農業に転職したいけれど、技術を学ぶ間の生活費が心配。そのときに確認したいのが「就農準備資金」です。
2026年度は月13万7,500円、年間最大165万円を原則最長2年間受けられます。ただし、就農予定時の年齢が原則50歳未満で、認定された研修先で学ぶことなどが条件です。農業の学校や研修に申し込むだけで、自動的にもらえるわけではありません。
また、研修後に農業を始め、一定期間続けることが求められます。就農しない場合などには返還が生じるため、金額だけでなく、研修後の働き方まで含めて判断しましょう。
2026年9月11日確認。2026年度の国の実施要綱を中心に解説しています。既に受給している方は、計画が承認された年度・事業のルールも交付元で確認してください。
就農準備資金はいくらもらえる?2026年度は年間最大165万円
就農準備資金は、農業を始める前に必要な技術や知識を学ぶ人への資金です。農林水産省の現行案内では、次の金額・期間が示されています。
| 項目 | 2026年度の内容 |
|---|---|
| 月額 | 13万7,500円 |
| 1年間の上限 | 165万円 |
| 国内研修の交付期間 | 最長2年間。24か月すべてがこの単価で対象になる場合、合計最大330万円 |
| 海外研修 | 国内研修後、将来の農業経営との関連性・必要性などの条件を満たす場合は、最長1年間の追加対象となる仕組みあり |
「年間150万円」という以前の説明もあります。現行要綱では、2025年度以前に開始した研修のうち、2025年度以前の研修分は月12万5,000円とされています。古い記事の金額を、そのまま2026年度の資金計画に使わないようにしてください。
月額表示でも、毎月振り込まれるとは限らない
月13万7,500円は金額を計算する単位です。実際の交付は窓口が定める単位で行われ、例えば長野県の2026年度案内は、原則として半期ごとに82万5,000円としています。
研修を始める前には、対象となる月だけでなく、初回の入金予定、次の申請時期、入金までに必要な自己資金を確認しましょう。
例えば、生活費などの支出を月18万円と見込む場合、月額換算の資金との差は月4万2,500円、1年間で51万円です。これは単純な差額計算で、支出に含めていない入学金・引っ越し費用・農業を始めるための設備費などは別に見積もる必要があります。
受け取る資金は非課税の生活費とは限りません。農林水産省は、就農準備資金を雑所得として扱い、研修に必要な交通費・授業料などは必要経費になり得ると案内しています。原則として確定申告が必要なので、領収書を残し、個別の申告方法は税務署で確認してください。参照:資金受給者の確定申告について(PDF)
対象条件は?年齢・研修先・世帯所得を先に確認する
主な条件は次のとおりです。すべてを確認したうえで、研修計画の審査・承認を受けます。参照:埼玉県の申請要件、国の2026年度実施要綱・第5(PDF)
| 確認項目 | 主な条件 |
|---|---|
| 年齢・意欲 | 就農予定時に原則50歳未満で、農業を仕事として続ける強い意欲がある |
| 研修先・時間 | 認定研修機関等で学ぶ。研修期間はおおむね1年、年間おおむね1,200時間以上 |
| 雇用契約 | 週35時間以上、継続的に働く常勤の雇用契約を結んでいない |
| 他の給付・過去の受給 | 生活費確保を目的とする国の他の給付等を原則受けていない。同種の就農研修支援の過去の受給歴も確認対象 |
| 世帯所得 | 研修計画の承認申請時点で、前年の世帯全体の所得が原則600万円以下 |
| 保険・経営の学習 | 傷害保険への加入。原則として交付期間内に農業経営人材育成研修プログラムの初級等を受講・修了する |
| 研修後 | 独立、農業法人等への就職、親元就農など、予定する進路に応じた条件を満たす |
年齢は「研修開始時」ではなく「就農予定時」
現在48歳だから必ず対象、とは判断できません。例えば、研修終了後に農業を始める時点で50歳になる計画なら、原則50歳未満という条件に当てはまるかの確認が必要です。
