退職した会社から後日ボーナスが振り込まれ、明細を見ると健康保険料や厚生年金保険料が引かれていた。
「もう退職しているのに、なぜ社会保険料が引かれるの?」
と疑問に思う人もいるでしょう。
反対に、退職日の直前にもらった賞与なのに社会保険料が引かれないこともあります。
賞与の社会保険料を判断するときに重要なのは、
「退職前にもらったか、退職後にもらったか」だけではありません。
確認するのは次の3つです。
- 賞与の支給日はいつか
- 正式な退職日はいつか
- 社会保険の資格喪失日はいつか
特に重要なのが、退職日の翌日が資格喪失日になることです。
そのため同じ6月に賞与をもらっていても、
6月29日退職
と
6月30日退職
では、社会保険料がかかるかどうかが変わることがあります。
この記事では、退職前後の賞与から健康保険料・厚生年金保険料が控除されるケースとされないケースを、具体的な日付で整理します。
※この記事でいう社会保険料は主に健康保険料・厚生年金保険料です。雇用保険料や所得税は別のルールで計算されます。
- 結論|賞与の支給月と「資格喪失月」を確認する
- まずこの表で自分のケースを確認
- 一番間違えやすい|6月29日退職と6月30日退職
- なぜ月末退職だけ違うの?
- 退職後に賞与が振り込まれた場合は?
- 退職後に振り込まれたのに引かれていたら会社のミス?
- 有給消化中に賞与をもらったら?
- 退職日に賞与が支給された場合は?
- 「退職月の賞与には保険料がかからない」は間違い
- 退職日と賞与支給日の早見表
- 例外|入社した月にそのまま退職した場合
- 「何月分の賞与か」はそれほど重要ではない
- 賞与明細から何が引かれているか確認する
- 退職後の賞与から健康保険・厚生年金が引かれていたら確認する4項目
- 控除がおかしいと思ったら会社にはこう確認する
- 「月末の1日前に退職すれば得」とは限らない
- よくある疑問
- まとめ|「退職後か」より退職日・資格喪失日・賞与支給日を見る
- 参考資料
結論|賞与の支給月と「資格喪失月」を確認する
最初に結論です。
賞与の健康保険料・厚生年金保険料を判断するときは、資格喪失月が重要です。
原則として、
資格喪失月に支払われた賞与
→ 社会保険料の対象にならない
という扱いになります。
そして資格喪失日は原則として、
退職日の翌日
です。
たとえば6月に退職するとします。
| 退職日 | 資格喪失日 | 資格喪失月 |
|---|---|---|
| 6月15日 | 6月16日 | 6月 |
| 6月29日 | 6月30日 | 6月 |
| 6月30日 | 7月1日 | 7月 |
ここで注目したいのが6月30日です。
6月30日まで在籍すると、資格喪失日は翌月7月1日になります。
つまり、
月末退職だけ資格喪失月が翌月になる
わけです。
この違いによって、退職月に支給された賞与の社会保険料も変わることがあります。
まずこの表で自分のケースを確認
たとえば賞与支給日が6月20日だったとします。
| 退職日 | 資格喪失日 | 6月20日の賞与 |
|---|---|---|
| 6月15日 | 6月16日 | 支給日は資格喪失後。原則社会保険料なし |
| 6月29日 | 6月30日 | 資格喪失月の賞与。原則社会保険料なし |
| 6月30日 | 7月1日 | 資格喪失月は7月。原則社会保険料あり |
| 7月15日 | 7月16日 | 6月賞与は資格喪失月ではない。原則社会保険料あり |
つまり、
「賞与支給日にまだ会社員だったか」だけでも判断できません。
6月20日時点でまだ在籍していても、6月中に資格を喪失するなら、6月賞与の社会保険料がかからないケースがあります。
一番間違えやすい|6月29日退職と6月30日退職
この違いを具体的に見てみましょう。
賞与支給日はどちらも6月20日とします。
6月29日に退職した場合
日付は次のようになります。
6月20日 賞与支給
6月29日 退職
6月30日 資格喪失
資格喪失月は6月です。
6月20日に支給された賞与は「資格喪失月に支払われた賞与」にあたるため、原則として健康保険料・厚生年金保険料の対象になりません。
ここで、
「6月20日はまだ社員だったのに?」
と思うかもしれません。
しかし賞与については、支給日に資格があったかだけではなく、支給された月が資格喪失月にあたるかも確認します。
6月30日に退職した場合
今度は、
6月20日 賞与支給
6月30日 退職
7月1日 資格喪失
となります。
資格喪失月は7月です。
6月20日の賞与は資格喪失月ではなく、その前月に支給されています。
そのため原則として健康保険料・厚生年金保険料がかかります。
つまり、
6月29日退職 → 原則、6月賞与の社会保険料なし
6月30日退職 → 原則、6月賞与の社会保険料あり
という違いが生じます。
退職日が1日違うだけですが、資格喪失月が変わるためです。
なぜ月末退職だけ違うの?
