40代の再就職で提示された年収が前職より低いと、「この年齢なら下がるのが普通なのか」「希望額を下げないと決まらないのか」と迷うことがあります。
40代だから年収が下がって当然とはいえません。ただし前職年収と同じかどうかだけでは、再就職先の条件を十分に比較できません。毎月の固定給、賞与の確実性、残業や休日、初年度の支給条件までそろえて確認する必要があります。
この記事では公的統計で分かる範囲を確認したうえで、年収が下がる求人を検討するときの比較表と採用担当者への確認例を紹介します。
40代の再就職で年収が下がるのは普通?統計から分かること
厚生労働省の2025年「雇用動向調査」では、前職より賃金が減った割合は40〜44歳で27.4%、45〜49歳で30.1%でした。いずれも賃金が増えた割合を下回っています。
| 年齢 | 賃金が増加 | 変わらない | 賃金が減少 |
|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 44.9% | 24.6% | 27.4% |
| 45〜49歳 | 41.1% | 28.0% | 30.1% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」表6。賃金変動状況が不詳の人もいるため、各行の合計は100%になりません。
ただし、この表を「40代で年収が下がる確率」と読み替えないでください。前職との賃金変動を尋ねた結果であり、各人の年間総収入を集計した表ではありません。
対象も、入職前1年間に就業経験がある転職入職者のうち前職が雇用者で調査時点に在籍している人です。長いブランクを経た再就職者全員の状況を表すものではなく、職種や雇用形態が自分と同じ人だけの数字でもありません。
統計からは「40代は一律に賃金が下がる」とはいえません。自分が受け取った条件の良し悪しは、その内訳を確認して判断しましょう。
前職年収と提示年収は、まず計算の条件をそろえる
前職の残業代・役職手当・一時的な賞与を分ける
前職年収には基本給だけでなく、役職手当や多く働いた月の残業代、業績のよい年の賞与などが含まれていることがあります。再就職先の年収が低く見えても、何が減るのかによって意味は変わります。
例えば管理職から担当者になる場合は役職手当の有無を確認します。残業を減らしたい場合は、前職の残業代まで同じだけ受け取ることを前提に比較していないかを見直してください。
前職の給与明細と賞与明細を使い「毎月固定で受け取った額」「変動した残業代」「賞与」に分けて書き出すと、差額の理由を確認しやすくなります。
初年度と通常の1年間を分けて計算する
入社初年度は賞与の算定期間を満たさず、満額支給にならない場合があります。試用期間中だけ給与が違う会社もあります。求人の想定年収が何を前提にしているかを確認してください。
比較用には「同じ条件で12か月働いた場合」と「入社後最初の12か月」を別に計算します。年の途中に入社した場合の1〜12月の収入も異なるため、集計期間をそろえないと正確に比べられません。
年収の見込み=月ごとの基本給・手当の合計+賞与などの見込み額
想定残業代や歩合給は確定した収入と分けます。固定残業代が月給に含まれている場合は、同じ分をもう一度加算しないようにしてください。
年収が下がる求人で確認したい7つの条件
| 比較する項目 | 確認すること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 1.基本給・固定手当 | 自分に適用される金額と支給条件 | 求人の最高額やモデル社員の給与が自分の提示額とは限らない |
| 2.賞与 | 算定の基礎、支給条件、初年度の扱い | 前年実績は今後の支給額の保証ではない |
| 3.残業代 | 固定残業代の有無・時間数・金額、超過分の支払い | 月給が同じでも基本給と残業代の内訳が異なる |
| 4.労働時間・休日 | 所定労働時間、実際の残業、年間休日、シフト | 休日数だけでなく休む曜日や取得のしやすさも生活に関わる |
| 5.勤務地・通勤費 | 通勤時間、交通費の支給上限、転勤の範囲 | 通勤費の自己負担や引っ越し費用が増えることがある |
| 6.雇用の継続性 | 契約期間、更新条件・上限、定年、退職金制度 | 目先の年収だけでは契約終了後や将来の収入を比べられない |
| 7.評価・昇給 | 見直し時期、評価項目、担当業務と昇格条件 | 「頑張れば上がる」という説明だけで将来の増額を計算しない |
固定残業代を採用する求人では、固定残業代を除く基本給、対象時間数と金額などの計算方法、超過分を追加で支払う旨の明示が必要です。固定残業時間が実際の残業時間と同じとは限らないため、配属予定部署の残業状況も尋ねましょう。