相談時には、生年月日だけでなく、研修開始日・終了日・就農予定日を並べて伝えると判断してもらいやすくなります。
600万円は本人の年収ではなく、世帯の所得
国の申請様式(PDF)では、所得は地方税法上の合計所得金額で確認します。会社から支払われる給与の額面年収と同じ数字ではありません。
世帯には本人のほか、同居している配偶者・子・父母、別居していても生計を一にする配偶者・子・父母が含まれます。「自分の所得は600万円未満」だけでは判断できません。退職して今年の収入が減っていても、原則として前年の所得を使う点にも注意してください。
600万円を超えても、生活費確保の必要性などから交付主体が支援を必要と認める場合の例外はあります。自動的に対象となる例外ではないため、所得証明と現在の状況を窓口に示して確認します。
会社勤め・アルバイト・失業手当との関係
常勤の雇用契約を続けたまま受けることは、上の条件に合いません。退職の判断をする前に、希望する研修の対象性や募集時期を相談してください。
一方、短時間のアルバイトを考えている場合も、「週35時間未満なら必ず問題ない」とは言い切れません。研修時間を確保できるか、どのような雇用契約か、所得の条件に影響しないかを確認する必要があります。勤務先・週の勤務時間・研修予定を窓口に伝えましょう。
失業手当や生活保護なども、申請様式で確認される他の生活費給付です。就農準備資金に上乗せして受け取る前提で生活費を計算せず、受給期間と研修期間を示して、交付元と各給付の窓口で扱いを確認してください。
対象の農業研修はどこで探す?認定先と研修後の進路を見る
対象となるのは、都道府県等が認める研修機関などです。農業大学校、農業研修施設、地域の研修事業などがあり、好きな農家で自由に研修すれば対象になる仕組みではありません。
最初は、全国新規就農相談センターの都道府県別相談窓口から、希望する地域の窓口を探してください。「就農準備資金の対象になる研修先を知りたい」と伝えると、制度と研修を一緒に相談できます。
研修先は、学ぶ品目と、その後どこで農業をするかまで見て選びましょう。例えば茨城県の認定研修機関一覧には、次のような特徴が示されています。
- なめがたしおさい農業協同組合:神栖市でピーマンを学び、研修後にJAのピーマン部会員となる人を受け入れる。
- 石岡市・朝日里山ファーム:研修後に石岡市で就農する人を対象に、有機農業や果樹・施設園芸のコースを設ける。
このように、同じ就農研修でも、その地域での就農や出荷先との関係が条件となる場合があります。授業料・寮費・交通費、研修中の収入の有無、農地や就職先の相談体制も併せて比較すると、研修後まで見通しを立てやすくなります。
先進農家等で学ぶ場合は、経営主が三親等以内の親族ではないことや、過去にその研修先と雇用契約を結んでいないことも条件です。短期間のパート・アルバイトには例外がありますが、経歴を省略せず相談してください。
申請方法は?研修先の相談から計画承認・交付申請へ進む
申請窓口は、原則として研修予定地の都道府県側の交付主体です。全国型の教育機関では学校が窓口となる場合などもあるため、研修先または地域の就農相談窓口に、正式な提出先を確認します。
- 希望する地域・品目・働き方を相談する。独立したいのか、農業法人で働きたいのか、親の農業を継ぎたいのかを伝えます。
- 認定された研修先と、資金の対象条件を確認する。年齢、世帯所得、雇用契約、他の給付もこの段階で確認します。
- 研修計画を作り、承認を申請する。研修内容や期間、就農予定などを記入し、指定された書類を提出します。面接等を含む審査が行われます。
- 承認後に、資金の交付を申請する。対象期間・申請単位・入金予定は交付元の案内に従います。
- 研修中は記録をつけ、半年ごとに報告する。研修を受けて終わりではなく、出席・研修時間・習得状況などが確認されます。
学校への入学・研修への採用と、就農準備資金の承認は別です。資金は予算の範囲内で審査されるため、受給を確約されたものとして退職や転居を決めないようにしましょう。参照:国の実施要綱・第6、第7(PDF)
用意する書類の目安
