月給は希望どおりなのに、詳細を見ると「固定残業代45時間分を含む」と書いてある。毎月それだけ残業するのか、残業代が別にもらえないのか気になる表記です。
固定残業代の30時間・45時間は給与に含める残業代の対象時間であり、実際の残業時間を示す数字ではありません。ただし同じ月給でも固定残業代が占める金額によって基本給は違います。金額の内訳と勤務実態の両方を確かめることが大切です。
この記事では固定残業代がある求人の見方を、月給の比較表と質問例で整理します。「45時間だから応募しない」「月給が高いから安心」と決める前に確認したい内容です。
固定残業代30時間・45時間は多い?実際に働く場合の目安
まず「給与計算上の対象時間」と「実際に働いた残業時間」を分けます。固定残業代が45時間分でも実際の残業は月10時間という職場はあり得ます。反対に30時間分の設定でも実際の残業がそれを超える月はあり得ます。
もし記載された時間と同じだけ残業するなら、生活への影響は小さくありません。月20日出勤し、残業を均等に行うと仮定した単純計算は次のとおりです。
| 実際の月間残業時間 | 20日で割った1日平均 | 18時終業の場合の目安 |
|---|---|---|
| 30時間 | 1時間30分 | 19時30分ごろまで勤務 |
| 45時間 | 2時間15分 | 20時15分ごろまで勤務 |
休憩や勤務日の偏りを考慮しない例であり、退勤時刻を保証するものではありません。通勤時間や家事・育児の予定も加えて、自分が続けられる働き方か考える材料にしてください。
45時間分の支給があっても毎月45時間の残業が必要とは限らない
固定残業代は実際の残業の有無にかかわらず支払う仕組みです。「45時間分を払うので必ず45時間残らなければならない」という義務が、この制度だけで生じるわけではありません。
求人に「固定残業代45時間分」「月平均残業10時間」と両方書かれていても、それだけで矛盾とはいえません。ただし月平均が全社の数字なのか応募職種の数字なのか、どの期間の実績なのかは確認しましょう。
固定残業代の時間数と残業の上限規制は別の話
一般的な時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。例外には要件があり、一部の制度や事業・業務では異なる取扱いがあります。
45時間分の固定残業代を設定すれば、毎月45時間の残業が当然に認められるわけではありません。毎月45時間なら年間540時間になるため「月45時間以内だから問題ない」とも判断できません。給与の支払方法と、実際に働かせられる時間のルールは切り分けて考えます。
求人票では基本給・固定残業代・対象時間・超過分を見る
固定残業代を採用する求人では、固定残業代を除いた基本給、対象時間と金額などの計算方法、超過分の割増賃金を追加で支払う旨を明示する必要があります。
「月給30万円・固定残業代含む」という見出しだけで読み終えず、給与欄の注記まで確認しましょう。次の4点を書き出せる状態にするのが目安です。
- 基本給:固定残業代を除くといくらか。ほかの手当は別にあるか。
- 固定残業代:月額いくらが含まれているか。
- 対象時間:何時間分か。時間外労働だけか、休日・深夜労働も対象か。
- 追加支給:対象時間を超えた分などを別途支払うと書かれているか。
「営業手当」「職務手当」などの名称でも固定残業代の役割を持つ場合があります。手当名だけで判断せず、その手当が何に対して支払われるものなのかを確認してください。
ハローワークでは「固定残業代」の欄と特記事項を読む
ハローワークの求人票では基本給や定額的に支払われる手当とは別に、固定残業代の欄があります。「あり・なし」と金額に続いて固定残業代に関する特記事項も読みます。
月額の合計だけを別の求人と比べると、すでに含まれている残業代を見落とします。対象時間が分からなければ求人番号を控えて窓口に確認を依頼しましょう。
同じ月給30万円でも基本給は違う|3つの求人例
次は月給の内訳を比べるための架空の求人です。ほかの手当はなく、固定残業代は法定時間外労働分のみとします。金額は内訳を読みやすくした設定であり、相場を示すものではありません。
| 確認項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 表示される月給 | 30万円 | 30万円 | 30万円 |
| 基本給 | 30万円 | 24万円 | 22万円 |
| 固定残業代 | なし | 6万円・30時間分 | 8万円・45時間分 |
| 時間外労働分の支払方法 | 実績に応じて別途支給 | 固定分を支給し、超過分などは別途精算 | 固定分を支給し、超過分などは別途精算 |
| 実際の残業時間 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
