「残業月平均10時間」は毎月10時間?繁忙期・固定残業代と一緒に見る方法

求人票の休日・勤務時間

求人に「残業月平均10時間」と書かれていても、毎月必ず10時間だけ残業するという意味ではありません。

あくまで「月平均」です。

残業がほとんどない月がある一方で、繁忙期には20時間や30時間になる会社でも年間を通して平均すれば10時間になることがあります。

さらに求人を見るときは「月平均10時間」という数字だけではなく、

  • 繁忙期は何時間くらいになるのか
  • 36協定の特別条項があるか
  • 固定残業代が含まれているか
  • 固定残業代は何時間分なのか

まで分けて確認する必要があります。

特に注意したいのが**「平均残業10時間」と「固定残業代20時間分」は別の数字**だということです。

求人を比較するなら最初にここを切り分けてください。

まず確認:残業月平均10時間は「毎月10時間」ではない

ハローワークの求人票では時間外労働が「あり」の場合、企業が「月平均残業時間数」を入力する仕組みになっています。

厚生労働省・ハローワークの求人情報入力方法でも「時間外労働ありの場合は月平均残業時間数を入力」とされています。

ハローワーク「求人情報の入力方法について」

ここで重要なのは「平均」という部分です。

たとえば1年間の残業が次のようになっていたとします。

時期月の残業時間
比較的暇な8か月5時間
繁忙期の4か月20時間

年間では、

5時間×8か月+20時間×4か月=120時間

です。

12か月で割れば月平均10時間になります。

つまり求人には「月平均10時間」と表示できますが、実際には繁忙期に月20時間残業しているということです。

逆に残業0時間の月と20時間の月が混在して平均10時間になるケースもあります。

「残業月平均10時間=自分も毎月10時間前後」とまでは判断できません。

月平均10時間だけでは「残業が多い月」が分からない

求人を見るときに知りたいのは平均だけではありません。

実際に働くなら、

「一番忙しい時期にどれくらい帰れなくなるのか」

も重要です。

ところが求人票の「月平均10時間」だけでは繁忙期の残業時間までは分からない場合があります。

そこで一緒に確認したいのが36協定における特別条項です。

ハローワークでは特別条項付き36協定がある場合、求人票に特別な事情や延長できる時間を記載する仕組みになっています。

たとえば実際に掲載されているハローワーク求人には、

月平均時間外労働時間10時間

としながら、

特別な事情がある場合は1か月70時間まで

と記載されている求人があります。

ハローワーク掲載求人「月平均時間外労働時間10時間・特別条項あり」の例

これは「実際に毎年70時間残業する」という意味ではありません。

特別条項は臨時的な事情が発生した場合に通常の限度時間を超えて時間外労働をさせるための取り決めです。

ただし求人を選ぶ側から見れば、

平均は10時間でも繁忙時に残業が増える可能性がある会社なのか

を確認する材料にはなります。

「特別条項あり=残業が多い会社」と決めつける必要もない

一方で「36協定の特別条項あり」と書いてあるだけで、その会社は必ず長時間残業になるとも言えません。

通常の時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。

臨時的な特別の事情がある場合に特別条項を設けることで、この原則を超えられる場合があります。

厚生労働省は特別条項がある場合でも一般的な業種では、

  • 年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満
  • 2~6か月平均80時間以内
  • 月45時間を超えられるのは年6か月まで

という上限を示しています。

厚生労働省「時間外労働の上限規制」

そのため求人では、

月平均残業時間

と

特別条項で設定されている上限

を同じ数字として見ないことが重要です。

平均10時間・特別条項70時間なら、

「毎月70時間残業する会社」

でもなければ、

「絶対に10時間を超えない会社」

でもありません。

残業月平均10時間なら1日30分程度と考えていい?

月20日勤務だと仮定すれば月10時間は1日平均30分です。

数字だけ見ると、

9時~18時勤務
↓
平均すると18時30分ごろまで

というイメージになります。

ただし実際の働き方が、

毎日30分ずつ残業する

とは限りません。

たとえば、

月曜:0時間
火曜:0時間
水曜:2時間
木曜:0時間
金曜:1時間

のように特定の日だけ残業する職場もあります。

月末だけ忙しい職場もあれば決算期や年度末に集中する職場もあります。

そのため「月平均10時間」を生活時間へ置き換えるなら、1日30分という数字だけでなく残業が発生する時期や偏りも確認したほうが実態に近づきます。

「月平均残業10時間」と「固定残業代20時間」は矛盾しない

求人で特に分かりにくいのが、

残業月平均10時間
固定残業代20時間分を含む

のような表記です。

「平均10時間なのに、なぜ20時間分の残業代が入っているの?」

と思うかもしれません。

これは矛盾ではありません。

月平均残業時間は実際の時間外労働についての数字です。

固定残業代の20時間は給与の計算方法として設定されている時間数です。

厚生労働省は固定残業代を採用する場合、

  • 固定残業代を除いた基本給
  • 固定残業代の対象となる時間数と金額
  • 設定時間を超えた場合は追加で割増賃金を支給すること

を明示する必要があると説明しています。

厚生労働省「労働条件の明示」固定残業代について

たとえば求人が、

基本給:25万円
固定残業代:3万円(20時間分)
月平均残業:10時間

だったとします。

この場合20時間残業することが前提という意味ではありません。

固定残業代は実際の時間外労働の有無にかかわらず一定時間分を定額で支払う仕組みです。

実際の平均残業が10時間でも固定残業代を20時間分に設定している会社はあり得ます。

逆に実際の残業が20時間を超えれば、その超過分について追加の割増賃金が必要になります。

固定残業代30時間なのに平均残業10時間なら損?