「月給30万円・賞与あり」だけでは比較できません。自分の給与内訳と支給条件が分かる資料を確認することが先です。
比較例:年収480万円から420万円に下がる場合
次は計算方法を示す架空の例です。金額は税金や社会保険料を引く前の額で、交通費は含めていません。再就職先の賞与は会社に確認した見込み額とし、支給保証ではありません。
| 項目 | 前職 | 再就職先の提示条件・見込み |
|---|---|---|
| 基本給・固定手当の月額 | 30万円 | 31万円 |
| 通常の残業代の月額 | 実績平均5万円 | 下の計算には含めない。発生分は別途支給 |
| 12か月分の給与 | 420万円 | 372万円+発生した残業代 |
| 年間賞与 | 実績60万円 | 見込み48万円 |
| 通常の1年間の合計 | 480万円 | 420万円+発生した残業代 |
| 年間休日 | 105日 | 120日 |
| 残業時間 | 月平均25時間 | 配属予定部署の実績は月平均5時間 |
| 初年度の賞与 | 比較対象外 | 算定期間の関係で見込み24万円 |
| 入社後最初の12か月の合計 | 比較対象外 | 396万円+発生した残業代 |
この例では再就職先の未確定の残業代を加えない場合、通常の年収見込みは前職より60万円低くなります。一方で毎月の固定給は1万円増えます。差額の中心は残業代と賞与です。初年度は賞与が少ないため、残業代を加える前の見込み額は396万円になります。
休日や残業の改善を重視する人には検討材料になりますが、生活費を賄えなければ受け入れにくい条件です。年収が下がる理由と、家計に無理がないかは別々に確認してください。
前職年収ではなく「生活に必要な額」と「希望額」を決める
前職と同じ年収を希望すること自体に問題はありません。ただし希望額を下げるか迷うときは、次の順番で必要な収入を整理します。
- 住居費・食費・教育費・返済など、毎月必要な支出を合計する
- 年払いの支出や予備費も月額に換算して加える
- 継続して見込める世帯収入との差から、自分に必要な手取りを考える
- 提示された固定給で賄えるか、賞与が少ない場合も含めて確認する
額面年収を12で割った額は手取り月額ではありません。残業代や歩合給が多い月だけを基準にすると、収入が少ない月に不足するおそれがあります。
「年収の何%まで下げてよい」という一律の基準は作らず、自分の支出と働き方で判断しましょう。必要額を満たさない求人は、昇給の期待だけで受け入れず、条件の相談や別の求人も検討します。
採用担当者に年収の内訳を確認する例文
確認は内定承諾を判断する前に行います。「前職より安いので上げてください」だけでなく、不明な内訳と自分が希望する条件を分けて伝えると話を進めやすくなります。
件名:ご提示いただいた給与条件についての確認
採用ご担当者様
条件をご提示いただきありがとうございます。入社後の働き方と生活設計を検討するため、以下を確認させてください。
・提示年収に含まれる基本給、各手当、想定残業代、賞与の内訳
・賞与の算定基準と初年度の支給条件
・試用期間中の給与の違い
・昇給の評価時期と基準可能であれば、入社後最初の12か月と通常の1年間の見込み額を分けてご教示いただけますと幸いです。
金額を相談する場合は「前職で担当した○○業務の経験を踏まえ、基本給○万円でのご検討は可能でしょうか」と具体的に伝える方法があります。希望が通るとは限りませんが、前職年収の維持だけでなく担当業務や経験との関係を示せます。
企業全体や職種全体の平均年収は参考情報です。未経験の仕事へ移る場合は特に、平均額と自分の採用条件を混同しないようにしてください。
条件を確認できないまま承諾を急がない
年収が低くても、勤務時間や担当業務が希望に合う求人はあります。一方で年収が高くても、長時間労働や不確かな歩合給が前提なら慎重な比較が必要です。
契約を結ぶ前に労働条件通知書などで自分に適用される条件を確認してください。給与や労働時間など重要な条件は書面等で明示する必要があります。希望により一定の電子的方法での交付も認められています。
ハローワークの求人と実際に説明された条件が異なる場合は、求人票と提示された資料を持って窓口へ相談できます。回答期限までに必要な資料がそろわないときは、検討期間の延長を依頼する方法もあります。
「40代だから下がって当然」と結論を急がず、固定給で生活できるか、下がる理由に納得できるか、無理なく働き続けられるかを確認して決めましょう。
参考資料
統計・制度の確認日:2026年9月25日。給与比較の金額と確認メールは本記事の作成例です。