この例ではB社の月給に6万円、C社には8万円の残業代が含まれています。月給の表示は同じでも通常の勤務に対する基本給は同じではありません。
一方で固定残業代を引いた22万円だけがC社の支給額になるわけでもありません。所定どおり勤務し、欠勤控除などがない前提なら、残業が少ない月も固定残業代を含む30万円が支給される設定です。
固定残業代の必要額は割増賃金の計算に入る賃金や月平均所定労働時間などで変わります。この表の金額を別の求人の適法性判定にそのまま使うことはできません。手当がほかにもある場合は「月給−固定残業代=基本給」とは限らない点にも注意してください。
一律手当を含む月給の読み方も合わせて確認したい場合はこちらの記事が参考になります。
賞与は「月給の何か月分」と決めつけない
賞与が「基本給×支給月数」で計算される会社なら、基本給の差が賞与にも影響します。ただし賞与の計算方法は会社によって違い、固定残業代があるだけで賞与が少ないと断定はできません。
年収を比べるときは毎月の支給額に加えて、賞与の算定基礎、初年度の対象期間、業績による変動を確認しましょう。求人の年収例が自分に適用される金額かも別に確かめます。
「超過分は支給」の記載と実際の精算方法を確認する
固定残業代を支払っていても、法定の計算で必要な割増賃金が固定額を上回るときは差額の支払が必要です。「固定だから残業代は一切追加しない」という仕組みではありません。
対象時間を超えた分の支給はもちろん、深夜や休日の割増分をどう扱うかも確認します。「45時間以内ならどのような働き方でも追加支給なし」とは判断できません。
また、固定残業代がある職場でも実際の労働時間の把握は必要です。勤怠を何で記録するか、超過分が給与明細のどの項目に出るかまで聞くと運用を確かめやすくなります。
「超過しても払わない」「時間は記録していない」と説明された場合は、月給だけで応募や入社を決めず書面で条件を確認してください。ハローワーク経由の求人なら窓口に相談し、賃金の支払に関する問題は労働基準監督署などにも相談できます。
応募先に聞くなら「対象時間」と「実績」を別々に質問する
質問は「残業は多いですか」だけで終わらせず、応募する部署や職種の実績に絞ります。全社平均が低くても配属先では違うことがあるためです。
- 応募職種の直近の月平均残業時間と繁忙月の目安はどれくらいか。
- 固定残業代の金額・対象時間・対象になる労働の種類は何か。
- 残業が対象時間より少ない月も固定額が支払われるか。
- 超過分などの集計・申請・支給はどのように行うか。
- 試用期間中に基本給や固定残業代の条件が変わるか。
メールや面接で使える確認例
求人の月給には固定残業代45時間分が含まれると拝見しました。応募を検討している〇〇職について、固定残業代を除いた基本給と固定残業代の月額を教えていただけますでしょうか。
あわせて、配属予定部署の直近の月平均残業時間と繁忙期の目安を確認したいです。45時間に満たない月の支給額、超過分や深夜・休日勤務分の精算方法についてもご説明いただけますと幸いです。
内定後は労働条件通知書や雇用契約書の内訳も見直します。応募時に保存した求人と金額や対象時間が違っていれば、契約前に変更内容と理由を確認しましょう。
固定残業代なし・対象時間が少ない求人と同じ月給帯で比較する
候補が1社だけだと固定残業代の割合が大きいのか判断しにくくなります。同じ職種・勤務地・月給帯で、固定残業代がない求人や対象時間が少ない求人も並べてみましょう。
比較するときは「表示月給」「固定残業代を除く賃金」「実際の残業時間」「年間休日」「賞与の条件」をそろえます。固定残業代なしでも残業が少ないとは限らないため、給与制度と勤務実態を別々に確認する手順は同じです。
求人検索の「残業20時間未満」などは候補を探す手掛かりですが、固定残業代がないことを意味する条件ではありません。検索後に各求人の給与欄を開き、固定残業代の有無と時間数を確認してください。
30時間・45時間という数字だけで結論を出さず、月給の内訳と配属先の残業実績を並べる。この見方なら、収入と自分の時間の両方から応募先を比較できます。
参考資料
- 厚生労働省「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」
- 厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」(PDF)
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」
- ハローワークインターネットサービス「求人情報の入力方法について」
- 京都労働局「事業主の方へ」(固定残業代に関するQ&A)
※2026年9月25日時点で確認した情報です。個別の支給条件は求人票と労働条件通知書等で確認してください。



