転職先から健康診断の案内が届いたものの、前職で受けたばかりなら「この結果を使えないだろうか」と考えるところです。
前職の健診結果で雇入れ時健康診断の検査を省略できるかは、受診日・結果を証明する書類・検査項目の3点で確認します。最近受けた健診でも必要な項目が抜けていれば、その結果だけでは足りません。
まずは手元の結果票と転職先の案内を並べましょう。この記事では3か月の確認方法と項目の照合表を示し、入社担当者へ相談するための材料を整理します。
前職の健康診断で代用するために確認する3つの条件
労働安全衛生規則第43条では医師による健康診断を受けてから3か月を経過しない人を雇い入れる場合、結果を証明する書面を提出すれば相当する検査項目を省略できると定めています。対象になるのは常時使用する労働者の雇入れ時健康診断です。厚生労働省「労働安全衛生規則」第43条
- 受診日:雇い入れられる時点で健診を受けてから3か月を経過していないか
- 証明書類:受診日や検査結果を確認できる書類を提出できるか
- 検査項目:雇入れ時健康診断に必要な項目に対応しているか
前職の定期健診や人間ドックという名称だけで代用の可否は決まりません。新たな検査を省略できるのは条件を満たす項目です。結果票を提出すればすべての健診が自動的に不要になるわけではないため、受診予約を取り消す前に転職先へ確認してください。
3か月は「受診日から雇入れ日まで」で確認する
結果票の発行日や提出日から数えない
確認するのは実際に健診を受けた日です。結果が郵送された日や診断書の発行日を起点にはしません。結果票を再発行しても受診日が新しくなるわけではありません。
比較する相手は雇入れ日です。一般には雇用が始まる入社日を確認します。書類の提出期限や内定日ではなく、雇用契約書・労働条件通知書などに記載された日付を見てください。初出勤日と雇用開始日が異なる場合は入社担当者に確認します。和歌山産業保健総合支援センター「雇い入れ時の健康診断、いつまでに行えばよいか?」
例えば同じ年の10月1日に入社する場合は次のように整理できます。以下は受診時期だけの比較であり、書類や項目の確認は別に必要です。
| 受診日・状況 | 受診時期の確認結果 |
|---|---|
| 8月20日に受診し、9月5日に結果票が発行された | 8月20日から10月1日までで確認する。3か月は経過していない |
| 6月20日に受診し、9月5日に結果票を再発行した | 6月20日から数えるため3か月を超える。再発行では期間を更新できない |
| 8月20日に受診したが入社が12月1日に延期された | 変更後の12月1日を基準に再確認する。この場合は3か月を超える |
3か月を一律に90日へ置き換えない
法令の期間は「3か月」です。月の日数が異なるため「90日以内ならよい」と独自に置き換えず、カレンダーで受診日と入社日を比べます。
例えば10月1日入社なら7月1日が3か月前に当たります。ちょうどその境目になる場合や月末をまたぐ場合は「受診日○月○日・入社日○月○日」と具体的な日付を伝え、提出する結果が条件を満たすかを確認してください。「7月に受けた」と月だけ伝えると判断に必要な情報が足りません。
なお、この3か月は過去の健診結果を使うための条件です。「入社してから3か月間は受診しなくてよい」という意味ではありません。
結果を証明する書類は何を用意すればよい?
結果票で受診日と項目別の結果を確認する
用意する候補は健診機関が発行した健康診断結果票や健康診断書です。転職先の指定用紙がある場合は先に取り寄せてください。
入社担当者に見てもらう前に次の情報が読み取れるかを確認します。これは書類を照合するためのチェックであり、全国共通の指定様式を示すものではありません。
- 自分の氏名など本人を確認できる情報
- 実際に健康診断を受けた年月日
- 受診した医療機関・健診機関が分かる情報
- 検査項目ごとの数値・所見・判定
- 診察や医師の判定に関する記載
領収書だけでは検査結果を確認できません。「総合判定A」などの判定部分だけを切り取った画像も、必要な項目を受けたかの照合には不十分です。項目と結果が分かるページを用意しましょう。
原本が必要か、コピーや健診機関から取得したPDFでもよいかは提出先に確認します。指定用紙への転記を医療機関に依頼する必要があるかも、この段階で聞いておくと手配を重ねずに済みます。
手元にない場合は前職か健診機関へ発行方法を確認する
まず前職の健診担当窓口に結果票の写しを取得できるか問い合わせます。健診機関へ直接依頼する方式なら、その窓口と必要な本人確認書類を確認してください。退職後にWebの健診結果へログインできない場合も同様です。
○年○月○日に受けた健康診断の結果票についてご相談です。転職先への提出に使用するため、受診日と項目別の結果が分かる書類を取得したいと考えています。写しの交付または再発行の依頼先、必要書類、費用、受け取りまでの日数を教えていただけますでしょうか。
再発行の可否や料金・日数は依頼先へ確認します。転職先には手元にないことと取得予定日を伝え、提出期限に間に合うかを相談しましょう。
前職の結果票と見比べる検査項目の一覧
次の表は2026年9月時点の雇入れ時健康診断の項目を基にした照合用です。結果票を見ながら「記載あり」「記載が見つからない」「受けていない」に分けてメモしてください。数値が正常かどうかを自分で診断するための表ではありません。
