船舶料理士になるには、18歳以上で、保有資格に応じた船内の調理経験や教育などの条件を満たし、地方運輸局へ資格証明書を申請します。調理師・栄養士・管理栄養士の免許がある人は、船舶料理士の登録試験を受けずに申請できるルートがあります。
ただし、陸上の飲食店で長く働いていても、それだけで船内経験の条件を満たすわけではありません。まず「今持っている免許」と「船で調理を担当した経験」を分けて確認しましょう。
この記事では、日本の調理師等の資格を生かす場合と、資格のない状態から目指す場合を中心に、講習・試験・申請・船の仕事探しまでを説明します。
確認日:2026年9月13日。2026年度の登録試験は10月3日開催予定ですが、受験申請の締切は9月4日です。講習の締切とは異なります。
船舶料理士になるには?今の資格で取得ルートが変わる
代表的な取得ルートは次のとおりです。いずれも、条件を満たしたあとに資格証明書の申請が必要です。
| 今の状況 | 主な取得ルート |
|---|---|
| 調理師・栄養士・管理栄養士の免許がある | 船に乗り組み、専ら調理を担当した経験3か月以上+免許を証明して申請 |
| 上記の免許があり、所定の船内教育を受けられる | 告示の基準に合う船内教育を1か月以上受け、実施証明書などを添えて申請 |
| 上記の免許などがない | 船内で専ら調理を担当した経験1年以上を積み、登録試験に合格して申請 |
年齢要件は18歳以上です。旧海員学校の司厨・事務科や、海上保安学校の所定課程の卒業者などにも別途認められるルートがあります。外国の船舶料理士資格を持つ場合も取り扱いが異なるため、免許・卒業証書を示して運輸局に確認してください。
根拠:国土交通省「船舶料理士制度」、船舶料理士資格証明書交付等事務取扱要領(2026年8月5日改正・PDF)。
船で調理する仕事と、船舶料理士の資格はどう違う?
船の食事を担当する仕事は、求人では「司厨部員」「調理員」「コック」などの名前でも募集されます。資格を取得する条件と、その求人へ応募する条件は分けて読みましょう。
資格証明書が必要なのは、一定の船で調理を管理する立場
船舶料理士資格証明書が必要なのは、遠洋・近海を航行区域とする船舶、または第3種の従業制限を有する漁船のうち、総トン数1,000トン以上で、航海中に船員の食料を船内で調理する船の調理業務を管理する立場です。
したがって、船内で料理に関わる全員が、採用前から同じ資格証明書を持っていなければならない、という制度ではありません。求人の職務と、配置される船で必要な資格を確認することが出発点になります。
「調理教育終了証明書」は別の証明書
船舶料理士の配置が必要ない船でも、船員の食事を船内で調理する場合は、原則として調理教育終了証明書が必要になります。平水区域の船舶など、対象外となる例外もあります。
国交省は、所定のテキストによる社内教育、外部機関の研修、調理師等の免許などを、調理教育終了証明書の申請につながる教育・資格として案内しています。この証明書を取ったことと、船舶料理士資格証明書を取ったことは同じではありません。
採用担当者には「この仕事では、船舶料理士と調理教育終了証明書のどちらが必要ですか。入社後に教育・申請できますか」と尋ねると確認しやすくなります。対象となる船と教育の詳細は、国交省の制度案内で確認できます。
調理師免許がある人は、船内経験か所定の教育を確認する
基本は船内での調理経験3か月以上
調理師・栄養士・管理栄養士の免許がある人は、その免許を資格要件の証明に使えます。登録試験の合格を一律に求められるルートではありません。
追加で確認するのが、船舶に乗り組み、専ら調理に関する業務に従事した3か月以上の経験です。陸上のレストランや給食施設で働いた期間を、そのままこの3か月に置き換えることはできません。
たとえば、陸上のホテルで調理を5年間担当していても、船内調理の経験がゼロなら、免許だけを持って資格証明書を申請することはできません。一方、免許があり船内の調理経験もある人は、受験講習を探す前に、乗船履歴で申請条件を満たすかを確認するのが先です。
1か月以上の船内教育で申請できる場合もある
調理師等の資格保有者には、告示で定められた船内教育を1か月以上受けるルートもあります。単に1か月乗船すればよいのではなく、定められた人の監督のもとで必要な教育を受けることが条件です。
- 船内の労働については、船長の監督のもとで学ぶ
- 船内の調理については、船舶料理士資格証明書を持つ人の監督のもとで学ぶ
- 食料の積み込み・保存、航海を考えた献立、健康に配慮した食事、調理場や飲用水の衛生などを学ぶ
- 申請時に船内教育実施証明書などで教育の実施を証明する
応募先には、免許を伝えたうえで「所定の1か月以上の船内教育を実施できる船か」「監督者と証明書の発行体制があるか」を確認しましょう。経験期間や職務名の扱いは、乗船前に運輸局へ相談しておくと、あとで証明できない行き違いを防げます。
根拠:船内教育についての国土交通省告示、交付等事務取扱要領・従事期間の審査(PDF)。
資格がない人は、船内経験を積んで登録試験を目指す
調理師等の免許や認められる課程の卒業歴がない人は、船内で専ら調理を担当する経験を積み、船舶料理士登録試験に合格するルートが基本です。
2026年度の登録試験では、試験日時点で18歳以上であることに加え、船に乗り組んで1年以上、専ら司厨部員として調理に従事した経歴が受験資格になっています。船員手帳の雇入欄で、調理担当であることを確認できる必要があります。
「無資格・未経験でもすぐに試験を受ける」という順序ではありません。まず、資格取得前の調理職として採用・育成する求人を探し、担当業務が受験に必要な経験として証明できるかを確認します。必要な調理教育についても応募先と相談してください。
試験は筆記と実技がある
筆記では食品衛生や栄養、調理理論などを学び、実技では日本料理・西洋料理・中華料理に対応します。2026年度は、実技の各科目で制限時間内に2人前の課題料理を仕上げ、技術だけでなく衛生、手順、盛り付けなども評価されます。
普段作り慣れている料理だけに偏らず、年度の受験案内と、受験者に送られる実技課題の案内を基準に準備しましょう。
2026年度の試験日・受験料・締切
| 項目 | 2026年度・第19回の案内 |
|---|---|
| 試験日 | 2026年10月3日(土) |
| 会場 | 織田調理師専門学校(東京都中野区) |
| 受験申請 | 8月3日~9月4日。締切日の消印有効 |
| 受験料(税込) | 協会会員46,200円/非会員60,060円 |
| 合格発表予定 | 10月23日(金)午前9時 |
2026年9月13日時点では、案内された通常の申込期限は過ぎています。これから目指す人は、次回の募集を確認しながら必要な経験と学習を準備してください。次回の日程は、発表前に前年から推測して決めないようにしましょう。
受験料の会員価格は、団体会員・賛助会員には適用されないと案内されています。希望する場合の白衣等の貸与や過去問題集、交通・宿泊、合格後の証明書申請は別に予算を見ておきます。
最新の案内・書式:船員災害防止協会「第19回船舶料理士登録試験」、2026年度受験案内(PDF)。
船舶料理士の講習は、何のために受ける?
