建退共の退職金は、会社の勤続年数だけでは決まらず、納められた掛金の日数と単価で変わります。日額320円で掛け始めた人の改定前のモデル額は、納付月数120月で約89万円、240月で約193万円です。ここでいう120月は「その会社に10年在籍した」という意味ではなく、掛金の納付実績を月数に換算したものです。
また、建退共は原則として建設業で働かなくなったときに請求する制度です。建設会社を辞めて別の建設会社へ移る場合は、すぐ受け取るのではなく、掛金を引き継ぐことを考えます。
2026年10月1日には予定運用利回りを1.3%から1.5%へ引き上げる改定が発表されています。この記事では、9月12日時点で確認した改定前後の目安、自分の金額の調べ方、受け取りの条件と手続きを整理します。
建退共の退職金はいくら?掛金の納付実績で見る
建退共は、建設現場で働く労働者のための退職金制度です。雇われて働く人の掛金は事業主が負担し、本人が請求すると建退共から本人へ支払われます。現在の掛金日額は320円です。建退共「制度のしくみ」
金額表を読むときは、納付日数21日分を1月、252日分を1年相当として見ます。休日も含むカレンダーの月数や、履歴書に書く勤続年数とは区別してください。
| 納付月数 年数換算 |
改定前 | 10月改定後の 案内額 |
|---|---|---|
| 12月/1年相当 | 24,192 | 24,192 |
| 24月/2年相当 | 161,280 | 161,280 |
| 60月/5年相当 | 414,087 | 415,296 |
| 120月/10年相当 | 893,559 | 903,168 |
| 240月/20年相当 | 1,933,479 | 1,978,032 |
| 360月/30年相当 | 3,038,919 | 3,148,656 |
改定前のモデルは建退共本部の制度案内、改定後の案内額は広島県建設労働組合の「令和8年10月1日改正予定」の比較表によります。同組合の表にある助成を除いた「実質掛けた月数」ではなく、退職金の比較に対応する総納付月数で表示しています。改定後は公開時点では施行前の案内額です。
出典:建退共本部「退職金額」、広島県建設労働組合「納めた額と受け取る額の比較」
長年働いてきた人全員が、上の20年・30年の金額になるわけではありません。2021年10月より前の掛金日額を含む人は、その時期の単価も使って計算されます。上表は金額の規模をつかむモデルであり、過去の低い単価の証紙をすべて320円として数え直すことはできません。建退共「退職金額について」
1年分では掛金相当額を受け取れない
掛金納付月数が12月以上24月未満で本人が請求する場合、退職金は掛金納付額の3〜5割程度です。日額320円で252日分なら掛金相当額は80,640円ですが、12月のモデル退職金は24,192円になります。
24月なら320円×504日=161,280円で、表の退職金も161,280円です。1年分と2年分では扱いが大きく違うため、納付実績を確かめることが大切です。死亡による遺族請求では、12月以上24月未満でも掛金相当額となる扱いがあります。建退共の短期加入時の支払額の説明
2026年10月の改定で何が変わる?
建退共本部は2026年8月7日、10月1日に予定運用利回りを1.3%から1.5%へ引き上げると公表しました。利回りの引き上げは退職金の計算に関係する改定です。本人の給料が1.5%増える、積み上がった退職金全体が一律に15%増える、という意味ではありません。建退共本部「退職金共済制度の一部改正について」
たとえば上表の120月モデルでは、893,559円から903,168円へ9,609円の差です。一方、12月・24月の掲載額は変わりません。増え方は納付実績によって違うので、利回りの数字だけで自分の増額分を計算しないでください。
「10月に書類を出す」だけで新しい計算になると考えない
広島県建設労働組合の改定案内では、対象を退職金請求事由発生年月日が2026年10月1日以降となる人としています。「請求年月日」は書類を提出・発送する日、「退職金請求事由発生年月日」は請求できる事由に該当した日で、請求書でも別の項目です。同組合の改定対象の案内、建退共の請求書記入方法
9月に建設業を離れた人が、発送だけを10月に遅らせれば増額される、と判断しないことが大切です。改定をまたぐ場合は、退職・転職の状況と実際の日付を支部に伝え、適用される計算を確認してください。公開時点の本部の約款掲載ページは4月1日改正版のため、請求時には新しい約款・試算案内の更新も確かめます。
自分の退職金額を調べる3つの手順
1.共済手帳と電子納付の実績を確認する
会社が手帳を保管している場合は、まず自分の共済手帳を見せてもらいます。手帳の更新までに積み上がった実績に加え、現在の手帳に貼られた証紙も確認してください。
電子申請による納付がある場合は、事業主に発行される最新の「掛金充当書」で累計実績を確認します。証紙方式と電子方式が混在している人は、紙の手帳だけで「これしか納まっていない」と判断せず、両方の実績を整理します。
分からない場合は、建退共の「掛金納付状況通知」の発行を依頼できます。通知の基準日以降に納付された分があるかも確認してください。建退共「掛金納付状況を知りたいとき」
2.納付日数を月数へ換算する
たとえば、納付実績が1,260日なら、1,260日÷21日=60月です。仕事を始めてから8年たっていても、納付実績がこの日数であれば、上表を見るときは60月を起点にします。
ただし、これは納付月数の考え方の例です。単価の違う証紙がある場合や、ほかの共済から通算した期間がある場合は、月数だけでは金額を決められません。
3.建退共の公式試算で概算を確認する
