轄するハローワーク | 住んでいる自治体の自立相談支援機関など |
| 受取先 | 本人の口座 | 原則として大家・不動産会社などの口座 |
例えば訓練の給付が10万円、家賃支援が5万円なら、支援の合計は15万円です。ただし、自由に使える現金15万円が自分の口座に入るとは限りません。家賃支援の5万円は、原則として家賃の支払いに充てられます。
収入と貯金の条件は、2つの制度で別々に確認する
月10万円の訓練給付は本人収入・世帯収入・金融資産を見る
職業訓練受講手当の主な金額要件は、本人収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下です。金額要件だけで決まるわけではなく、ハローワークによる支援の必要性、出席、土地・建物の所有状況、同一世帯の受給状況、過去の受給歴なども確認されます。
ここでいう月の収入は、原則として訓練開始日を起点に区切る「支給単位期間」で判定します。給与の手取り額だけを見るのではなく、税引前の給与や年金など、制度上の算定対象になる収入を確認してください。
出典:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」、「求職者支援制度のご案内」詳細版
自分が月10万円の対象になるか、まず全体の要件から確認したい人はこちらで整理できます。

家賃支援は、住んでいる自治体と世帯人数で上限が変わる
住居確保給付金では、原則として離職・廃業から2年以内であること、離職時に世帯の生計を主に支えていたこと、現在の住居を失うおそれがあることなどが確認されます。本人の責任によらない就業機会の減少で、離職と同程度の状況になった人も対象になり得ます。療養などで求職できなかった期間がある場合には、離職からの期間に特例があります。
そのうえで、同じ世帯の収入と金融資産を確認します。収入の基準は、自治体・世帯人数ごとの基準額に、上限内の実際の家賃を加えた額です。金融資産の基準は原則として基準額の6倍、最大100万円で、訓練給付の300万円以下とは異なります。
出典:厚生労働省「住居確保給付金の支給に関する事務の手引き」
次は、渋谷区の案内に掲載されている金額の例です。全国共通の金額ではありません。
| 世帯人数 | 収入計算の基準額 | 金融資産の上限 | 家賃補助の上限 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 92,000円 | 552,000円 | 月53,700円 |
| 2人 | 139,000円 | 834,000円 | 月64,000円 |
例えば1人暮らしで家賃が50,000円なら、収入基準は92,000円+50,000円=142,000円です。区の案内にある収入基準の最大額145,700円を、家賃の額に関係なく使うわけではありません。
訓練の月10万円は家賃支援側の収入に算入しない
住居確保給付金の収入計算では、職業訓練受講給付金は算定対象外です。訓練の10万円があるために、それだけで家賃支援の収入基準を超えるという扱いにはなりません。
一方、給与や雇用保険の給付、年金、仕送りなどには算定対象となるものがあります。「給付金なら全部除外される」と考えず、収入の種類を窓口に伝えて確認してください。
併用は当初の特例措置から、2023年4月に恒久化されています。算定除外の扱いは、厚生労働省の併給時のQ&Aでも確認できます。
出典:厚生労働省「住居確保給付金の特例措置等に関するQ&A」(Q26・併給時の収入算定)、「生活困窮者自立支援制度ニュースレター第39号」(併給の恒久化)
また、収入計算から除外されることと、申告しなくてよいことは別です。両方の窓口に、もう一方の給付を申請中・受給中であることを伝えましょう。対象に含める家族や収入を確認する期間も、同じとは限りません。訓練給付では、生計を一つにする別居の配偶者・子・父母が世帯に含まれる場合があります。

いくら支援される?併用できる場合とできない場合の試算
ここからは渋谷区の金額を使った試算です。実際の受給例ではありません。申請者は離職から2年以内で、離職前は世帯の主な生計維持者だったとします。家賃の支払いが難しく、雇用保険の基本手当は受給できず、出席・求職活動など金額以外の要件も満たす前提です。
家賃には管理費・共益費を含めず、金融資産は世帯全員の現金と預貯金の合計とし、ほかの金融資産はないものとします。本人の給与等は0円で、例3の配偶者の給与以外に算定対象となる収入はありません。
例1:単身・家賃5万円・貯金30万円なら、合計15万円の支援
1人暮らしで家賃50,000円、金融資産300,000円の場合です。住居確保給付金の算定対象収入は0円なので、基準額92,000円以下です。家賃も補助上限53,700円以下、金融資産も上限552,000円以下に収まります。
- 職業訓練受講手当:100,000円
- 住居確保給付金の家賃補助:50,000円
- 支援の合計:150,000円
この場合、家賃50,000円を家賃補助で賄える計算です。ただし、管理費・共益費や光熱費などは別に必要です。訓練給付の月10万円は、減額になる事情のない通常の支給単位期間を想定しています。
例2:同じ単身でも貯金100万円なら、家賃支援は対象外
例1と同じ条件で、金融資産だけが1,000,000円ある場合です。訓練給付の資産基準300万円以下には収まりますが、渋谷区の単身世帯の家賃支援では552,000円を超えます。
つまり、訓練の月10万円の資産要件を満たしていても、家賃支援の資産要件は満たしません。退職金が入った直後などは、毎月の収入だけでなく申請時の残高も確認しましょう。
例3:夫婦2人・配偶者の給与16万円なら、家賃6万円のうち39,000円
夫婦2人暮らしで家賃60,000円、金融資産300,000円、配偶者の給与が税引前で月160,000円の場合です。この給与に通勤手当は含めず、判定期間中の収入は変わらないものとします。
家賃支援の収入基準は139,000円+60,000円=199,000円です。世帯収入160,000円は収入基準以内ですが、基準額139,000円を超えているため、家賃の一部が支給される計算になります。
家賃支援:139,000円+60,000円-160,000円=39,000円
家賃の自己負担:60,000円-39,000円=21,000円
この例では訓練の月10万円と家賃支援39,000円を併用できる金額関係になりますが、家賃が全額支援されるわけではありません。配偶者の給与を含め、残る家賃21,000円と生活費を払えるかまで考える必要があります。
家族がいる場合の月10万円の要件と家計の考え方は、次の記事で詳しく整理しています。

