退職後の奨学金猶予|前年の年収が300万円を超えるときの申請方法

奨学金の返還猶予・減額返還

退職して今は収入がないのに、所得証明書には働いていた前年の高い年収が載っている。「年収300万円を超えているから、奨学金の返還猶予は申請できないのでは」と迷っていませんか。

前年の収入が高いことだけで、申請を諦める必要はありません。JASSOには、退職後の状況に応じた申請経路があります。離職月とその翌月から6か月間は「失業中」の案内を確認し、それを過ぎて所得証明書の収入が基準を超える場合は「7か月以上前の失業」の専用案内を確認します。

ただし、退職すれば必ず承認されるわけではありません。申請事由、現在の状況を示す書類、提出方法を合わせることが必要です。専用経路は、スカラネット・パーソナルだけで申請を完了できません。

この記事では、JASSOの一般猶予を中心に、退職時期・次回返還期日・証明書上の収入を照合し、必要書類をそろえて申請するまでを整理します。

前年の年収が高い場合は、証明書の数字と現在の状況を分けて確認する

所得証明書は、現在無職であることをそのまま示す書類ではありません。たとえば2026年度の所得証明書には2025年分の収入・所得が記載されるため、2026年に退職していても前年の給与が載ります。

一般猶予の「経済困難」の基本的な収入基準は、給与所得者なら年間収入(税込)300万円以下です。給与所得以外の所得を含む場合は、必要経費等を控除した年間所得200万円以下が基準となります。

給与だけの人は、証明書の「給与収入金額」「給与支払金額」を見ます。「給与所得」の欄や手取り額で300万円と比較しないでください。給与収入300万円ちょうどは「300万円以下」に含まれ、300万円を超える場合とは分岐が異なります。

一方、証明書の収入が基準を超えていても、減収や失業などで今年の推定年収が基準を満たす場合は審査を受けられる経路があります。「去年450万円だった」と「今も450万円相当の収入がある」を同じ扱いにせず、退職時期から次の案内を選びましょう。

退職時期・次回返還期日・前年の収入で申請経路を照合する

まず離職日、次回返還期日、猶予を始めたい月をメモします。次回返還年月は、振替案内や「返還開始のお知らせ」「奨学金返還期限猶予終了のお知らせ」などで確認してください。

下の表は、現在失業中で、離職前からの延滞がない人が申請経路を確認するための架空の例です。金額は給与収入のみの場合で、承認を保証するものではありません。7か月以上の場合の求職活動による例外は、表の後で説明します。

退職時期と証明書上の収入による確認先の例
離職時期 次回返還期日 証明書の給与収入 確認する申請経路
2026年9月 2026年10月27日 450万円 離職から間もないため「失業中」の案内を確認
2026年3月 2026年9月28日 450万円 離職月の翌月から6か月目。「失業中」の申請可能期間内
2026年3月 2026年10月27日 450万円 7か月以上経過・収入基準超。「7か月以上前の失業」の専用案内を確認
2026年3月 2026年10月27日 300万円 基本の収入基準内。「経済困難」の案内を確認

表の振替日は2026年度の公式カレンダーに合わせています。自分の次回返還期日は、通知に記載された年月日で確認しましょう。すでに延滞がある場合は、この表だけで申請事由や開始月を決めず、延滞している人向けの手続きも確認します。

「失業中」の期間は離職月と翌月から6か月間

JASSOの案内では、3月中に離職した場合、3月と4月〜9月を猶予開始月とする申請が「失業中」の対象期間に当たります。10月以降を希望する場合は、原則として「経済困難」など別の事由になります。

ここでの7か月は、返還を猶予してもらうために待つ期間ではありません。退職直後に返還が難しければ、その時点で「失業中」の手続きを確認します。「7か月になるまで申請できない」と考えて待たないでください。

7か月以上経過していても「失業中」になる例外がある

雇用保険受給資格者証の求職活動記録で、離職後1年以内の就職活動であることが確認でき、その活動日が次回返還期日の6か月以内なら、「失業中」事由となる例外があります。

離職から7か月以上という日数だけで決めず、受給資格者証の記録面も見てください。手元にあるだけではなく、記録された活動日の条件を満たすかが確認点です。判断が難しい場合は、離職日・活動日・次回返還期日をそろえてJASSOに確認します。