ここも求人比較で迷いやすいところです。

たとえば次の2社があったとします。

A社B社
月給30万円28万円
月平均残業10時間10時間
固定残業代30時間分を含むなし
超過分別途支給残業した分を支給

この情報だけではA社とB社のどちらの給与条件が良いか判断できません。

A社の月給30万円のうち、

基本給23万円
固定残業代7万円

という構成かもしれません。

一方でB社は基本給28万円で、残業10時間分が別途上乗せされる可能性があります。

見るべきなのは、

月給の総額ではなく固定残業代を除いた基本給と実際の残業時間

です。

「固定残業代30時間なのに平均10時間だから10時間分損している」という考え方も正確ではありません。

固定残業代は設定された条件に従い定額で支払われるため、実際の残業が10時間だから20時間分を返すという仕組みではありません。

重要なのは、

その固定残業代を除いた基本給がいくらなのか

です。

求人の「残業10時間以下」を比較するなら5項目を見る

残業の少ない求人を探しているなら「月平均10時間以下」で絞り込むこと自体は分かりやすい方法です。

ただし最終的に応募する求人を選ぶときは次の5項目を確認してください。

確認項目見る理由
月平均残業時間普段の残業量を見る
繁忙期平均では見えない増加を確認する
36協定の特別条項臨時的にどこまで増える可能性があるかを見る
固定残業代給与に何時間分が含まれるか確認する
基本給固定残業代を除いた給与水準を比較する

特に、

平均残業時間が短い=労働条件すべてが良い

とは限りません。

年間休日が少なければ勤務日そのものが多い可能性があります。

1日の所定労働時間が違う求人もあります。

休日出勤の扱いやシフト勤務も確認が必要です。

残業時間だけを切り取らず、勤務時間と休日をセットで見たほうが実際の働き方を想像しやすくなります。

面接では「平均」より繁忙期を聞く

求人票に月平均10時間と書かれていても、求人票だけで残業の偏りが分からなければ面接で確認できます。

聞くなら、

「求人票では残業が月平均10時間とのことですが、繁忙期は月どのくらいになることが多いでしょうか」

という聞き方なら具体的です。

さらに確認するなら、

「残業が多くなるのは何月頃ですか」

「配属予定の部署でも月平均10時間程度でしょうか」

「直近で残業が最も多かった時期はどの程度でしたか」

と聞けば平均値だけでは分からない部分を確認できます。

会社全体では平均10時間でも、営業部門は5時間、開発部門は20時間という可能性もあります。

自分が配属される部署の実態まで確認できれば求人選びの精度は上がります。

「月平均10時間」より残業0時間の月があるかを見る方法もある

残業をできるだけ避けたい人なら平均時間だけでなく働き方そのものを確認する方法もあります。

たとえば、

  • 定時退社日がある
  • 繁忙期が明確
  • 月末だけ残業が増える
  • 通常月はほぼ定時
  • シフト交代時だけ残業が発生する

などです。

同じ月平均10時間でも、

毎日30分残業する会社

と、

普段は定時で月末だけ数時間残業する会社

では働いたときの感覚がかなり違います。

子どもの迎えなどで毎日の定時退社を重視する人なら後者のほうが働きやすい場合があります。

逆に月末に長時間残業できない人なら前者のほうが合うこともあります。

「平均10時間」という数字だけではここまでは分かりません。

求人票と実際の残業時間が大きく違った場合

求人票に月平均10時間と書かれていたのに、入社後は毎月40時間以上残業している。

このような場合はまず一時的な繁忙なのか恒常的な状態なのか確認します。

ハローワークは求人条件と実際の労働条件が異なるという申出があった場合、事実確認や必要な是正指導を行うと案内しています。

厚生労働省「面接のとき、残業時間は実際どのくらいですかと聞かれた場合」

求人票だけでなく入社時の労働条件通知書や雇用契約書も保管しておいてください。

また固定残業時間を超えているのに追加の残業代が支払われていない場合は、平均残業時間とは別の問題になります。

求人の「残業月平均10時間」は平均・繁忙期・固定残業代を分けて見る

求人に「残業月平均10時間」とあっても毎月10時間残業するという意味ではありません。

残業が少ない月と繁忙期を含めた平均値として表示されているため、月によって実際の残業時間は変わる可能性があります。

求人を比較するときは、

①月平均残業時間
②繁忙期の残業
③36協定の特別条項
④固定残業代の時間数
⑤固定残業代を除いた基本給

を分けて確認してください。

特に「平均残業10時間」と「固定残業代30時間」は同じ意味ではありません。

前者は実際の残業時間を見る数字。

後者は給与計算上の設定です。

残業の少ない求人を探すなら「月平均10時間以下」で絞ったうえで、最後は繁忙期にどこまで増えるかまで確認すると求人票と入社後のギャップを減らせます。

参考資料