健康保険・厚生年金の資格喪失日は原則として退職日の翌日です。
そのため、
月末より前に退職
→ 同じ月に資格喪失
となります。
一方、
月末に退職
→ 翌月1日に資格喪失
です。
7月を例にすると、
7月30日退職
→7月31日資格喪失
ですが、
7月31日退職
→8月1日資格喪失
となります。
「29日と30日」「30日と31日」が重要なのではありません。
境目はあくまで、
その月の最終日に退職したか
です。
退職後に賞与が振り込まれた場合は?
では、退職してからボーナスが振り込まれた場合を見てみましょう。
6月15日退職・6月20日賞与
6月15日 退職
6月16日 資格喪失
6月20日 賞与支給
賞与支給日の時点ですでに資格を喪失しています。
この賞与そのものについては、原則として健康保険料・厚生年金保険料はかかりません。
6月30日退職・7月10日賞与
6月30日 退職
7月1日 資格喪失
7月10日 賞与支給
この場合も賞与支給日は資格喪失後です。
原則として7月10日の賞与そのものに健康保険料・厚生年金保険料はかかりません。
つまり、
正式な退職後に支給された賞与から健康保険料・厚生年金保険料が控除されている
のであれば、明細の内容を確認したほうがよいでしょう。
退職後に振り込まれたのに引かれていたら会社のミス?
必ずしも、その場で「会社のミス」とは断定できません。
まず確認したいのが正式な退職日です。
たとえば、
6月15日 最終出勤
6月16日~30日 有給消化
6月30日 退職
という人がいたとします。
本人としては、
「6月15日で会社を辞めた」
という感覚かもしれません。
しかし雇用契約上の退職日は6月30日です。
社会保険の資格喪失日は7月1日になります。
この場合、6月20日に賞与が支給されれば、まだ社会保険の資格があります。
しかも資格喪失月は7月なので、6月賞与は原則として社会保険料の対象です。
最終出勤日と退職日は分けて確認してください。
有給消化中に賞与をもらったら?
有給消化中でも退職日を迎えていなければ、まだその会社に在籍しています。
たとえば、
6月10日 最終出勤
6月11日~30日 有給消化
6月20日 賞与
6月30日 退職
なら、
7月1日資格喪失
です。
6月20日の賞与は原則として社会保険料の対象になります。
「もう出勤していないから退職後の賞与」
とは考えません。
正式な退職日を見る必要があります。
退職日に賞与が支給された場合は?