7か月以上前の失業・収入基準超の経路で用意する書類

例外に当たらず、現在も失業中で返還が難しく、次回返還期日の7か月以上前に離職し、所得証明書の収入が基準を超える場合は、JASSO「7か月以上前の失業(一般猶予)」の書類を確認します。

所得証明書だけ、または離職票だけで済ませず、収入・離職・健康保険情報の各項目を確認するのがポイントです。マイナンバーによる省略の扱いは、この後に整理します。

専用経路の基本書類と確認点
書類の区分 用意するもの 確認点
願出用紙 奨学金返還期限猶予願&チェックシート 公式の一般猶予用の様式を使い、チェックシートも提出する
収入の証明 「経済困難」で指定される所得証明書等 必要な年度と、収入・所得金額が記載されているかを確認する
離職の証明 「失業中」で指定される離職票等のコピー 使える書類の種類・必要な面を確認する
健康保険情報 マイナポータルの健康保険証情報の画面、または資格確認書のコピー 指定された番号等を黒塗り。国民健康保険なら追加書類も確認する

収入証明は指定年度のものを用意する

2026年10月の確認時点では、経済困難の証明書として、2026年度(2025年分)の所得証明書、収入・所得金額が明記された市県民税の所得・課税証明書、住民税非課税証明書のいずれかの原本が案内されています。課税額しか載っていない証明書では足りません。

2026年度分の発行先は、2026年1月1日に住民登録があった市区町村です。退職後に引っ越した人は、現在住んでいる自治体と発行先が同じか確認してください。必要年度は変わるため、実際に申請する際は公式案内の指定を見直します。

離職票がなくても、使える証明書を確認する

「失業中」の証明書は、次のいずれか1点が基本です。

  • 雇用保険受給資格者証のコピー(求職活動記録面を含む)
  • 雇用保険被保険者離職票のコピー
  • 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書のコピー(喪失理由が離職で、離職年月日が確認できるもの)
  • 失業者退職手当受給資格証のコピー

これらの取得が困難な場合は、雇用関係の終了が確認できる退職証明書等、または退職の記載がある健康保険厚生年金保険資格取得(喪失)証明書のコピーという案内もあります。取得困難な理由を特記事項欄や別紙に記入し、番号等の黒塗りも公式指定に従ってください。

「雇用保険被保険者証」は、名前の似ている離職票や受給資格者証と別の書類です。被保険者番号が分かるだけで、今回必要な離職の証明がそろったと考えないようにします。

マイナポータルで受け取る予定の離職票が見当たらない人は、今回分の交付先を確認してから取得を進めてください。

国民健康保険の人はハローワーク受付票の発行日も確認する

専用案内では、健康保険情報が国民健康保険の場合、最近4か月以内に発行されたハローワーク受付票のコピーを追加提出するよう案内されています。以前の求職登録時に受け取ったものが古い場合は、発行日を確認し、ハローワークに相談してください。

健康保険情報の画面や資格確認書を提出する場合は、保険者番号、被保険者等の記号・番号、二次元コードを読み取れないように黒塗りします。書類全体を隠すのではなく、公式が指定する箇所を処理します。

マイナンバー提出済みでも、省略できる書類を個別に確認する

公式の証明書一覧には、マイナンバーによる提出省略の可否が書類ごとに示されています。提出済みなら省略欄まで確認し、判断できない項目はJASSOに問い合わせてください。情報連携で必要な情報を取得できない場合には、証明書の提出を求められることもあります。

たとえば雇用保険受給資格者証の求職活動記録面は省略できません。国民健康保険の場合に追加するハローワーク受付票も、一覧では省略不可です。「マイナンバーを出したから全添付書類が不要」と一括で判断しないでください。

専用経路は書面で申請する|願出の事由と提出順

「7か月以上前の失業」の専用案内では、スカラネット・パーソナルでの申請はできないとされています。通常の「失業中」や「経済困難」のWeb申請案内と混同せず、郵送手続きを進めます。