全国共通の様式では、次のような書類・情報を確認します。実際には地域が配布する最新の様式と添付一覧を使ってください。
- 研修計画、履歴書、本人確認書類
- 研修カリキュラム、入学・受入れを確認する書類
- 前年の世帯所得を確認できる所得証明・源泉徴収票等
- 傷害保険の加入を確認する書類、または申請時点で求められる加入予定の情報
- 先進農家等との研修契約書、親元就農の確約書など、研修先・進路に応じた書類
離職票は、国の様式では「ある場合」の添付です。また、保証人の扱いにも条件があります。一律に必要・不要と決めず、自分の提出書類を窓口で確認しましょう。参照:研修計画等の様式・添付書類(PDF)
募集は全国一律の通年受付ではない
募集時期や事前相談の締切は地域によって異なります。例えば長野県の2026年度募集は6月8日から6月24日までで、この記事の確認日には終了しています。「2026年度のページがある」ことと「今も申請できる」ことを分けて確認してください。
窓口には、次回の募集予定、説明会への参加要否、研修開始前に済ませる手続、既に研修中の場合の申請可否を聞くと、その後の予定を立てやすくなります。
研修後は独立だけ?農業法人への就職や親元就農も対象
就農準備資金は、自分で農地を借りて独立する人だけの制度ではありません。ただし、進路ごとに求められる条件があります。
| 予定する進路 | 研修後の主な条件 |
|---|---|
| 独立・自営就農 | 就農後5年以内に、農業経営改善計画または青年等就農計画の認定を受ける |
| 農業法人等への雇用就農 | 研修終了後1年以内に、正社員として無期雇用契約を結ぶか、通算5年以上の雇用契約を結ぶ |
| 親元就農 | 農業への専従・給与・役割を家族経営協定等で明確にし、就農後5年以内に経営を継承する、法人の経営者になる、または独立・自営就農することを確約する |
雇用就農を経て独立する予定の場合も、就農後5年以内の独立等について条件があります。「研修後に農業関係の短期アルバイトをすればよい」とは考えず、予定する雇用形態や経営計画を申請時から確認してください。参照:国の実施要綱・第5の1(PDF)
なお、独立後の経営を支える「経営開始資金」は別の段階の制度です。2026年度は年間最大165万円・最長3年間ですが、認定新規就農者であることなど別の要件と申請があります。就農準備資金の受給後に、自動で切り替わるものではありません。
返還は必要?就農しない・途中で辞める場合は注意
就農準備資金には、条件を満たさなくなった場合の返還規定があります。研修を適切に受け、研修後も計画に沿って農業を続けることが前提です。
主な返還事由は、適切な研修を行わなかった、研修終了後1年以内に原則50歳未満で就農しなかった、進路ごとの確約を守らなかった、必要な期間だけ農業を続けなかった、必要な報告を行わなかった、虚偽申請をした場合などです。理由によって全額返還となる場合と、対象月などに応じた一部返還となる場合があります。
就農を続ける期間の条件は、原則として「交付期間の1.5倍」と「2年間」の長い方です。例えば、2年間受給した人は3年間、1年間受給した人は2年間が目安になります。名前だけ農業を続けていればよいわけではなく、実際の就農状況も確認されます。参照:茨城県の交付・返還条件
この継続期間と、報告を続ける期間は別です。国の要綱では、研修終了後6年間、毎年7月末と1月末に直前6か月分の就農状況を報告することになっています。受給終了後も、交付元からの案内と報告期限を保管してください。
病気・災害などで研修や就農を続けられない場合には、休止・遅延の届出や、事情に応じた返還免除の申請の仕組みがあります。自分で判断して研修を休む、連絡せず農業を辞めるのではなく、事情が生じた段階で交付元に相談してください。参照:国の実施要綱・返還および研修終了後の手続(PDF)
最初の相談では、「就農予定の年齢」「前年の世帯所得」「希望する研修先・品目」「研修後の働き方」「入金までと研修中に使える自己資金」を整理して持参しましょう。対象になるかと、生活を続けながら農業を学べるかを、同時に確かめられます。