「講習」という名前だけで選ばず、試験対策なのか、調理教育のためなのか、別の資格ルートなのかを確認する必要があります。
全日本海員福祉センター(JSS)の船舶料理士研修は、受験予定者の試験対策と調理技能の向上を目的とした研修です。講習の申し込みだけで登録試験の受験申請まで済むわけではありません。試験を実施する船員災害防止協会と、講習の実施機関は別です。
JSSの2026年度の研修補助事業案内には、船舶料理士の研修が9月29日~10月2日、定員10人、申込締切9月14日と掲載されています。講習側の締切が試験側より遅くても、登録試験の締切が延びるという意味ではありません。受講可否・空き・料金はJSSへ確認してください。
研修費の補助は、海員組合の組合員またはJSS賛助会員であることなどの条件があります。誰でも無料になる制度としては扱わず、会員資格、他の補助との重複、所定の申請を確認しましょう。
また、制度上の「同等認定講習」は、外国の船舶料理士資格や船内経験などを前提とする別のルートです。国内の無資格・未経験者が数日の一般講習だけで資格を取れる仕組みと取り違えないようにしてください。
確認先:JSS「資格取得研修」、2026年度技能資格取得研修補助事業(PDF)、同等認定講習の基準(2026年8月5日改正・PDF)。
資格証明書の申請方法と必要書類
試験合格や免許・経験の条件がそろったら、地方運輸局などへ船舶料理士資格証明書の交付を申請します。登録試験の合格証明書と、仕事で必要な資格証明書は別です。
主な準備物は次のとおりです。取得ルートによって、経験や教育を示す書類が変わります。
- 船舶料理士資格証明書交付申請書
- 顔写真(縦4.5cm×横3.5cm、申請前6か月以内に撮影したもの)
- 船員手帳。提示できない場合は、本籍記載の住民票や旅券など認められる書類
- 調理師等の免許証、登録試験の合格証明書、対象課程の卒業証明など
- 船内の調理経験を確認する書類。船員手帳だけで確認できない場合は乗船履歴等の証明
- 所定の船内教育ルートでは、船内教育実施証明書
交付手数料は2,750円です。窓口申請のほか、郵送の取り扱いやe-Govを通じた申請についても、提出先の案内を確認できます。写真や免許証の扱い、原本を提示するもの、返信用封筒などを申請前に確認してください。
試験の受験申請で指定される写真は縦4cm×横3cmですが、資格証明書の交付申請は縦4.5cm×横3.5cmです。余った写真をそのまま使えると思わず、手続きごとのサイズを確認しましょう。
提出先には、免許の種類、船名、担当した職務、乗船した期間、1か月の船内教育を使うかどうかをまとめて伝えると、必要書類を確認しやすくなります。
書式と窓口案内:関東運輸局「船舶料理士資格証明書の申請」。申請事務の最新要領は2026年8月改正の交付等事務取扱要領(PDF)を参照しています。
船で働くには、資格取得の前後に司厨の求人を確認する
船内経験が必要な資格なので、資格取得と仕事探しは切り離せません。船舶料理士を取得済みの人向けの求人に加え、調理師免許を持つ人や船員未経験者を受け入れる求人も、条件を確認しながら探します。
船員向けの公的な求人窓口「海のハローワーク」では、経験者向けだけでなく未経験者向けの探し方も用意されています。検索・登録・紹介依頼の手順は、次の記事で説明しています。

応募前に確認したい5つのこと
- 必要な資格:採用時点で船舶料理士が必須か、調理師免許で応募できるか、調理教育終了証明書が必要か
- 経験の積み方:調理を専ら担当する職務か、乗船履歴を証明できるか、所定の船内教育を受けられるか
- 仕事の範囲:何人分を何人体制で作るか、献立・発注・片付け・調理以外の業務をどこまで担当するか
- 生活との相性:連続して乗る期間、下船後の休暇、帰宅の頻度、居室などの船内環境
- 給料と費用:乗船中・休暇中の給与、手当、乗下船の交通費、講習・資格申請の費用負担
調理師免許を持って船の仕事へ移るなら、「免許を生かして採用されるか」と「入社後に船舶料理士の条件を満たせるか」を一緒に確認するのが大切です。資格のない人は、まず調理経験を積める採用枠と必要な教育を確認し、登録試験までの道筋を作りましょう。