  1. 公式の願出用紙ページの【1-1】から、一般猶予の「猶予願&チェックシート」を入手する
  2. 奨学生番号・本人情報・希望猶予期間を記入し、本人氏名を自署する
  3. 通常の経済困難の経路なら「経済困難」を選び、離職時期と現在の返還困難な状況を特記事項に記入する
  4. 各証明書の原本・コピーの指定、省略可否、健康保険の申告欄を確認し、チェックシートを完成させる
  5. 提出書類一式の控えを残して、公式の提出先へ郵送する

専用案内のタイトルに「失業」とあっても、7か月以上経過した人が全員「失業中」にチェックするわけではありません。求職活動による例外や「新卒等」の対象者は、該当事由を先に確認します。「猶予年限特例」など別の申請区分に当たる人も、対象条件・様式を公式案内で確認してください。

一般猶予の希望期間は1回につき最長12か月です。引き続き必要な場合は1年ごとに願い出るため、今回の開始月・終了月も控えに残しておきましょう。

特記事項には、退職日と証明書に載っている年を具体的に書く

次は経済困難の経路を確認した人向けの架空の記入例です。自分の事情に合わせ、アルバイトや再就職をしている場合はその事実も記載してください。

2026年3月○日に退職し、現在は失業中です。2026年度の所得証明書には在職していた2025年分の給与収入450万円が記載されていますが、退職後は給与収入がなく、生活費の負担により通常の返還が困難です。2026年10月からの返還期限猶予を希望します。

これは事情を伝える文章例であり、所定の証明書に代わるものではありません。前年の収入と現在の状態の違いを、日付と書類で確認できるようにします。

確認時点の提出先は、〒119-0385 独立行政法人 日本学生支援機構 猶予減額受付窓口です。専用郵便番号のため住所の記載は不要とされています。発送前に公式ページで提出先を再確認してください。マイナンバー提出書等、マイナンバーが記載された書類を同封する場合は、郵便局窓口から簡易書留で送ります。

次の返還期日が近いときは、承認までの請求も確認する

延滞していない人の郵送による提出時期は、猶予開始希望月の3か月前から前々月末までです。たとえば10月分から猶予を希望する場合は、7月から8月末までが案内上の提出期間になります。4か月以上前では時期尚早として返送されます。

前々月末を過ぎていても受付・審査は行われますが、希望月までに間に合わないことがあります。退職してから書類探しを始め、すでに期日が近づいている人は、書類の準備と合わせてJASSOへ状況を相談してください。

申請書を送っただけでは、口座振替や請求は止まりません。審査中も請求・督促は続くため、「申請したから今月は引き落とされない」と考えず、次回請求と審査状況を確認します。

猶予は返還時期を先送りする制度で、返還すべき元金や利子の免除ではありません。承認された期間と、その後の返還再開時期は承認通知で確かめてください。

奨学金以外にも家賃や保険料の支払いがある方は、次の入金までに必要なお金をまとめて確認しておきましょう。退職後の収入・支出の整理や、状況別の相談先は次の記事にまとめています。

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再就職・延滞・書類不足があるときは、この情報をそろえて相談する

すでに再就職している人は、退職前の収入だけで判断せず、現在の収入に合う「経済困難」や「減収」の案内を確認します。離職前から延滞がある場合も、通常の「失業中」の対象にはならないため、今回のケース表からそのまま申請事由を選ばないでください。

書類の不足や7か月の境目で迷う場合は、次の情報を手元に置くと、必要な確認をまとめて相談できます。

  • 奨学生番号、離職日、現在の就職・収入の状況
  • 次回返還期日と猶予開始希望月、延滞の有無・開始月
  • 所得証明書の年度・対象年・給与収入または所得の金額
  • 受給資格者証・離職票等の有無、求職活動の記録日
  • 現在の健康保険の種類、ハローワーク受付票の発行日
  • JASSOへのマイナンバー提出状況と、省略してよいか分からない書類名

相談先はJASSOの奨学金相談センターです。電話は0570-666-301、受付は平日9時〜20時(土日祝日・年末年始を除く)。「前年の収入は基準超だが、○月に退職して現在は失業中。次回返還期日は○月○日」と伝え、該当事由と不足書類を確認しましょう。

参考資料

2026年10月3日に確認したJASSOの公式資料です。必要年度や様式、提出先は、申請時に最新の案内を確認してください。