申請はハローワークと自治体の2か所で進める
1.訓練の申込み前に、両方の窓口へ相談する
ハローワークには「雇用保険を受給できないので、職業訓練受講給付金を使って訓練を受けたい。住居確保給付金も相談したい」と伝えます。家賃の窓口には、退職日、現在の収入、世帯人数、家賃、金融資産、訓練の予定を伝えましょう。
訓練を申し込んだだけでは月10万円の支給は決まりません。また、ハローワークで手続きをしても、家賃支援の申請が自動的に済むわけではありません。住居確保給付金の窓口が分からない場合は、市区町村に「住居確保給付金の家賃補助を相談したい」と尋ねてください。
2.退職・収入・資産・家賃を確認できる書類をそろえる
必要書類は窓口と状況で異なりますが、相談前に次を準備しておくと、追加で必要なものを確認しやすくなります。
| 確認すること | 準備する書類の例 |
|---|---|
| 本人・世帯 | 本人確認書類、世帯の状況を確認できる書類 |
| 退職・収入減少 | 離職票、退職証明書、シフト減少が分かる資料など |
| 本人と家族の収入 | 給与明細、年金・給付金の通知、事業の収支が分かる資料など |
| 金融資産 | 対象となる家族の通帳・口座残高、有価証券の残高が分かるもの |
| 家賃 | 賃貸借契約書、家賃と管理費の内訳。貸主側に記入を依頼する書類が必要な場合もある |
家賃支援では収入を確認する対象月、訓練給付では支給単位期間を確認し、両方に同じ給与明細を出せば足りるかも聞いておきましょう。初回相談で「次にどの書類を、誰に、いつまでに出すか」をメモしておくと、手続きの行き違いを防げます。
3.初回の入金までに必要なお金を分けて用意する
訓練給付は、対象期間の出席などを確認して申請するため、訓練開始日に月10万円が先払いされる仕組みではありません。家賃支援にも審査と支払いの手続きがあります。
申請時には、家賃支援が何月分から対象になるか、初回の支払見込み、手続き中の家賃をどう扱うかを窓口で確認してください。食費、光熱費、訓練に必要な教材費・交通費など、先に払うお金も別に見積もっておきましょう。
給付が入るまでの生活費や、月10万円では不足する場合の準備はこちらで確認できます。

受給中は訓練への出席と家賃支援の求職活動を両立する
職業訓練受講給付金には、原則として全ての訓練実施日に出席することや、指定されたハローワークの職業相談を受けることなどの条件があります。欠席・遅刻・早退がある場合は、理由や出席率などによって扱いが変わるため、学校とハローワークへ早めに相談してください。
住居確保給付金にも、相談支援機関との面談、ハローワークでの職業相談、求人への応募などの活動・報告が必要です。訓練に通っているだけで、家賃支援側の活動が全て免除になると判断しないでください。
訓練の時間割と指定来所日を両方の窓口に見せ、必要な活動の回数、報告書、面談の日程を確認しましょう。同じ職業相談を両制度で確認してもらえるかも聞いておくと、通所と手続きを調整しやすくなります。
出典:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」詳細版、「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」住居確保給付金の章
家賃支援は原則3か月。訓練終了まで続くとは限らない
住居確保給付金の家賃補助は原則3か月です。条件を満たして延長・再延長の手続きをした場合は、最長9か月までとなります。訓練期間に合わせて自動的に延びるわけではありません。
現在の賃貸住宅に住み続ける場合、支援の対象は申請月に支払う家賃以降です。過去に滞納した家賃をさかのぼって埋める制度ではないため、支払いが難しいと分かった時点で相談しましょう。
また、就職、アルバイトの収入増加、転居、家族構成の変更、訓練の退校などがあったときは、両方の窓口へ報告が必要か確認してください。一方の支給が終わっても、もう一方がどうなるかは、それぞれの要件と終了理由で判断されます。
出典:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」(支給額・支給期間・支給方法)
併用についてよくある疑問
自己都合で退職した場合も家賃支援を申請できますか?
初回の申請では、自己都合退職であることだけで対象外にはなりません。離職からの期間、生計維持の状況、収入・金融資産、求職活動などの要件を満たすか確認します。再支給には別の条件があるため、過去に受給した人はそのことも窓口へ伝えてください。
出典:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」(離職等の状況)
持ち家の住宅ローンや管理費も支援されますか?
この記事で扱う家賃補助は賃貸住宅の家賃が対象です。持ち家の住宅ローン返済には使えず、賃貸の管理費・共益費なども原則として家賃補助の対象外です。契約書で家賃とそれ以外の費用を分けて確認してください。
月10万円の給付を受けられないと、職業訓練も受けられませんか?
給付金の収入・資産要件に当てはまらなくても、ハローワークが必要と認めるなどの条件を満たせば、求職者支援訓練などを受けられる場合があります。「受講できるか」「月10万円を受けられるか」「家賃支援を受けられるか」を分けて確認しましょう。
まずは賃貸借契約書で家賃を確認し、家族を含む収入と金融資産をメモしてください。その数字を持ってハローワークと自治体へ相談すると、併用の可否と、支援を受けても不足する生活費を具体的に考えられます。