ここも分かりやすい境目があります。
月途中の退職日にもらった場合
たとえば、
6月15日 賞与支給・退職
6月16日 資格喪失
です。
資格喪失月は6月なので、原則として6月15日の賞与は保険料の対象になりません。
月末の退職日にもらった場合
一方、
6月30日 賞与支給・退職
7月1日 資格喪失
なら資格喪失月は7月です。
6月30日に支払われた賞与は原則として社会保険料の対象になります。
つまり、
退職日と賞与支給日が同じでも、月末退職かどうかで変わる
ことがあります。
「退職月の賞与には保険料がかからない」は間違い
よくある誤解が、
「退職した月にもらったボーナスは社会保険料がかからない」
というものです。
正確には違います。
見るのは「退職月」ではなく資格喪失月です。
たとえば6月30日退職なら、
- 退職月 → 6月
- 資格喪失月 → 7月
です。
そのため6月に支給された賞与には原則として社会保険料がかかります。
一方6月29日退職なら、
- 退職月 → 6月
- 資格喪失月 → 6月
なので、6月賞与は原則として社会保険料の対象外です。
「退職月」という言葉だけで判断しないようにしましょう。
退職日と賞与支給日の早見表
6月を例に整理します。
| 賞与支給日 | 退職日 | 資格喪失日 | 原則的な扱い |
|---|---|---|---|
| 5月20日 | 6月15日 | 6月16日 | 社会保険料あり |
| 6月10日 | 6月15日 | 6月16日 | 社会保険料なし |
| 6月20日 | 6月29日 | 6月30日 | 社会保険料なし |
| 6月20日 | 6月30日 | 7月1日 | 社会保険料あり |
| 6月30日 | 6月30日 | 7月1日 | 社会保険料あり |
| 7月10日 | 6月30日 | 7月1日 | 社会保険料なし |
基本的にはこの表で多くのケースを判断できます。
ただし、社会保険の資格を取得した月と同じ月に退職した場合には例外的な扱いがあるため注意してください。
例外|入社した月にそのまま退職した場合
資格喪失月の賞与は原則として保険料の対象外ですが、例外があります。
資格を取得した月と同じ月に資格を喪失した場合です。
たとえば、
6月1日 入社・資格取得
6月10日 賞与支給
6月20日 退職
6月21日 資格喪失
というケースです。
資格取得月も資格喪失月も6月です。
この場合、資格取得日から資格喪失日の前日までに支給された賞与は、原則として社会保険料の対象になります。
そのため、
「資格喪失月の賞与なら絶対に保険料なし」
とだけ覚えるのは正確ではありません。
通常の退職ではまず問題になりにくい例外ですが、入社直後に退職した人は注意してください。
「何月分の賞与か」はそれほど重要ではない
退職後に賞与を受け取ると、
「これは在職中の1月~6月の働きに対するボーナスだから、社会保険料も在職中扱いになる?」
と考える人もいるでしょう。
しかし社会保険料については、
賞与の査定対象期間だけで判断するわけではありません。
たとえば、
1月~6月の勤務実績に対する賞与を7月10日に支給
する会社で、6月30日に退職したとします。
資格喪失日は7月1日です。
7月10日の賞与は資格喪失後に支払われます。
「1月~6月に働いた分だから」という理由だけで、過去へさかのぼって健康保険料・厚生年金保険料をかけるわけではありません。
見るべきなのは実際の賞与支給日と資格の状況です。
賞与明細から何が引かれているか確認する
賞与明細には一般的に、
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
などが記載されます。
このうち今回説明しているのは主に、
健康保険料
厚生年金保険料
です。
「社会保険料が引かれないはずなのに手取りが少ない」と思っても、所得税など別の控除が行われていることがあります。
まず明細で何という項目から、いくら控除されているかを確認してください。
退職後の賞与から健康保険・厚生年金が引かれていたら確認する4項目
自分のケースを確認するときは、次の順番が分かりやすいでしょう。
1.賞与支給日
銀行へ入金された日や賞与明細に記載された支給日を確認します。
2.正式な退職日
最終出勤日ではありません。
退職届、退職証明書、離職票などで正式な退職日を確認してください。
3.資格喪失日
原則として、
退職日の翌日
です。
4.資格喪失月と賞与支給月を比較
たとえば、
6月15日退職
→6月16日資格喪失
→資格喪失月は6月
です。
6月に賞与が支払われたなら原則として賞与保険料はかかりません。
一方、
6月30日退職
→7月1日資格喪失
→資格喪失月は7月
なら、6月賞与には原則として保険料がかかります。
控除がおかしいと思ったら会社にはこう確認する
退職後の賞与明細から健康保険料・厚生年金保険料が引かれていて、自分で確認しても理由が分からない場合は会社の給与担当者へ確認します。
伝えるとよいのは、
- 正式な退職日
- 賞与支給日
- 賞与明細で控除された健康保険料
- 賞与明細で控除された厚生年金保険料
です。
聞き方は、
「○月○日退職で資格喪失日は○月○日だと思います。○月○日支給の賞与から健康保険料と厚生年金保険料が控除されていますが、今回の賞与に対する保険料でしょうか」
で十分です。
給与計算に誤りがあれば、会社側で確認・訂正が必要になります。
逆に自分が認識していた退職日と会社上の退職日が違っていたことが分かる場合もあります。
「月末の1日前に退職すれば得」とは限らない
賞与の社会保険料だけを見ると、
月末より前に退職したほうが保険料がかからない
ケースがあります。
そのため、
「ボーナスをもらったら月末の1日前に退職したほうが得なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし社会保険全体では単純ではありません。
月末より前に退職すると、その月は前の会社の健康保険・厚生年金の保険料がかからない一方で、退職後の状況によって、
- 次の会社の社会保険
- 国民健康保険
- 国民年金
- 配偶者の扶養
などへ切り替わります。
結局その月に別の保険料が必要になる場合があります。
そのため、賞与の社会保険料だけを見て退職日を決めるのはおすすめできません。
よくある疑問
退職後にもらったボーナスから社会保険料は引かれる?