公式サイトの「退職金試算」へ進み、請求事由が発生した時期や移動通算の有無に合うページを選びます。入力するのは記憶上の勤続年数ではなく、確認した納付実績です。10月改定後の請求を考えている人は、試算が改定に対応しているかも確認してください。
試算は目安です。決定額は審査後の退職金振込通知書で確認します。建退共は、支払日・支払金額について電話では回答していないと案内しているため、電話では実績の確認方法や必要な手続きについて相談します。建退共FAQ「退職金が手元に届くまでの日数と退職金額」
いつ受け取れる?退職・転職で違う請求条件
基本は、掛金納付実績が12月以上あり、建設業で働かなくなるなどの請求事由に当たることです。会社独自の退職金と違い、今の会社を辞めたことだけでは判定しません。
| 今後の状況 | まず確認すること |
|---|---|
| 建設業を離れ、無職になる・別業種へ転職する | 請求事由と納付月数を確認して請求へ進む |
| 別の建設会社で現場の仕事を続ける | 転職先の加入状況を確認し、共済手帳と掛金実績を引き継ぐ |
| 独立する・役員になる・仕事の立場が変わる | 加入対象と請求事由が変わるか支部に確認する |
| 納付実績が12月に届かない | 現時点では支給要件を満たさない。共済手帳を保管する |
請求事由には、独立、無職、建設業以外での雇用、けがや病気で働けなくなった場合などがあります。公式の請求案内には「満55歳以上になった」という区分もありますが、55歳になれば在職中に自由に解約して引き出せるという意味ではありません。建退共のFAQは、建設業で労働者として働いている間の一部・全額の解約請求はできないと説明しています。退職後も建設の仕事を続ける人は、現在の就労状況を伝えて確認してください。建退共「退職金請求手続きのご案内」、建退共FAQ「退職前に解約してお金を受け取るには」
12月未満の手帳にも有効期限はなく、後に建設業で働く際に使えます。転職先が建退共に加入している場合は、会社が変わっても納付実績を通算できます。建退共FAQ「掛金納付実績が12月に満たない共済手帳」、建退共の通算の説明
請求事由発生日が2016年3月31日以前の場合は、原則24月以上の納付が必要です。昔の手帳を見つけた場合は、現在の12月基準だけで判断せず支部へ相談してください。
建退共の退職金を受け取るための手続き
本人が請求する場合は、書類をそろえて最寄りの建退共都道府県支部へ提出します。ここでは紙の請求書で進める流れを紹介します。オンライン申請を利用する場合は、公式案内から被共済者用サイトへ進み、画面と提出書類の指示を確認してください。
必要書類をそろえる
- 退職金請求書と共済手帳
- 本人だけを記載した、マイナンバー入り住民票の原本(発行から3か月以内)
- 運転免許証など、指定された身元確認書類のコピー
- 本人名義の口座を確認できる通帳・キャッシュカード等のコピー
- 「退職所得の受給に関する申告書」兼「退職所得申告書」
- 同じ年に他から退職金を受け取った場合など、該当者の追加書類
請求書は公式サイトから入手でき、印刷できない場合は支部へ取り寄せを依頼できます。住民票のコピーでは受け付けられないため、原本を用意します。身元確認書類の種類とコピーする面は、建退共の本人請求の案内に合わせてください。
請求事由と日付を記入し、必要な証明を受ける
提出日と、請求事由が発生した日を混同しないように記入します。退職事由によって事業主の証明が必要です。最後の会社が廃業して証明を受けられない場合は、そのまま諦めず、都道府県支部へ相談してください。
振込先は本人名義の普通預金口座です。公式案内ではネットバンク・漁業協同組合は指定できないとされているため、普段使う口座が指定可能かを確認します。建退共の請求書記入・口座の案内
支部へ提出し、振込通知を確認する
郵送する場合は、必要書類一式を簡易書留で最寄りの支部へ送ります。振り込みは、必要な書類がそろって支部で受け付けられてから約1か月が目安です。不足書類があると、その取り寄せで遅れます。退職日の翌日や最後の給料日に振り込まれる制度ではないため、当面の生活費とは分けて予定を立てましょう。建退共FAQ「支払いまでの日数」
建設業を離れて求職中で、失業保険の受給を考えている方は、建退共とは別に、説明会・初回認定日と入金までの流れも確認しておきましょう。

税金の申告書と、受け取った後のお金も確認する
退職所得の申告書を出さない場合、建退共は退職金額の20.42%を所得税等として源泉徴収すると案内しています。必要書類から漏らさないようにしてください。会社の退職金などを別に受け取る人は、その源泉徴収票などの添付が必要になることがあります。建退共「税法上の取扱い」
退職金の受け取りを待つ間も、健康保険や年金の切り替えなど、期限のある手続きを先に確認しましょう。次の仕事が決まっていない方は、次の記事で必要な書類と窓口へ相談する順番を整理できます。

手帳がない・会社に聞けないときはどうする?
共済手帳を紛失している場合は、再交付申請の手続きがあります。会社が保管したまま返してくれない場合は、手帳は本人のものなので、まず返却を申し出ます。会社の廃業などで自力で進めにくい場合は、氏名、当時の会社名、働いていた時期、分かれば被共済者番号を整理して支部へ相談してください。建退共の手帳紛失・事業主廃業時の案内、建退共FAQ「会社が共済手帳を返さない場合」
金額を確かめる最初の一歩は、共済手帳と最新の納付実績をそろえることです。そのうえで「建設業を離れるのか、続けるのか」「いつ請求事由が発生するのか」を整理すると、金額の試算と請求の相談を進めやすくなります。
情報確認日:2026年9月12日。2026年10月改定は公開時点では施行前です。個別の退職金額は掛金単価・納付実績・請求事由等で異なります。改定後の適用・試算と必要書類は、請求時の建退共本部・都道府県支部の最新案内をご確認ください。