| 必要な項目 | 結果票で探す記載・確認点 |
|---|---|
| 既往歴・業務歴の調査 | 病歴だけでなく、これまでの仕事内容を確認した記録があるか |
| 自覚症状・他覚症状の有無の検査 | 問診や医師の診察に関する記録・所見があるか |
| 身長・体重・腹囲・視力・聴力 | 5つがそろっているか。聴力は1,000Hz・4,000Hzの検査か |
| 胸部エックス線検査 | 胸部X線・胸部レントゲンなどの検査日と所見 |
| 血圧測定 | 収縮期・拡張期の血圧 |
| 貧血検査 | 血色素量(ヘモグロビン・Hb)と赤血球数(RBC) |
| 肝機能検査 | GOT(AST)・GPT(ALT)・γ-GTP(γ-GT) |
| 血中脂質検査 | LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド(中性脂肪) |
| 血糖検査 | 血糖などの検査結果。検査名が違う場合は対応関係を確認する |
| 尿検査 | 尿糖と尿蛋白の両方 |
| 心電図検査 | 安静時心電図などの検査記録・所見 |
項目の根拠は東京労働局「労働者の健康診断」で確認できます。名称や略号が違う場合は不足と即断せず、結果票を健診機関や転職先の健診担当者に見てもらいましょう。
定期健診で省略された項目が不足することがある
前職の定期健康診断では一定の基準に基づき、医師が必要ないと認めた項目を省略していることがあります。一方で雇入れ時健康診断には、定期健診と同じ年齢などによる省略基準をそのまま使えません。群馬労働局「健康診断を実施しましょう」
例えば前職の結果票に心電図や貧血検査の記載がなければ確認が必要です。「去年も受けなかった」「若いから不要だった」という理由だけで今回も不要とは判断できません。
また「採血を受けた」だけでは必要な血液検査が全部そろっているか分かりません。貧血・肝機能・脂質・血糖をそれぞれ確認します。聴力についても会話による確認と1,000Hz・4,000Hzの検査を同じものとして扱わないでください。
2027年4月からは血清クレアチニン検査も確認する
2027年4月1日から雇入れ時健康診断などに血清クレアチニン検査が追加されます。それ以降の健診に前職の結果を使いたい場合は、新しい項目に対応しているかも確認が必要です。上の11項目だけで完了と判断せず、転職先から案内された最新の項目表を使ってください。厚生労働省・鳥取労働局「健康診断を実施しましょう(2027年4月1日適用)」
不足項目があったら追加受診する範囲を確認する
足りない項目がある場合も、最初からすべてを受け直すと決める必要はありません。過去の結果で省略できる項目と新たに受ける項目を転職先に確認し、その内容を医療機関へ伝えます。
- 結果票に記載がない項目をメモする。
- 検査を受けていないのか、別紙や別の名称で記載されているのかを確認する。
- 転職先に既存の結果を示し、追加する項目と提出する書類を確認する。
- 医療機関へ結果票と会社の指定用紙を見せ、追加受診・証明書作成に対応できるか確認する。
例えば心電図だけ不足しているように見えても、医療機関への照会でほかの項目も確認が必要になることがあります。「心電図だけ予約してください」と自己判断で進める前に、会社が必要とする範囲を確定させましょう。
法定の雇入れ時健康診断の実施費用は事業者が負担するものとされています。追加受診の予約前に会社指定の医療機関があるか、立て替える場合の精算方法と領収書の宛名を確認してください。過去の結果票の再発行料や指定用紙への転記料も扱いを別に聞いておきます。福井労働局「健康診断の費用等に関する案内」
なお有害な業務などでは一般の雇入れ時健康診断とは別の健診が必要になることがあります。会社から追加項目を案内されている場合は、上の表にないという理由だけで除外せず対象業務と必要な検査を確認しましょう。
入社担当者へ確認するメール例文
「前職の結果で代用できますか」だけでなく、受診日・入社日・書類の種類・不足していそうな項目を伝えると確認が進めやすくなります。
件名:雇入れ時健康診断への前職健診結果の利用について
入社手続きご担当者様
○月○日に入社予定の○○です。雇入れ時健康診断について確認をお願いいたします。
前職在籍中の○年○月○日に○○健診センターで健康診断を受けています。現在、受診日と項目別の結果が記載された結果票を○○形式(紙・PDFなど)で保管しています。
ご案内の検査項目と照合したところ、○○の記載が見つかりませんでした。ほかの項目も含めて既存の結果を確認いただき、利用できる項目と追加受診が必要な項目をご案内いただけますでしょうか。
あわせて次の点を教えてください。
・結果票の提出先と提出方法
・原本または指定様式の要否
・追加受診が必要な場合の指定医療機関と費用の精算方法
・書類の提出期限どうぞよろしくお願いいたします。
氏名:○○
入社予定日:○年○月○日
結果票の送り先は会社の案内に従います。入社担当者から健診担当窓口や産業保健スタッフへの提出を案内された場合は、その方法で提出してください。手元に結果がないときは取得予定日も添えます。
転職先から回答が届いたら「使える結果」「追加する検査」「提出書類と期限」をメモして受診先へ伝えましょう。入社日が変わった場合は受診時期の条件も改めて確認してください。