資格喪失後に支払われた賞与そのものについては、原則として健康保険料・厚生年金保険料はかかりません。
実際に控除されている場合は、正式な退職日と明細の内容を確認してください。
退職前にもらったボーナスなら必ず社会保険料がかかる?
必ずではありません。
資格喪失月に支払われた賞与なら、資格喪失日前の支給でも原則として社会保険料の対象になりません。
6月20日賞与、6月29日退職なら?
6月30日が資格喪失日です。
資格喪失月は6月なので、6月20日の賞与は原則として健康保険料・厚生年金保険料の対象になりません。
6月20日賞与、6月30日退職なら?
資格喪失日は7月1日です。
資格喪失月は7月なので、6月20日の賞与は原則として社会保険料の対象になります。
6月30日退職、7月10日賞与なら?
7月1日に資格を喪失しています。
7月10日の支給時点では資格喪失後なので、賞与そのものには原則として健康保険料・厚生年金保険料はかかりません。
最終出勤後に賞与をもらった場合は?
最終出勤日ではなく正式な退職日で判断します。
有給消化中などでまだ在籍していれば、社会保険の資格も続いています。
月末退職だけなぜ違う?
退職日の翌日が資格喪失日だからです。
月末退職なら資格喪失日は翌月1日になり、退職月はまだ社会保険の加入月になります。
退職金から社会保険料も引かれる?
一般的な退職金は通常の賞与とは別で、健康保険・厚生年金の保険料算定対象にはなりません。
まとめ|「退職後か」より退職日・資格喪失日・賞与支給日を見る
退職前後の賞与から社会保険料が引かれるか確認するときは、
「もう会社を辞めたかどうか」だけで判断しない
ことが重要です。
確認する順番は次のとおりです。
①賞与支給日を確認
②正式な退職日を確認
③翌日の資格喪失日を確認
④賞与支給月と資格喪失月を比べる
特に覚えておきたいのが、
資格喪失月に支払われた賞与は原則として社会保険料の対象外
という点です。
たとえば6月20日に賞与が支給された場合、
6月29日退職
→6月30日資格喪失
→6月が資格喪失月
→原則、賞与の社会保険料なし
となります。
一方、
6月30日退職
→7月1日資格喪失
→7月が資格喪失月
→6月賞与は原則、社会保険料あり
です。
そして、
6月30日退職
→7月1日資格喪失
→7月10日賞与支給
なら、賞与支給時にはすでに資格を喪失しているため、賞与そのものには原則として健康保険料・厚生年金保険料はかかりません。
退職後に支給された賞与から健康保険料や厚生年金保険料が控除されている場合は、
「なぜ引かれたのだろう」で終わらせず、正式な退職日・資格喪失日・賞与支給日を並べて確認する
のが一番分かりやすい方法です。
それでも説明がつかない場合は、賞与明細を手元に置いて勤務先の給与担当者へ確認してください。
参考資料
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」
- 日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」
- 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」


